鹿島建設を一言でいうと
鹿島建設は、土木、建築、不動産開発、国内外グループ会社を通じて、超高層ビル、ダム、トンネル、鉄道、発電所、再開発、海外建設まで担う日本を代表するスーパーゼネコンです。
建設会社というと、建物を建てる会社という印象が強いかもしれません。しかし、鹿島建設を単なるビル建設会社として見ると、本質を見誤ります。鹿島は、都市を形づくる超高層建築、地下空間、道路、鉄道、橋梁、ダム、発電所、工場、研究施設、物流施設、不動産開発までを扱います。つまり、社会のインフラと企業活動の器をつくる会社です。
同じ建設業界でも、大和ハウス工業や積水ハウスは住宅・賃貸住宅・不動産開発を起点にした会社です。鹿島建設、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店はいわゆるスーパーゼネコンであり、国家的・都市的な大型プロジェクト、難易度の高い建築・土木工事、研究開発力、施工管理力で競います。その中でも鹿島は、江戸時代の大工棟梁から出発し、洋館、鉄道、ダム、超高層、原子力、都市再開発へと時代の要請に合わせて領域を広げてきた会社です。
鹿島建設の企業研究で重要なのは、「受注して建てる建設業」と「自ら投資して価値を作る開発事業」の両方を見ることです。国内土木・建築で大型工事をこなし、国内外の関係会社で建設・資材・リース・ビル賃貸を展開し、開発事業では不動産の企画・保有・売却も行います。建設工事の利益率、受注残、開発物件の売却、海外事業の採算が、全社業績を左右します。
なぜ今鹿島建設を見るのか
鹿島建設を今見る理由は、国内建設市場が高水準で推移する一方で、建設コスト上昇、人手不足、資材不足、海外不動産市況、金利上昇というリスクも同時に大きくなっているからです。
国内では、老朽化したインフラの更新、都市再開発、データセンター、半導体・AI関連投資、物流施設、公共投資、防災・減災工事が続いています。建設市場の需要は弱くありません。むしろ、大型案件が多く、優良な施工体制を持つスーパーゼネコンに仕事が集まりやすい環境です。
一方で、建設業界の課題は深刻です。資材価格は高止まりし、人件費も上がっています。技能労働者の高齢化、若手不足、2024年以降の時間外労働規制、協力会社の施工能力不足もあります。受注が多くても、工事をこなせる人と資材がなければ売上化できません。さらに、受注時の見積もりと実際の原価がずれると、利益率が大きく悪化します。
2026年3月期の鹿島建設は、連結売上高3兆672億円、営業利益2,407億円、経常利益2,404億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,773億円となりました。売上高、営業利益、当期純利益はいずれも過去最高水準です。建設事業受注高も3兆2,639億円と高水準で、国内・海外とも前期を上回りました。
特に注目すべきは、土木と建築の売上総利益率です。2026年3月期は、土木事業の売上総利益率が24.6%、建築事業が11.8%となり、前期の土木15.4%、建築9.6%から大きく改善しました。大型工事の進捗だけでなく、原価低減、追加・設計変更契約の獲得、施工リスク管理が利益を押し上げました。
ただし、2027年3月期の会社予想では、売上高2兆9,000億円、営業利益2,000億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,700億円を見込んでおり、前期比では減収減益です。これは、前期の利益率が非常に高かったこと、工事の進捗・竣工タイミング、開発物件売却、海外不動産市況などの反動も含みます。つまり、今の鹿島建設は、業績が強い一方で、過去最高益の後にどれだけ高い利益水準を維持できるかを見る局面にあります。
成り立ち
鹿島建設の歴史は、1840年に鹿島岩吉が江戸中橋正木町で創業したことから始まります。もともとは町方大工として、大名屋敷などの建築を手がけるところから出発しました。現在のスーパーゼネコンの姿から見ると意外かもしれませんが、鹿島の原点は大工の棟梁です。
