伊藤園を一言でいうと

伊藤園は、「お〜いお茶」を中心に、日本茶、無糖茶飲料、茶葉、抹茶、野菜飲料、コーヒー、タリーズコーヒーまで展開する食品・飲料メーカーです。一般には「お〜いお茶の会社」として知られていますが、企業研究として見るなら、単なるペットボトル飲料メーカーではありません。茶葉の調達、茶産地育成、製造、飲料化、量販店・コンビニ・自動販売機への販売、海外展開までを一体で持つ、茶に特化した飲料企業として理解する必要があります。

伊藤園の最大の特徴は、無糖茶飲料という市場そのものを作った会社であることです。現在では、コンビニやスーパーでペットボトルの緑茶を買うことは当たり前です。しかし、かつてお茶は家庭や飲食店で急須に入れて飲むものであり、缶やペットボトルで買う飲料ではありませんでした。伊藤園は、ウーロン茶や緑茶を常温流通の容器入り飲料として広げ、「甘くない飲料を買って飲む」という習慣を日本に定着させました。

伊藤園 強みは、単にブランド名が有名なことではありません。「お〜いお茶」というブランド、国内茶葉へのこだわり、茶産地との関係、茶葉加工技術、無糖茶飲料の開発力、店頭・自販機・業務用の販売網、タリーズという飲食接点、そして海外で日本茶を広げる戦略が重なっている点にあります。

一方で、伊藤園は安泰な会社ではありません。国内飲料市場は成熟しており、人口減少、節約志向、原材料費・物流費・人件費の上昇、自動販売機市場の収益性低下が重荷になっています。2026年4月期は売上高が伸びた一方、営業利益は減益となり、自動販売機事業に関する減損もありました。伊藤園を分析するには、ブランド力だけでなく、国内事業の収益性改善と海外「お〜いお茶」の成長をセットで見る必要があります。

なぜ今伊藤園を見るのか

今、伊藤園を見る理由は、同社が国内無糖茶飲料の成熟と、海外日本茶市場の拡大という二つの局面を同時に迎えているからです。

国内では、茶系飲料はすでに大きな市場になっています。特に無糖飲料は、健康志向や糖質を控えたい需要と相性がよく、炭酸飲料や甘いコーヒー飲料とは違う日常飲料として定着しています。伊藤園はその中心に「お〜いお茶」を持ちます。国内緑茶飲料市場における「お〜いお茶」の販売金額シェアは非常に高く、緑茶飲料の代名詞に近い存在です。

しかし、国内市場だけに頼るのは難しくなっています。飲料市場は天候に左右されます。猛暑なら止渇需要が伸びますが、物価高で消費者が節約すれば大型ペットボトルや低価格品へ流れやすくなります。自動販売機は、オフィス出社頻度、駅・観光地の人流、補充コスト、電気代、人手不足の影響を受けます。原材料費、茶葉、ペットボトル、段ボール、物流費、人件費も上がっています。売上が増えても、利益率が下がることがあります。

その中で伊藤園が強く打ち出しているのが、「世界のティーカンパニー」という方向性です。海外では、健康志向、和食人気、抹茶ブーム、日本文化への関心を背景に、日本茶への関心が高まっています。伊藤園は北米、ASEAN、欧州などで「お〜いお茶」を展開し、2026年4月期時点で販売国・地域を52に広げました。中期経営計画では、2029年4月期に60か国以上、長期的には100か国以上を目指しています。

2026年4月期の伊藤園は、売上高4,978億円、営業利益216億円、経常利益232億円、親会社株主に帰属する当期純利益34億円でした。売上高は増えましたが、営業利益は減少し、当期純利益は自動販売機事業の減損損失によって大きく落ち込みました。つまり、表面上は売上拡大が続いている一方、国内事業の収益性改善が急務になっています。

伊藤園を見るうえで重要なのは、「お〜いお茶が有名だから強い」という単純な見方ではありません。国内では効率化と価格改定で利益率を戻し、海外では日本茶を日常飲料として定着させる。この二つが同時に進むかどうかが、今の伊藤園の最大の論点です。

成り立ち

伊藤園の原点は、1964年に創業した日本ファミリーサービスです。翌年にお茶の取り扱いを始め、1966年には前身となるフロンティア製茶を静岡県静岡市に設立しました。社名から分かるように、伊藤園は最初から大手飲料メーカーだったわけではありません。茶葉を扱う会社として始まり、スーパーや食料品店へ直接売り込むルートセールスで成長していきました。

