電通グループを一言でいうと
電通グループは、テレビCMや新聞広告の枠を売る広告代理店から出発し、現在は広告、メディア、クリエイティブ、デジタルマーケティング、データ活用、顧客体験設計、事業変革支援まで扱う統合マーケティング企業です。日本では「広告代理店の最大手」という印象が強い会社ですが、現在の電通グループを理解するには、広告枠の販売会社ではなく、企業の売上成長、ブランド価値、顧客接点、データ活用を支援する会社として見る必要があります。
電通グループ ビジネスモデルの中心は、企業が商品やサービスを売るために必要なコミュニケーションを設計し、その実行を支援することです。テレビ、新聞、雑誌、ラジオといったマスメディアの広告枠を扱うだけでなく、インターネット広告、検索広告、SNS、動画、アプリ、EC、イベント、スポーツ、エンタメ、顧客データ、CRM、マーケティングシステム、AI活用まで領域が広がっています。
ただし、現在の電通グループは順調な成長企業というより、広告代理店から統合マーケティング企業へ転換する途中で、海外事業の収益性回復という大きな課題を抱える会社です。2025年12月期は、調整後営業利益では黒字を維持した一方、海外事業ののれん減損などにより大幅な最終赤字となりました。これは、過去のM&Aで広げた海外事業が、期待通りの利益成長を実現できていないことを示しています。
つまり、電通グループ 企業研究で重要なのは、国内広告会社としての強さと、海外・デジタル・AI時代への転換課題を同時に見ることです。日本では圧倒的な顧客基盤とメディア・クリエイティブ力を持つ一方、グローバルでは欧米広告大手やコンサルティング会社、テック企業と競争します。ここに、電通グループの強みと難しさがあります。
なぜ今電通グループを見るのか
今電通グループを見る理由は、同社がまさに「立て直し局面」にあるからです。
広告業界は大きく変わっています。かつては、企業がテレビCMや新聞広告を出し、広告代理店がメディア枠を仕入れ、企画を作り、広告主へ販売する構造が中心でした。しかし現在は、広告主が求めるものが変わっています。広告を出すこと自体ではなく、売上が増えたか、顧客データを取得できたか、ブランドが強くなったか、ECで購入につながったか、LTVが高まったかが問われます。
この変化によって、電通グループの競争相手も変わりました。国内では博報堂DYホールディングス、サイバーエージェント、ADKなどが競合します。海外ではWPP、Publicis、Omnicom、IPGなどの広告グループに加え、Accenture、Deloitte、IBM、Adobe、Salesforce、Google、Meta、Amazonなども競争相手になります。広告会社だけでなく、コンサル、SIer、クラウド、プラットフォーム企業が、企業のマーケティング予算を取り合う時代になりました。
電通グループは、この変化に対応するため、海外M&A、デジタル領域、CXM、データ、コマース、スポーツ&エンターテインメントへ事業を広げてきました。しかし、海外事業では収益性の低下や統合不足が課題となり、2024年、2025年と大きな減損を計上しました。2025年12月期は、収益1兆4,352億円、売上総利益1兆1,975億円、調整後営業利益1,725億円でしたが、営業損失は2,892億円、親会社所有者帰属当期損失は3,276億円となりました。
一方、すべてが悪いわけではありません。日本事業は堅調で、2025年12月期もインターネット広告、マーケティング、BX、DXが成長しました。2026年度第1四半期では、全体のオーガニック成長率がプラスに戻り、日本事業は引き続き強さを見せています。つまり、電通グループは国内事業の強さを維持しながら、海外事業を再構築できるかが焦点です。
就活生にとっては、広告制作だけでなく、データ、テクノロジー、事業開発、スポーツビジネス、デジタル変革に関われる会社です。個人投資家にとっては、国内の安定収益、海外の再建、減損後の利益回復、無配からの復配可能性、キャッシュフローを慎重に見るべき企業です。
成り立ち
電通の歴史は、1901年に光永星郎が日本広告株式会社を設立したことに始まります。同年には電報通信社も併設されました。創業当初の電通は、広告代理店であると同時に、ニュース配信を行う通信社でもありました。広告と通信を一体で扱っていたことが、電通の原点です。
