BIPROGYを一言でいうと

BIPROGYは、旧日本ユニシスを前身とするITサービス企業です。金融機関、流通・小売、エネルギー、自動車・モビリティ、製造、官公庁、サービス業などに対して、システム開発、アウトソーシング、クラウド、ネットワーク、セキュリティ、ソフトウェア、ハードウェア、データ活用、AI活用まで提供しています。

BIPROGY 企業研究で最初に押さえたいのは、同社が単なる受託開発会社ではなく、長年の基幹システム構築で得た業務知見を、金融、リテール、エネルギー、モビリティ、OTインフラといった重点領域へ展開している会社だという点です。旧日本ユニシス時代から、銀行、証券、流通、航空、製造、公共など、社会や産業の情報システムに深く関わってきました。

代表的なサービスとしては、地域金融機関向けの勘定系システム「BankVision」、電力小売クラウドサービス「Enability」、小売業向けのマーチャンダイジング・EC・店舗DX関連サービス、モビリティ関連システム、OTネットワーク・セキュリティなどがあります。さらに近年では、データ&AI利活用、マネージドサービス、ヘルスケア、スマートライフ、ASEANを中心としたグローバル展開にも力を入れています。

BIPROGY 強みは、日本の情報化社会の初期から企業の基幹システムに関わってきた経験、金融・流通・エネルギーなど特定業界に深く入り込んだ業務知見、そして顧客やパートナーと事業を共創する姿勢にあります。2022年に日本ユニシスからBIPROGYへ商号変更したことは、単なる社名変更ではありません。従来のICTサービス提供企業から、社会課題を解決するビジネスエコシステムを作る企業へ変わろうとする意思表示です。

なぜ今BIPROGYを見るのか

今BIPROGYを見る理由は、同社が「昔ながらの基幹システム会社」から、「金融・流通・エネルギー・データ&AIを軸に社会DXを進める会社」へ変わろうとしているからです。

ITサービス業界では、DX需要が続いています。企業は、古い基幹システム、紙の業務、手作業、Excel中心の管理、部門ごとに分断されたデータを見直す必要があります。さらに、人手不足、制度変更、セキュリティ、生成AI、クラウド化、サステナビリティ、エネルギー転換にも対応しなければなりません。これは一時的なシステム投資ではなく、企業運営そのものを変える動きです。

BIPROGYは、この流れに対して、金融、リテール、エネルギー、モビリティ、OTインフラをコア事業の注力領域とし、データ&AI、マネージドサービス、社会DX、グローバルを成長事業として伸ばそうとしています。つまり、従来の個別システム開発だけでなく、業界ごとの業務基盤や新しいサービスモデルを作ろうとしている段階です。

2026年3月期のBIPROGYは、売上収益4,337億円、営業利益426億円、親会社の所有者に帰属する当期利益312億円でした。営業利益率は9.8%、調整後営業利益率は10.0%です。受注高は4,458億円、受注残高は3,019億円となり、IT投資需要の継続を背景に増収増益となりました。2027年3月期は売上収益4,700億円、営業利益484億円、親会社の所有者に帰属する当期利益322億円を見込んでいます。

ただし、BIPROGYはオービックのように営業利益率60%台を出す超高収益ERP企業ではありません。野村総合研究所のような金融IT・コンサルの高収益モデルとも少し違います。NTTデータグループのように売上5兆円規模の巨大企業でもありません。BIPROGYは、旧日本ユニシス時代からの社会・産業システムの実績をもとに、特定業界の深い業務知見と社会課題解決型の新規事業を組み合わせる会社です。

この中間的な立ち位置が、同社を見る面白さです。大規模SIerとしての歴史を持ちながら、金融クラウド、リテールDX、エネルギーマネジメント、ヘルスケア、給与デジタル払い、AI、ASEAN展開など、かなり多方面へ事業を広げています。企業としての課題は、これらを単なる実証実験や個別案件で終わらせず、利益を生む柱にできるかです。

