博報堂DYホールディングスを一言でいうと
博報堂DYホールディングスは、博報堂、大広、読売広告社、博報堂DYメディアパートナーズ、Hakuhodo DY ONEなどを束ねる広告・マーケティンググループです。テレビCMや新聞広告を扱う広告会社というイメージが強い一方で、現在は広告枠の販売だけでなく、デジタル広告、生活者データ、CRM、コマース、コンテンツ、コンサルティング、AI活用まで広げ、企業のマーケティング活動全体を支援する会社へ変わろうとしています。
博報堂DYホールディングス 企業研究で最初に押さえるべきなのは、同社の軸が「生活者発想」にあることです。博報堂DYグループは、人を単なる消費者や購買データとして見るのではなく、仕事、家族、趣味、不安、価値観、社会との関係を持つ「生活者」として捉えます。この考え方は、広告 の作り方だけでなく、商品開発、ブランド戦略、店舗体験、EC、デジタルマーケティング、社会課題対応にも広がります。
同じ広告業界でも、電通グループは巨大なメディア取引、スポーツ、グローバルネットワーク、統合マーケティングで語られることが多い会社です。博報堂DYホールディングスは、そこに対して、生活者理解、クリエイティビティ、パートナー主義、複数の広告会社が持つ個性を束ねたグループ力に特徴があります。
ただし、現在の博報堂DYホールディングスは、単に「日本の大手広告会社」として安定しているだけではありません。広告市場は、テレビ中心からインターネット広告、SNS、動画、EC、データ活用、生成AIへ大きく変化しています。企業が求めるものも、広告出稿そのものから、売上成長、顧客体験、購買導線、データ活用、事業変革へ広がっています。その変化に対し、博報堂DYグループがどこまで広告会社の枠を超えられるかが、今後の最大の論点です。
なぜ今博報堂DYホールディングスを見るのか
今、博報堂DYホールディングスを見る理由は、広告業界の構造が変わる中で、同社が「クリエイティビティ・プラットフォーム」へ進化しようとしているからです。
かつて広告会社の中心的な役割は、テレビ、新聞、雑誌、ラジオといったメディア枠を仕入れ、広告主に対して広告企画や制作物とセットで提供することでした。もちろん今でもテレビCMや新聞広告は重要です。しかし企業側から見ると、広告の目的は「多くの人に見てもらうこと」だけではなくなっています。どの生活者に届いたのか、どのような感情を動かしたのか、ECで買われたのか、店舗へ来店したのか、会員登録につながったのか、継続利用されたのかまで問われます。
この変化に対応するため、博報堂DYグループは中期経営計画で、従来の広告会社グループの枠を超えた「クリエイティビティ・プラットフォーム」を目指すとしています。重点は、マーケティングビジネスの構造改革、新たな成長オプションの創造、グローバルビジネスのリモデルです。具体的には、デジタルマーケティング、コマース、コンサルティング、テクノロジー、コンテンツ、インキュベーションを成長領域として広げようとしています。
2026年3月期の業績では、売上高1兆5,804億円、売上総利益4,060億円、営業利益446億円、親会社株主に帰属する当期純利益167億円でした。営業利益は増益で、販管費のコントロールや構造改革の効果により収益性が改善しています。一方で、広告業界全体の成長が簡単ではないこと、海外やデジタル領域で競争が激しいこと、人件費・システム投資・AI対応の負担があることも見逃せません。
就活生にとっては、博報堂DYホールディングスは「広告を作る会社」だけではありません。ブランド戦略、生活者調査、デジタル広告運用、データ分析、EC支援、顧客体験設計、コンテンツビジネス、AI活用、地方企業支援、グローバルマーケティングまで関われる会社です。個人投資家にとっては、広告市場の景気敏感性、デジタル化への対応、利益率改善、配当、株主資本効率を見ていくべき企業です。
成り立ち
博報堂の創業は1895年です。教育雑誌の広告取次から始まり、その後、新聞広告、雑誌広告、ラジオ、テレビ、インターネット広告へと事業領域を広げてきました。日本の広告産業は、メディアの発展とともに成長してきました。新聞が広がれば新聞広告が伸び、ラジオが普及すれば音声広告が生まれ、テレビが家庭に入ればテレビCMが企業のブランドづくりの中心になりました。博報堂は、その変化の中で、広告主とメディアと生活者をつなぐ会社として成長しました。
