コニカミノルタを一言でいうと

コニカミノルタは、複合機や商業印刷機で築いたオフィス・印刷業界向けの顧客基盤を持ちながら、ヘルスケア、センシング、機能材料、光学コンポーネント、画像IoTへ事業転換を進めている精密機器メーカーです。かつては写真フィルム、カメラ、複写機で知られた会社ですが、現在の企業研究では「昔のカメラ会社」でも「単なる 機メーカー」でもなく、収益改善と事業選別の途中にある会社として見る必要があります。

コニカミノルタ 企業研究で重要なのは、同社が持つ技術の広さと、経営課題の重さを同時に見ることです。技術面では、光学、画像処理、色計測、材料、印刷、医療画像、センシングに強みがあります。事業面では、デジタルワークプレイス、プロフェッショナルプリント、インダストリー、画像ソリューションという複数領域を持ちます。一方で、長期的にはオフィス印刷市場の縮小、医療・画像IoTなど新規領域の収益化遅れ、構造改革費用、過去の大型投資の失敗が重荷になってきました。

リコーやキヤノンと同じく、コニカミノルタもオフィス機器からの転換を迫られています。しかし、リコーが「オフィス顧客基盤をデジタルサービスへ広げる」色が強いのに対し、コニカミノルタは「画像・色・材料・医療・計測の技術を、成長分野でどう利益に変えるか」がより大きな論点です。複合機の会社から、画像技術を核にした産業・医療・印刷ソリューション企業へ変われるか。ここが、コニカミノルタを見る最大のポイントです。

なぜ今コニカミノルタを見るのか

今コニカミノルタを見る理由は、同社が長い低迷からの収益改善局面にあるからです。

2025年3月期には、構造改革費用、減損損失、事業選択と集中に伴う費用が重なり、営業赤字となりました。特にプレシジョンメディシン事業、画像IoT関連、低収益事業の整理は、過去に広げた成長投資の見直しを意味していました。コニカミノルタ 課題は、単に一時的な赤字ではなく、事業を広げすぎた結果、資本効率と利益率が落ちたことにあります。

一方、2026年3月期には、売上高は1兆877億円、事業貢献利益は531億円、営業利益は498億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は302億円となり、黒字に戻りました。売上は減ったものの、事業貢献利益は大きく改善しています。これは、事業選択と集中、グローバル構造改革、販売費・一般管理費の削減、インダストリー事業の改善が効いたためです。

ただし、黒字に戻ったから安心というわけではありません。営業利益率は4.6%であり、高収益企業とはまだ言いにくい水準です。デジタルワークプレイスは売上の大きな柱ですが、オフィス印刷市場の縮小という構造的な逆風を受けます。プロフェッショナルプリントは商業印刷市場の設備投資に左右されます。ヘルスケアや画像ソリューションは社会的意義がある一方、利益貢献には時間がかかっています。インダストリーは高収益化の可能性がありますが、顧客の投資サイクルに影響されます。

同社は2026-2028年度の中期経営計画で、ROICを基軸とする経営と事業ポートフォリオマネジメントの強化を掲げています。これは、過去のように「将来性がありそうな事業へ広く投資する」方針から、「資本効率を見て、稼げる事業を選ぶ」方針へ移ることを意味します。投資家にとっては、売上をどれだけ伸ばすかより、利益率、ROIC、キャッシュフローが本当に改善するかが焦点になります。就活生にとっては、複写機メーカーというより、事業再構築の現場にある精密・IT・医療・産業ソリューション企業として見る必要があります。

成り立ち

コニカミノルタの歴史は、コニカとミノルタという二つの会社の統合から成り立っています。コニカの源流は、1873年に杉浦六三郎が写真材料の販売を始めたことにあります。1903年には日本初のブランド付きカメラを発売し、1929年には自社製写真フィルムを発売しました。写真フィルム、印画紙、カメラ、医療用レントゲンフィルムという流れが、コニカの原点です。

一方、ミノルタは1928年に田嶋一雄が創業し、翌年にカメラの一号機を発売しました。ミノルタはカメラや光学機器で存在感を高め、1958年には国産プラネタリウム1号機を完成させます。1962年の米国有人地球周回飛行では、宇宙から地球を撮影したカメラにミノルタハイマチックが使われたことでも知られています。カメラと光学技術は、コニカミノルタの根底にある重要な資産です。