1968年には、茶業界初のテレビCMを放映しました。このときに使われた「お〜いお茶」というフレーズが広く知られるようになります。1969年には商号を伊藤園に変更しました。現在のブランド名が会社の歴史のかなり早い段階から生まれていたことは、同社の特徴です。

1970年代には、茶葉の鮮度保持のための真空パック技術を開発し、静岡の生産体制を整えました。1976年には茶産地育成事業を開始しています。これは、単に市場から茶葉を買うのではなく、茶農家や産地と関係を築き、原料を安定的に確保するための取り組みです。後の「純国産茶葉」訴求や海外展開を考えるうえでも、重要な基盤になります。

1980年代には、伊藤園の歴史を決定づける出来事がありました。1980年に缶入りウーロン茶を発売し、1985年には世界初の緑茶飲料として缶入り煎茶を発売しました。1989年には、この缶入り煎茶の商品名を「お〜いお茶」に変更します。難しい茶の専門用語ではなく、誰でも分かる日常的な呼びかけを商品名にしたことが、ブランドの認知を大きく高めました。

その後、ペットボトルの普及とともに、「お〜いお茶」は日本の無糖茶飲料市場を代表するブランドになりました。2006年にはタリーズコーヒージャパンを子会社化し、飲料メーカーでありながらカフェ事業も持つようになります。近年は北米、ASEAN、欧州を中心に海外展開を進め、国内茶飲料メーカーからグローバルなティーカンパニーへ変わろうとしています。

事業内容

伊藤園の事業は、リーフ・ドリンク関連事業、飲食関連事業、その他に分けて見ると分かりやすくなります。

リーフ・ドリンク関連事業は、伊藤園の中核です。茶葉、緑茶飲料、むぎ茶、ほうじ茶、ウーロン茶、ジャスミン茶、野菜飲料、コーヒー飲料、ミネラルウォーター、機能性飲料などを扱います。主力はもちろん「お〜いお茶」です。ペットボトル飲料、ティーバッグ、茶葉、抹茶など、形を変えながら茶を販売しています。

この事業の特徴は、茶葉と飲料の両方を扱うことです。多くの飲料メーカーは、飲料製品の企画・販売が中心です。しかし伊藤園は、もともと茶葉の会社であり、茶産地育成、茶葉加工、抽出技術、品質管理を持っています。お茶をペットボトルに詰めるだけではなく、茶葉の選定、香り、渋み、色、酸化防止、常温流通、容器設計までが商品価値になります。

飲食関連事業は、タリーズコーヒーです。タリーズは、単なる子会社ではなく、伊藤園グループの中で飲料と店舗体験をつなぐ存在です。コーヒーショップとしての店舗収益があり、空港、鉄道、病院、商業施設など多様なロケーションに出店しています。タリーズではコーヒーだけでなく、紅茶や抹茶、フードメニューも展開できるため、伊藤園グループの茶・飲料の知見を活かす余地があります。

その他には、チチヤスなどの乳製品、関連事業があります。チチヤスはヨーグルトや乳酸菌飲料で知られるブランドです。伊藤園本体の茶飲料とは違いますが、健康志向、日常飲料、食品としての接点があります。

また、販売チャネルも重要です。伊藤園の商品は、スーパー、コンビニ、ドラッグストア、量販店、自動販売機、EC、業務用、海外小売に流れます。自動販売機は、飲料メーカーにとって重要な売場ですが、補充コストや人件費が重く、収益性が課題になっています。伊藤園は2026年に自動販売機事業を伊藤園ネオスへ承継し、収益基盤の再構築を進めています。

収益構造

伊藤園の収益構造は、「お〜いお茶」を中心とするリーフ・ドリンク関連事業が大半を占め、タリーズが飲食関連として利益を上乗せする形です。

2026年4月期のリーフ・ドリンク関連事業は、売上高4,434億円、営業利益175億円でした。売上高は増えましたが、営業利益は減少しました。海外では抹茶を含む日本茶需要が拡大し、米国やASEANを中心に堅調でした。一方で、原材料費をはじめとする各種コスト上昇が想定を上回り、利益を圧迫しました。