1906年に電報通信社を改組して日本電報通信社を設立し、1907年には日本広告株式会社を合併しました。これにより、通信と広告を併営する会社となります。新聞が主要メディアだった時代、ニュース配信と広告枠の取扱いを持つことは、メディアとの関係を築くうえで大きな力でした。
1936年には通信部門を同盟通信社に移譲し、広告専業となりました。ここから、現在につながる広告会社としての電通が本格的に形づくられます。戦後、民間ラジオ放送、民間テレビ放送が始まると、電通はマスメディア広告の拡大とともに成長しました。テレビCM、新聞広告、イベント、キャンペーン、スポーツ、文化事業を通じて、日本企業のマーケティングを支える存在になります。
1955年には社名を株式会社電通へ変更しました。1970年代には広告取扱高で世界トップ級の存在となり、日本の広告市場における圧倒的な地位を築きます。1990年代以降はインターネット広告が広がり、広告代理店の役割も変わっていきました。2001年に上場し、2013年には英国Aegis Groupを買収して海外事業を大きく拡大しました。
2020年には純粋持株会社体制へ移行し、株式会社電通グループとなりました。国内では電通、電通デジタル、電通総研などを中心に、海外ではdentsuブランドで事業を展開します。現在の電通グループは、広告代理店の歴史を持ちながら、グローバルな統合マーケティング企業へ変わろうとしている会社です。
事業内容
電通グループの事業は、地域別には日本、Americas、EMEA、APACの4つで管理されています。事業内容としては、広告、メディア、クリエイティブ、CX、データ、テクノロジー、コマース、スポーツ&エンターテインメント、BX、DXなどに分けて考えると分かりやすいです。
日本事業では、電通、電通デジタル、電通総研、電通プロモーションプラス、電通ライブなどが連携し、広告主のマーケティング活動を支援します。テレビCMや新聞広告だけでなく、インターネット広告、SNS、動画広告、データ分析、顧客体験設計、EC支援、業務変革、システム開発、イベント、PR、スポーツビジネスまで扱います。日本では大企業との長期的な関係が強く、広告主のブランド戦略やキャンペーン設計に深く入り込んでいます。
海外事業では、dentsuブランドのもと、メディア、クリエイティブ、CXMなどを展開しています。海外の広告市場では、メディア運用、データ、CRM、顧客体験、マーケティングテクノロジーが重要です。ただし、海外事業は地域ごとに市場環境が違います。米州は広告主の投資抑制や競争激化、EMEAは欧州経済の低迷、APACはオーストラリアや中国などの影響を受けやすい構造です。
電通グループが現在重視しているのが、インテグレーテッド・グロース・ソリューションです。これは、広告制作だけでなく、企業の成長に必要なマーケティング、メディア、クリエイティブ、顧客体験、データ、テクノロジーを統合して提供する考え方です。広告主が求めるのは「広告を作ること」ではなく、「顧客を増やし、売上を伸ばし、ブランド価値を高めること」だからです。
また、スポーツ&エンターテインメントも重要な領域です。電通は長年、スポーツイベント、放映権、スポンサーシップ、コンテンツビジネスに関わってきました。企業が単なる広告ではなく、スポーツやエンタメを通じてファンとつながる時代になっているため、この領域は電通らしい強みが出やすい分野です。
収益構造
電通グループの収益構造を理解するには、売上高ではなく、収益、売上総利益、調整後営業利益、オペレーティング・マージンを見る必要があります。広告会社は、広告主から受け取る金額の中にメディア費や外注費が含まれるため、単純な売上高よりも、実質的に自社が得る売上総利益が重要です。
電通グループの収益は、広告主からのフィー、メディア取扱いに関する収益、制作・運用・コンサルティング・データ活用・システム開発・イベントなどのサービス収益で成り立っています。昔の広告代理店は、メディア枠を買い付けて販売する取引が中心でした。しかし現在は、プロジェクト型の制作収益、運用型広告の手数料、データ分析、CRM、マーケティングシステム、コンサルティング、事業変革支援の収益が増えています。
