大林組を一言でいうと

大林組は、国内建築、国内土木、海外建設、不動産開発、グリーンエネルギーまで展開する、日本を代表するスーパーゼネコンの一角です。

建設会社というと、ビルや道路をつくる会社という大まかな印象になりがちです。しかし、大林組を理解するには、単に「工事を請け負う会社」と見るだけでは不十分です。東京スカイツリー、東京駅関連工事、大阪城天守閣、東京国際フォーラム、大阪ドーム、京都駅ビル、六本木ヒルズ森タワー、グランフロント大阪、虎ノ門ヒルズ、グラングリーン大阪、2025年大阪・関西万博の大屋根リングなど、同社は時代を象徴する建築・都市プロジェクトに関わってきました。

同じ建設業界でも、大和ハウス工業や積水ハウスは住宅・賃貸住宅・不動産開発を中心に広がった会社です。一方、大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店は、スーパーゼネコンと呼ばれ、大型建築・土木・都市開発・海外建設を担う会社です。その中で大林組は、大阪発祥の建設会社として、大阪築港、大阪地下鉄、大阪城天守閣、関西国際空港、グランフロント大阪など関西の大規模事業に深く関わりながら、東京スカイツリーや虎ノ門ヒルズのような首都圏の象徴的な建築にも実績を持っています。

大林組の企業研究で重要なのは、建築と土木の両方を持ち、さらに海外建設、不動産開発、グリーンエネルギー、新領域ビジネスへ広げている点です。大型工事の施工力だけでなく、受注選別、原価管理、協力会社との関係、開発物件の売却、海外子会社の採算、株主還元まで見ることで、会社の実態が見えてきます。

なぜ今大林組を見るのか

大林組を今見る理由は、国内建設市場の需要が底堅い一方で、建設コスト、人手不足、施工能力、海外建設、開発事業のリスクが同時に大きくなっているからです。

国内では、都市再開発、データセンター、半導体関連施設、物流施設、医療・研究施設、インフラ更新、防災・減災工事が続いています。古いインフラやビルを更新し、都市の機能を高める需要は中長期で残ります。特に、東京・大阪・名古屋・福岡などの都市部では、再開発と大型建築の需要があり、スーパーゼネコンの施工力が必要とされます。

一方で、建設業界は簡単な環境ではありません。鉄骨、セメント、設備機器、エネルギー価格、人件費は上がりやすく、協力会社や技能者の確保も難しくなっています。2024年以降の時間外労働規制により、従来のように長時間労働で工期を吸収することも難しくなりました。受注が多いことは追い風ですが、施工能力に見合わない案件を取りすぎると、数年後に低採算工事として利益を圧迫します。

2026年3月期の大林組は、連結売上高2兆5,862億円、営業利益1,946億円、経常利益2,041億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,737億円でした。売上高は前期比でほぼ横ばいでしたが、営業利益は36.6%増と大きく伸びました。国内建築事業での追加・変更工事獲得や採算性の良い案件の寄与、海外土木事業の進捗、不動産事業での開発物件売却が利益を押し上げました。

ただし、2027年3月期の会社予想では、売上高2兆9,450億円、営業利益1,800億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,570億円を見込んでいます。売上は増える一方、営業利益は前期比で減少する計画です。これは、前期の利益水準が高かったこと、工事構成や開発物件売却のタイミング、資材・労務費の影響を考える必要があることを示しています。

つまり、今の大林組は、単に「建設需要が強いから良い」と見るのではなく、受注高、繰越高、建築・土木の利益率、海外建設の採算、不動産開発の売却、キャッシュフローを分けて見るべき会社です。

成り立ち

大林組の歴史は、1892年に大林芳五郎が大阪市西区で土木建築請負業「大林店」を創業したことから始まります。最初期には阿部製紙所工場を受注し、1898年には大阪築港工事に参画しました。大阪という商都・港湾都市の発展とともに、大林組は土木建築の会社として成長していきました。

1904年には店名を「大林組」と定め、東京事務所を開設しました。1911年には鉄道院東京中央停車場、現在の東京駅を受注し、大阪電気軌道生駒隧道及び付近線路工事も受注しています。建築だけでなく、鉄道・トンネルなど土木にも早くから関わっていたことが分かります。