飲食関連事業であるタリーズは、売上高464億円、営業利益35億円でした。店舗数は2026年4月末時点で850店舗となり、価格改定や店舗増加により堅調に推移しています。コーヒー豆価格や出店コストは上がっていますが、店舗運営と経費管理によって増益を確保しました。飲料メーカーの中にカフェ事業を持つことは、商品販売だけでは得られない顧客接点になります。

伊藤園全体では、2026年4月期の売上高は4,978億円、営業利益は216億円でした。売上高営業利益率は4.4%です。中期経営計画では、2029年4月期に営業利益率8%以上を目指しています。現在の利益率から見ると、かなり大きな改善が必要です。国内事業の効率化、価格改定、広告宣伝費の選択と集中、物流改善、自販機事業再編、海外高収益事業の拡大が必要になります。

また、当期純利益は34億円と大きく減少しました。主因は、自動販売機事業に関する減損損失です。これは、飲料メーカーにとって自販機チャネルの採算が難しくなっていることを示しています。自販機は便利な売場ですが、設置場所、補充頻度、電気代、オペレーション人員、販売数量によって採算が大きく変わります。伊藤園にとって、自販機をどう効率化するかは重要な課題です。

事業内容の特徴

伊藤園の事業内容の特徴は、「茶を原料から最終商品まで一貫して扱うこと」にあります。

お茶は、ただの飲料ではありません。茶葉の産地、摘採時期、加工、焙煎、抽出、香り、渋み、色、温度、容器、保存性によって品質が大きく変わります。ペットボトルのお茶は簡単に見えますが、急須で入れたような香りや味を、常温流通で安定させるには技術が必要です。伊藤園は、茶葉会社としての出発点があるため、飲料メーカーでありながら農業・原料調達に近い会社でもあります。

もう一つの特徴は、無糖飲料への集中です。伊藤園単体の飲料販売において、無糖飲料の比率は非常に高い水準です。砂糖入り飲料やエナジードリンクで大きく稼ぐ会社ではなく、日常的に飲まれる無糖茶を中心にしています。これは健康志向と相性がよい一方、甘味や刺激で差別化する飲料よりも、味の違いを伝えるのが難しい面もあります。

「お〜いお茶」の強さは、定番であることです。定番商品は急成長しにくい一方、毎日の飲用習慣に入りやすい商品です。会社員が昼食と一緒に買う、家庭で箱買いする、会議で配る、旅行やスポーツの時に飲む。こうした日常の場面に入り込んでいることが、伊藤園の安定性を支えています。

一方で、定番商品だからこそ、価格競争やプライベートブランドとの競争も受けます。スーパーやドラッグストアでは、低価格の茶系飲料も多く並びます。伊藤園は、単に安く売るのではなく、国産茶葉、香り、品質、安心感、ブランド価値を伝えながら、価格改定を受け入れてもらう必要があります。

海外展開では、国内とは違う難しさがあります。日本では無糖茶は当たり前ですが、海外では甘くないお茶を日常的に飲む文化がまだ十分に広がっていない国もあります。伊藤園は、和食、健康、抹茶、日本文化、アニメ、スポーツ選手の起用などを使いながら、無糖茶そのものの市場を作ろうとしています。これは、単に商品を輸出するのではなく、飲用習慣を輸出するビジネスです。

競合他社との違い

伊藤園の競合は、国内飲料ではサントリー食品インターナショナル、キリンホールディングス、アサヒ飲料、コカ・コーラ ボトラーズジャパン、伊藤園以外の茶系飲料ブランド、プライベートブランドです。食品・飲料全体で見ると、サッポロホールディングス、カゴメ、キッコーマンなどとも比較できます。

サントリー食品インターナショナルとの違いは、ブランドポートフォリオの広さです。サントリー食品は、天然水、BOSS、伊右衛門、GREEN DA・KA・RA、ペプシなど、多くのカテゴリーで強いブランドを持ちます。伊藤園は、カテゴリーの幅ではサントリーほど広くありません。その代わり、お茶、とくに「お〜いお茶」に強く集中しています。広く強いサントリーに対し、伊藤園は茶の専門性で戦う会社です。

キリンやアサヒとの違いは、酒類との関係です。キリンやアサヒはビール・酒類を中心に、飲料や食品、ヘルスサイエンスへ広げています。伊藤園は酒類を主軸にしない会社であり、無糖茶と健康飲料を中心にしています。酒税やアルコール市場の影響を受けにくい一方、飲料市場の価格競争を正面から受ける会社です。