1860年には、横浜に英一番館、アメリカ一番館を建築し、洋風建築に先鞭をつけました。開国後、日本には西洋建築の需要が生まれました。鹿島はその変化をいち早くつかみ、「洋館の鹿島」として存在感を高めます。伝統的な木造建築から洋風建築へ移ったことは、鹿島の進取性を示す重要な転換点です。
1880年には鹿島組を創立し、鉄道請負に進出します。敦賀線に着工し、その後、碓氷線アプト式鉄道などにも関わりました。明治日本にとって鉄道は近代化の象徴であり、鹿島は建築だけでなく土木へ大きく踏み出しました。ここから「鉄道の鹿島」という評価も生まれます。
1909年にはダム、発電所工事にも進出し、土木の領域を広げます。1930年には株式会社鹿島組となり、1947年に鹿島建設株式会社へ社名を変更しました。戦後の復興期、高度成長期には、オフィスビル、工場、道路、橋梁、ダム、発電所など日本の産業基盤を支えます。
1968年には、日本初の本格的な超高層ビルとして知られる霞が関ビルディングを完成させました。これは鹿島の歴史の中でも象徴的な実績です。日本の建築が低層中心から高層化へ進む中で、超高層建築の技術と施工力を示しました。その後も、鹿島は超高層、原子力、都市再開発、地下空間、海外建設など、時代ごとの大型テーマに関わり続けています。
この歴史を見ると、鹿島建設は一貫して「時代が必要とする難しい建設」に挑んできた会社だと分かります。大工棟梁、洋館、鉄道、ダム、超高層、原子力、都市再開発へと事業を広げてきたことが、現在の技術力とブランドの背景です。
事業内容
鹿島建設の事業は、土木事業、建築事業、開発事業等、国内関係会社、海外関係会社に分けて見ると分かりやすくなります。
土木事業は、道路、鉄道、トンネル、橋梁、ダム、発電所、空港、港湾、上下水道、地下空間、防災・減災関連などを扱います。公共工事も多く、国家・自治体・インフラ事業者に関わる案件が中心です。トンネルやダムのような大型土木工事は、地盤、地下水、自然条件、施工機械、安全管理が難しく、技術力と経験が求められます。
建築事業は、オフィスビル、商業施設、ホテル、病院、大学、研究施設、工場、物流施設、データセンター、超高層ビル、再開発施設などを扱います。建築事業では、単に建物を造るだけでなく、施主の事業目的、設計、品質、コスト、工期、安全、環境性能を調整しながら完成させる力が必要です。鹿島の建築は、超高層や大規模複合施設、研究施設、工場など、難易度の高い案件で力を発揮します。
開発事業等では、不動産開発、意匠・構造設計、エンジニアリングなどを行います。建設会社が自ら土地や物件に関わり、開発、保有、賃貸、売却を通じて利益を得る事業です。建設請負だけでは工事が終われば収益も終わりますが、開発事業では不動産価値の創出や売却益を狙えます。ただし、金利や不動産市況の影響も受けます。
国内関係会社は、建設資機材の販売、専門工事、総合リース、ビル賃貸などを行います。鹿島本体が大型工事を受注・施工するだけでなく、グループ内の資材、専門工事、開発・賃貸機能が支えています。
海外関係会社は、北米、欧州、アジア、大洋州などで建設事業と開発事業を行います。海外では、建設工事だけでなく、不動産開発物件の売却タイミングや金利環境が業績に大きく影響します。2026年3月期は海外建設事業の利益率向上があった一方、米国における開発物件の売却が減少しました。
収益構造
鹿島建設の収益構造は、建設事業の受注・施工利益、開発事業の不動産売却益、国内外関係会社の利益によって成り立っています。
建設事業は、受注して工事を進め、進捗に応じて売上と利益を計上します。ここで重要なのは、受注高、売上高、繰越高、売上総利益率です。大型工事では、受注から完成まで数年かかることがあります。受注残は将来売上の源泉ですが、利益が出るかどうかは、受注時の採算、設計変更、資材費、人件費、施工管理によって変わります。
2026年3月期の土木事業は、売上高4,307億円、営業利益767億円でした。大型工事の施工が順調に進み、売上総利益率も24.6%まで高まりました。土木は地盤条件や設計変更の影響を受けやすい一方、追加変更契約を適切に獲得できれば利益率が大きく改善します。
建築事業は、売上高1兆1,829億円、営業利益832億円でした。当期竣工工事を中心に大型工事の施工量が増え、売上総利益率も11.8%へ改善しました。建築事業は全社の売上規模で最も大きく、オフィス、工場、物流、データセンター、再開発などの民間建設投資に強く関係します。