1960年代から1970年代にかけて、両社はカメラだけでなく複写機へ事業を広げました。1971年には国産技術による普通紙複写機「U-Bix480」を発売し、OA機器の普及とともに複写機事業が成長しました。カメラやフィルムで培った光学、画像形成、化学、材料技術が、複写機やプリンターへつながっていきます。

2003年、コニカとミノルタは経営統合し、コニカミノルタが誕生しました。その後、祖業に近い写真フィルム、カメラ事業から撤退するという大きな判断を行います。これは、デジタルカメラやスマートフォンによって写真フィルム市場が縮小する中で、情報機器、印刷、医療、センシング、材料へ資源を移すための決断でした。

現在のコニカミノルタは、写真・カメラの会社ではなく、画像と光を扱う技術を、オフィス、印刷、医療、産業、計測へ展開する会社です。歴史を振り返ると、同社は常に「光で見る」「画像にする」「色を測る」「情報を出力する」という技術を時代ごとに形を変えてきた会社だと分かります。

事業内容

コニカミノルタの事業は、現在では大きくデジタルワークプレイス、プロフェッショナルプリント、インダストリー、画像ソリューションに分けて考えると分かりやすくなります。

デジタルワークプレイス事業は、複合機、プリンター、オフィス向けITサービス、文書管理、クラウドサービス、業務プロセス支援などを含みます。かつての主力であるオフィス複合機は、企業の印刷・ ・スキャン・文書管理を支えてきました。現在は、単に機械を売るだけでなく、ITサービスや業務ワークフローを組み合わせる方向へ進んでいます。ただし、紙の印刷量が減る中で、複合機の設置台数や消耗品収益は構造的な逆風を受けます。

プロフェッショナルプリント事業は、商業印刷、企業内印刷、ラベル印刷、パッケージ印刷などの印刷会社向け機器・サービスを扱います。少量多品種、短納期、可変印刷、在庫削減の需要が高まる中で、オフセット印刷からデジタル印刷への移行を支援する領域です。印刷機本体の販売だけでなく、トナー、インク、保守、ワークフローソフトも重要です。

インダストリー事業は、機能材料、IJコンポーネント、センシング、光学コンポーネントなどで構成されます。機能材料では、ディスプレイ向けフィルムや高機能材料、IJコンポーネントでは産業用インクジェットヘッド、センシングでは色や光を数値化する計測機器、光学コンポーネントでは半導体検査装置向け部品などが含まれます。ここは、コニカミノルタの光学・材料・計測技術を産業用途へ展開する重要領域です。

画像ソリューション事業は、ヘルスケア、画像IoT、映像関連などを含みます。ヘルスケアでは、X線、超音波、医療画像、パルスオキシメータ、新生児黄疸計、医療ICTなどを扱います。画像IoTでは、カメラやセンサー、AIを使い、非接触・リモート・リアルタイムで現場課題を解決することを目指します。ただし、画像ソリューション事業は収益面ではまだ課題があり、利益化の実行力が問われています。

収益構造

コニカミノルタの収益構造は、成熟したオフィス複合機事業でキャッシュを作り、プロフェッショナルプリントとインダストリーで利益を広げ、画像ソリューションを立て直す構造です。ただし、現実にはその転換は簡単ではなく、事業ごとの差が大きく出ています。

2026年3月期の売上高では、デジタルワークプレイス事業が6,105億円で最大です。ここは会社の売上の中心であり、複合機やITサービスが含まれます。事業貢献利益は387億円、営業利益は370億円でした。オフィス印刷の縮小という逆風はありますが、事業規模が大きく、収益の柱であり続けています。

プロフェッショナルプリント事業は、売上高2,551億円、事業貢献利益110億円、営業利益93億円でした。前期比では減収となりましたが、営業利益は黒字に戻っています。商業印刷機器は顧客の設備投資に左右されるため、市況が悪いと本体販売は落ちます。一方で、設置後の消耗品や保守はストック収益になりやすく、デジタル印刷への移行が進めば中期的な成長余地があります。

インダストリー事業は、売上高1,267億円、事業貢献利益224億円、営業利益222億円でした。売上規模ではデジタルワークプレイスより小さいですが、利益率の観点では非常に重要な事業です。機能材料、センシング、光学コンポーネント、IJコンポーネントなどは、顧客の投資サイクルを受ける一方、差別化できれば高い収益性を期待できます。