成り立ち

BIPROGYの歴史は、日本のコンピューター利用の歴史とかなり深く重なっています。前身の流れは、1947年に日本レミントン・ユニバックの前身となる吉澤機器が設立されたところにあります。1955年には、日本で初めて商用コンピューターが東京証券取引所と野村證券に設置されました。1958年には日本レミントン・ユニバックが設立され、現在のBIPROGYにつながります。

1967年には、日本初のオンラインバンキング処理を開始しました。これは、同社が金融システムに強い背景を理解するうえで重要です。金融機関のシステムは、正確性、安定稼働、セキュリティ、制度対応が求められます。BIPROGYはかなり早い段階から、日本の金融機関の情報化に関わってきた会社です。

1977年には金融機関向けソフトウェア「FAST」を開発し、1988年には日本ユニバックとバロースが統合して日本ユニシスが発足しました。1997年にはインフラトータルサービスを担うユニアデックスを設立しています。ユニアデックスは、ネットワークやインフラ、セキュリティ領域でBIPROGYグループを支える重要な存在です。

2007年には、世界初のWindowsでのフルバンキング勘定系システム「BankVision」が稼働しました。これはBIPROGYの金融ITを語るうえで非常に重要です。銀行の勘定系システムは、預金、融資、為替、口座管理など銀行業務の中心です。そこにオープン系技術を取り込んだBankVisionは、地域金融機関のシステム刷新における同社の代表的な資産になっています。

2012年には大日本印刷と業務資本提携を行い、現在も大日本印刷は主要株主です。2022年には、日本ユニシス株式会社からBIPROGY株式会社へ商号変更しました。新社名には、光が屈折・反射して七色に輝くように、多様な人や企業、社会の可能性を組み合わせて新しい価値を生むという意味合いがあります。旧日本ユニシスの延長ではなく、社会的価値創出企業へ変わることを掲げた転換点です。

事業内容

BIPROGYの事業は、売上区分で見ると、システムサービス、サポートサービス、アウトソーシング、その他サービス、ソフトウェア、ハードウェアに分けられます。

システムサービスは、顧客企業向けのシステム開発、導入、構築を行う領域です。金融機関、小売業、電力事業者、製造業、官公庁、サービス業向けなど、業界ごとの案件があります。2026年3月期のシステムサービス売上収益は1,408億円、売上総利益は511億円で、利益率は36.3%でした。売上規模と利益率の両面で重要な柱です。

サポートサービスは、製品販売に付随する保守・サポート、ネットワーク関連、インフラ支援などを含みます。2026年3月期の売上収益は599億円、売上総利益は190億円でした。製品販売の増加に伴って売上は増えましたが、リベート影響などにより利益面では減少しています。サポートサービスは安定収益になりやすい一方、製品構成や契約条件で利益率が変わります。

アウトソーシングは、BIPROGYの重要な特徴です。BankVisionのような共同利用型・サービス利用型のシステム、業務運用、クラウド、外部委託型のサービスが含まれます。2026年3月期のアウトソーシング売上収益は972億円、売上総利益は214億円でした。BankVisionの稼働金融機関増加や、新規採用に伴う初期料金、カタリナマーケティングジャパンの連結取り込みなどが貢献しました。

ソフトウェアとハードウェアは、BIPROGYが単なるソフト開発会社ではなく、製品販売やインフラ案件も扱っていることを示します。2026年3月期のソフトウェア売上収益は474億円、ハードウェア売上収益は753億円でした。官公庁、研究機関、製造業向けの大型案件や、AI関連・ネットワーク関連のインフラ増強需要が関わります。

また、経営方針上は、ファイナンシャル、リテール、エネルギー、モビリティ、OTインフラの五つがコア事業の注力領域です。さらに、市場開発、事業開発、グローバルを成長事業としています。つまりBIPROGYは、単なる売上区分ではなく、「どの業界に深く入り込むか」「どの新規事業を育てるか」という視点で見る必要があります。

収益構造

BIPROGYの収益構造は、システム開発と製品販売だけでなく、アウトソーシングやサービス型ビジネスを積み上げる形です。

2026年3月期の売上収益は4,337億円、営業利益は426億円でした。営業利益率は9.8%です。調整後営業利益は436億円、調整後営業利益率は10.0%でした。売上収益は前期比7.3%増、営業利益は9.1%増、当期利益は15.7%増です。売上総利益率は26.7%で、前期から改善しました。

