NTTデータグループを一言でいうと

NTTデータグループは、官公庁、自治体、金融機関、製造業、流通、小売、通信、ヘルスケア、海外企業向けに、コンサルティング、システム開発、運用、クラウド、データセンター、ネットワーク、サイバーセキュリティ、AI活用まで提供する、日本発の巨大ITサービス企業です。

企業研究として見るなら、NTTデータグループは単なるシステム開発会社ではありません。公共・金融・法人の大規模システムを長期運用する国内IT企業であり、同時に、海外でITサービスとデータセンターを拡大するグローバル企業でもあります。日本の行政、銀行、決済、通信、製造、流通の裏側には、NTTデータグループが関わるシステムが多く存在します。

NTTデータグループ 強みを一言でいえば、「社会インフラ級の大規模システムを、国内外で作り、動かし続ける力」です。オービックがOBIC7を軸に企業の基幹業務ERPで高収益を出す会社なら、NTTデータグループは公共・金融・法人・海外・データセンターを広く抱える総合ITサービス企業です。野村総合研究所が金融ITとコンサルティングに強い高収益企業なら、NTTデータグループはより大規模で、公共・社会基盤・海外インフラまで含む会社です。

もう一つ重要なのは、NTTデータグループは2025年9月26日に上場廃止となり、現在はNTTの完全子会社になっている点です。そのため、かつてのようにNTTデータグループ単体の株式を個人投資家が市場で直接買うことはできません。投資対象として見る場合は、NTTグループ全体の一部として、あるいはITサービス業界の比較対象として見る必要があります。

ただし、上場廃止後も事業としての重要性はむしろ高まっています。生成AIの普及により、企業はアプリケーションだけでなく、データ、クラウド、セキュリティ、データセンター、ネットワーク、業務プロセスを一体で見直す必要があります。NTTデータグループは、この変化に対して、AIと次世代インフラを組み合わせた成長戦略を打ち出しています。

なぜ今NTTデータグループを見るのか

今、NTTデータグループを見る理由は、同社が「国内の大規模SIer」から、「AI時代のグローバルIT・インフラ企業」へ変わろうとしているからです。

従来のNTTデータは、官公庁や金融機関向けの大規模システムに強い会社という印象がありました。公共分野では行政・自治体・社会インフラ、金融分野では銀行・決済・カード・保険、法人分野では製造・流通・小売・通信などのITシステムを担ってきました。これだけでも、日本のITサービス業界では非常に大きな存在です。

しかし、現在のNTTデータグループは、それだけでは説明できません。海外売上が国内売上を上回る規模になり、さらにグローバルデータセンター事業が急拡大しています。2026年3月期の売上高は5兆46億円、営業利益は4,882億円、説明資料上のProfitは2,651億円でした。売上高は5兆円を超え、新規受注は6兆1,050億円に達しています。国内の公共・金融・法人だけでなく、海外ITサービスとデータセンターが成長を支える会社になっています。

2026年3月期の日本セグメントは、売上高2兆727億円、営業利益2,250億円でした。内訳を見ると、公共・社会基盤、金融、法人の三つがいずれも売上を伸ばしています。公共・社会基盤では中央省庁や関連団体向け、金融では地域金融機関向け、法人では企業向けシステム需要が伸びました。国内は成熟市場に見えますが、行政DX、金融機関のシステム刷新、企業のクラウド化・データ活用・生成AI対応が続くため、需要は底堅いです。

海外セグメントは、売上高3兆92億円、営業利益2,665億円でした。海外では北米、EMEA・ラテンアメリカ、APAC、グローバルテクノロジーサービス・データセンター関連が含まれます。特にデータセンター事業は、クラウドとAI需要を背景に大きな受注を獲得しています。生成AI時代には、アプリケーションだけでなく、それを動かすデータセンター、ネットワーク、クラウド、セキュリティが重要になります。ここでNTTデータグループは、単なるSIerではなく、インフラまで持つ会社としての強みを出そうとしています。