博報堂の思想として有名なのが「生活者発想」です。これは1980年代から掲げられてきた考え方で、生活者を単なる消費者として見るのではなく、生活全体の中で理解しようとするものです。人は商品を買う存在である前に、家庭で暮らし、仕事をし、趣味を持ち、不安や願望を持ち、社会の中で生きています。その生活の実像を理解することが、広告やマーケティングの出発点になるという考え方です。
2003年には、博報堂、大広、読売広告社が経営統合し、博報堂DYホールディングスが設立されました。これにより、複数の広告会社の個性を持つグループ体制ができました。博報堂は生活者発想とクリエイティブ、大広はブランドアクティベーション、読売広告社は都市・住生活・エンタテインメント領域に強みを持ちます。さらに、メディア機能を担う博報堂DYメディアパートナーズ、デジタル領域を担うHakuhodo DY ONEなどが加わり、広告会社グループとしての幅を広げています。
近年の大きな変化は、インターネット広告とデジタルマーケティングの拡大です。広告主は、テレビCMだけでなく、検索広告、SNS広告、動画広告、EC広告、アプリ広告、データ分析、CRMを必要とするようになりました。博報堂DYグループは、生活者発想という強みを持ちながら、デジタルとAIの時代に合わせて事業を作り替えている段階です。
事業内容
博報堂DYホールディングスの事業は、大きく見ると、広告・マーケティングサービス、メディアサービス、デジタルマーケティング、コマース、コンサルティング、コンテンツ、テクノロジー、インキュベーションに分けられます。
広告・マーケティングサービスでは、企業のブランド戦略、広告キャンペーン、商品プロモーション、クリエイティブ制作、PR、イベント、店頭施策、販促企画などを扱います。テレビCMやグラフィック広告を作るだけではなく、商品の売り方、ブランドの見せ方、生活者との接点づくりを設計します。博報堂、大広、読売広告社の各社が、顧客企業ごとに異なる課題へ対応しています。
メディアサービスでは、テレビ、新聞、雑誌、ラジオ、インターネットメディア、屋外広告などの広告枠を扱います。博報堂DYメディアパートナーズは、メディア取引やメディアプランニングを担う重要な会社です。広告主にとっては、どの媒体に、どのタイミングで、どの程度の予算を投下するかが重要です。テレビとデジタルを分けて考えるのではなく、生活者の接触行動に合わせて媒体を組み合わせる力が求められます。
デジタルマーケティングでは、Hakuhodo DY ONEが中心になります。インターネット広告運用、データ分析、広告効果測定、クリエイティブ改善、プラットフォーム対応、マーケティングテクノロジー活用を担います。デジタル広告は、運用力、データ処理力、媒体社との関係、AI活用、クリエイティブ改善のスピードが重要です。
コマースビジネスでは、EC、店頭、アプリ、会員制度、販促、購買データを結びつけ、買い手と売り手の双方から購買体験を設計します。広告で認知を高めるだけでなく、実際に買われる場所や導線まで設計する事業です。小売、メーカー、ECモール、D2C、店頭販促が絡むため、広告会社の仕事が売上により近づいている領域です。
コンサルティング、テクノロジー、コンテンツ、インキュベーションは、次の成長オプションです。企業の事業変革、ブランド再構築、顧客体験、データ基盤、AI活用、IP、スポーツ、音楽、エンタメ、新規事業開発を支援します。従来の広告代理店の仕事よりも、コンサル会社やIT企業に近い領域へ踏み込むことになります。
収益構造
博報堂DYホールディングスの収益構造を理解するには、単純な売上高だけでなく、売上総利益、営業利益、のれん償却前営業利益、売上総利益率、オペレーティング・マージンを見る必要があります。
広告会社の売上には、広告主から受け取るメディア費や外注費が含まれるため、売上高だけを見ても実際の収益力は分かりにくい面があります。広告会社自身の付加価値に近いのは、売上総利益です。メディア枠の仕入れや外注制作を差し引いた後に、どれだけ自社のサービスとして利益を残せるかが重要になります。
2026年3月期の売上高は1兆5,804億円、売上総利益は4,060億円、営業利益は446億円でした。調整後ベースでは、のれん償却前営業利益が574億円、売上総利益率が25.7%、のれん償却前オペレーティング・マージンが14.1%となっています。売上高は前年を下回りましたが、売上総利益と営業利益は増加しました。これは、トップラインの拡大だけでなく、費用管理と利益率改善が進んだことを示しています。