売上区分別に見ると、システムサービスは1,408億円、アウトソーシングは972億円、ハードウェアは753億円、サポートサービスは599億円、ソフトウェアは474億円、その他サービスは129億円です。売上総利益で見ると、システムサービスが511億円で最大、アウトソーシングが214億円、サポートサービスが190億円、ハードウェアが136億円です。システムサービスの利益率は高く、アウトソーシングは継続性のある収益基盤として重要です。

コア事業の注力領域では、2026年3月期の合計売上収益は1,549億円、営業利益は150億円でした。ファイナンシャルは売上収益508億円、営業利益54億円。リテールは売上収益298億円、営業利益15億円。エネルギーは売上収益200億円、営業利益20億円。モビリティは売上収益326億円、営業利益40億円。OTインフラは売上収益217億円、営業利益20億円でした。

ここで注意したいのは、リテールやエネルギーでは、売上は伸びても投資負担や高収益案件の剥落で利益が下がっている点です。BIPROGYは成長領域へ投資しているため、短期的には利益率が揺れます。企業研究では「どの事業が伸びているか」だけでなく、「その成長が利益につながっているか」を見る必要があります。

2027年3月期の通期予想では、売上収益4,700億円、営業利益484億円、営業利益率10.3%、親会社の所有者に帰属する当期利益322億円を見込んでいます。経営方針2024-2026の売上収益目標4,400億円を上回る見込みですが、調整後営業利益率目標11.0%に対しては10.3%の見込みです。売上規模の拡大は進む一方で、利益率のさらなる改善が課題です。

事業内容の特徴

BIPROGYの事業内容の特徴は、業界ごとの基幹システムと、社会課題解決型の新規事業を両方持っていることです。

金融では、BankVisionが象徴的です。地域金融機関は、勘定系システムを自前で大規模に維持することが難しくなっています。人口減少、店舗縮小、収益環境の変化、デジタルバンキング、共同化、コスト削減が課題です。BIPROGYは、BankVisionを通じて勘定系システムだけでなく、営業店システム、バンキングアプリ、国際系・市場系システム、金融業務BPaaS、AI活用まで広げようとしています。

リテールでは、小売業のマーチャンダイジング基幹システム、統合EC、電子棚札、店舗DX、販促、データ活用が中心です。小売業は、在庫、価格、店舗、EC、顧客データ、物流、人手不足、食品ロス、販促効率の課題を抱えています。BIPROGYは、カタリナマーケティングジャパンの連結取り込みにより、購買データやマーケティング領域との接続も強めています。単なる小売システムではなく、実購買データを使ったマーケティング支援へ広げられるかが焦点です。

エネルギーでは、電力小売クラウドサービス「Enability」や、再生可能エネルギー導入、アグリゲーション事業、蓄電池、コーポレートPPA、アワリーマッチングなどが重要です。電力業界は、脱炭素、再エネ、需給調整、電力小売、送配電、蓄電池、分散電源といった構造変化の中にあります。BIPROGYはITを使ってエネルギーマネジメント関連の新しい事業を作ろうとしています。

モビリティでは、自動車会社向けシステム構築や、自動運転開発、シミュレーション、デジタルツイン関連などが関わります。自動車業界は、CASE、ソフトウェア化、サプライチェーン再編、車載ソフト、シミュレーション、EV、モビリティサービスの変化を受けています。BIPROGYは自動車会社向け案件を積み上げており、モビリティ領域をコア事業として位置づけています。

OTインフラでは、工場、電力、製造現場などのOTネットワークとセキュリティが重要になります。従来のITシステムだけでなく、制御系ネットワーク、工場設備、センサー、PLC、セキュリティを扱う領域です。サイバー攻撃が工場やインフラへ及ぶ時代に、OTインフラは成長余地のあるテーマです。