1918年には株式会社大林組を創立し、1930年には大阪地下鉄淀屋橋から北久太郎間や大阪城天守閣を受注しました。大阪城天守閣は、現在でも大阪の象徴的な建築物です。戦後には糠平ダムの建設に挑み、1965年には東京都清瀬市に技術研究所を開設しました。同じ年には、日本の超高層建築第一号とされる横浜ドリームランド・ホテルエンパイアを竣工し、本格的な海外進出工事としてインドネシア・ムシ大橋も竣工しました。

1997年には東京国際フォーラム、大阪ドーム、京都駅ビルを竣工し、東京湾アクアラインも開通しました。1998年には明石海峡大橋と品川インターシティ、2003年には六本木ヒルズ森タワー、2012年には東京スカイツリー、2013年にはグランフロント大阪、2014年には虎ノ門ヒルズを竣工しています。大林組の歴史は、都市や時代を象徴するプロジェクトと重なっています。

近年では、2022年にDX本部を新設し、木造高層建築を象徴するPort Plus大林組横浜研修所を完成させました。2024年には都市型データセンターの新会社MiTASUNを設立し、2025年には大阪・関西万博で大屋根リングをはじめとする会場整備やパビリオン建設を手がけています。歴史あるゼネコンでありながら、木造、データセンター、グリーンエネルギー、ロボティクスなど新しい領域にも取り組んでいる点が特徴です。

事業内容

大林組の事業は、国内建設事業、海外建設事業、不動産事業、その他の事業に分けて見ると分かりやすくなります。公式には、国内建設事業を中核として、海外建設事業、エンジニアリング事業、開発事業、グリーンエネルギー事業、新領域ビジネスを展開しています。

国内建設事業のうち、建築では、オフィスビル、マンション、商業施設、工場、病院、学校、研究施設、データセンター、文化施設、スポーツ施設などを手がけます。東京スカイツリーや六本木ヒルズ森タワーのような象徴的な建築だけでなく、企業の生産拠点、医療施設、教育施設、物流施設など、幅広い建築物を提供します。

国内土木では、トンネル、橋梁、ダム、河川、都市土木、鉄道、高速道路、上下水道、港湾などを扱います。生活に不可欠なインフラをつくる事業であり、新設だけでなく、老朽化したインフラの維持・更新、長寿命化、機能強化にも関わります。トンネルや地下工事、都市土木に強いイメージを持たれることも多く、土木は大林組の重要な柱です。

海外建設事業では、北米、アジア、オセアニアなどで建築・土木工事を展開しています。近年では米国建設会社MWH社やGCON社を子会社化し、海外での建設事業の幅を広げています。国内市場だけではなく、海外の水処理、インフラ、先端施設、建築需要を取り込む狙いがあります。

不動産事業では、開発物件の売却や賃貸収益を得ています。建設会社は請負工事だけでなく、自ら不動産開発を行い、開発利益を得ることがあります。大林組も都市開発、オフィス、物流施設、都市型データセンターなどに関わります。開発事業は高い利益を生む可能性がある一方、金利や不動産市況、売却タイミングに左右される事業です。

その他の事業には、グリーンエネルギー、エンジニアリング、新領域ビジネスなどがあります。太陽光、風力、バイオマス、地熱などの再生可能エネルギー、グリーン水素、木造・木質建築、ロボティクス、建設DXなどは、同社が将来に向けて広げようとしている領域です。

収益構造

大林組の収益構造は、建設事業の受注・施工利益、不動産事業の開発物件売却、海外建設事業の採算、その他事業の積み上げで成り立っています。

2026年3月期の売上高は2兆5,862億円でした。このうち、建設事業が2兆4,093億円、不動産事業が1,067億円、その他が700億円です。建設事業が売上の大部分を占めています。建設事業の中では、国内建築が1兆1,387億円、海外建築が5,079億円、国内土木が4,266億円、海外土木が3,360億円でした。

営業利益を見ると、全社営業利益1,946億円のうち、建設事業が1,717億円、不動産事業が199億円、その他が29億円でした。建設事業が利益の中心であることは明確ですが、不動産事業も利益率が高く、年度によって全社利益に大きく寄与します。

建設事業では、受注高と利益率が重要です。2026年3月期の建設事業受注高は2兆8,498億円で、国内建築が1兆2,009億円、海外建築が7,881億円、国内土木が4,442億円、海外土木が4,165億円でした。国内建築・土木では、施工キャパシティに見合った計画的な受注活動を行っていることが示されています。これは、採算を無視して受注を増やすのではなく、施工能力と利益率を重視しているという意味です。