種目別に見ると、テレビ、新聞、雑誌、ラジオを合わせた4マス媒体は依然として大きな事業です。2026年3月期の4マス計は4,072億円、インターネットメディアは3,574億円でした。インターネット領域売上高は4,315億円です。テレビ広告はまだ大きな市場ですが、インターネット広告はすでに同じくらい重要な収益源になっています。
メディア以外では、クリエイティブ、マーケティング/プロモーション、コンテンツなどがあります。2026年3月期のクリエイティブは1,685億円、マーケティング/プロモーションは3,072億円でした。これは、博報堂DYグループが単なるメディア枠販売ではなく、企画、制作、販促、イベント、購買導線設計、コンテンツなどで収益を得ていることを示します。
2027年3月期の会社予想では、売上高1兆6,750億円、収益9,100億円、売上総利益4,300億円、営業利益467億円、親会社株主に帰属する当期純利益260億円が見込まれています。投資家にとっては、売上総利益が本当に伸びるか、販管費を抑えながらデジタル・コマース・コンサル領域を拡大できるかが重要です。
事業内容の特徴
博報堂DYホールディングスの事業内容の特徴は、生活者理解を起点に、広告、メディア、デジタル、販促、コマース、コンテンツを横断して提案できることです。
広告会社は、単に「面白いCMを作る会社」ではありません。企業が新商品を出すとき、誰に売るのか、どんな価値を伝えるのか、どの媒体を使うのか、どの店頭で見せるのか、どのSNSで広げるのか、ECでどう買わせるのか、購入後にどうファン化するのかまで設計します。博報堂DYグループは、この一連の流れを生活者視点で組み立てることを得意としています。
もう一つの特徴は、複数の広告会社を持つグループであることです。博報堂、大広、読売広告社は、それぞれ歴史や顧客基盤、得意領域が異なります。博報堂は生活者発想とクリエイティブ、大広はブランドアクティベーション、読売広告社は都市・住生活・エンタメ領域に強みがあります。これにメディア機能、デジタル機能、テクノロジー機能が加わることで、グループとして多面的な提案ができます。
また、同社は「広告主とメディアの間に立つ会社」から、「生活者と企業の関係を設計する会社」へ変わろうとしています。たとえば、商品の広告を出すだけでなく、商品コンセプトを作る、ECで売る、店頭体験を作る、アプリで継続利用を促す、ファンコミュニティを設計する、企業の社会的姿勢を伝える。こうした領域では、広告と事業戦略の境界が薄くなります。
一方で、この変化は難しさも伴います。コンサルティングやテクノロジー領域に踏み込むと、アクセンチュア、デロイト、NRI、システム会社、SaaS企業、EC支援会社と競合します。デジタル広告では、サイバーエージェント、Google、Meta、Amazon、プラットフォーム系企業との競争もあります。博報堂DYグループの生活者発想を、データとテクノロジーの時代にどう翻訳するかが問われています。
競合他社との違い
博報堂DYホールディングスの最大の競合は、電通グループです。電通グループは、日本最大級の広告会社であり、メディア取引、スポーツ、イベント、グローバル展開、統合マーケティングで強い存在感を持ちます。博報堂DYグループは、電通に対して、生活者発想、パートナー主義、クリエイティブ、複数広告会社の個性、生活者研究を軸に差別化しています。
電通グループとの違いを一言でいうと、電通は巨大な統合力、博報堂DYは生活者理解を核にした企画・関係構築力と見ることができます。もちろん実際には両社ともデジタル、コマース、コンサル、グローバルを強化していますが、企業文化としての違いは残っています。広告主から見ると、どちらが優れているかではなく、課題に応じて使い分けられる存在です。
サイバーエージェントとの違いは、デジタル広告への特化度です。サイバーエージェントは、インターネット広告、AI広告運用、動画、ゲーム、ABEMAに強い会社です。博報堂DYグループもデジタル広告を扱いますが、テレビ、新聞、雑誌、屋外、イベント、店頭、クリエイティブ、生活者研究を含む総合性が特徴です。デジタル広告運用だけなら専業企業の強さがありますが、マスメディアとデジタル、ブランドと購買を統合する案件では博報堂DYの強みが出ます。