競合他社との違い

BIPROGYの競合は、NTTデータグループ、野村総合研究所、TIS、SCSK、オービック、富士通、NEC、日立製作所、BIPROGYと同じく旧来からの大手SIer、クラウドベンダー、業界特化SaaS企業などです。

オービックとの違いは、ERP集中型か、業界横断型かです。オービックはOBIC7を中心に、会計・人事・販売・生産など企業の基幹業務ERPを自社開発・直接販売し、非常に高い営業利益率を持ちます。BIPROGYはオービックほど単一ERPに集中していません。金融、リテール、エネルギー、モビリティ、OTインフラ、アウトソーシング、製品販売、社会DXを広く持ちます。オービックが高収益なERP専業型なら、BIPROGYは業界課題解決型の総合ITサービス企業です。

野村総合研究所との違いは、金融ITの性格です。NRIは証券、保険、銀行、資産運用向けの共同利用型サービスとコンサルティングに強く、国内事業の利益率が高い会社です。BIPROGYも金融に強いですが、地域金融機関向けBankVisionやオープン系勘定系システム、金融業務BPaaS、フロントサービスに特徴があります。NRIが高付加価値金融IT・コンサル型なら、BIPROGYは地域金融と業界プラットフォーム型の色が強い会社です。

NTTデータグループとの違いは、規模と事業範囲です。NTTデータグループは公共、金融、法人、海外、データセンターを含む売上5兆円規模の巨大ITサービス企業です。BIPROGYは規模では及びませんが、BankVision、リテールDX、Enability、doreca、DotHealth、OTインフラなど、業界別の具体的なサービスを育てようとしています。NTTデータが社会インフラ級の大規模SIとグローバルインフラに強いなら、BIPROGYは特定業界の業務知見をサービス化する会社です。

TISとの違いは、決済中心か、金融・流通・エネルギーを横断するかです。TISはカード・決済、金融IT、産業IT、BPMに強く、PAYCIERGEを持ちます。BIPROGYは決済そのものより、地域金融勘定系、小売の基幹・販促・店舗DX、エネルギー小売・再エネ、モビリティ、OTネットワークに特徴があります。どちらも独立系に近い総合ITサービス企業ですが、TISは決済、BIPROGYは業界プラットフォームと社会DXの色が強いといえます。

SCSKとの違いは、商社系フルラインアップか、旧日本ユニシス系の業界サービス型かです。SCSKは住友商事系で、アプリケーション、インフラ、BPO、ネットワーク、セキュリティを広く持ち、ネットワン統合でインフラ領域を強化しました。BIPROGYは、大日本印刷を主要株主に持ちつつも、金融、流通、エネルギー、モビリティ、社会DXのサービスモデルを育てる方向が目立ちます。

事業の現代での潮流

BIPROGYを取り巻く潮流は、基幹システム刷新、クラウド化、AI活用、地域金融の再編、リテールDX、エネルギー転換、OTセキュリティ、ASEAN展開です。

第一に、基幹システム刷新です。企業や金融機関の古いシステムは、保守人材不足、制度対応、データ活用の遅れ、クラウド化の難しさを抱えています。BIPROGYはBankVisionや小売向け基幹システムなどで、顧客の業務そのものに深く関わります。システム刷新は単発ではなく、長期的な保守・運用・機能追加につながるテーマです。

第二に、AI活用です。BIPROGYはData&AI Innovation Labを起点に、データ・生成AIによるDX支援案件を拡大しています。AIは、金融業務、マーケティング、需要予測、業務効率化、顧客対応、開発支援、運用監視に入り込んでいきます。ただし、AIだけを単独導入しても業務は変わりません。業界業務を理解しているBIPROGYが、どこまでAIを業務プロセスに組み込めるかが重要です。

第三に、リテールDXです。小売業では、店舗とEC、価格、在庫、棚割り、販促、購買データ、電子棚札、顧客ID、物流がつながる必要があります。BIPROGYは大規模マーチャンダイジング基幹システム、統合EC、店舗DX、購買データ活用を通じて、小売業の基幹と顧客接点の両方に関われる立場です。

