江崎グリコを一言でいうと
江崎グリコは、ポッキー、プリッツ、ビスコ、ジャイアントコーン、アイスの実、パピコ、プッチンプリン、カフェオーレ、BifiXヨーグルト、アーモンド効果、幼児用ミルク、食品原料まで展開する食品・飲料企業です。一般には「ポッキーの会社」「グリコのランナーの会社」という印象が強いですが、企業研究として見るなら、菓子、アイス、乳業、健康食品、食品原料、海外菓子を組み合わせる会社として理解する必要があります。
江崎グリコの特徴は、菓子メーカーでありながら、創業時から「おいしさ」と「栄養・健康」を結びつけてきたことです。社名の由来となった栄養菓子グリコは、カキの煮汁に含まれるグリコーゲンに着目した商品でした。ビスコ、アーモンド効果、BifiXヨーグルト、SUNAO、LIBERA、GABAのように、同社の商品には「楽しいお菓子」だけでなく、「健康価値を持つ食品」という文脈があります。
一方で、江崎グリコは安定した菓子ブランド企業というだけではありません。2024年には基幹システム障害により、プッチンプリンやカフェオーレなどのチルド商品で大きな出荷停止が起きました。2025年12月期は、その影響を受けた乳業事業や国内その他事業の売上が回復した一方、利益面では収益性の高いアイスの不振や原価上昇が重荷となりました。2025年12月期の売上高は3,613億円、営業利益は87億円で、売上は増えましたが営業利益は減少しています。
つまり、江崎グリコ 企業研究で重要なのは、ポッキーやビスコのような強いブランドだけを見ることではありません。国内では乳業・アイス・菓子の収益性をどう立て直すか、海外では中国・米国・ASEANでポッキーなどをどう伸ばすか、さらに健康価値を伴う商品をどこまで利益に変えられるかを見る必要があります。
なぜ今江崎グリコを見るのか
今、江崎グリコを見る理由は、同社が基幹システム障害後の回復局面と、中期経営計画による再成長局面の入り口にあるからです。
2024年の基幹システム障害は、江崎グリコの事業構造を考えるうえで非常に大きな出来事でした。乳業やチルド食品は、賞味期限が短く、温度管理が必要で、受注・在庫・出荷・配送の精度が求められます。システム障害によって一部商品の出荷が長期停止したことは、食品メーカーにとって商品力だけでなく、供給体制、物流、情報システム、リスク管理がどれほど重要かを示しました。
2025年12月期は、その出荷停止からの回復が売上に表れました。前年にチルド商品の出荷停止の影響を大きく受けた乳業事業、国内その他事業、海外事業などが伸び、全体の売上高は3,613億円となりました。一方で、営業利益は87億円にとどまり、営業利益率は2.4%でした。食品企業として見ると、まだ収益性は高くありません。ブランド力はあるが、利益率を上げる余地が大きい会社です。
中期経営計画では、2025年から2027年を「加速フェーズ」と位置づけ、売上高を年率5〜10%、営業利益を年率10〜15%成長させ、2027年度にROE6〜8%を目指しています。さらに2028年から2030年には、ROEをさらに向上させる構想です。現状のROEはまだ低く、資本市場から見ると、ブランド価値を利益と資本効率に変えられるかが問われています。
また、海外事業の存在感が高まっています。2025年12月期の海外事業は売上高907億円、営業利益82億円でした。2026年第1四半期でも海外事業は売上高264億円、営業利益48億円と大きく伸びています。国内では人口減少と市場成熟がありますが、ポッキーを中心とする海外菓子事業には成長余地があります。中国、米国、ASEANで、ポッキーをどこまで日常的なお菓子として定着させられるかが重要です。
就活生にとっては、江崎グリコは商品開発やマーケティングだけでなく、生産、品質保証、物流、情報システム、海外事業、健康価値研究に関われる会社です。個人投資家にとっては、ブランドの知名度だけでなく、国内事業の利益率、海外成長、システム・サプライチェーン再構築、ROE改善を見るべき企業です。
成り立ち
江崎グリコの歴史は、1919年に創業者の江崎利一がカキの煮汁に含まれるグリコーゲンに着目したことから始まります。現在ではお菓子の会社という印象が強いですが、原点には栄養と健康への関心がありました。1921年には栄養菓子グリコを創製し、1922年に大阪の三越で販売を始めました。両手を上げてゴールインするランナーのマークも、創業期から続く象徴です。