利益率の改善も重要です。2026年3月期は、国内建築事業で追加・変更工事の獲得や採算性の良い案件の寄与があり、海外土木事業でも手持ち工事の増加と順調な進捗が利益を押し上げました。建設業では、受注時の見積もりだけでなく、施工中に発生する変更契約、原価低減、工程管理が利益を左右します。

不動産事業は、開発物件の売却によって売上高1,067億円、営業利益199億円となりました。前期比で増収増益でしたが、開発事業は物件売却のタイミングで利益が変動しやすい事業です。投資家は、建設事業の実力利益と、不動産売却による変動利益を分けて見る必要があります。

事業内容の特徴

大林組の事業の特徴は、大型で難易度の高い建築・土木を、技術力と現場マネジメントで形にすることです。

建設は、図面通りに材料を組み立てるだけの仕事ではありません。現場ごとに、地盤、周辺環境、地下埋設物、交通、騒音、天候、資材調達、労務、行政手続き、近隣調整、工期、予算、安全条件が異なります。大林組のようなスーパーゼネコンは、これらの複雑な条件を管理し、協力会社を束ね、巨大なプロジェクトを完成させます。

建築では、都市の象徴となる建物を多く手がけてきました。東京スカイツリーのような超高層構造物、東京国際フォーラムや京都駅ビルのような大規模公共・商業施設、グランフロント大阪や虎ノ門ヒルズのような都市再開発、データセンターや工場のような高機能施設では、設計、施工、設備、構造、安全、周辺交通の調整が重要です。

土木では、トンネル、橋梁、ダム、河川、鉄道、高速道路、都市土木を扱います。土木工事は、自然条件や地下条件を相手にするため、予測できないリスクが多い領域です。地質や湧水、地盤沈下、周辺構造物への影響を管理しながら工事を進める必要があります。大林組が土木で高い利益を出すには、技術だけでなく、現場でのリスク管理と契約管理が欠かせません。

また、大林組は技術研究と新領域への投資にも特徴があります。技術研究所、ロボティクスセンター、DX本部、グリーンエネルギー本部、木造・木質建築、都市型データセンター会社MiTASUNなどは、従来の請負工事だけにとどまらない姿勢を示しています。建設業の人手不足や脱炭素に対応するため、施工の自動化・省人化、再生可能エネルギー、木造高層建築のようなテーマに取り組んでいます。

就活生の視点では、大林組は、施工管理、設計、研究開発、土木、建築、設備、エンジニアリング、開発、不動産、海外、グリーンエネルギーまで職種が広い会社です。特に施工管理は、建設現場の中心で人・物・金・時間・安全を動かす仕事であり、責任は大きい一方、社会に残るものを作る実感が大きい職種です。

競合他社との違い

大林組の競合は、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店です。これらはスーパーゼネコンと呼ばれ、国内外の大型建築・土木工事、都市再開発、インフラ工事で競います。

鹿島建設は、洋館、鉄道、超高層、原子力、都市再開発などで強い歴史を持つ会社です。清水建設は、社寺建築から超高層、医療・研究施設、環境建築まで幅広く、技術とブランドを持っています。大成建設は、都市再開発、土木、空港、トンネル、海外案件などで存在感があります。竹中工務店は非上場ですが、建築に非常に強いスーパーゼネコンとして知られます。

大林組の違いは、大阪発祥の建設会社として関西の大型プロジェクトに深く関わりながら、東京スカイツリーや六本木ヒルズ森タワー、虎ノ門ヒルズのような首都圏の象徴的プロジェクトにも関わってきた点です。大阪築港、大阪地下鉄、大阪城天守閣、大阪ドーム、グランフロント大阪、大阪・関西万博の大屋根リングなど、関西の都市づくりに強い歴史があります。

また、東京スカイツリーの施工実績は、大林組の建築・構造技術を象徴するものです。超高層・大規模・特殊構造物を安全に施工する技術と現場マネジメントは、スーパーゼネコンとしてのブランドに直結します。

大和ハウス工業や積水ハウスとの違いは、住宅・不動産開発会社か、総合建設会社かという点です。大和ハウス工業は住宅、賃貸、商業施設、物流施設、環境エネルギーを組み合わせる総合開発グループです。積水ハウスは戸建住宅、シャーメゾン、賃貸管理、リフォーム、米国住宅に強い住宅メーカーです。大林組は、住宅そのものよりも、都市・インフラ・大型建築・土木工事を担う会社です。