開発事業等は、売上高964億円、営業利益176億円でした。複数の不動産開発物件を売却したものの、前期に収益性の高い大型プロジェクトの販売・引渡しがあったため、前期比では減収減益でした。開発事業は高い利益率を生むことがありますが、物件売却のタイミングによって年度ごとの業績が変動します。
国内関係会社は、売上高4,146億円、営業利益357億円でした。建設事業の売上・利益増加に加え、開発系関係会社の販売用不動産売却が利益を押し上げました。海外関係会社は、売上高1兆919億円、営業利益266億円でした。海外建設の利益率は改善しましたが、米国開発物件の売却減少が影響しています。
この構造から見ると、鹿島建設は「建設請負で稼ぐ会社」でありながら、「開発物件の売却益でも利益を出す会社」です。投資家は、建設事業の利益率と、開発事業の売却タイミングを分けて見る必要があります。
事業内容の特徴
鹿島建設の事業の特徴は、難易度の高い大型工事をマネジメントできることです。
建設業は、設計図があれば自動的に完成する仕事ではありません。現場ごとに地盤、気候、周辺環境、行政、近隣、資材、労務、協力会社、工期、予算が違います。特に鹿島が手がける大型土木・大型建築では、数百社・数千人規模の関係者を動かすこともあります。安全、品質、工程、原価を同時に管理する力が不可欠です。
土木では、地面の中や自然条件を相手にします。トンネルでは地質や湧水、ダムでは地盤と水、橋梁では構造と施工条件、鉄道では供用中の安全管理が重要です。設計通りにいかないリスクが常にあります。鹿島の土木事業が高い利益率を出した背景には、単なる受注の多さではなく、施工中のリスク管理や追加変更契約の獲得がありました。
建築では、施主の要求が高度化しています。データセンターなら電力と冷却、半導体工場ならクリーンルームと生産設備、病院なら医療動線とBCP、超高層なら制震・耐震と施工計画、再開発なら周辺街区との一体整備が必要です。鹿島は、建築単体ではなく、技術研究所、設計、エンジニアリング、施工、開発を組み合わせて対応します。
また、鹿島は技術研究を重視してきた会社です。建設業界で早くから技術研究所を設け、耐震、制震、コンクリート、地盤、ロボット施工、環境技術、木造・木質建築、デジタル施工などに取り組んできました。スーパーゼネコンにとって技術力とは、抽象的な宣伝文句ではなく、難しい工事を受注し、工期内に安全に完成させ、採算を守るための実務能力です。
就活生の視点では、鹿島建設は現場施工だけでなく、設計、研究、開発、不動産、海外、環境、デジタル、管理部門まで仕事の幅があります。特に施工管理は、現場の中心で人・物・金・時間・安全を動かす仕事であり、責任は重いですが社会に残るものを作る実感が大きい職種です。
競合他社との違い
鹿島建設の競合は、大林組、清水建設、大成建設、竹中工務店です。これらはスーパーゼネコンと呼ばれ、国内外の大型建築・土木工事で競います。さらに、準大手ゼネコン、設備会社、不動産デベロッパー、海外建設会社も案件によって競合になります。
大林組は、建築・土木ともに強く、東京スカイツリーなど象徴的な実績を持ちます。清水建設は、社寺建築から超高層、環境建築、医療・研究施設まで幅広く、技術とブランドを持ちます。大成建設は、都市再開発、土木、空港、トンネル、海外案件などで存在感があります。竹中工務店は非上場ですが、建築に強いスーパーゼネコンとして高い評価を持ちます。
鹿島の特徴は、歴史的に「洋館の鹿島」「鉄道の鹿島」「超高層の鹿島」「原子力の鹿島」と呼ばれてきたように、時代ごとの新しい建設テーマに早く取り組んできたことです。霞が関ビルに代表される超高層建築の実績、鉄道・土木の歴史、研究開発力、国内外の開発事業を組み合わせる総合力が強みです。
大和ハウス工業や積水ハウスとの違いは、住宅・不動産開発会社か、総合建設会社かです。大和ハウス工業は住宅、賃貸、商業施設、物流施設を組み合わせた開発型企業です。積水ハウスは戸建住宅、シャーメゾン、管理、リフォーム、米国住宅に強い住宅メーカーです。鹿島建設は、住宅そのものよりも、都市・インフラ・大型建築・土木工事を担う会社です。