画像ソリューション事業は、売上高945億円、事業貢献損失18億円、営業損失13億円でした。前期より改善していますが、まだ黒字化が課題です。ヘルスケアや画像IoTは社会的な需要がある一方、事業として利益を出すには、製品の選別、販路、保守、ソフトウェア、サービス化が必要です。

全社では、売上高が減少した一方、事業貢献利益率は改善しました。これは、赤字・低収益事業の整理や構造改革の効果が出ていることを示します。ただし、営業利益率4.6%はまだ高いとはいえません。投資家が見るべきなのは、売上成長ではなく、事業貢献利益率、インダストリーの利益貢献、画像ソリューションの黒字化、フリーキャッシュフローの安定性です。

事業内容の特徴

コニカミノルタの事業内容の特徴は、すべての事業が「画像」「光」「色」「材料」に関係していることです。複合機、商業印刷、医療画像、色計測、機能材料、画像IoTは一見ばらばらに見えます。しかし、光を当て、画像を読み取り、色を再現し、情報を出力し、状態を可視化するという意味では、共通した技術の上にあります。

オフィス複合機では、文字や画像を正確に読み取り、印刷し、スキャンし、文書として扱う技術が必要です。プロフェッショナルプリントでは、色再現、濃度安定、紙搬送、トナー・インク、印刷ワークフローが重要になります。印刷物の品質を安定させるには、機械、化学、画像処理、ソフトウェアが一体で必要です。

センシングでは、色や光を数値化することが価値になります。ディスプレイ、自動車、照明、塗装、食品、化粧品、印刷などでは、色の違いを人の感覚だけで管理するとばらつきが出ます。コニカミノルタの計測機器は、色や光を数値で管理することで、製造品質を支えます。これは、品質保証や生産技術の現場に深く関わる領域です。

ヘルスケアでは、画像で体の状態を見ることが価値になります。X線、超音波、医療画像管理、バイタルセンシングは、診断や治療の現場を支えます。画像IoTでは、人手不足や高齢化が進む中で、現場をカメラやセンサーで見守り、異常を検知し、遠隔で判断することが求められます。

つまりコニカミノルタは、昔の写真・カメラの会社ではなく、画像と光を産業・医療・オフィス・印刷の課題解決に使う会社です。ただし、その技術をどの事業で利益に変えるかが、現在の最大の課題です。

競合他社との違い

コニカミノルタの競合は、事業ごとに大きく異なります。オフィス複合機では、キヤノン、リコー、富士フイルムビジネスイノベーション、京セラ、シャープ、HPなどが競合になります。プロフェッショナルプリントでは、キヤノン、リコー、富士フイルム、HP、SCREENなどが比較対象です。ヘルスケアでは、富士フイルム、キヤノンメディカル、GEヘルスケア、シーメンス、フィリップスなどと重なる部分があります。センシングや機能材料では、計測機器メーカー、材料メーカー、半導体関連部材メーカーが競合になります。

リコーとの違いは、事業転換の方向です。リコーは複合機の顧客基盤を使い、ITサービス、ワークプレイス、文書管理、業務支援へ広げる色が強い会社です。コニカミノルタもデジタルワークプレイスを持ちますが、同社の個性はむしろインダストリー、センシング、機能材料、ヘルスケア、画像IoTにあります。オフィス機器からの脱却という課題は共通していますが、リコーが「オフィスのDX」に寄るのに対し、コニカミノルタは「画像・光・材料を使った産業・医療・計測」に寄っています。

キヤノンとの比較では、収益基盤の違いが目立ちます。キヤノンはカメラ、プリンティング、メディカル、半導体露光装置、産業機器を持つ大規模な精密機器メーカーです。事業の幅が広く、収益基盤も厚い。一方、コニカミノルタはオフィス機器の比重が大きく、収益改善の途中にあります。キヤノンのような大きな安定収益基盤を持つというより、事業選別によって高収益領域へ移ろうとしている段階です。

ニコンとの違いも分かりやすいです。ニコンはカメラ、レンズ、半導体露光装置、顕微鏡、産業計測といった光学・精密機器に強い会社です。コニカミノルタも光学と画像の技術を持ちますが、現在はカメラ事業ではなく、複合機、商業印刷、医療画像、色計測、機能材料、画像IoTに軸足があります。ニコンが「光学レンズと精密装置」の会社なら、コニカミノルタは「画像・色・材料を業務と産業の現場へ展開する会社」です。