設備工事会社との違いもあります。高砂熱学工業、三機工業、きんでん、九電工は、空調・電気・衛生などの建物設備を担います。大林組はゼネコンとして、建物やインフラ全体の施工を統括し、設備会社、専門工事会社、メーカーを束ねてプロジェクトを完成させます。個別設備ではなく、プロジェクト全体を統合管理する会社だと理解すると違いが分かりやすくなります。

事業の現代での潮流

大林組を取り巻く第一の潮流は、都市再開発です。東京、大阪、名古屋、福岡などの大都市では、老朽ビルの建て替え、駅前再開発、複合施設、オフィス、ホテル、商業施設、住宅を組み合わせた大規模開発が続いています。スーパーゼネコンは、超高層建築、地下工事、周辺交通、既存建物との調整を含む複雑な工事で力を発揮します。

第二の潮流は、データセンターと先端施設です。生成AI、クラウド、企業DXにより、都市型・郊外型のデータセンター需要が拡大しています。大林組は2024年に都市型データセンターの新会社MiTASUNを設立しており、単なる建設請負だけでなく、データセンター事業そのものへの関与を強めています。データセンターでは、建築、電力、冷却、防災、セキュリティ、運用が一体で重要になります。

第三の潮流は、インフラ更新と防災・減災です。日本の道路、橋梁、トンネル、上下水道、港湾、河川、鉄道は老朽化が進んでいます。気候変動による豪雨災害、地震リスクもあります。新設だけでなく、維持更新、長寿命化、耐震化、防災インフラが重要になります。大林組の国内土木事業は、この流れと結びついています。

第四の潮流は、建設業の人手不足です。建設現場では技能者と施工管理者の不足が続いています。大林組はロボティクスセンター、DX本部、建設の自動・自律化技術、BIM/CIMなどを通じて、生産性と安全性の向上を進めています。今後のゼネコンの競争力は、単に人を集める力だけでなく、少ない人で高難度工事を安全に進める仕組みによって決まります。

第五の潮流は、脱炭素とグリーンエネルギーです。大林組は再生可能エネルギー事業を開始し、グリーンエネルギー本部を設けています。太陽光、風力、バイオマス、地熱、グリーン水素、木造・木質建築などは、建設会社が脱炭素社会にどう関わるかを示すテーマです。建物を作るだけでなく、エネルギーを作り、運用し、環境負荷を下げる会社へ広がろうとしています。

強み

大林組の強みは、第一に大型建築の実績です。東京スカイツリー、東京国際フォーラム、大阪ドーム、京都駅ビル、六本木ヒルズ森タワー、グランフロント大阪、虎ノ門ヒルズなど、都市を象徴する建築に数多く関わっています。これらの実績は、施主からの信頼と次の大型案件受注につながります。

第二の強みは、土木の技術と歴史です。大阪築港、大阪地下鉄、東京駅、生駒隧道、糠平ダム、東京湾アクアライン、明石海峡大橋、ニュージーランドのウォータービューコネクショントンネルなど、インフラ建設に関わる実績があります。トンネル、橋梁、ダム、都市土木、鉄道、高速道路の技術は、今後のインフラ更新でも重要です。

第三の強みは、施工管理と受注選別です。2026年3月期は国内建築で追加・変更工事を獲得し、採算性の良い案件の寄与が高まりました。建設会社にとって、技術力は単に難しい工事をこなすことだけではありません。適切な価格で受注し、施工中に原価を管理し、変更契約を獲得し、利益を残す力が本当の競争力です。

第四の強みは、海外建設とM&Aです。米国建設会社MWH社やGCON社を子会社化し、海外での建設事業を拡充しています。国内市場が成熟する中で、海外建設や水処理・先端施設の需要を取り込めるかは重要な成長テーマです。

第五の強みは、技術研究と新領域です。技術研究所、ロボティクスセンター、DX本部、グリーンエネルギー本部、木造建築のPort Plus、都市型データセンターのMiTASUNなど、従来の建設請負だけでなく、将来の建設・都市・エネルギーを見据えた取り組みがあります。

弱み・リスク

大林組の最大のリスクは、工事採算の悪化です。建設工事は、受注時に見込んだ原価と、実際の資材費・人件費・工期がずれると利益が大きく変わります。特に大型工事では、設計変更、地盤条件、資材高騰、工期遅延、協力会社不足、安全対策費が利益を圧迫する可能性があります。