アクセンチュアやNRIのようなコンサル・IT企業とも競合します。企業がマーケティング変革や顧客データ基盤を作るとき、広告会社だけでなくコンサル会社やSIerにも相談します。NRIはコンサルティングとシステム構築に強く、オービックのような会社は企業の基幹業務システムに強みがあります。博報堂DYグループは、深いシステム実装そのものではなく、生活者理解、ブランド、顧客体験、コミュニケーション設計を軸に、テクノロジーを組み合わせる立ち位置です。
ALSOKやセコムは直接の広告競合ではありません。ただし、サービス業として比較すると、博報堂DYの特徴が見えます。ALSOKやセコムは、警備、監視、見守り、防災といった現場サービスを継続契約で提供します。一方、博報堂DYグループは、企業と生活者の関係を設計する無形サービスを提供します。警備会社が「安全・安心」を売るなら、広告会社は「意味・共感・購買行動」を作る会社です。どちらも人材と信頼が重要ですが、収益の源泉は大きく異なります。
事業の現代での潮流
博報堂DYホールディングスを取り巻く潮流は、広告のデジタル化、生成AI、コマース化、生活者データ活用、テレビ広告の変化、コンテンツ・IPビジネスの拡大です。
広告のデジタル化は、すでに避けられない流れです。テレビCMを見て商品を知り、店頭で買うという単純な流れだけではなくなりました。生活者は、SNSで知り、検索し、口コミを見て、動画を見て、ECで比較し、実店舗で体験し、アプリで再購入します。広告会社は、この複雑な行動を横断して設計する必要があります。
生成AIは、広告業界に大きな影響を与えます。 案、画像生成、動画制作、広告運用、レポート作成、データ分析はAIで効率化されます。これは人件費の削減や制作スピード向上につながる一方、従来の制作業務の一部が低単価化するリスクもあります。博報堂DYグループは、生活者データやAI技術を日常業務で活用する統合マーケティングプラットフォームを開発し、AIを人のクリエイティビティを拡張する道具として位置づけています。
コマース化も重要です。広告は認知を取るだけでなく、購買へつながることが求められます。メーカーは、ECモール、自社EC、店頭、アプリ、SNS、ライブコマース、ポイント、会員データをどう使うかに悩んでいます。博報堂DYグループがコマースビジネスを強化しているのは、広告予算と販売予算の境界が薄くなっているからです。
コンテンツ・IPビジネスも成長領域です。企業は、広告枠を買うだけでなく、音楽、アニメ、スポーツ、ゲーム、キャラクター、アスリート、イベントを通じて生活者と関係を作ろうとしています。博報堂DYグループは、コンテンツやIPを企業の課題解決だけでなく、新たな収益源として育てようとしています。
一方で、広告市場は景気に敏感です。企業業績が悪化すると、広告宣伝費や販促費は削られやすくなります。さらに、人件費や専門人材の確保、AI投資、グローバル事業の採算も重要になります。広告業界は成長市場であると同時に、競争と構造変化が激しい業界です。
強み
博報堂DYホールディングスの第一の強みは、生活者発想です。これは単なるスローガンではなく、広告企画、ブランド戦略、商品開発、デジタル施策、コマース設計の土台になる考え方です。生活者を購買データだけでなく、生活全体の中で理解することは、生成AIやデータ分析が進む時代にも重要です。
第二の強みは、クリエイティブ力です。広告やマーケティングは、数字だけでは人を動かせません。言葉、映像、デザイン、物語、イベント、体験を通じて、生活者の感情を動かす必要があります。博報堂は長年、生活者理解とクリエイティブを組み合わせて企業のブランドづくりを支えてきました。
第三の強みは、グループ会社の多様性です。博報堂、大広、読売広告社、博報堂DYメディアパートナーズ、Hakuhodo DY ONE、ソウルドアウト、kyuなど、異なる専門性を持つ会社を抱えています。広告、メディア、デジタル、地方中小企業支援、海外専門会社、テクノロジーを組み合わせられる点は、単体の広告会社にはない強みです。
第四の強みは、デジタルマーケティングへの対応力です。Hakuhodo DY ONEをコアに、インターネット広告、データ活用、プラットフォーム対応、広告運用を強化しています。テレビとデジタル、ブランドと購買、マスと個別最適をつなぐ力は、今後さらに重要になります。
第五の強みは、国内市場での顧客基盤です。日本の大企業、メディア、流通、メーカー、官公庁、地域企業との長期的な関係は、簡単に模倣できません。広告会社は顧客の深い情報に触れるため、信頼関係が非常に重要です。博報堂DYグループは、この関係性を土台に、新しい領域へ提案を広げることができます。