2027年3月期の会社計画では、売上高5兆1,900億円、営業利益4,700億円、Profit2,250億円、EBITDA8,000億円を見込んでいます。営業利益は前期比で減少する計画ですが、これは2026年3月期にデータセンター譲渡益が大きく入っていた反動もあります。実力ベースでは、日本と海外の事業拡大、AIビジネスの成長、次世代インフラ需要が焦点になります。

成り立ち

NTTデータグループの源流は、1967年に日本電信電話公社に設置されたデータ通信本部にあります。現在のような民間IT企業として始まったのではなく、日本の通信・情報処理インフラを担う公社組織の一部として出発しました。この出自が、NTTデータグループの性格を強く形づくっています。

1970年代から1980年代にかけて、金融、行政、航空、通信などの分野で、社会インフラに近い大規模情報処理システムが整備されていきました。全国銀行データ通信システム、金融ANSER、公共系システムなど、社会の基盤となるシステムが増えていきます。NTTデータの強みである「止められないシステム」を扱う文化は、この時代から続いています。

1985年に日本電信電話公社が民営化され、NTTが発足しました。その後、1988年にデータ通信事業本部が分社化され、NTTデータ通信株式会社が設立されます。ここから、NTTデータは独立したITサービス企業として成長していきました。1995年には東京証券取引所市場第二部に上場し、1996年には第一部指定となりました。1998年には社名を株式会社NTTデータに変更しています。

その後、NTTデータは国内の公共・金融・法人向けシステムを強化する一方、海外企業の買収や統合を通じてグローバル展開を進めました。国内の大規模SIerから、世界規模のITサービス企業へ広がったのです。2023年には持株会社体制へ移行し、持株会社がNTTデータグループ、国内事業会社がNTTデータとなりました。海外事業会社であるNTT DATA, Inc.と合わせて、国内と海外を分けて経営する体制が整えられました。

そして2025年には、親会社であるNTTによる完全子会社化が進み、NTTデータグループ株式は上場廃止となりました。これは、NTTグループ全体としてAI、クラウド、ネットワーク、データセンター、法人向けITサービスを一体で強化するための再編と見ることができます。NTTデータグループは、上場企業としての単独評価から、NTTグループの中核ITサービス会社としての位置づけへ変わったのです。

事業内容

NTTデータグループの事業は、大きく日本セグメントと海外セグメントに分けて見ると理解しやすくなります。さらに日本セグメントは、公共・社会基盤、金融、法人の三つに分かれます。

公共・社会基盤分野では、官公庁、自治体、独立行政法人、公共インフラ、医療、教育、防災、社会保障、交通、通信などに関わるシステムを提供します。行政手続きのデジタル化、マイナンバー関連、自治体システム、税・社会保障、公共インフラの保守・運用など、社会に近い領域が多いことが特徴です。こうしたシステムは、単に効率化するだけでなく、社会の信頼性や安全性に関わります。

金融分野では、銀行、保険、証券、クレジットカード、決済、ネットバンキング、地域金融機関、金融機関の基幹システムを扱います。金融システムは、正確性、セキュリティ、24時間365日の安定稼働が求められます。NTTデータは、金融決済ネットワークや銀行・カード関連システムで長い実績を持ちます。金融機関のシステム刷新やデジタル接点強化は、今後も需要が続く領域です。

法人分野では、製造業、流通・小売、通信、メディア、サービス業、エネルギー、ヘルスケアなどに対して、基幹システム、ERP、SCM、CRM、データ活用、クラウド、生成AI、アプリケーション開発、運用、BPOなどを提供します。企業がDXを進める中で、業務プロセスの見直し、データ連携、顧客接点のデジタル化が重要になっており、NTTデータはコンサルティングからシステム構築・運用までを担います。

海外セグメントでは、北米、EMEA・ラテンアメリカ、APAC、グローバルテクノロジーサービス、データセンター事業などを展開しています。海外では、アプリケーション開発、コンサルティング、クラウド、SAP、デジタルビジネス、インフラ運用、データセンターなど、幅広いITサービスを提供しています。国内のような公共・金融中心ではなく、地域ごとに顧客業界やサービス内容が異なります。