設備工事会社との違いもあります。高砂熱学工業、三機工業、きんでん、九電工は、空調・電気・衛生など建物設備を担います。鹿島はゼネコンとして、建物やインフラ全体の施工を管理し、設備会社、専門工事会社、メーカーと連携してプロジェクトを完成させます。鹿島の仕事は、個別設備ではなくプロジェクト全体の統合管理です。
事業の現代での潮流
鹿島建設を取り巻く第一の潮流は、都市再開発です。東京、大阪、名古屋、福岡などの大都市では、老朽ビルの建て替え、駅前再開発、複合施設、オフィス、ホテル、商業施設、住宅を組み合わせた大型開発が続いています。スーパーゼネコンは、超高層建築、地下工事、周辺交通、既存建物との調整を含む複雑な工事で強みを発揮します。
第二の潮流は、AI・デジタル関連投資です。データセンター、半導体工場、研究施設、電力関連施設では、大規模な建築・設備投資が必要です。建築工事だけでなく、電力、空調、耐震、セキュリティ、BCP、立地開発も重要になります。鹿島のようなスーパーゼネコンには、高度な設計・施工管理が求められます。
第三の潮流は、インフラ更新と防災・減災です。日本の道路、橋梁、トンネル、上下水道、港湾、河川、ダム、鉄道は老朽化が進んでいます。気候変動による豪雨災害、地震リスクもあります。新設だけでなく、更新、補修、耐震化、長寿命化、防災インフラが重要になります。
第四の潮流は、建設業の人手不足です。建設現場は技能者と施工管理者に支えられています。担い手不足が進む中で、自動化、省人化、ロボット施工、BIM/CIM、プレキャスト化、デジタル管理が不可欠です。鹿島は、自動化施工や現場DXに取り組んでおり、生産性向上は競争力そのものになります。
第五の潮流は、不動産開発と金利です。ゼネコンは請負工事だけでなく、開発事業でも利益を出します。しかし、不動産開発は金利、不動産取引市況、賃料、売却タイミングに左右されます。2026年3月期も海外開発物件の売却時期変更が利益に影響しました。建設需要が強くても、開発事業は別のリスクを持ちます。
強み
鹿島建設の強みは、第一に大型建設・土木の実績です。1840年創業以来、洋館、鉄道、ダム、超高層、都市再開発、原子力、海外建設など、難易度の高い工事に関わってきました。歴史的実績は、施主や官公庁からの信頼につながります。
第二の強みは、土木と建築の両方を持つことです。土木ではインフラ、地下、トンネル、ダム、鉄道、橋梁に強く、建築では超高層、工場、研究施設、データセンター、病院、再開発に対応できます。どちらか一方ではなく、都市やインフラを総合的に扱えることがスーパーゼネコンの強みです。
第三の強みは、技術研究と施工管理力です。鹿島は、耐震・制震、地盤、コンクリート、環境、木質建築、自動化施工、ロボット、デジタル施工などに取り組んでいます。技術力は、難しい案件を受注するためだけでなく、施工リスクを減らし、利益率を守るためにも重要です。
第四の強みは、建設事業と開発事業の組み合わせです。請負工事で売上を作りながら、自ら開発事業にも関わることで、不動産価値の創出にも参加できます。開発事業は変動が大きいものの、成功すれば高い利益を生みます。
第五の強みは、国内外のグループ展開です。国内関係会社は資材、専門工事、リース、ビル賃貸などで本体を支え、海外関係会社は北米、欧州、アジア、大洋州で建設・開発を展開します。国内だけでなく、海外の建設・開発需要を取り込める点は長期的な成長余地です。
弱み・リスク
鹿島建設の最大のリスクは、工事採算の悪化です。大型工事は受注金額が大きい一方、資材費、人件費、工期、設計変更、地盤条件、天候、安全対策、協力会社の確保によって利益が大きく変わります。受注時の見積もりが甘ければ、売上が大きくても利益は残りません。
第二のリスクは、人手不足です。建設業界では技能労働者と施工管理者の不足が続いています。2024年以降の時間外労働規制もあり、従来のように人手で工期を吸収することは難しくなっています。鹿島のような大手でも、協力会社を含めた施工体制の確保は重要な課題です。
第三のリスクは、建設コスト上昇です。鉄骨、セメント、建設資材、設備、燃料、人件費が上がれば、工事原価が上昇します。契約時点で価格転嫁できない場合、利益率が悪化します。2026年3月期は利益率が大きく改善しましたが、今後も同じ水準が続くとは限りません。