グリコが特徴的だったのは、菓子を単なる甘いものとしてではなく、栄養価や楽しさを持つ商品として売り出したことです。1927年には豆玩具を封入し、子どもにとって「食べる」と「遊ぶ」を結びつけました。これは現代の商品開発にも通じます。菓子は味だけでなく、体験や記憶を作る商品です。
1933年にはビスコを発売しました。ビスコは、現在も長く続く栄養菓子ブランドです。戦後には工場を再建し、1950年代以降、アーモンドグリコ、アーモンドチョコレート、ワンタッチカレー、プリッツ、ジャイアントコーン、ポッキー、プッチンプリン、カフェオーレ、セブンティーンアイス、アイスの実、LEE、熟カレー、BifiXヨーグルト、アーモンド効果など、幅広い商品を生み出してきました。
1966年に発売されたポッキーチョコレートは、江崎グリコを代表する商品です。棒状のプレッツェルにチョコレートをかけ、手で持つ部分にはチョコを塗らないという発想は、食べやすさと楽しさを両立した商品設計でした。ポッキーは国内だけでなく、タイ、フランス、中国、ASEANなど海外にも広がり、現在ではグローバルブランドとして展開されています。
江崎グリコの歴史を振り返ると、同社は常に「新しい食べ方」を作ってきた会社です。グリコのおもちゃ、ポッキーの持ち手、プッチンプリンの楽しさ、セブンティーンアイスの自販機、アーモンド効果の飲むアーモンド、SUNAOの糖質・カロリー配慮。単なる食品製造ではなく、食べる場面や体験を設計してきたことが、同社らしさです。
事業内容
江崎グリコの事業は、健康・食品事業、乳業事業、栄養菓子事業、食品原料事業、国内その他事業、海外事業に分けて見ると分かりやすいです。
健康・食品事業では、アーモンド効果、SUNAO、GABA、LIBERA、パピコなど、健康価値や機能性を意識した商品が中心になります。特にアーモンド効果は、飲むアーモンドという新しいカテゴリーを開いた商品です。植物性ミルク、ビタミンE、食物繊維、健康志向という文脈に乗りやすく、江崎グリコが今後重視する健康価値の象徴的商品です。
乳業事業では、プッチンプリン、カフェオーレ、BifiXヨーグルト、牧場しぼり、幼児用ミルクのアイクレオなどを扱います。乳業は、チルド物流、冷蔵管理、賞味期限、日配チャネルが重要な事業です。2024年のシステム障害では、この乳業事業が大きな影響を受けました。商品力だけでなく、正確な受注・出荷・配送体制が利益を左右します。
栄養菓子事業は、ポッキー、プリッツ、ビスコ、カプリコ、神戸ローストショコラなどを含みます。江崎グリコのブランドイメージを最も強く支える事業です。菓子は、スーパー、コンビニ、ドラッグストア、駅売店、EC、海外小売で販売されます。原材料では小麦、砂糖、カカオ、乳原料、油脂、包装材の価格が重要です。
食品原料事業では、小麦たん白、でん粉、ファインケミカルなどを扱います。一般消費者からは見えにくい領域ですが、食品メーカーや産業用途向けに原料を供給する事業です。2025年12月期も食品原料事業は営業利益22億円と、売上規模の割に利益貢献がありました。
国内その他事業には、卸売販売子会社などが含まれます。食品メーカーは、自社商品を作るだけでなく、販売網や物流、流通との関係も重要です。この領域は、売上規模は大きい一方、利益率は高くなりにくい傾向があります。
海外事業では、中国、米国、ASEAN、欧州などでポッキーを中心に菓子やアイスなどを展開しています。海外事業は、江崎グリコの成長ドライバーです。ポッキーは国によって名前や販売方法、味、チャネルが異なります。単に日本の商品を輸出するのではなく、現地の嗜好や価格帯に合わせた展開が必要です。
収益構造
江崎グリコの収益構造は、国内の複数事業と海外事業の組み合わせで成り立っています。ただし、2025年12月期の数字を見ると、利益の中心は海外事業と栄養菓子事業に偏っており、健康・食品や乳業はまだ赤字です。
2025年12月期の売上高は3,613億円、営業利益は87億円でした。セグメント別では、健康・食品事業の売上高は478億円、営業損失は15億円。乳業事業の売上高は664億円、営業損失は47億円。栄養菓子事業の売上高は659億円、営業利益は43億円。食品原料事業の売上高は131億円、営業利益は22億円。国内その他事業の売上高は772億円、営業利益は6億円。海外事業の売上高は907億円、営業利益は82億円でした。