特に近年重要なのが、データセンター事業です。AIやクラウドの普及により、世界的にデータセンター需要が増えています。NTTデータグループは、グローバルでデータセンターを展開し、AI時代の次世代インフラを成長領域としています。これは、単なるシステム開発会社とは大きく異なる特徴です。

収益構造

NTTデータグループの収益構造は、国内の公共・金融・法人向けITサービスと、海外ITサービス・データセンター事業を組み合わせた構造です。

2026年3月期の売上高は5兆46億円、営業利益は4,882億円でした。営業利益率は9.8%です。ITサービス企業としては高い規模を持つ一方、営業利益率はオービックや野村総合研究所より低くなります。これは、NTTデータグループが大規模受託開発、海外ITサービス、データセンター、インフラ運用など、幅広い事業を抱えているためです。高収益なソフトウェア専業というより、総合ITサービス企業としての性格が強い会社です。

日本セグメントの売上高は2兆727億円、営業利益は2,250億円でした。営業利益率は10.9%です。公共・社会基盤の売上高は8,427億円、営業利益は1,066億円。金融の売上高は7,618億円、営業利益は912億円。法人の売上高は5,960億円、営業利益は667億円でした。公共・社会基盤は売上規模が大きく、金融は安定性と専門性が高く、法人はDX需要を取り込む成長領域です。

海外セグメントの売上高は3兆92億円、営業利益は2,665億円でした。海外では、北米、EMEA・ラテンアメリカ、APAC、グローバルテクノロジーサービスなどの事業があり、EBITAでは3,215億円となっています。グローバルテクノロジーサービスは、データセンター事業の成長により大きく利益を伸ばしました。2026年3月期にはデータセンター譲渡益も営業利益を押し上げています。

ここで重要なのは、新規受注です。2026年3月期の新規受注は6兆1,050億円でした。うちデータセンター事業の新規受注は1兆882億円です。データセンターを除いても、新規受注は4兆9,223億円で、前期比15.3%増でした。ITサービス企業では、受注残と新規受注が将来売上の重要な先行指標になります。売上高だけでなく、受注の質と採算性を見る必要があります。

2027年3月期の会社予想では、売上高5兆1,900億円、営業利益4,700億円、Profit2,250億円です。営業利益は前期比で減少する予想ですが、これはデータセンター譲渡益の減少を織り込んだものです。実力ベースでは、日本・海外の成長、AIビジネス、次世代インフラ需要をどれだけ利益に変えられるかが焦点になります。

事業内容の特徴

NTTデータグループの事業内容の特徴は、システムを作るだけでなく、社会や企業の基幹業務を長期で運用することです。

ITサービスには、短期間でアプリを作る仕事もあれば、長期にわたり社会インフラを支える仕事もあります。NTTデータグループは後者の色が非常に強い会社です。行政、銀行、決済、公共インフラ、法人の基幹システムは、止まれば社会や企業活動に大きな影響が出ます。そのため、信頼性、品質管理、セキュリティ、運用保守、障害対応、制度改正対応が重要になります。

また、NTTデータグループは国内外で非常に広い顧客基盤を持ちます。国内では中央省庁、自治体、金融機関、大企業。海外ではグローバル企業、クラウド・インフラ需要を持つ顧客、SAPやクラウド関連の顧客などです。この広さは、景気や業界の波を分散する効果があります。一方で、事業が広い分、経営管理は難しくなります。

もう一つの特徴は、NTTグループの技術・ネットワーク・研究開発との接続です。NTTグループ全体では、通信、ネットワーク、研究開発、データセンター、法人向けサービス、セキュリティ、AI、光技術などの資産があります。NTTデータグループは、その中でITサービスとシステム実装を担う中核会社です。完全子会社化後は、NTTグループ内の連携をより進めやすくなったと考えられます。

一方で、NTTデータグループはオービックのように単一ERPで高利益率を出す会社ではありません。公共・金融・法人・海外・データセンターという広い領域を持つため、各事業の利益率や投資負担は異なります。投資家や就活生は、「NTTデータ」という一枚看板だけでなく、どの分野で働くのか、どの事業が成長しているのかを分けて見る必要があります。