富士フイルムとの違いも重要です。富士フイルムは写真フィルムから医療、化粧品、高機能材料、バイオCDMO、ビジネスイノベーションへ大きく転換し、成功例として語られることが多い会社です。コニカミノルタも写真・フィルムの歴史を持ちますが、富士フイルムほど高収益な新事業ポートフォリオを確立できたわけではありません。ここに、コニカミノルタの課題がはっきり表れています。

事業の現代での潮流

コニカミノルタを取り巻く潮流は、ペーパーレス化、商業印刷のデジタル化、医療のデジタル化、製造業の品質高度化、AI・画像解析、人手不足です。

ペーパーレス化は、デジタルワークプレイス事業にとって逆風です。企業は紙の文書を減らし、クラウド、電子契約、ワークフロー、チャット、オンライン会議で業務を進めるようになっています。オフィスでの印刷枚数が減れば、複合機の本体販売や消耗品収益には下押し圧力がかかります。コニカミノルタは、複合機だけでなくITサービスや業務支援へ広げる必要があります。

商業印刷のデジタル化は、プロフェッショナルプリント事業にとって機会です。印刷会社は、少量多品種、短納期、可変印刷、在庫削減、Web to Printへの対応を迫られています。デジタル印刷機は、従来の大量印刷とは違う価値を提供できます。ただし、印刷会社の投資意欲は景気や金利、紙需要、顧客業界の動向に左右されます。

医療のデジタル化では、画像診断、医療ICT、遠隔支援、在宅医療、介護現場での見守りが重要になります。コニカミノルタはX線、超音波、医療画像管理、バイタルセンシング、画像IoTを持っています。しかし、医療は規制、保険制度、病院の予算、販売・保守体制が複雑であり、技術があってもすぐに高収益化するわけではありません。

製造業の品質高度化では、色や光の計測、外観検査、半導体関連の光学コンポーネント、産業用インクジェットが重要になります。自動車、ディスプレイ、半導体、電子部品、印刷、食品、化粧品などでは、品質の数値管理が不可欠です。人手不足が進む中で、人の目に頼った検査を画像AIや計測機器で置き換える需要も増えます。

AIは、コニカミノルタにとってチャンスであり、課題でもあります。同社の画像IoTやFORXAIは、カメラ・センサー・画像AIを活用して現場課題を解決する考え方です。しかし、AI自体は他社も使える汎用技術です。コニカミノルタが勝つには、画像データ、現場知見、光学・センサー技術、販売網を組み合わせた具体的な用途で差別化する必要があります。

強み

コニカミノルタの第一の強みは、画像と光に関する長い技術蓄積です。写真材料、カメラ、複写機、医療用フィルム、色計測、光学部品、画像IoTへと、時代ごとに用途は変わっても、見える化する技術を積み重ねてきました。これは、単なるソフトウェア企業にはない強みです。

第二の強みは、オフィス複合機と商業印刷で築いた顧客基盤です。複合機は、機器を売って終わりではなく、保守、消耗品、更新、ITサポートを通じて顧客接点を維持します。商業印刷機も、印刷会社の生産現場に深く入り込みます。この顧客基盤は、ITサービスやワークフロー、印刷DXを提案する入口になります。

第三の強みは、インダストリー事業です。機能材料、センシング、光学コンポーネント、産業用インクジェットは、オフィス印刷とは違う成長可能性を持っています。特にセンシングは、色や光を数値で管理する製造業の品質保証に関わるため、顧客の生産現場に深く入り込めます。インダストリー事業は、2026年3月期の利益貢献でも目立つ存在です。

第四の強みは、事業選択と集中を進めたことです。プレシジョンメディシン、マーケティングサービス、MOBOTIXなど、過去に拡大した事業の見直しを進めました。痛みを伴う改革でしたが、低収益事業を抱えたままでは資本効率は改善しません。2026年3月期に営業黒字へ戻った背景には、この整理の効果があります。

第五の強みは、医療・介護・現場見守りなど社会課題との接点です。高齢化、人手不足、遠隔監視、医療効率化、検査自動化は長期テーマです。コニカミノルタの画像・センシング技術は、こうした社会課題と相性があります。問題は、技術的な可能性を継続的な利益に変えられるかです。