ここから分かるのは、江崎グリコが「国内ブランドが全部安定して稼いでいる会社」ではないということです。むしろ、国内の乳業・健康食品系では利益率改善が課題で、海外が大きな利益源になっています。栄養菓子事業はポッキーやプリッツなどのブランド力で利益を出していますが、原価上昇や広告販促費の影響を受けます。
乳業事業は、売上規模が大きい一方で赤字です。2024年のチルド出荷停止影響からは売上が戻りましたが、チルド物流、原材料、製造コスト、販売費の負担が重い事業です。プッチンプリンやカフェオーレ、BifiXヨーグルトのような認知度の高い商品を持っていても、収益性が低ければ企業価値には直結しません。中期計画で乳業事業の利益水準早期改善を掲げている理由はここにあります。
海外事業は、2025年12月期の営業利益が82億円で、全体の利益を支える存在です。2026年第1四半期でも、海外事業は売上高264億円、営業利益48億円と大きく伸びました。中国や米国の増収が貢献しています。国内市場の成長が限られる中、海外ポッキーや現地商品展開がどこまで伸びるかが、江崎グリコの利益成長に直結します。
2026年12月期の会社計画では、売上高3,800億円、営業利益140億円、親会社株主に帰属する当期純利益100億円を見込んでいます。2025年の営業利益87億円から大きく改善する計画ですが、原材料高、販促費、人件費、国内乳業の改善、海外成長が計画通り進むかを見る必要があります。
事業内容の特徴
江崎グリコの事業内容の特徴は、「おいしさ」と「健康価値」と「食べる楽しさ」を組み合わせることです。
菓子会社は、味だけで勝負しているように見えます。しかし、江崎グリコの商品は、食べ方や体験に特徴があります。ポッキーは手で持つ部分を残した棒状チョコレート菓子で、分け合いやすく、音や形にも楽しさがあります。プリッツは軽いスナックとして食べやすく、ビスコは子どもから大人まで食べられる栄養菓子です。プッチンプリンは、容器から出す体験そのものが商品価値になっています。
アイスでも、ジャイアントコーン、アイスの実、パピコ、セブンティーンアイスは、それぞれ異なる食べ方を提案しています。ジャイアントコーンはコーンとチョコとアイスの組み合わせ、アイスの実は一口サイズのシャーベット、パピコは分け合えるチューブ型、セブンティーンアイスは自販機で買うアイスです。これは、食品を「味」だけでなく「場面」で設計してきた会社だということです。
もう一つの特徴は、健康価値への広がりです。アーモンド効果、BifiXヨーグルト、GABA、LIBERA、SUNAO、アイクレオは、単なる菓子や乳製品ではなく、栄養、腸内環境、ストレス、糖質、乳幼児栄養といった文脈を持ちます。中期計画では、発育・栄養の最適化、成長の支援、運動能力の強化、脳機能の向上、ヘルシーエイジングという5つの注力領域を掲げています。菓子メーカーから、健康価値を持つ食品企業へ変わろうとしていることが分かります。
ただし、この方向は簡単ではありません。健康価値を訴求する商品は研究開発費が必要で、規制や表示ルールにも配慮が必要です。消費者にとって分かりやすく、継続して買いやすい商品にしなければ、単なる高付加価値品で終わってしまいます。江崎グリコの課題は、健康価値をブランドイメージだけでなく、利益率の高い事業へ変えることです。
競合他社との違い
江崎グリコの競合は、国内菓子では明治、ロッテ、森永製菓、不二家、ブルボン、カルビー、湖池屋などです。乳業では明治、森永乳業、雪印メグミルク、オハヨー乳業などが競合になります。食品・飲料全体では、伊藤園、カゴメ、キッコーマン、サッポロホールディングスなどとも比較できます。
明治との違いは、乳業と菓子の規模です。明治はチョコレート、ヨーグルト、牛乳、粉ミルク、プロテインなどで非常に強く、乳業と菓子の両面で大きな事業基盤を持っています。江崎グリコも菓子と乳業を持ちますが、2025年12月期の乳業事業は赤字です。明治に比べると、乳業の収益力では課題がある一方、ポッキーのようなグローバル菓子ブランドやアーモンド効果のような健康価値商品に特徴があります。