競合他社との違い

NTTデータグループの競合は、国内では野村総合研究所、オービック、TIS、SCSK、富士通、NEC、日立製作所、伊藤忠テクノソリューションズなどです。海外では、Accenture、IBM、Capgemini、Cognizant、TCS、Infosys、Wipro、DXC Technology、Atos、Deloitte、AWS、Microsoft、Google Cloudなどが比較対象になります。

オービックとの違いは、規模と事業集中度です。オービックはOBIC7を中心に、企業の基幹業務ERPを自社開発・直接販売・ワンストップで提供し、営業利益率60%台という非常に高い収益性を持ちます。NTTデータグループは、ERPに集中する会社ではなく、公共・金融・法人・海外・データセンターまで幅広く展開します。オービックが高収益集中型なら、NTTデータグループは総合規模型です。

野村総合研究所との違いは、金融ITとコンサルの深さに対する、社会インフラと海外規模の広さです。NRIは金融ITの共同利用型サービスとコンサルティングに強く、国内事業の利益率が高い会社です。NTTデータグループも金融ITに強いですが、公共・社会基盤、海外ITサービス、データセンターまで含む点でより広い会社です。NRIが高付加価値型なら、NTTデータグループは大規模実装・運用・グローバルインフラ型です。

TISとの違いは、金融・決済と総合力の違いです。TISはクレジットカード、決済、金融、産業向けITに強い独立系SIerです。NTTデータグループも決済・金融に強いですが、公共・社会基盤や海外データセンターまで持つ点で事業領域がさらに広くなります。TISが決済・金融ITの専門性を持つ会社なら、NTTデータグループは社会インフラ級の幅広いITサービス会社です。

富士通、NEC、日立との違いは、メーカー系ITとの比較です。これらの企業は、ハードウェア、ネットワーク、公共・社会インフラ、製造、通信、AI、研究開発を含む総合電機・IT企業です。NTTデータグループは、ハードウェアメーカーではなく、システムインテグレーション、コンサルティング、運用、データセンター、クラウド、AIを中心に展開します。NTTグループの通信・研究開発資産とは連携しつつ、顧客企業のシステム実装に強い会社です。

Accentureとの違いは、グローバルコンサル・変革支援との比較です。Accentureは戦略、コンサルティング、テクノロジー、アウトソーシングを世界規模で提供する巨大企業です。NTTデータグループも世界70か国以上で展開しますが、出自は日本の公共・金融・社会インフラシステムにあります。日本市場や公共・金融の深さ、NTTグループの通信・インフラ資産との接続が差別化になります。

事業の現代での潮流

NTTデータグループを取り巻く潮流は、DX、生成AI、データセンター需要、クラウド移行、サイバーセキュリティ、公共システム刷新、金融システム更新、グローバル再編です。

第一に、DX需要です。企業や行政は、古いシステム、紙の業務、部門別データ、手作業を見直し、業務プロセスをデジタル化する必要があります。これは一度で終わるテーマではありません。制度変更、働き方改革、人手不足、顧客接点のデジタル化が続く限り、IT投資は続きます。NTTデータグループは、国内公共・金融・法人でこの需要を取り込んでいます。

第二に、生成AIです。生成AIは、コールセンター、行政窓口、金融審査、システム開発、データ分析、ドキュメント作成、業務自動化に入り込んでいきます。ただし、企業がAIを本格利用するには、データの整備、権限管理、セキュリティ、業務ルール、既存システムとの連携が必要です。NTTデータグループは、業界特化型AIとAI基盤を組み合わせる戦略を打ち出しています。

第三に、データセンター需要です。AIモデルの学習・推論、クラウド利用、データ保管、グローバル企業のIT基盤には、大量の電力と冷却設備を持つデータセンターが必要です。NTTデータグループは、グローバルデータセンター事業を持ち、AI時代の次世代インフラとして位置づけています。これは、従来のSIerにはない大きな成長機会です。