サッポロホールディングスとの違いは、ブランドの起点です。サッポロは黒ラベルやヱビスなど酒類ブランドに強く、不動産資産も持ってきた会社です。伊藤園は、酒類ではなく、茶と無糖飲料を中心に積み上げてきました。どちらも食品・飲料ブランドを持ちますが、サッポロが「飲む場」や「ビール文化」と結びつくのに対し、伊藤園は「日常の健康飲料」と結びつきます。

カゴメとの比較では、健康価値の作り方が違います。カゴメはトマト、野菜、野菜飲料、加工食品に強みがあります。伊藤園も野菜飲料を持ちますが、主役はお茶です。カゴメが野菜摂取やトマト加工品で健康価値を作る会社だとすれば、伊藤園は無糖茶、カテキン、抹茶、日本茶文化で健康価値を作る会社です。

キッコーマンとの比較では、海外展開の成熟度が違います。キッコーマンはしょうゆを世界の調味料として広げ、高い海外収益性を実現しています。伊藤園は、これから「お〜いお茶」を世界の無糖茶ブランドへ育てる段階です。もし海外で日本茶が日常飲料として広がれば、キッコーマンのように日本発の食品文化を世界で収益化する会社に近づく可能性があります。

事業の現代での潮流

伊藤園を取り巻く潮流は、健康志向、無糖飲料の拡大、原材料高、自販機市場の変化、抹茶ブーム、海外日本食文化の広がりです。

健康志向は、伊藤園にとって大きな追い風です。砂糖入り飲料を避けたい人、カロリーを気にする人、食事と一緒にすっきりした飲料を飲みたい人にとって、無糖茶は選びやすい飲料です。水だけでは味気ないが、甘い飲料は避けたい。そういう需要に、「お〜いお茶」は合っています。

一方で、原材料高は大きな逆風です。茶葉、ペットボトル、キャップ、ラベル、段ボール、物流費、人件費、エネルギー費が上がれば、利益率は下がります。伊藤園は価格改定を進めていますが、消費者の節約志向が強い中で、値上げと販売数量維持の両立は簡単ではありません。

自動販売機市場の変化も重要です。かつて自販機は、飲料メーカーにとって高単価で売れる重要なチャネルでした。しかし、オフィス勤務の変化、人流の変化、補充コスト上昇、人手不足により、採算が厳しくなっています。伊藤園が自販機事業を再編しているのは、チャネルそのものを見直す必要があるからです。

海外では、抹茶ブームと日本食文化の広がりがあります。抹茶ラテ、抹茶スイーツ、健康飲料、和食、アニメ、日本旅行への関心が高まり、日本茶への入口が増えています。ただし、抹茶人気がそのまま無糖緑茶飲料の購入につながるとは限りません。伊藤園は、抹茶の知名度を使いながら、「甘くないお茶」を日常に入れていく必要があります。

AIやDXも無関係ではありません。飲料需要予測、自販機のルート最適化、物流効率化、茶産地の農業DX、マーケティング分析、在庫管理は、収益性改善に直結します。伊藤園のように低単価商品を大量に扱う会社では、1本あたりの小さな改善が全体利益に大きく効きます。

強み

伊藤園の第一の強みは、「お〜いお茶」という圧倒的なブランドです。緑茶飲料と言えば「お〜いお茶」を思い浮かべる人は多く、国内市場で高いシェアを持っています。定番商品としての認知、安心感、流通棚の確保、箱買い需要は大きな資産です。

第二の強みは、茶葉から飲料までの一貫した知見です。茶産地育成事業を通じて、原料調達に関わり、茶葉加工、抽出、品質管理、商品開発まで行います。これは、単に飲料を企画して外部に作らせるだけの会社とは違う強みです。

第三の強みは、無糖茶飲料市場を作ってきた経験です。伊藤園は、ウーロン茶、缶入り煎茶、お〜いお茶を通じて、甘くない飲料を買って飲む文化を広げてきました。市場を作った会社は、消費者の飲用シーンや流通の勘所を深く理解しています。

第四の強みは、海外展開の成長余地です。北米、ASEAN、欧州で「お〜いお茶」の販売を広げており、2029年4月期には海外の「お〜いお茶」飲料販売数量1,000万ケースを目指しています。日本茶が世界で日常飲料として広がれば、国内市場成熟を補う大きな成長源になります。