ロッテとの違いは、チョコ・ガム・アイスのブランド構成です。ロッテはガーナ、コアラのマーチ、キシリトール、爽、雪見だいふくなどを持ちます。江崎グリコは、ポッキー、プリッツ、ビスコ、ジャイアントコーン、パピコ、アイスの実、セブンティーンアイスなど、食べ方の提案が強いブランドが多い会社です。菓子の楽しさや体験設計に強みがあります。
カゴメや伊藤園との比較では、健康価値の作り方が違います。カゴメはトマトと野菜、伊藤園はお茶と無糖飲料を軸に健康価値を作ります。江崎グリコは、菓子、乳業、アーモンド、ヨーグルト、乳幼児栄養、機能性チョコレートを通じて健康価値を作ります。野菜やお茶のような明確な自然素材ではなく、楽しい食品に健康要素を組み込む点が同社らしさです。
キッコーマンとの違いは、海外展開の成熟度です。キッコーマンはしょうゆを世界の調味料にし、高収益な海外事業を確立しています。江崎グリコはポッキーを世界ブランドに育ててきましたが、海外収益はまだ伸ばしている途中です。ポッキーが海外でどこまで日常菓子として定着するかが、キッコーマン型のグローバル食品企業へ近づけるかどうかを左右します。
事業の現代での潮流
江崎グリコを取り巻く潮流は、健康志向、少子化、菓子市場の成熟、原材料高、海外菓子市場の成長、DX・サプライチェーン再構築です。
健康志向は、同社にとって追い風にも逆風にもなります。砂糖やカロリーを控えたい人が増えると、従来型の菓子には逆風です。一方で、SUNAO、LIBERA、GABA、アーモンド効果、BifiXヨーグルトのような商品には追い風になります。楽しい菓子を売るだけでなく、健康と両立する商品設計が求められます。
少子化も重要です。グリコやビスコ、プッチンプリンのような商品は子ども向けのイメージがありますが、日本の子どもの数は減っています。だからこそ、大人向け、シニア向け、健康志向、海外市場、オフィス需要、運動・栄養需要へ広げる必要があります。菓子を子どもだけのものにしないことが重要です。
原材料高は大きなリスクです。カカオ、小麦、砂糖、乳原料、アーモンド、油脂、包装材、エネルギー、物流費、人件費が上がると、利益率を圧迫します。特にチョコレート菓子ではカカオ価格、乳業では乳原料や物流、アイスでは冷凍物流やエネルギー費が重要です。価格改定ができても、消費者が買い控えれば数量が落ちます。
海外菓子市場は成長余地があります。ポッキーは、日本だけでなく、タイ、中国、フランス、インドネシア、米国などで展開されています。アジアでは日本ブランドへの親近感があり、欧米ではポッキーがユニークなスナックとして受け入れられる余地があります。ただし、海外では現地菓子メーカー、チョコレート大手、価格競争、流通コスト、為替が壁になります。
DXとサプライチェーン再構築は、同社にとって特に重要です。2024年の基幹システム障害は、食品メーカーの基幹システムが事業継続に直結することを示しました。今後は、受注、在庫、生産、物流、財務、品質管理をつなぐシステムの信頼性が、収益性とブランド信頼に直結します。
強み
江崎グリコの第一の強みは、長く愛されるブランドの多さです。ポッキー、プリッツ、ビスコ、ジャイアントコーン、アイスの実、パピコ、プッチンプリン、カフェオーレ、BifiXヨーグルト、アーモンド効果など、消費者が名前を知っている商品が多い会社です。食品企業にとって、定番ブランドの数は大きな資産です。
第二の強みは、食べ方や体験を作る商品開発力です。ポッキーの持ち手、プッチンプリンの楽しさ、セブンティーンアイスの自販機、パピコの分け合い、アイスの実の一口サイズなど、商品そのものに体験が組み込まれています。これは単なる味の競争ではなく、生活者の行動を変える力です。
第三の強みは、海外ポッキーです。ポッキーは世界で展開できる分かりやすい菓子ブランドです。形が特徴的で、持ち運びやすく、味の展開もしやすい。国ごとの味覚に合わせた展開もしやすいため、海外事業の中心ブランドになり得ます。
第四の強みは、健康価値への展開です。創業のグリコーゲンから、ビスコ、アーモンド効果、BifiX、GABA、LIBERA、SUNAO、アイクレオまで、江崎グリコには「おいしさと健康」をつなぐ商品群があります。中期経営計画でも健康価値の提供を前面に出しており、単なる菓子会社からの脱皮を狙っています。