第四に、セキュリティです。公共・金融・企業システムがクラウド化し、AIを使うほど、サイバー攻撃や情報漏えいのリスクも高まります。社会インフラ級のシステムを担うNTTデータグループにとって、セキュリティは単なる付加サービスではなく、信頼の中核です。システム開発、運用、クラウド、ネットワーク、データセンターを一体で守る必要があります。

第五に、グローバル再編です。NTTデータグループは、海外事業を大きく拡大してきましたが、海外ITサービスは競争が激しく、地域ごとに収益性も異なります。北米、EMEA、APAC、グローバルテクノロジーサービスで成長機会はありますが、買収後統合、為替、労務費、顧客投資の変動、データセンター投資負担には注意が必要です。

強み

NTTデータグループの第一の強みは、公共・金融・法人の大規模システム実績です。官公庁、自治体、銀行、カード、保険、製造、流通など、社会や企業の基幹業務に深く入り込んでいます。こうした領域では、価格だけでなく、信頼性、運用力、制度対応、セキュリティが重要です。長年の実績は強い参入障壁になります。

第二の強みは、国内と海外の両方を持つ規模です。売上高5兆円規模のITサービス企業は、日本では限られています。国内の安定した公共・金融・法人事業に加え、海外ITサービスとデータセンターを持つことで、成長余地が広がります。国内だけに依存しない点は、長期的な強みです。

第三の強みは、NTTグループとの連携です。完全子会社化により、NTTグループの通信、研究開発、データセンター、クラウド、セキュリティ、AI、光技術との連携をさらに進めやすくなりました。生成AI時代には、アプリケーションだけでなく、ネットワーク、データセンター、クラウド、セキュリティを一体で提供できることが重要です。

第四の強みは、データセンター事業です。多くのSIerはアプリケーション開発や運用が中心ですが、NTTデータグループはグローバルでデータセンター事業を持っています。AI・クラウド需要の拡大は、データセンターにとって追い風です。2026年3月期にはデータセンター事業の新規受注が1兆円を超えました。

第五の強みは、顧客業界の広さです。公共、金融、法人、海外、データセンターという多様な事業を持つため、特定業界の不振にすべてを左右されにくい面があります。金融ITが一時的に弱くても公共や法人、データセンターが補う可能性があります。一方で、この広さを収益性の高さに変えられるかが経営力の見せどころです。

弱み・リスク

NTTデータグループの第一のリスクは、営業利益率の低さです。2026年3月期の営業利益率は9.8%で、野村総合研究所やオービックと比べると低い水準です。大規模受託開発、海外ITサービス、データセンター投資、インフラ運用を含むため当然の面はありますが、投資家から見ると、規模の大きさをどれだけ利益率向上につなげられるかが課題です。

第二のリスクは、大規模プロジェクトリスクです。公共・金融・法人の大型システムは、規模が大きく、納期、品質、制度変更、顧客側の仕様変更、外部委託管理が難しくなります。プロジェクトが失敗すれば、追加費用、損失、信用低下につながります。大規模SIerにとって、プロジェクト管理は常に重要なリスクです。

第三のリスクは、海外事業の統合と採算です。海外ITサービスは、Accenture、IBM、TCS、Infosys、Capgeminiなど強い競合が多く、価格競争もあります。買収で広げた事業を統合し、グローバルに利益率を高めるのは簡単ではありません。為替や地域景気、人件費も影響します。

第四のリスクは、データセンター投資の重さです。データセンターは成長領域ですが、土地、建物、電力、冷却、設備、ネットワークに巨額の投資が必要です。需要が強い間は追い風ですが、供給過剰、電力制約、金利上昇、顧客契約条件の変化があれば、収益性に影響します。データセンター譲渡益のような一時益と、継続的な収益力を分けて見る必要があります。

第五のリスクは、非上場化による投資家視点の変化です。現在、NTTデータグループは上場廃止となっており、個人投資家が直接株式を保有する対象ではありません。開示は続いていますが、上場企業としての市場評価とは異なります。投資家は、NTTデータ単体ではなく、NTTグループ全体の中での位置づけとして見る必要があります。