第五の強みは、タリーズコーヒーです。タリーズは、単なる飲食子会社ではなく、伊藤園グループに店舗体験と顧客接点をもたらします。カフェは、飲料ブランドを生活空間の中で体験してもらう場です。今後、抹茶や茶系メニュー、プレミアム飲料と組み合わせる余地があります。

弱み・リスク

伊藤園の第一のリスクは、国内飲料市場の成熟です。人口減少が進む日本では、飲料の総量を大きく伸ばすことは簡単ではありません。特に茶系飲料は既に普及しており、成長余地は限られます。国内では、シェア維持と利益率改善が中心課題になります。

第二のリスクは、原材料費・物流費・人件費の上昇です。2026年4月期も、原材料費をはじめとするコスト上昇が想定を上回り、営業利益を圧迫しました。飲料は単価が低いため、コスト上昇をすべて価格に転嫁するのは難しい面があります。

第三のリスクは、自動販売機事業です。自販機は便利な販売チャネルですが、設置場所ごとの採算差が大きく、補充・管理コストも高い事業です。伊藤園は自販機事業の減損を計上し、事業承継による再編を進めています。ここを立て直せなければ、利益率改善は難しくなります。

第四のリスクは、ブランド集中です。お〜いお茶は大きな強みですが、依存度が高いことはリスクでもあります。もし競合商品やプライベートブランドにシェアを奪われたり、若年層の茶飲料離れが進んだりすれば、業績への影響は大きくなります。

第五のリスクは、海外展開の難しさです。日本では無糖茶は当たり前ですが、海外では甘い飲料文化が強い国もあります。現地の流通、価格、味覚、表示規制、物流、為替、現地競合に対応しなければなりません。海外売上が伸びても、販促費や物流費が重ければ利益は残りません。

数字で見る伊藤園

伊藤園を見るときは、売上高、営業利益、営業利益率、リーフ・ドリンク関連事業の利益、タリーズの店舗数、海外売上、営業キャッシュフロー、ROE、自販機事業の採算を見る必要があります。

2026年4月期の連結売上高は4,978億円、営業利益は216億円、経常利益は232億円、親会社株主に帰属する当期純利益は34億円でした。売上高は前期比5.3%増でしたが、営業利益は5.6%減、当期純利益は大幅減となりました。営業利益率は4.4%です。売上は伸びたものの、利益率はまだ十分とは言えません。

リーフ・ドリンク関連事業は、売上高4,434億円、営業利益175億円でした。伊藤園の主力事業です。海外では日本茶需要が拡大し、米国やASEANを中心に堅調でしたが、原材料費などのコスト上昇により減益となりました。

飲食関連事業は、売上高464億円、営業利益35億円でした。タリーズコーヒーは2026年4月末時点で850店舗となり、価格改定や店舗数増加が寄与しました。タリーズは、伊藤園全体の中では売上規模は小さいものの、利益率やブランド体験の面で重要な存在です。

海外グループ会社は、売上高743億円、営業利益42億円でした。海外売上は大きく伸びており、伊藤園の成長ドライバーです。中期経営計画では、2029年4月期に営業利益率8%以上、ROE10%以上、総還元性向40%以上を目指しています。海外「お〜いお茶」の販売国・地域は2026年4月期時点で52、2029年4月期には60以上、長期的には100以上を目指します。

2027年4月期の会社予想では、売上高5,000億円、営業利益200億円、経常利益205億円、親会社株主に帰属する当期純利益114億円が見込まれています。営業利益はさらに減益予想ですが、当期純利益は減損の反動で回復する計画です。投資家は、最終利益の回復だけでなく、営業利益率が本当に改善に向かうかを見る必要があります。

今後の注目ポイント

今後の第一の注目ポイントは、「お〜いお茶」の海外展開です。北米、ASEAN、欧州で、無糖茶をどこまで日常飲料として定着させられるかが重要です。海外では、和食、抹茶、日本文化、スポーツ選手、アニメなどを使った認知拡大が進んでいますが、最終的にはリピート購入される味・価格・流通が必要になります。

第二の注目ポイントは、国内事業の収益性改善です。中期経営計画では、国内既存事業の体制再構築、サプライチェーン最適化、マーケティングの選択と集中を掲げています。売上を伸ばすだけでなく、売上総利益率、販管費率、物流費、広告宣伝費、自販機採算を改善できるかが重要です。