第四に、エネルギー転換です。脱炭素、再エネ、蓄電池、需給調整、電力小売、PPA、分散電源は、ITなしでは管理が難しい領域です。BIPROGYはEnabilityやアグリゲーション事業への取り組みを通じて、電力業界の変化を取り込もうとしています。エネルギーは単なるIT投資ではなく、社会インフラと制度変更が絡む大きなテーマです。

第五に、グローバル展開です。BIPROGYはASEAN主要国でのビジネス展開と北米マーケットへのアプローチ強化を掲げています。過去にはNexus System ResourcesやiByte Solutionsを連結子会社化しており、海外売上を伸ばそうとしています。ただし、グローバル事業は現地人材、商習慣、競合、採算管理が難しく、2027年3月期の成長事業目標を達成できるかが問われます。

強み

BIPROGYの第一の強みは、日本の情報化社会の初期から蓄積してきた業務システムの実績です。1955年に日本初の商用コンピューターを東京証券取引所と野村證券に設置した流れを持ち、1967年には日本初のオンラインバンキング処理にも関わりました。これは単なる歴史ではなく、金融・産業システムの信頼性を支える文化につながっています。

第二の強みは、金融機関向けのBankVisionです。地域金融機関の勘定系システムは、コスト削減、共同化、クラウド化、顧客接点のデジタル化が重要になっています。BankVisionは、BIPROGYが金融ITで差別化するための重要な資産です。勘定系だけでなく、フロント系サービス、金融業務BPaaS、AI活用へ広げられる点も強みです。

第三の強みは、流通・小売への深い業務理解です。小売業は、商品、価格、在庫、店舗、EC、販促、顧客データ、物流が複雑に絡みます。BIPROGYは大規模マーチャンダイジング、統合EC、電子棚札、店舗DX、購買データ活用まで関われるため、小売企業の業務全体に入り込みやすい会社です。

第四の強みは、エネルギーやOTインフラなど、社会課題に近い領域への展開です。ITサービス企業の中には、金融や製造に強い会社は多いですが、電力小売クラウド、再エネ、蓄電池、OTネットワーク・セキュリティまで事業として掲げる会社は限られます。BIPROGYは、社会課題解決型の事業へ踏み込もうとしている点が特徴です。

第五の強みは、大日本印刷との関係です。大日本印刷はBIPROGYの主要株主です。DNPは印刷、情報、決済、認証、セキュリティ、マーケティング、包装、電子部材など幅広い事業を持っています。BIPROGYのITサービスとDNPの情報・マーケティング・セキュリティの資産が組み合わされば、流通、金融、公共、マーケティング領域でシナジーが生まれる可能性があります。

弱み・リスク

BIPROGYの第一のリスクは、利益率の改善余地です。2026年3月期の営業利益率は9.8%、調整後営業利益率は10.0%でした。2027年3月期も営業利益率10.3%を見込んでいますが、経営方針上の目標である調整後営業利益率11.0%には届かない見通しです。売上拡大は進んでいますが、投資負担、人件費、M&A関連費用、研究開発費、低採算案件が利益率を抑える可能性があります。

第二のリスクは、不採算案件です。2026年3月期には、不採算案件に係る無形資産の減損が計上されています。SIerでは、見積もり、仕様変更、品質問題、顧客側の体制不足があると、一案件で利益を大きく削ることがあります。BIPROGYも、開発工程の管理と案件選別が重要です。

第三のリスクは、成長事業の収益化です。市場開発、事業開発、グローバルの成長事業は、2026年3月期売上収益144億円に対し、2027年3月期目標は350億円です。成長率としては大きいですが、これらは新規領域であり、投資先行になりやすい。データ&AI、ヘルスケア、スマートライフ、ASEANが本当に利益を生む柱になるかは、まだ検証が必要です。

第四のリスクは、競争の激しさです。金融ではNRI、NTTデータ、TIS、IBM、富士通、NECが強く、流通では各種SIerや小売特化ベンダー、EC・SaaS企業が競合します。エネルギーやOTインフラでも、電力系IT会社、制御系ベンダー、セキュリティ企業、クラウド企業が競合します。BIPROGYは業界知見で差別化する必要があります。