数字で見るNTTデータグループ

NTTデータグループを見るときは、売上高、営業利益、営業利益率、新規受注、受注残、国内と海外の売上・利益、データセンター事業、EBITDA、キャッシュフロー、設備投資を確認する必要があります。

2026年3月期の売上高は5兆46億円、営業利益は4,882億円、営業利益率は9.8%でした。説明資料上のProfitは2,651億円です。新規受注は6兆1,050億円で、前期比21.1%増でした。データセンター事業を除いた新規受注でも4兆9,223億円で、前期比15.3%増です。受注残は8兆2,403億円、データセンター事業を除いても5兆406億円でした。

日本セグメントは、売上高2兆727億円、営業利益2,250億円、営業利益率10.9%でした。公共・社会基盤は売上高8,427億円、営業利益1,066億円。金融は売上高7,618億円、営業利益912億円。法人は売上高5,960億円、営業利益667億円です。公共・社会基盤は受注が大きく伸び、金融と法人も増収増益となりました。

海外セグメントは、売上高3兆92億円、営業利益2,665億円でした。EBITAでは3,215億円、EBITAマージン10.7%です。北米は売上高6,101億円、EMEA・ラテンアメリカは1兆1,020億円、APACは3,568億円、グローバルテクノロジーサービスは1兆393億円でした。データセンター事業が含まれるグローバルテクノロジーサービスは、EBITA2,419億円と大きな利益を出しています。

2027年3月期の会社予想では、売上高5兆1,900億円、営業利益4,700億円、Profit2,250億円、EBITDA8,000億円を見込んでいます。営業利益は前期比で減少する予想ですが、データセンター譲渡益が2026年3月期の1,295億円から2027年3月期に約700億円へ減少する想定が影響しています。したがって、営業利益の表面だけでなく、一時益を除いた成長を見る必要があります。

設備投資も重要です。2026年3月期の設備投資は6,358億円で、2027年3月期は8,040億円を見込んでいます。データセンターや次世代インフラへの投資が大きいため、NTTデータグループはソフトウェア企業でありながら、資本集約的な面も強くなっています。

今後の注目ポイント

今後の第一の注目ポイントは、AIを中核とした成長戦略です。NTTデータグループは、「AI-empowered New Value & Productivity」と「Next-Gen Infrastructure」を注力領域に位置づけています。業界特化型AI、AIエージェント、AIネイティブ開発、AI基盤、クラウド、データセンターを組み合わせ、顧客企業の事業変革を支援する方針です。AIを単なる社内効率化で終わらせず、売上と利益に変えられるかが焦点です。

第二の注目ポイントは、データセンター事業です。生成AIとクラウド需要は、世界的にデータセンター投資を押し上げています。NTTデータグループはグローバルデータセンターを持ち、AI-readyなインフラを提供しようとしています。ただし、設備投資が大きく、利益には譲渡益など一時要因も含まれるため、継続的な収益力を見極める必要があります。

第三の注目ポイントは、国内公共・金融の大型案件です。日本セグメントでは、公共・社会基盤と金融で大型受注が伸びています。行政DX、自治体システム、金融機関の勘定系・決済・チャネル刷新、地域金融機関の共同化などは、今後も需要が続く可能性があります。国内は成長率こそ高くないかもしれませんが、安定した収益基盤です。

第四の注目ポイントは、海外事業の利益率です。海外売上は3兆円規模に達していますが、地域ごとに採算は異なります。北米、EMEA、APAC、グローバルテクノロジーサービスのどこで利益を伸ばし、どこでコスト管理が必要かを見る必要があります。海外は成長余地が大きい一方、競争も激しく、買収後統合の難しさもあります。

第五の注目ポイントは、NTTグループ内での役割です。完全子会社化により、NTTデータグループはNTTグループの中で、法人向けIT、AI、クラウド、データセンター、海外ITサービスの中核を担う存在になりました。NTTの通信・研究開発・ネットワークと、NTTデータのシステム実装・運用力がどこまで結びつくかが重要です。