第五の強みは、財務の安定性です。2025年12月期末の自己資本比率は70.5%で、2026年第1四半期末も72.0%でした。財務基盤は比較的強く、成長投資や株主還元を進める余地があります。ただし、財務が強いだけでは評価されません。ブランドと資産を利益成長へ変えることが必要です。
弱み・リスク
江崎グリコの第一のリスクは、国内事業の低収益性です。2025年12月期の営業利益率は2.4%にとどまりました。健康・食品事業と乳業事業は赤字であり、国内ブランドの認知度に比べて利益が十分に出ていません。原材料高や販促費の影響を受けやすい構造です。
第二のリスクは、乳業・チルド物流の難しさです。プッチンプリン、カフェオーレ、ヨーグルト、乳飲料は、冷蔵管理と短い賞味期限が必要です。2024年の基幹システム障害のように、受注・在庫・出荷が止まると、売上だけでなく取引先や消費者の信頼にも影響します。食品メーカーにとって供給責任は非常に重い課題です。
第三のリスクは、原材料価格です。菓子やアイスは、カカオ、砂糖、小麦、乳原料、油脂、ナッツ、包装材に左右されます。健康価値商品ではアーモンドなどの素材価格も重要です。原材料高を価格に転嫁できなければ、利益率は下がります。
第四のリスクは、少子化と国内市場成熟です。子ども向け・ファミリー向けの商品が多い会社であるため、国内の子ども人口減少は長期的な逆風です。大人向け、健康志向、海外、オフィス、スポーツ、シニア向けへ広げる必要があります。
第五のリスクは、海外展開の競争です。ポッキーは強いブランドですが、海外には巨大な菓子メーカーが多く、流通棚を取るには広告費、販促費、価格競争への対応が必要です。現地で人気が出ても、為替や物流、原材料、現地規制の影響を受けます。
数字で見る江崎グリコ
江崎グリコを見るときは、売上高、営業利益、営業利益率、セグメント別利益、海外事業の伸び、乳業事業の改善、営業キャッシュフロー、ROEを確認する必要があります。
2025年12月期の売上高は3,613億円、営業利益は87億円、経常利益は116億円、親会社株主に帰属する当期純利益は50億円でした。売上高は前年から9.1%増えましたが、営業利益は21.0%減少しました。営業利益率は2.4%です。営業活動によるキャッシュフローは272億円、自己資本比率は70.5%でした。
セグメント別では、健康・食品事業の売上高は478億円、営業損失は15億円。乳業事業の売上高は664億円、営業損失は47億円。栄養菓子事業の売上高は659億円、営業利益は43億円。食品原料事業の売上高は131億円、営業利益は22億円。国内その他事業の売上高は772億円、営業利益は6億円。海外事業の売上高は907億円、営業利益は82億円でした。
この数字を見ると、海外事業の利益貢献が非常に大きいことが分かります。国内で知名度の高い商品が多い一方、利益面では海外と栄養菓子が支えています。健康・食品や乳業を黒字化・高収益化できるかが、今後のROE改善に直結します。
2026年12月期の会社計画では、売上高3,800億円、営業利益140億円、経常利益170億円、親会社株主に帰属する当期純利益100億円を見込んでいます。年間配当は95円の予想です。中期経営計画では、2025〜2027年に売上高を年率5〜10%、営業利益を年率10〜15%伸ばし、2027年度にROE6〜8%を目指しています。
2026年第1四半期では、売上高852億円、営業利益36億円、経常利益49億円、親会社株主に帰属する四半期純利益35億円でした。前年同期比で売上高は10.3%増、営業利益は40.7%増です。海外事業が大きく伸び、国内でも一部商品が回復しました。ただし、第1四半期だけで通期を判断するのではなく、国内乳業・アイス・菓子の季節性やコスト動向を見る必要があります。
今後の注目ポイント
今後の第一の注目ポイントは、乳業事業の立て直しです。プッチンプリン、カフェオーレ、BifiXヨーグルト、牧場しぼりなど、認知度の高い商品を持ちながら、2025年12月期は赤字でした。発酵乳ターゲット顧客への価値伝達、物流・生産効率化、価格改定、システム安定化によって、早期に利益を出せるかが重要です。
第二の注目ポイントは、健康・食品事業です。アーモンド効果、SUNAO、GABA、LIBERAなどは、健康志向と相性がよい商品です。しかし、2025年12月期は健康・食品事業も赤字でした。健康価値の高い商品を、単なる話題商品ではなく、継続購入される高収益ブランドにできるかが問われます。