第五のリスクは、AIによるSIビジネスの変化です。生成AIにより、設計、開発、テスト、運用、問い合わせ対応の生産性は上がります。しかし、単純な開発作業の価値は下がる可能性があります。BIPROGYがAIを使って高付加価値な業務改革やサービス型ビジネスへ変えられれば追い風ですが、従来型受託開発に依存する部分は競争が厳しくなります。

数字で見るBIPROGY

BIPROGYを見るときは、売上収益、営業利益、営業利益率、調整後営業利益率、受注高、受注残高、システムサービス、アウトソーシング、コア事業、成長事業、配当、自己株式取得を確認する必要があります。

2026年3月期の売上収益は4,337億円、営業利益は426億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は312億円でした。営業利益率は9.8%、調整後営業利益は436億円、調整後営業利益率は10.0%です。受注高は4,458億円、受注残高は3,019億円でした。売上収益、営業利益、当期利益、受注高はいずれも増加しています。

売上区分別では、システムサービスが1,408億円、サポートサービスが599億円、アウトソーシングが972億円、その他サービスが129億円、ソフトウェアが474億円、ハードウェアが753億円でした。売上総利益では、システムサービスが511億円、アウトソーシングが214億円、サポートサービスが190億円、ハードウェアが136億円です。システムサービスは高い利益率を持ち、アウトソーシングは継続性のある収益として重要です。

コア事業の注力領域では、ファイナンシャルが売上収益508億円、営業利益54億円、リテールが売上収益298億円、営業利益15億円、エネルギーが売上収益200億円、営業利益20億円、モビリティが売上収益326億円、営業利益40億円、OTインフラが売上収益217億円、営業利益20億円でした。合計では売上収益1,549億円、営業利益150億円です。

成長事業では、市場開発が52億円、事業開発が41億円、グローバルが51億円、合計144億円でした。2027年3月期には、市場開発100億円、事業開発100億円、グローバル150億円、合計350億円を目標としています。ここは、今後の成長を測る重要なKPIです。

2027年3月期の通期予想では、売上収益4,700億円、営業利益484億円、親会社の所有者に帰属する当期利益322億円です。年間配当は140円を予想し、配当性向は42.0%の見通しです。2026年3月期には総額100億円の自己株式取得を実施し、取得株式は消却されています。株主還元にも積極的な姿勢が見られます。

今後の注目ポイント

今後の第一の注目ポイントは、BankVisionの拡大です。地域金融機関のシステム刷新、勘定系の共同化、フロント系サービス、金融業務BPaaS、AI活用は、BIPROGYの金融ITを支える重要テーマです。BankVisionの稼働金融機関増加や新規採用が続くかを見る必要があります。

第二の注目ポイントは、リテール事業の収益性改善です。小売業向けの大規模マーチャンダイジング基幹系システム、統合EC、電子棚札、店舗DX需要は伸びています。一方で、ビジネス拡大に向けた投資強化により、2026年3月期のリテールは増収ながら減益でした。カタリナマーケティングジャパンとのシナジーを含め、売上拡大を利益に変えられるかが焦点です。

第三の注目ポイントは、エネルギー領域です。Enabilityの拡販、再生可能エネルギー導入、アグリゲーション事業、蓄電池、PPA、需給調整は、長期的な成長テーマです。社会的意義は大きい一方、制度変更、電力市場、投資負担、収益モデル構築の難しさがあります。ここをBIPROGYらしい社会DX事業へ育てられるかが重要です。

第四の注目ポイントは、データ&AIとマネージドサービスです。Data&AI Innovation Lab、GASSAI、AI駆動型のBankVision、実購買データとAIを組み合わせたマーケティング支援など、AI関連の取り組みは広がっています。AIを単なる実証実験で終わらせず、受注、売上、利益に結びつけられるかを見る必要があります。

第五の注目ポイントは、成長事業350億円目標の実現性です。2026年3月期の成長事業売上は144億円で、2027年3月期目標は350億円です。市場開発、事業開発、グローバルのいずれも大きな伸びが必要です。M&Aや新規サービスの貢献はあるものの、利益を伴う成長になっているかを確認する必要があります。