2025年12月期の売上総利益は1兆1,975億円、調整後営業利益は1,725億円、オペレーティング・マージンは14.4%でした。調整後営業利益は恒常的な事業の収益力を見る指標です。一方で、のれん減損、構造改革費用、買収関連費用などを含めた営業損益では2,892億円の営業損失となりました。ここが、電通グループを見るうえで非常に重要です。日々の広告・マーケティング事業は利益を出していても、過去の海外M&Aに関するのれん減損が最終損益を大きく押し下げています。
地域別では、日本事業が強い利益源です。2025年12月期の日本事業は、売上総利益4,955億円、調整後営業利益1,211億円、オペレーティング・マージン24.4%でした。日本は高い収益性を維持しています。一方、Americasは売上総利益3,157億円、調整後営業利益723億円、EMEAは売上総利益2,719億円、調整後営業利益338億円、APACは売上総利益1,072億円、調整後営業利益27億円でした。海外事業は、地域によって収益性の差が大きく、特にAPACやEMEAの改善が課題です。
2026年12月期の会社予想では、収益1兆4,915億円、売上総利益1兆2,302億円、調整後営業利益1,663億円、営業利益1,526億円、親会社所有者帰属当期利益697億円が見込まれています。減損の影響が一巡すれば法定利益は黒字化する見通しですが、調整後営業利益は減益予想です。つまり、構造改革後の実力回復はこれから確認する段階です。
事業内容の特徴
電通グループの事業内容の特徴は、広告主の経営課題とメディア・生活者接点をつなげることです。
広告会社は、単にテレビCMを作る会社ではありません。商品をどの市場で売るか、どんな顧客に届けるか、どの媒体を使うか、どんなメッセージにするか、どのタイミングで露出するか、広告後の購買データをどう分析するかまで設計します。電通は、日本の広告市場で長年、大企業のマーケティング活動に深く関わってきました。
もう一つの特徴は、メディアとの関係です。テレビ局、新聞社、雑誌社、ラジオ局、デジタルプラットフォーム、動画配信、SNS、屋外広告、イベント会場など、広告を届ける場所を横断して扱います。広告主が個別にすべての媒体と交渉するのは大変です。電通は媒体ごとの特性を理解し、最適な組み合わせを提案する役割を持ちます。
さらに、クリエイティブの力も重要です。広告は、データだけでは動きません。人の感情を動かす 、映像、デザイン、ストーリー、体験が必要です。電通は、長年の広告制作で蓄積したクリエイティブ人材と、企業のブランドを作る力を持っています。AI時代でも、企画の発想、生活者理解、文化的文脈を読む力は重要です。
一方で、現在の広告会社にはテクノロジーも必要です。運用型広告、データ分析、マーケティングオートメーション、顧客ID、EC、CRM、AI生成、効果測定、アプリ連携など、広告とITの境界は薄れています。電通グループは、電通デジタルや電通総研などを通じて、マーケティングとテクノロジーをつなごうとしています。
つまり、電通グループの事業は、広告、データ、クリエイティブ、IT、メディア、人間理解を組み合わせる事業です。この組み合わせが強みであり、同時に、コンサル会社やテック企業と競争する難しさでもあります。
競合他社との違い
電通グループの競合は、国内広告会社、デジタル広告企業、コンサルティング会社、IT企業、海外広告大手に分かれます。
国内では、博報堂DYホールディングスが最大の比較対象です。電通は、テレビ局や大手広告主との関係、スポーツ・イベント、グローバル展開、デジタル・BX・DXの広がりで強みがあります。一方、博報堂DYは生活者発想やクリエイティブ、マーケティング戦略に強い会社として知られます。どちらも日本の広告市場で大きな存在ですが、電通グループはグローバルM&Aによって海外展開を大きく進めた分、海外事業の収益性が企業価値に与える影響も大きくなっています。
サイバーエージェントとの違いは、デジタル広告とメディア運営です。サイバーエージェントはインターネット広告、ABEMA、ゲーム、AI広告技術に強い会社です。電通グループもデジタル広告を扱いますが、テレビ、新聞、イベント、スポーツ、店頭、CRM、企業変革まで含む総合性が特徴です。デジタル広告だけならサイバーエージェントが強い領域もありますが、大企業の統合マーケティングでは電通の顧客基盤が活きます。