第三の注目ポイントは、海外事業です。2026年第1四半期では、中国や米国で売上が伸び、海外事業の営業利益は48億円となりました。ポッキーを中心に、中国、米国、ASEANでどこまで伸ばせるかが、中長期成長の鍵です。特に海外では、現地生産、現地マーケティング、味のローカライズ、価格戦略が重要になります。
第四の注目ポイントは、基幹システムとサプライチェーンの再構築です。2024年の障害を教訓に、受注、生産、在庫、物流、財務を安定的に連携できる体制が必要です。食品メーカーでは、商品開発や広告だけでなく、供給体制そのものが競争力になります。
第五の注目ポイントは、資本効率です。江崎グリコは財務体質が良い一方、ROEはまだ低い水準です。中期計画ではROE6〜8%を目標に掲げ、事業別ROICの導入や収益管理を進める方針です。投資家は、売上成長だけでなく、利益率と資本効率が本当に上がるかを見る必要があります。
投資対象として
江崎グリコを投資対象として見る場合、同社は「強いブランドを多く持つ食品企業」であると同時に、「国内収益性の改善と海外成長が問われる再成長企業」と整理できます。
ポジティブに見るなら、江崎グリコには、ポッキー、プリッツ、ビスコ、ジャイアントコーン、パピコ、プッチンプリン、カフェオーレ、アーモンド効果など、消費者認知の高いブランドが多くあります。食品企業にとってブランド資産は大きく、価格改定や海外展開の土台になります。海外事業も伸びており、国内市場成熟を補う成長余地があります。
また、健康価値の方向性は時代に合っています。アーモンド効果、BifiX、SUNAO、GABA、LIBERA、アイクレオのように、栄養、腸内環境、糖質、ストレス、乳幼児栄養に関わる商品を持つことは、単なる菓子会社ではない強みです。
一方で、慎重に見るべき点もあります。2025年12月期の営業利益率は2.4%で、食品メーカーとして高い水準ではありません。乳業と健康・食品事業は赤字で、国内事業の収益性には課題があります。原材料高、物流費、人件費、販促費が続く中で、ブランド力を利益に変えられるかが重要です。
さらに、基幹システム障害の教訓は大きいです。食品メーカーは、商品が店頭に並ばなければ売上を作れません。供給体制の信頼性が戻り、取引先・消費者からの信頼を維持できるかも、投資家が見るべき点です。
したがって、江崎グリコの株価を見るときは、PERや配当利回りだけでなく、営業利益率、海外事業の利益、乳業事業の黒字化、健康・食品事業の成長、営業キャッシュフロー、ROE、システム投資の進捗を確認する必要があります。投資対象としては、ブランド資産は強いが、利益率改善と海外成長の実行力が問われる会社です。
まとめ
江崎グリコは、江崎利一がカキの煮汁に含まれるグリコーゲンに着目したことを原点に、栄養菓子グリコ、ビスコ、ポッキー、プリッツ、ジャイアントコーン、プッチンプリン、カフェオーレ、アーモンド効果、BifiXヨーグルトなどを生み出してきた食品企業です。
江崎グリコ 強みは、長く愛されるブランド、食べ方や体験を作る商品開発力、ポッキーの海外展開、健康価値への広がり、比較的安定した財務基盤にあります。特にポッキーは、国内だけでなく海外でも展開できる分かりやすい菓子ブランドです。
一方で、課題も明確です。2025年12月期は売上高3,613億円、営業利益87億円で、売上は増えたものの営業利益は減少しました。乳業事業と健康・食品事業は赤字であり、国内事業の収益性改善が必要です。2024年の基幹システム障害を踏まえると、商品力だけでなく、供給体制、物流、情報システムの信頼性も重要です。
就活生にとって、江崎グリコは菓子やアイスの商品開発だけでなく、乳業、健康食品、食品原料、海外事業、品質保証、生産、物流、デジタル、研究開発に関われる会社です。個人投資家にとっては、ポッキーの知名度だけでなく、海外事業の利益、国内事業の黒字化、営業利益率、ROE改善を見ていくべき企業です。
江崎グリコは、楽しいお菓子を作る会社であると同時に、おいしさと健康を結びつける食品企業です。そのブランド資産を、国内外でどこまで利益成長に変えられるか。そこが、江崎グリコ 企業研究の最大のポイントになります。