弱み・リスク
博報堂DYホールディングスの第一のリスクは、広告市場の景気敏感性です。企業の広告宣伝費や販促費は、景気や業績が悪化すると削られやすい費用です。特に大型キャンペーン、イベント、プロモーションは、企業の投資姿勢に左右されます。安定したサブスクリプション収益を持つ企業とは違い、案件型収益が多い点は注意が必要です。
第二のリスクは、デジタル広告競争の激化です。インターネット広告は伸びていますが、競合も強いです。サイバーエージェントのようなデジタル専業、GoogleやMetaのようなプラットフォーム、Amazon広告、コンサル会社、EC支援会社が競争相手になります。博報堂DYグループは、生活者発想と総合提案で差別化する必要があります。
第三のリスクは、人件費と生産性です。広告・マーケティング事業は、人材が価値の源泉です。しかし人件費は大きな固定費でもあります。売上総利益が伸びない中で専門人材を増やせば、利益率は下がります。AIや業務基盤を活用して、生産性を上げられるかが重要です。
第四のリスクは、グループ統合の難しさです。博報堂、大広、読売広告社、メディア会社、デジタル会社、海外会社は、それぞれ文化や顧客基盤が違います。多様性は強みですが、顧客から見ると、グループ全体で一体的に提案できるかが問われます。中期計画でグループアカウント戦略や横串機能を強化しているのは、この課題に対応するためです。
第五のリスクは、コンプライアンスです。広告会社は、広告主、メディア、制作会社、イベント、官公庁案件など、多くの関係者と取引します。過去の業界全体の問題もあり、透明性、公正性、ガバナンスは非常に重要になっています。信頼を失えば、顧客との長期関係に影響します。
数字で見る博報堂DYホールディングス
博報堂DYホールディングスを見るときは、売上高だけでなく、売上総利益、営業利益、のれん償却前営業利益、売上総利益率、オペレーティング・マージン、インターネット領域売上高、配当、自己株式取得を確認する必要があります。
2026年3月期の売上高は1兆5,804億円、収益は8,610億円、売上総利益は4,060億円、営業利益は446億円、経常利益は460億円、親会社株主に帰属する当期純利益は167億円でした。営業利益は前年同期比18.9%増、当期純利益は55.8%増です。販管費のコントロールや構造改革の効果により、収益性は改善しています。
調整後ベースでは、売上総利益4,060億円、営業利益446億円、のれん償却前営業利益574億円、売上総利益率25.7%、のれん償却前オペレーティング・マージン14.1%でした。中期経営計画では、2027年3月期に調整後のれん償却前営業利益の年平均成長率10%以上、調整後売上総利益の年平均成長率5%以上、調整後のれん償却前オペレーティング・マージン13%以上、のれん償却前ROE10%以上を掲げています。2026年3月期時点では、のれん償却前営業利益の成長率とオペレーティング・マージンは目標に向けて進んでいますが、のれん償却前ROEは7.6%にとどまっています。
種目別では、4マス媒体計が4,072億円、インターネットメディアが3,574億円、メディア計が8,042億円でした。メディア以外では、クリエイティブが1,685億円、マーケティング/プロモーションが3,072億円、その他コンテンツ等が429億円でした。インターネット領域売上高は4,315億円で、テレビ広告と並ぶ大きな柱になっています。
2027年3月期の会社予想では、売上高1兆6,750億円、収益9,100億円、売上総利益4,300億円、営業利益467億円、親会社株主に帰属する当期純利益260億円が見込まれています。年間配当は2026年3月期、2027年3月期ともに32円の予想です。投資家は、配当だけでなく、資本収益性改善、政策保有株式売却、自己株式取得、ROE改善の進捗を見る必要があります。
今後の注目ポイント
今後の第一の注目ポイントは、デジタルマーケティングの競争力です。Hakuhodo DY ONEをコアに、インターネット広告、データ活用、広告運用、クリエイティブ改善をどこまで強化できるかが重要です。デジタル広告は成長市場ですが、競争も激しいため、単なる規模拡大ではなく、収益性を伴う成長が必要です。