投資対象として

BIPROGYを投資対象として見る場合、同社は「高成長SaaS企業」ではなく、「業界別の基幹ITと社会DXを組み合わせる中堅大手ITサービス企業」と整理できます。

ポジティブに見るなら、BIPROGYには長い歴史と業界知見があります。金融、リテール、エネルギー、モビリティ、OTインフラという注力領域は、いずれも社会の基盤に近く、長期的にIT投資が続きやすい分野です。BankVision、Enability、リテールDX、データ&AI、GASSAI、doreca、DotHealthなど、単なる受託開発を超えたサービスも育てています。

また、2026年3月期は増収増益で、2027年3月期も売上収益4,700億円、営業利益484億円の増収増益を見込んでいます。配当性向40%以上を目安にし、自己株式取得も実施しているため、株主還元面でも一定の魅力があります。大日本印刷が主要株主である点も、情報・マーケティング・セキュリティ領域での連携余地として見ることができます。

一方で、慎重に見るべき点もあります。営業利益率は10%前後であり、オービックや野村総合研究所のような高利益率企業とは違います。経営方針の売上収益目標は上回る見込みですが、調整後営業利益率目標11.0%には届いていません。売上を伸ばしても、投資、人件費、低採算案件、不採算案件があれば利益率は伸びません。

また、成長事業は期待が大きい一方、まだ規模が小さく、収益化の難易度も高いです。AI、ヘルスケア、地域創生、スマートライフ、グローバルは魅力的なテーマですが、競合も多く、事業モデルの確立には時間がかかります。

したがって、BIPROGYの株価を見るときは、売上収益、営業利益率、調整後営業利益率、受注高、受注残高、システムサービスとアウトソーシングの伸び、BankVisionの採用状況、リテール・エネルギーの利益率、成長事業売上、配当、自己株式取得を確認する必要があります。投資対象としては、安定したITサービス需要を背景にしながら、サービス型・社会DX型へ変われるかが評価の鍵になる会社です。

まとめ

BIPROGYは、旧日本ユニシスを前身とし、日本の情報化社会形成に長く関わってきたITサービス企業です。日本初の商用コンピューター納入、オンラインバンキング、金融機関向けソフトウェア、BankVision、ユニアデックス、DNPとの資本業務提携などを経て、2022年にBIPROGYへ商号変更しました。

BIPROGY 強みは、金融、流通・小売、エネルギー、モビリティ、OTインフラといった業界に深く入り込み、顧客の業務を理解したうえでシステムとサービスを提供できることです。特にBankVision、リテールDX、Enability、OTネットワーク・セキュリティ、データ&AI、GASSAI、dorecaなどは、同社の方向性を示しています。

2026年3月期は、売上収益4,337億円、営業利益426億円、当期利益312億円でした。2027年3月期は、売上収益4,700億円、営業利益484億円を見込んでいます。売上成長と受注増は続いていますが、利益率目標にはまだ改善余地があります。今後は、コア事業の収益性を高めながら、成長事業をどこまで利益の柱にできるかが焦点です。

一方で、課題もあります。不採算案件、利益率改善、成長事業の収益化、競争激化、AIによるSIビジネスの変化には注意が必要です。特に、社会DXやデジタルコモンズという大きな構想を、具体的な売上・利益・継続収益へ落とし込めるかが問われます。

就活生にとって、BIPROGYは、金融IT、流通DX、エネルギー、モビリティ、OTセキュリティ、クラウド、AI、社会DX、ASEAN展開に関われる会社です。個人投資家にとっては、旧日本ユニシスの安定したITサービス基盤だけでなく、BankVision、リテール、エネルギー、データ&AI、成長事業の進捗を見ていくべき企業です。

BIPROGYは、単にシステムを作る会社ではありません。長年蓄積してきた業界知見をもとに、金融、流通、エネルギー、暮らし、地域、健康、グローバルをつなぎ、社会課題を解くデジタル基盤を作ろうとしている会社です。その構想を、安定した収益と成長事業の柱へ変えられるか。そこが、BIPROGY 企業研究の最大のポイントになります。