第二のリスクは、人手不足です。建設業界では技能労働者と施工管理者の不足が続いています。時間外労働規制もあり、従来のように人海戦術で工期を吸収することは難しくなっています。大林組が施工キャパシティに見合った計画的な受注活動を行っているのは、この制約を意識しているためです。

第三のリスクは、海外事業です。海外建設では、契約条件、法制度、為替、労務、資材、インフレ、政治リスク、訴訟リスクが国内より複雑です。海外建築・海外土木の売上規模は大きくなっていますが、利益率を安定させるには現地管理力が必要です。MWH社やGCON社の買収効果も、統合と採算改善を確認する必要があります。

第四のリスクは、不動産事業の市況変動です。2026年3月期は開発物件の売却により不動産事業が増収増益でしたが、物件売却は毎期同じように発生するとは限りません。金利上昇や不動産投資家の利回り要求が高まれば、売却価格や開発採算に影響します。

第五のリスクは、株主還元期待と成長投資のバランスです。大林組はDOE5%程度に基づく配当を掲げ、配当水準を引き上げています。一方で、建設DX、人材投資、海外M&A、グリーンエネルギー、不動産開発には資金が必要です。還元を強めすぎれば将来投資が弱くなり、投資を増やしすぎれば財務負担が重くなります。

数字で見る大林組

大林組を見るときは、売上高、営業利益、建設事業受注高、国内建築・土木の利益率、海外建設の採算、不動産事業の売却益、キャッシュフロー、自己資本比率、配当を確認する必要があります。

2026年3月期の連結売上高は2兆5,862億円、営業利益は1,946億円、経常利益は2,041億円、親会社株主に帰属する当期純利益は1,737億円でした。営業利益率は7.5%です。売上高は前期比0.2%減でしたが、営業利益は36.6%増、当期純利益は19.5%増となりました。

セグメント別では、建設事業の売上高が2兆4,093億円、営業利益が1,717億円でした。内訳は、国内建築が売上高1兆1,387億円、営業利益1,040億円、海外建築が売上高5,079億円、営業利益119億円、国内土木が売上高4,266億円、営業利益409億円、海外土木が売上高3,360億円、営業利益147億円です。不動産事業は売上高1,067億円、営業利益199億円でした。

建設事業受注高は2兆8,498億円でした。内訳は、国内建築1兆2,009億円、海外建築7,881億円、国内土木4,442億円、海外土木4,165億円です。大林組単体の受注高は1兆6,048億円で、建築工事が1兆1,649億円、土木工事が4,399億円でした。

財務面では、2026年3月期末の総資産は3兆1,434億円、純資産は1兆3,164億円、自己資本比率は40.0%でした。営業活動によるキャッシュフローは2,529億円のプラス、投資活動によるキャッシュフローは843億円のマイナス、財務活動によるキャッシュフローは1,414億円のマイナスでした。現金及び現金同等物は4,160億円です。

2027年3月期の会社予想では、売上高2兆9,450億円、営業利益1,800億円、経常利益1,830億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,570億円を見込んでいます。年間配当は94円予想です。2026年3月期の年間配当は88円でした。

投資家が確認したい指標は、次の通りです。

国内建築の高い利益率が続くか

国内土木・海外土木の進捗と採算が安定しているか

海外建築の大型受注が利益を伴うか

不動産事業の売却益に頼りすぎていないか

営業キャッシュフローが開発投資と株主還元を支えられるか

人手不足と資材高騰を受注価格に反映できるか

DOE5%程度の配当方針が財務と成長投資に見合っているか

就活生の場合は、売上高の大きさだけでなく、国内建築、海外建築、国内土木、海外土木、不動産、新領域で仕事の性格が大きく違うことを見ると、会社理解が深まります。

今後の注目ポイント

今後の大林組で最も注目したいのは、国内建築事業の採算維持です。2026年3月期は、国内建築事業で追加・変更工事獲得や採算性の良い案件が寄与し、営業利益が大きく伸びました。建築需要は底堅いものの、資材高騰や労務費上昇は続いています。高い利益率が一時的なものなのか、受注選別と原価管理によって構造的に改善しているのかを見る必要があります。

次に、海外建設事業です。海外建築では大型工事の受注が増え、海外土木でも手持ち工事が進捗しています。さらにMWH社やGCON社の子会社化により、海外事業の幅が広がっています。ただし、海外はリスク管理が難しいため、売上規模だけでなく利益率とキャッシュ回収を確認する必要があります。