海外では、WPP、Publicis、Omnicom、IPGが競合です。これらの広告グループは、世界中でメディア、クリエイティブ、データ、CXを展開しています。電通はAegis買収によって海外売上を拡大しましたが、近年は欧米で競争力と収益性の低下が課題になっています。海外広告大手と比べたとき、電通は日本での圧倒的な強さを持つ一方、グローバル統合力の再構築が必要です。
さらに、AccentureやDeloitteのようなコンサルティング会社も競合です。これらの会社は、企業のDX、顧客体験、データ基盤、業務変革、システム導入に強く、マーケティング領域へも入り込んでいます。電通が広告制作だけにとどまれば、企業のマーケティング変革予算をコンサルに取られます。だからこそ、電通グループはBX、DX、CXM、データ、AIを強化しています。
ALSOKやセコムのような警備会社とは直接の広告競合ではありませんが、サービス業として比較すると違いが分かります。ALSOKやセコムは、警備・防災・見守りという現場サービスで安定収益を作ります。電通グループは、人の注意、購買行動、ブランド体験という無形の価値を設計して収益を作ります。同じサービス業でも、収益の源泉は大きく違います。
事業の現代での潮流
電通グループを取り巻く潮流は、広告のデジタル化、生成AI、広告効果測定の高度化、テレビ広告の変化、コンサルとの競争、スポーツ・エンタメの価値上昇です。
広告のデジタル化は、最も大きな変化です。企業は、テレビCMを大量投下するだけでなく、検索広告、SNS広告、動画広告、インフルエンサー施策、EC広告、アプリ広告を組み合わせます。広告効果も、認知だけでなく、クリック、購入、会員登録、来店、継続率まで測定されます。電通は、マスメディアの強さとデジタル運用をどう統合するかが問われます。
生成AIは、広告業界に大きな影響を与えます。 、画像、動画、分析、レポート、ターゲティング、クリエイティブ案の作成は、AIによって効率化されます。これは人件費削減や制作スピード向上につながる一方、従来の制作業務の単価下落リスクもあります。電通にとって重要なのは、AIを使って単純作業を効率化しつつ、人間の企画力や顧客理解をより高い付加価値へ変えることです。
テレビ広告も変化しています。テレビの影響力は依然として大きいものの、若年層の視聴時間は減り、動画配信やSNSが増えています。広告主は、テレビCM、TVer、YouTube、SNS、屋外広告、店頭、ECを横断して考える必要があります。ここで、電通のメディア横断設計力が問われます。
スポーツ・エンターテインメントも重要です。企業は、単に広告枠を買うだけでなく、スポーツ大会、チーム、アスリート、音楽、アニメ、映画、ゲーム、IPと組み合わせてファンとつながろうとしています。電通はスポーツイベントやコンテンツビジネスに長く関わってきたため、この領域は今後も強みを出しやすい分野です。
強み
電通グループの第一の強みは、日本市場での圧倒的な顧客基盤です。大手企業、官公庁、メディア、スポーツ団体、イベント運営、放送局、新聞社、デジタルプラットフォームとの関係が長く、広告主の重要なキャンペーンを任されることが多い会社です。
第二の強みは、マスメディアとデジタルを統合できることです。テレビCM、新聞広告、屋外広告、イベント、デジタル広告、SNS、EC、CRMを横断して設計できる企業は限られます。広告主から見れば、複数媒体を一括で設計・運用できることは大きな価値です。
第三の強みは、クリエイティブと企画力です。広告は、データだけでは成立しません。社会の空気を読み、企業の価値を言葉や映像に変え、人の行動を動かす企画が必要です。電通は長年、日本の広告文化を作ってきた会社であり、ブランドやキャンペーンの設計力があります。
第四の強みは、デジタル・BX・DXへの展開です。電通デジタルや電通総研などを通じて、広告だけでなく、顧客体験、データ活用、システム開発、業務変革にも関われます。広告主が求めるものが広告出稿から事業成長へ変わる中で、この領域は重要です。
第五の強みは、グローバルネットワークです。海外事業には課題がありますが、世界各地に拠点と人材を持つこと自体は大きな資産です。グローバル企業のキャンペーンやメディア運用を支援するには、各国市場の知見が必要です。海外事業を再構築できれば、国内依存を下げる成長基盤になります。