弱み・リスク

コニカミノルタの第一のリスクは、オフィス複合機市場の縮小です。デジタルワークプレイス事業は依然として売上の大きな柱ですが、紙の印刷量は長期的に減りやすい。設置台数が減り、消耗品・保守収益が減ると、既存の安定収益は弱くなります。

第二のリスクは、事業転換の難しさです。コニカミノルタは、ヘルスケア、画像IoT、プレシジョンメディシン、マーケティングサービスなどへ投資してきましたが、すべてが期待通りに収益化したわけではありません。成長市場へ参入することと、その市場で儲かることは別です。過去の投資失敗を繰り返さないためには、ROICで事業を厳しく見なければなりません。

第三のリスクは、画像ソリューション事業の黒字化です。医療や画像IoTは将来性がありますが、現時点では赤字です。ヘルスケアは規制や販売網、病院予算の影響を受けます。画像IoTは用途開拓と顧客の現場導入が必要です。技術テーマとして魅力があっても、短期的な利益貢献には不確実性があります。

第四のリスクは、米国関税、原材料費、為替、物流費です。2026年3月期には米国関税の影響もありました。複合機や印刷機はグローバルに製造・販売されるため、関税や物流費、為替の影響を受けます。価格転嫁が十分にできなければ、利益率は圧迫されます。

第五のリスクは、競争相手の強さです。複合機ではリコー、キヤノン、富士フイルムBI、HP。商業印刷ではキヤノン、リコー、HP、富士フイルム。医療では富士フイルムや海外大手。センシングでは専門計測メーカー。コニカミノルタは複数の強豪と戦っています。幅広い事業を持つことは強みでもありますが、経営資源が分散するとどの市場でも中途半端になるリスクがあります。

数字で見るコニカミノルタ

コニカミノルタを見るときは、売上高、事業貢献利益、営業利益、営業利益率、ROE、フリーキャッシュフロー、事業別利益、配当、ROIC目標を確認する必要があります。

2026年3月期の売上高は1兆877億円で、前期比3.6%減でした。売上は減りましたが、事業貢献利益は531億円、営業利益は498億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は302億円となりました。前期の営業損失640億円から大きく改善しています。営業利益率は4.6%、ROEは6.1%でした。

事業別では、デジタルワークプレイス事業の売上高が6,105億円、営業利益が370億円です。プロフェッショナルプリント事業は売上高2,551億円、営業利益93億円。インダストリー事業は売上高1,267億円、営業利益222億円。画像ソリューション事業は売上高945億円、営業損失13億円でした。ここから、売上規模ではデジタルワークプレイスが最大ですが、利益率ではインダストリーが重要であることが分かります。

フリーキャッシュフローは522億円のプラスでした。前期より減少しましたが、黒字回復とキャッシュ創出は投資家にとって重要です。年間配当は12円となり、2027年3月期予想では18円が示されています。赤字期には無配だったため、配当再開・増配は収益回復の一つのサインです。

2027年3月期の業績予想では、売上高1兆1,050億円、事業貢献利益560億円、営業利益500億円、親会社の所有者に帰属する当期利益285億円が見込まれています。営業利益はほぼ横ばいですが、売上と事業貢献利益は改善を見込んでいます。

中期経営計画では、2028年度に売上高の年平均成長率3%、事業貢献利益率6.5%、ROE8%、ROIC6%を目標に掲げています。投資家は、これらの目標が単なる回復期待ではなく、事業別の利益改善、資産効率、構造改革、成長領域の採算で裏づけられているかを見る必要があります。

今後の注目ポイント

今後の第一の注目ポイントは、デジタルワークプレイス事業の下げ止まりです。複合機市場は構造的に縮小しやすいため、オフィス印刷の落ち込みをITサービスや文書管理、ワークフロー、業務支援でどこまで補えるかが重要です。売上規模が大きいだけに、ここが崩れると全社への影響は大きくなります。

第二の注目ポイントは、インダストリー事業の成長です。機能材料、センシング、光学コンポーネント、IJコンポーネントは、同社の高収益化を支える可能性があります。特に、半導体検査装置向け光学コンポーネント、色計測、産業用インクジェットは、製造業の品質管理や自動化と関係します。顧客の投資サイクルを受けますが、コニカミノルタらしい技術が活きる領域です。