第四のリスクは、開発事業の市況変動です。不動産開発は、金利、賃料、投資家需要、売却時期に左右されます。海外では為替や現地金利、商業不動産市況の影響も受けます。開発物件の売却が次期以降にずれれば、利益の年度変動が起きます。
第五のリスクは、海外事業です。海外建設では、契約条件、法制度、労務、資材、為替、政治リスク、インフレ、訴訟リスクが国内より複雑です。海外関係会社は売上規模が大きい一方、利益率は国内ほど高くない場合があります。成長余地はありますが、リスク管理が不可欠です。
数字で見る鹿島建設
鹿島建設を見るときは、売上高、営業利益、営業利益率、建設事業受注高、土木・建築の売上総利益率、開発事業の利益、海外関係会社、営業キャッシュフロー、自己資本比率を確認する必要があります。
2026年3月期の連結売上高は3兆672億円、営業利益は2,407億円、経常利益は2,404億円、親会社株主に帰属する当期純利益は1,773億円でした。売上高は前期比5.3%増、営業利益は58.5%増、当期純利益は40.9%増です。営業利益率は7.8%でした。
建設事業受注高は3兆2,639億円で、前期比24.4%増でした。鹿島本体の開発事業等を含めた受注高は2兆2,753億円です。受注が増えていることは将来売上の土台になりますが、受注内容の採算が重要です。
セグメント別では、土木事業が売上高4,307億円、営業利益767億円でした。建築事業は売上高1兆1,829億円、営業利益832億円です。開発事業等は売上高964億円、営業利益176億円、国内関係会社は売上高4,146億円、営業利益357億円、海外関係会社は売上高1兆919億円、営業利益266億円でした。
売上総利益率では、土木事業が24.6%、建築事業が11.8%でした。前期は土木15.4%、建築9.6%だったため、大きな改善です。特に土木は大型工事の進捗と追加変更契約の獲得が利益率向上に寄与しました。
財務面では、総資産3兆6,243億円、純資産1兆4,362億円、自己資本比率39.0%でした。有利子負債残高は8,331億円です。営業活動によるキャッシュフローは1,146億円のプラス、現金及び現金同等物は3,922億円でした。配当方針では、配当性向40%を目安とし、自己株式取得なども機動的に行う方針です。
2027年3月期の会社予想では、売上高2兆9,000億円、営業利益2,000億円、経常利益2,060億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,700億円を見込んでいます。減収減益予想ですが、中期経営計画の利益目標は大きく上回る水準です。年間配当は146円を予定しています。
投資家が確認したい指標は、次の通りです。
建設事業受注高と繰越高が高水準を維持できるか
土木と建築の売上総利益率が高い水準を保てるか
追加変更契約や原価低減が継続的に利益に寄与するか
開発事業の物件売却が安定して進むか
海外関係会社の利益率が改善するか
有利子負債と開発投資のバランスが適切か
配当性向40%目安の還元方針が利益とキャッシュに見合っているか
就活生の場合は、売上高だけでなく、土木、建築、開発、国内外グループ会社がそれぞれ違う性格を持つことを見ると、鹿島建設の仕事の幅が理解しやすくなります。
今後の注目ポイント
今後の鹿島建設で最も注目したいのは、建設事業の利益率がどこまで維持できるかです。2026年3月期は土木24.6%、建築11.8%という高い売上総利益率を実現しました。2027年3月期予想では土木20.4%、建築12.0%を見込んでいます。土木はやや低下するものの、建築は高水準を維持する計画です。これが実現できるかが重要です。
次に、受注選別です。建設需要が強い時期ほど、すべての案件を取りに行くのではなく、施工体制と採算を見て選別する力が重要になります。無理に受注すれば、数年後に低採算工事として利益を圧迫する可能性があります。鹿島が適切な施工体制を確保した受注を続けられるかが注目です。
第三に、開発事業です。国内では開発事業資産の積み上げが進み、複数の物件売却による業績貢献を見込んでいます。海外では、不動産市況や金利を見ながら開発物件の売却を進める必要があります。開発事業は高収益の機会である一方、売却タイミングの変動が大きい事業です。