投資対象として

NTTデータグループを投資対象として見る場合、まず重要なのは、同社株式が2025年9月26日に上場廃止となり、現在は個人投資家がNTTデータグループ単体に直接投資できないという点です。そのため、通常の意味でのPER、PBR、配当利回りを使った単独株式分析はできません。

ただし、投資家にとってNTTデータグループを分析する意味は大きいです。第一に、NTTに投資する場合、NTTデータグループはグローバル・ソリューション事業やAI・データセンター戦略の中核として重要です。NTTグループ全体の成長を考えるうえで、NTTデータグループのITサービス、海外、データセンター、AI戦略は欠かせません。

第二に、ITサービス業界の比較対象として重要です。オービックや野村総合研究所、TIS、SCSK、NTTデータグループを比べると、それぞれの違いが見えます。オービックはERPで超高利益率、NRIは金融ITとコンサルで高収益、TISは決済・金融ITに強く、NTTデータグループは公共・金融・法人・海外・データセンターを持つ総合規模型です。直接投資できないとしても、業界理解には非常に重要な会社です。

第三に、非上場化後のNTTデータグループは、短期的な株式市場の評価から離れ、NTTグループ全体でAI・データセンター投資を進めやすくなったと見ることができます。データセンターは巨額投資が必要で、短期利益を圧迫する可能性もあります。完全子会社化により、長期視点でグループシナジーを追いやすくなった面があります。

一方で、リスクもあります。データセンターは資本負担が大きく、営業利益に一時益が含まれる場合もあります。海外事業は競争が激しく、地域ごとの採算管理が必要です。公共・金融の大型案件は安定性がある一方、プロジェクトリスクもあります。NTTグループ全体で見ても、投資額、キャッシュフロー、負債、資本効率を確認する必要があります。

投資対象としては、NTTデータグループ単体ではなく、NTT株を通じた間接的な見方になります。その場合、NTTデータグループの成長がNTT全体の利益、キャッシュフロー、成長ストーリーにどれだけ寄与するかを見るべきです。特に、AI、データセンター、海外ITサービスが、通信事業の成熟を補う成長領域になれるかが重要です。

まとめ

NTTデータグループは、1967年に日本電信電話公社のデータ通信本部として始まり、1988年にNTTデータ通信株式会社として分社化された、日本を代表するITサービス企業です。公共、金融、法人向けの大規模システムを支えながら、海外ITサービスとデータセンター事業へ広がってきました。2023年には持株会社体制へ移行し、2025年にはNTTの完全子会社となり上場廃止されました。

NTTデータグループ 強みは、社会インフラ級の大規模システムを作り、動かし続ける力です。日本セグメントでは公共・社会基盤、金融、法人の三分野を持ち、海外セグメントでは北米、EMEA、APAC、グローバルテクノロジーサービス、データセンターを展開しています。2026年3月期の売上高は5兆46億円、営業利益は4,882億円、新規受注は6兆1,050億円でした。

一方で、課題も明確です。営業利益率はオービックや野村総合研究所より低く、海外事業の採算、データセンター投資、巨額設備投資、大規模プロジェクトリスク、非上場化後の投資家目線の変化には注意が必要です。2027年3月期は売上高5兆1,900億円、営業利益4,700億円を見込んでいますが、データセンター譲渡益の反動を含めて見る必要があります。

就活生にとって、NTTデータグループは、公共、金融、法人、海外、クラウド、AI、データセンター、セキュリティ、コンサルティング、システム運用に関われる会社です。個人投資家にとっては、現在は直接投資できないものの、NTTグループ全体の成長領域として、またITサービス業界の比較対象として重要な企業です。

NTTデータグループは、単にシステムを作る会社ではありません。行政、金融、企業、海外、AI、データセンターをつなぎ、社会と企業の基幹インフラを支える会社です。その巨大な事業基盤を、AI時代の次世代インフラと高付加価値サービスへ進化させられるか。そこが、NTTデータグループ 企業研究の最大のポイントになります。