弱み・リスク
電通グループの第一のリスクは、海外事業の収益性です。2025年12月期にはAmericasとEMEAで大きなのれん減損を計上しました。これは、過去のM&Aで取得した海外事業の将来収益見通しが下がったことを意味します。海外市場で競争力を取り戻せなければ、成長ストーリーは弱くなります。
第二のリスクは、人件費と固定費です。広告・マーケティング会社は人材が最大の資産ですが、人件費が大きな費用でもあります。売上総利益が伸びない中で人件費や内部投資が増えると、オペレーティング・マージンは低下します。AI活用と組織再編で生産性を上げられるかが重要です。
第三のリスクは、広告市場の景気敏感性です。景気が悪くなると、企業は広告宣伝費を削りやすくなります。特に海外市場では、クライアントの広告費抑制が業績に影響しています。広告会社は、消費財、自動車、金融、テクノロジー、通信など顧客業界の投資姿勢に左右されます。
第四のリスクは、テック企業とコンサル企業の侵食です。Google、Meta、Amazonは広告配信プラットフォームそのものを持ちます。AccentureやDeloitteは、企業のDXや顧客体験設計に強く、マーケティング予算を取りに来ます。電通が広告制作だけにとどまると、より上流の戦略やデータ基盤を他社に奪われる可能性があります。
第五のリスクは、配当です。2025年度と2026年度の配当は無配となりました。調整後利益が黒字でも、持株会社単体の分配可能額などの制約により配当できない状況です。広告会社としての事業収益だけでなく、財務・資本政策の立て直しも投資家にとって重要です。
数字で見る電通グループ
電通グループを見るときは、収益、売上総利益、調整後営業利益、オペレーティング・マージン、営業損益、調整後当期利益、営業キャッシュフロー、地域別のオーガニック成長率、配当を確認する必要があります。
2025年12月期の収益は1兆4,352億円、売上総利益は1兆1,975億円でした。調整後営業利益は1,725億円、オペレーティング・マージンは14.4%です。親会社所有者帰属調整後当期利益は935億円であり、恒常的な収益力としては黒字です。一方、減損損失4,025億円や構造改革費用などが響き、営業損失は2,892億円、親会社所有者帰属当期損失は3,276億円となりました。
地域別では、日本事業の売上総利益が4,955億円、調整後営業利益が1,211億円、オペレーティング・マージンが24.4%でした。日本は高収益です。Americasは売上総利益3,157億円、調整後営業利益723億円、オペレーティング・マージン22.9%です。EMEAは売上総利益2,719億円、調整後営業利益338億円、オペレーティング・マージン12.4%です。APACは売上総利益1,072億円、調整後営業利益27億円、オペレーティング・マージン2.5%でした。
2026年度第1四半期では、収益3,571億円、売上総利益2,950億円、営業利益649億円、親会社所有者帰属当期利益401億円、調整後営業利益378億円でした。オーガニック成長率は全体でプラス0.8%、日本はプラス4.7%、Americasはマイナス3.0%、EMEAはプラス0.8%、APACはマイナス7.5%でした。短期的には改善の兆しがありますが、海外の地域差はまだ大きい状態です。
2026年12月期の会社予想では、収益1兆4,915億円、売上総利益1兆2,302億円、調整後営業利益1,663億円、営業利益1,526億円、親会社所有者帰属当期利益697億円が見込まれています。2025年の大きな減損が一巡すれば黒字化が見込まれますが、調整後営業利益は減益予想です。投資家は、法定黒字化だけでなく、調整後営業利益とオーガニック成長率の回復を見る必要があります。
今後の注目ポイント
今後の第一の注目ポイントは、海外事業の再建です。Americas、EMEA、APACで収益性と競争優位を回復できるかが、電通グループの最大の課題です。減損を計上しただけでは問題は解決しません。人員、拠点、サービス、ブランド、顧客基盤を再構築し、利益率を戻せるかを見る必要があります。