第二の注目ポイントは、コマースビジネスです。広告主は、認知だけでなく購買成果を求めています。EC、店頭、アプリ、会員データ、ポイント、販促を組み合わせた購買体験を設計できれば、広告予算だけでなく販売・事業変革予算にも入り込めます。生活者発想を購買体験にどう落とし込むかが、博報堂DYらしいテーマです。
第三の注目ポイントは、AI活用です。生成AIは広告制作、データ分析、広告運用、レポート作成を大きく変えます。博報堂DYグループが、AIを単なる効率化ツールとして使うだけでなく、人の創造性と生活者理解を拡張する基盤にできるかが問われます。
第四の注目ポイントは、グローバルビジネスのリモデルです。欧米ではkyuを中心とした専門性の高い企業群、アジアでは博報堂を中心とした日系・ローカル企業支援があります。これらをデジタルマーケティング領域で連携させ、独自のモダンネットワークを作れるかが課題です。海外事業は成長余地がある一方、収益性と管理体制が重要です。
第五の注目ポイントは、資本収益性です。広告会社は大きな設備を持つ製造業ではありませんが、人材、のれん、買収、政策保有株式など、資本の使い方が企業価値に影響します。のれん償却前ROE10%以上を達成できるか、株主還元をどう強化するかが、投資家にとって重要です。
投資対象として
博報堂DYホールディングスを投資対象として見る場合、同社は「国内大手広告グループ」であると同時に、「広告会社から統合マーケティング・コマース・AI活用企業へ転換する会社」と整理できます。
ポジティブに見るなら、日本市場での顧客基盤、生活者発想、クリエイティブ力、メディア横断力は大きな強みです。2026年3月期には営業利益と当期純利益が増加し、収益性改善の成果も出ています。インターネット領域売上高も大きく、デジタルマーケティングへの対応は進んでいます。2027年3月期も増収増益が見込まれています。
また、電通グループが海外減損や無配で大きく揺れる中、博報堂DYホールディングスは国内中心の安定感と、生活者発想を軸にした差別化を持っています。海外の大型買収リスクが相対的に小さい点は、投資家から見ると評価しやすい部分です。
一方で、慎重に見るべき点もあります。広告業界は景気敏感であり、企業の広告宣伝費や販促費が減ると業績に影響します。デジタル広告では競争が激しく、AIによって制作や運用業務の単価が下がる可能性もあります。さらに、コンサルティングやテクノロジー領域では、広告会社とは違う競争相手と戦う必要があります。
したがって、博報堂DYホールディングスの株価を見るときは、PERや配当利回りだけでなく、売上総利益、営業利益、のれん償却前営業利益、オペレーティング・マージン、インターネット領域売上高、コマース・デジタル領域の成長、ROE、自己株式取得、政策保有株式の縮減を確認するべきです。投資対象としては、急成長IT企業ではなく、広告市場の構造変化に適応しながら利益率改善を進めるサービス企業として見るのが自然です。
まとめ
博報堂DYホールディングスは、博報堂、大広、読売広告社を中心に、メディア、デジタル、地方中小企業支援、海外専門会社、テクノロジー機能を束ねる広告・マーケティンググループです。博報堂は1895年創業で、長い歴史の中で広告、メディア、クリエイティブ、生活者研究を積み上げてきました。
博報堂DYホールディングス ビジネスモデルの中心は、広告枠を販売することだけではありません。生活者理解を起点に、広告、メディア、デジタル、販促、コマース、コンテンツ、コンサルティング、AI活用を組み合わせ、企業と生活者の関係を設計することです。
博報堂DYホールディングス 強みは、生活者発想、クリエイティブ力、国内顧客基盤、メディア横断力、Hakuhodo DY ONEを中心としたデジタル対応、複数広告会社の個性を束ねるグループ構造にあります。一方で、広告市場の景気敏感性、デジタル競争、人件費、グループ統合、AIによる業務変化、コンプライアンスには注意が必要です。
就活生にとって、博報堂DYホールディングスは広告制作だけでなく、生活者研究、ブランド戦略、デジタル広告、データ分析、EC、コンテンツ、AI、事業開発に関われる会社です。個人投資家にとっては、広告市場の変化に対応しながら、売上総利益と利益率を伸ばせるかを見るべき企業です。
博報堂DYホールディングスは、広告会社の枠を超えようとしています。その転換の鍵は、生活者発想を過去の広告哲学で終わらせず、データ、AI、コマース、コンテンツの時代に使える競争力へ変えられるかです。そこが、博報堂DYホールディングス 企業研究の最大のポイントになります。