第三に、不動産事業です。2026年3月期は開発物件の売却で不動産事業が増収増益となりました。今後も都市再開発、物流施設、データセンター、オフィスなどの開発機会がありますが、金利上昇局面では不動産売却価格や開発採算に注意が必要です。

第四に、データセンターと新領域です。MiTASUNの設立により、大林組は都市型データセンター事業へ踏み出しています。データセンターは建築、電気、空調、防災、セキュリティ、運用が組み合わさる領域で、スーパーゼネコンの総合力が活きます。単なる施工にとどまらず、事業として収益化できるかが注目です。

第五に、建設DXと省人化です。大林組はDX本部やロボティクスセンターを持ち、施工の生産性向上に取り組んでいます。建設業の人手不足は構造的な課題です。現場を効率化し、安全性を高め、協力会社を含むサプライチェーンを維持できるかが、長期的な競争力を左右します。

投資対象として

投資対象としての大林組は、国内外の建築・土木需要を取り込みながら、不動産開発と新領域にも広げるスーパーゼネコンです。2026年3月期は、売上高2兆5,862億円、営業利益1,946億円、当期純利益1,737億円と高い利益水準を示しました。

魅力は、建築と土木の両方で実績を持つことです。東京スカイツリーのような象徴的建築から、トンネル、橋梁、ダム、都市土木、データセンター、研究施設、再開発まで、幅広い大型案件に関われます。需要が強い時期には、施工実績と信用を持つスーパーゼネコンに仕事が集まりやすくなります。

また、利益率改善も評価材料です。2026年3月期は、国内建築事業の採算改善、不動産事業の開発物件売却、海外土木の進捗が利益を押し上げました。売上がほぼ横ばいでも営業利益が大きく増えたことは、単なる規模拡大ではなく、利益の質が改善している可能性を示しています。

一方で、投資家はリスクも冷静に見る必要があります。建設会社は、受注残があっても工事採算が悪化すれば利益が出ません。資材高、人件費上昇、工期遅延、安全事故、協力会社不足は常にリスクです。海外事業や不動産開発は、為替、金利、現地市況、売却タイミングに左右されます。

PERやPBRを見るときは、単年度利益だけでなく、建設事業受注高、繰越高、建築・土木の利益率、不動産事業の売却益、営業キャッシュフロー、自己資本比率、配当方針を確認する必要があります。大林組は、安定的に見える大手建設会社でありながら、実際には工事採算と開発事業のタイミングで利益が動く会社です。

就活生にとっては、社会に残る大規模プロジェクトに関われる会社です。建築、土木、設計、研究、施工管理、開発、海外、DX、グリーンエネルギーまで仕事の幅が広く、現場で社会のインフラと都市を形にする経験ができます。一方で、施工管理は責任も負荷も大きく、現場で多くの関係者を動かす力が求められます。

まとめ

大林組は、1892年に大林芳五郎が大阪で土木建築請負業「大林店」を創業したことを起源とする、日本を代表するスーパーゼネコンです。大阪築港、東京駅、大阪地下鉄、大阪城天守閣、糠平ダム、横浜ドリームランド・ホテルエンパイア、東京国際フォーラム、東京スカイツリー、グランフロント大阪、虎ノ門ヒルズ、2025年大阪・関西万博の大屋根リングなど、時代を象徴する建築・土木プロジェクトに関わってきました。

同社の強みは、国内建築と国内土木の実績、海外建設の展開、不動産開発、技術研究、建設DX、グリーンエネルギー、新領域への挑戦にあります。2026年3月期には、連結売上高2兆5,862億円、営業利益1,946億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,737億円となり、営業利益は大きく伸びました。

一方で、課題もあります。建設業界は、人手不足、資材価格上昇、工期管理、協力会社確保、海外事業リスク、不動産市況の影響を受けます。2027年3月期は増収ながら営業利益は減少する見通しであり、2026年3月期の高い利益水準をどこまで維持できるかが問われます。

大林組の企業研究では、「スーパーゼネコン」という一言で終わらせず、国内建築、海外建築、国内土木、海外土木、不動産事業、新領域がどう収益を作っているかを見ることが大切です。都市をつくり、インフラを支え、データセンターやグリーンエネルギーにも広がる。大林組は、建築・土木・都市開発に強い大阪発の建設会社として、社会の基盤を形にし続ける企業です。