第四に、建設DXと省人化です。労働力不足が続く中で、鹿島の自動化施工、BIM/CIM、ロボット、遠隔管理、プレキャスト化、現場のデジタル化がどこまで生産性を高めるかが重要です。スーパーゼネコンの競争力は、単に人を多く抱えることではなく、限られた人材で高難度工事を安全にこなす仕組みに移っています。
第五に、政策保有株式と資本効率です。2026年3月期末の政策保有株式は時価3,041億円で、純資産に対する比率は21.2%でした。売却も進めていますが、株価上昇により残高は増えています。資本効率を高める観点から、政策保有株式の縮減、成長投資、株主還元のバランスが注目されます。
投資対象として
投資対象としての鹿島建設は、国内外の大型建設需要と開発事業を取り込むスーパーゼネコンです。2026年3月期は、売上高3兆672億円、営業利益2,407億円、当期純利益1,773億円と過去最高水準の業績でした。建設事業受注高も3兆2,639億円と高く、事業環境は強い状態です。
魅力は、土木と建築の両方で高い技術力と実績を持つことです。超高層、トンネル、ダム、鉄道、再開発、データセンター、研究施設、工場など、難易度の高い大型案件に対応できることは、スーパーゼネコンの大きな強みです。建設需要が高水準の局面では、施工体制と信用を持つ大手に案件が集まりやすくなります。
また、利益率改善も評価材料です。2026年3月期は、土木・建築とも売上総利益率が大きく改善しました。単なる売上拡大ではなく、採算管理、追加変更契約、施工リスク管理で利益を残せたことが重要です。今後もこの水準を維持できるなら、建設会社としての評価は高まりやすくなります。
一方で、投資家はリスクも冷静に見る必要があります。建設会社は、受注残があっても、工事採算が悪化すれば利益が出ません。資材高、人件費上昇、工期遅延、安全事故、協力会社不足は常にリスクです。また、開発事業は金利や不動産市況に左右され、海外事業は為替や現地リスクを抱えます。
PERやPBRを見るときは、単年度利益だけでなく、受注高、繰越高、土木・建築の売上総利益率、営業キャッシュフロー、有利子負債、開発事業資産、政策保有株式、配当方針を確認する必要があります。鹿島建設は、安定的に見える大手建設会社でありながら、実際には大型工事の採算と不動産開発のタイミングで利益が大きく動く会社です。
就活生にとっては、日本と海外の社会に残る大型プロジェクトに関われる会社です。土木、建築、設計、研究、開発、環境、DX、海外、管理部門まで職種は広く、現場で社会を支える仕事に強い魅力があります。一方で、施工管理は責任も負荷も大きく、現場で人を動かす力が求められます。大きなものをつくりたい人、技術とマネジメントの両方に関心がある人に向いた会社です。
まとめ
鹿島建設は、1840年に鹿島岩吉が江戸で創業したことを起源とし、洋館建築、鉄道請負、ダム・発電所、超高層建築、都市再開発、海外建設へと広がってきた日本を代表するスーパーゼネコンです。1968年の霞が関ビルディングに象徴されるように、時代ごとの新しい建設テーマに挑み続けてきた会社です。
同社の強みは、土木と建築の両方で難易度の高い大型工事をこなす実績、技術研究と施工管理力、国内外グループ会社との連携、開発事業を含む総合力にあります。2026年3月期には、売上高3兆672億円、営業利益2,407億円、親会社株主に帰属する当期純利益1,773億円となり、建設事業受注高も3兆2,639億円に達しました。
一方で、課題も明確です。建設コスト上昇、人手不足、工期管理、協力会社確保、開発事業の市況変動、海外事業リスクは避けられません。2027年3月期は減収減益を見込んでおり、過去最高益の後にどれだけ高い利益率を維持できるかが問われます。
鹿島建設の企業研究では、「大手ゼネコン」という一言で終わらせず、土木、建築、開発、国内関係会社、海外関係会社がどう利益を作っているかを見ることが大切です。社会インフラをつくり、都市を更新し、企業の生産拠点やデジタル基盤を支える。鹿島建設は、建設需要が高度化する時代に、技術と施工管理力で大型プロジェクトを形にする会社です。