第二の注目ポイントは、日本事業の強さを維持できるかです。日本事業は、インターネット広告、マーケティング、BX、DXが伸びています。大企業との長期関係を活かし、広告から顧客体験・事業変革へ広げられるかが重要です。日本の高収益性が維持できなければ、海外再建の時間を稼ぐことも難しくなります。
第三の注目ポイントは、AI活用です。AIは広告制作やメディア運用を効率化する一方、広告会社の従来業務をコモディティ化する可能性もあります。電通がAIを使って制作コストを下げるだけでなく、顧客の成長戦略やマーケティング設計に高い付加価値を出せるかが焦点です。
第四の注目ポイントは、スポーツ&エンターテインメントです。スポーツ、音楽、アニメ、映画、ゲーム、IPは、企業がファンと深くつながるための重要な領域です。電通はこの分野で長い経験があります。広告費が単なるメディア枠からファン体験へ移る中で、同社の強みを出しやすい分野です。
第五の注目ポイントは、復配と資本政策です。2025年度と2026年度の無配は、投資家にとって大きなマイナスです。事業の黒字化だけでなく、持株会社の分配可能額、キャッシュフロー、財務体質を改善し、将来的に安定的な株主還元へ戻せるかが重要です。
投資対象として
電通グループを投資対象として見る場合、同社は「国内に強い広告・マーケティング企業」であると同時に、「海外M&Aの後処理と成長回帰が問われる再建型企業」と整理できます。
ポジティブに見るなら、日本事業は依然として強い収益力を持っています。広告、メディア、デジタル、BX、DXを組み合わせ、大手企業のマーケティング課題に深く入り込めます。調整後営業利益は黒字であり、事業そのものが消えているわけではありません。2026年には法定利益の黒字化も見込まれています。
また、AI時代には、広告主が顧客データ、生成AI、マーケティングオートメーション、EC、CRMをどう使うかに悩みます。電通がクリエイティブ、生活者理解、メディア、データ、テクノロジーを統合できれば、広告会社から企業成長支援会社へ進化する余地があります。
一方で、慎重に見るべき点も多いです。2025年12月期には大幅赤字となり、自己資本も大きく減少しました。海外事業ののれん減損は、過去のM&A戦略が期待通りではなかったことを示します。さらに2025年度と2026年度は無配です。投資家にとって、これは単なる一時的な業績悪化ではなく、資本政策上の大きな課題です。
したがって、電通グループの株価を見るときは、PERやPBRだけでなく、調整後営業利益、オペレーティング・マージン、地域別オーガニック成長率、海外事業の収益性、営業キャッシュフロー、減損の追加リスク、復配可能性を確認する必要があります。投資対象としては、安定広告株ではなく、国内の強い収益基盤を持ちながら海外再建を進める企業として見るのが自然です。
まとめ
電通グループは、1901年に日本広告株式会社と電報通信社を原点として始まり、通信と広告を併営した後、1936年に広告専業となり、日本最大級の広告会社へ成長しました。現在は、広告代理店から、データ、クリエイティブ、メディア、CX、BX、DX、スポーツ&エンターテインメントを扱う統合マーケティング企業へ転換しようとしています。
電通グループ 強みは、日本市場での圧倒的な顧客基盤、メディア横断の設計力、クリエイティブ、スポーツ・イベント、デジタル・DXへの展開、グローバルネットワークにあります。特に日本事業は高い収益性を維持しており、同社の重要な支柱です。
一方で、課題も明確です。海外事業では収益性が低下し、のれん減損により2025年12月期は大幅な最終赤字となりました。AI、コンサル、テック企業との競争も激しく、広告代理店の従来モデルだけでは成長しにくくなっています。さらに無配となっているため、投資家にとっては復配までの道筋も重要です。
就活生にとって、電通グループは広告制作だけでなく、データ、AI、マーケティング、事業変革、スポーツ、エンタメ、システム、海外ビジネスに関われる会社です。個人投資家にとっては、国内の強さと海外再建の進捗、調整後利益と法定利益の差、キャッシュフローと株主還元を慎重に見るべき企業です。
電通グループは、広告枠を売る会社から、企業の成長を設計する会社へ変わろうとしています。その転換が本物かどうか。海外事業を立て直し、AI時代の統合マーケティング企業として再び成長軌道に乗れるかどうか。それが、電通グループ 企業研究の最大のポイントになります。