第三の注目ポイントは、画像ソリューションの黒字化です。ヘルスケアや画像IoTは将来性がありますが、利益を出せなければ企業価値にはつながりません。MOBOTIXの譲渡のように、採算が合わない事業は整理し、勝てる用途に絞る必要があります。医療画像、バイタルセンシング、介護・見守り、現場監視でどれだけ収益を作れるかが問われます。

第四の注目ポイントは、ROIC経営の実行です。新中期経営計画では、ROICを基軸に事業ポートフォリオを管理する方針です。これは、過去に広げた事業をもう一度厳しく見直すという意味です。成長テーマに見えても、資本効率が低ければ縮小・撤退する判断が必要になります。

第五の注目ポイントは、AI活用です。コニカミノルタは、社内業務の効率化にもAIを使い、販売管理費率の低減や生産性向上を目指しています。さらに、画像AIやセンシング、医療、印刷ワークフローにもAI活用の余地があります。AIを流行語で終わらせず、実際の粗利率改善と人件費・販管費削減に結びつけられるかが重要です。

投資対象として

コニカミノルタを投資対象として見る場合、同社は「高配当の安定精密機器株」として単純に見るべきではありません。むしろ、低収益・赤字局面からの構造改革が進む再建型の精密機器メーカーとして整理する方が自然です。

ポジティブに見るなら、2026年3月期に営業黒字へ回復し、事業貢献利益率も改善しました。構造改革と事業選択の効果が数字に出始めています。インダストリー事業は利益率が高く、センシング、機能材料、光学コンポーネントなどの成長余地があります。デジタルワークプレイスも、売上規模と顧客基盤の大きさは依然として強みです。

また、オフィス印刷市場が縮小しても、商業印刷のデジタル化、製造業の品質管理、医療画像、介護・見守り、画像AIには需要があります。コニカミノルタが「画像と光を使って現場課題を解決する会社」として事業を絞り込めれば、過去の低収益体質から抜け出せる可能性があります。

一方で、慎重に見るべき点も多いです。オフィス複合機市場の縮小は長期逆風です。画像ソリューションはまだ赤字です。過去の成長投資では、プレシジョンメディシンやMOBOTIXなど、期待通りにいかなかった案件もあります。インダストリーは有望ですが、顧客の投資抑制や市況に左右されます。営業利益率とROEは改善途上であり、高収益企業として評価するにはまだ時間が必要です。

したがって、コニカミノルタの株価を見るときは、PBRや配当利回りだけでなく、事業貢献利益率、インダストリー事業の利益、画像ソリューションの赤字縮小、デジタルワークプレイスの減収幅、フリーキャッシュフロー、ROIC、構造改革の進捗を合わせて見るべきです。投資対象としては、回復余地はあるが、実行力を確認しながら見るべき会社です。

まとめ

コニカミノルタは、写真材料、カメラ、フィルム、複写機を原点に、現在は複合機、商業印刷、ヘルスケア、センシング、機能材料、画像IoTを展開する精密機器メーカーです。コニカとミノルタの歴史が融合した会社であり、画像、光、色、材料を扱う技術を長く積み重ねてきました。

コニカミノルタ 強みは、オフィス・印刷の顧客基盤、画像と光の技術、色計測やセンシング、機能材料、商業印刷、医療画像にあります。特にインダストリー事業は、同社の高収益化を支える可能性がある重要領域です。

一方で、コニカミノルタ 課題は非常に明確です。オフィス印刷市場の縮小、低収益事業の整理、新規事業の収益化遅れ、画像ソリューションの赤字、過去の減損、競合の強さが重なっています。2026年3月期には黒字回復しましたが、営業利益率、ROE、ROICはまだ改善途上です。

就活生にとって、コニカミノルタは複合機だけでなく、医療画像、センシング、材料、商業印刷、画像AI、品質管理、製造業向けソリューションに関われる会社です。個人投資家にとっては、単なる成熟オフィス機器株ではなく、事業選択と収益改善の実行力を見るべき企業です。

コニカミノルタは、写真とカメラの会社から、複合機の会社へ変わり、今は画像・光・材料で新しい収益源を作ろうとしています。その転換が本物かどうか。オフィス依存を下げ、インダストリーと医療・画像ソリューションで利益を伸ばせるか。それが、今後のコニカミノルタを見る最大のポイントになります。