第三の注目ポイントは、茶産地育成事業です。国内茶葉の生産量減少や高齢化は、伊藤園にとって長期リスクです。「お〜いお茶」が国産茶葉を前面に出すなら、原料の安定調達が欠かせません。茶農家への支援、農業DX、契約栽培、加工技術が、ブランド価値と供給力の両方を支えます。

第四の注目ポイントは、タリーズの成長です。タリーズは店舗数を増やし、空港・鉄道・病院など多様なロケーションへ展開しています。コーヒー豆価格や人件費は課題ですが、店舗体験を高められれば、飲料メーカーとは違う収益源になります。茶・抹茶メニューとの連動も注目です。

第五の注目ポイントは、自販機事業再編です。伊藤園ネオスへの承継により、営業、補充、物流、設置場所戦略をどう効率化するかが問われます。自販機を単なる負担にするのではなく、駅、空港、職域、観光地など優良ロケーションへ絞り、生産性の高いチャネルに変えられるかが重要です。

投資対象として

伊藤園を投資対象として見る場合、同社は「国内無糖茶の安定ブランド企業」であると同時に、「海外日本茶市場を開拓する成長途中の飲料メーカー」と整理できます。

ポジティブに見るなら、伊藤園には明確な主力ブランドがあります。「お〜いお茶」は日本の緑茶飲料市場で圧倒的な認知を持ち、日常飲料として定着しています。健康志向、無糖飲料の拡大、抹茶ブーム、日本食文化の海外浸透は、伊藤園にとって追い風です。海外グループ会社の売上・利益も伸びており、国内市場成熟を補う成長源になり得ます。

また、茶産地育成、原料調達、茶葉加工、飲料化、販売網まで持つ点は、単なる飲料ブランドとは違う強みです。海外で日本茶を売るときにも、品質と原料の裏付けを持てることは差別化になります。

一方で、慎重に見るべき点もあります。2026年4月期は売上高が伸びたにもかかわらず、営業利益は減益でした。原材料費、物流費、人件費、自販機採算の悪化が利益を圧迫しています。営業利益率4%台から、2029年4月期の8%以上へ引き上げるには、かなり強い構造改革が必要です。

また、海外展開は期待が大きい一方、簡単ではありません。現地で無糖茶の飲用習慣を作るには時間がかかります。為替、物流、販促費、現地競合、価格設定も課題です。投資家は、海外売上の伸びだけでなく、海外事業の営業利益率とキャッシュ創出力を見るべきです。

したがって、伊藤園の株価を見るときは、PERや配当利回りだけでなく、営業利益率、リーフ・ドリンク関連事業の利益、海外売上比率、海外「お〜いお茶」販売数量、自販機事業の改善、売上総利益率、営業キャッシュフロー、ROEを確認する必要があります。投資対象としては、安定した国内ブランドを持ちながら、海外成長と構造改革の実行力が問われる会社です。

まとめ

伊藤園は、1960年代に茶葉販売から出発し、ウーロン茶、缶入り煎茶、「お〜いお茶」を通じて、日本に無糖茶飲料市場を作ってきた会社です。現在は、緑茶飲料、茶葉、抹茶、野菜飲料、タリーズコーヒー、海外日本茶事業を展開しています。

伊藤園 強みは、「お〜いお茶」という圧倒的なブランド、無糖茶飲料市場を作った経験、茶産地育成、国産茶葉へのこだわり、茶葉加工技術、国内販売網、タリーズ、海外日本茶展開にあります。単なるペットボトル飲料メーカーではなく、茶を原料から商品、飲用文化まで扱う会社です。

一方で、課題も明確です。国内飲料市場は成熟し、原材料費、物流費、人件費が上がっています。自動販売機事業の収益性低下も大きな問題です。2026年4月期は売上高4,978億円を計上したものの、営業利益は216億円にとどまり、当期純利益は減損で大きく減りました。今後は、売上拡大よりも利益率改善が重要になります。

就活生にとって、伊藤園は商品開発、茶葉調達、品質管理、営業、自販機運営、海外事業、カフェ運営、農業DX、マーケティングに関われる会社です。個人投資家にとっては、「お〜いお茶」のブランド力だけでなく、営業利益率、自販機再編、海外事業、茶産地育成、キャッシュフローを見ていくべき企業です。

伊藤園は、日本の緑茶をペットボトル飲料にした会社です。次の課題は、その「お〜いお茶」を世界の日常飲料にできるか、そして国内事業を高収益に作り替えられるかです。そこが、伊藤園 企業研究の最大のポイントになります。