富士通を一言でいうと

富士通は、通信機器、コンピュータ、メインフレーム、サーバ、ネットワーク、システムインテグレーションを通じて日本の社会インフラを支えてきた企業であり、現在はITサービス企業への転換を進めている会社です。かつての富士通は、パソコンやサーバ、スーパーコンピュータ、通信機器のイメージが強い電機メーカーでした。しかし現在の富士通を理解するうえで重要なのは、ハードウェアを売る会社から、企業や官公庁の業務変革を支えるデジタルサービス企業へ軸足を移している点です。

富士通 企業研究では、「日本の大手IT企業」「官公庁に強いSIer」というだけで終わると不十分です。確かに、富士通は金融、公共、官公庁、製造、流通、医療、通信などの大規模システムを長年手がけてきました。社会保険、銀行勘定系、自治体、航空、通信、企業基幹システムなど、止まると社会や企業活動に影響する領域に深く入り込んでいます。

一方で、現在の富士通は、従来型の受託開発だけに依存する会社から、Fujitsu Uvance、モダナイゼーション、AI、クラウド、データ、セキュリティ、コンサルティングを組み合わせたサービス企業へ変わろうとしています。単に顧客の要望通りにシステムを作るのではなく、製造、小売、金融、公共、ヘルスケアなどの業種課題に対して、業務変革そのものを提案する会社になろうとしているのです。

つまり富士通は、電機メーカーの顔を残しながらも、収益の中心はITサービスに移っています。就活生にとっては、プログラミングだけでなく、業務理解、コンサルティング、AI活用、クラウド、セキュリティ、プロジェクトマネジメントが重要な会社です。個人投資家にとっては、ハードウェアメーカーとしてではなく、利益率を高めるITサービス企業として評価できるかがポイントになります。

なぜ今富士通を見るのか

今富士通を見る理由は、同社の事業転換が数字にも表れ始めているからです。

富士通は、長年にわたり国内の大規模SIで強い会社でした。しかし、従来型SIは人月ビジネスになりやすく、案件ごとに人を投入して売上を作る構造でした。このモデルでは、売上は大きくても利益率が上がりにくく、プロジェクト遅延や不採算案件が発生すると利益を大きく損ないます。富士通が今進めているのは、この構造からの脱却です。

2025年度の富士通は、売上収益3兆5,029億円、調整後営業利益3,905億円、調整後営業利益率11.2%となりました。特に注目すべきはサービスソリューションです。同部門の売上収益は2兆3,469億円、調整後営業利益は3,614億円、調整後営業利益率は15.4%まで高まりました。これは、富士通が低採算のハードウェア・レガシー事業から、より高採算なサービスへ重心を移していることを示します。

また、Fujitsu Uvanceの拡大も重要です。Uvanceは、サステナビリティ・トランスフォーメーションを掲げる富士通の成長ブランドで、製造、小売、金融、公共、ヘルスケアなどの業種課題に対して、デジタル技術で変革を支援する領域です。2025年度にはUvance売上収益が7,093億円まで伸び、サービスソリューションの中で存在感を増しています。

さらに、富士通は中長期経営ビジョン2035で、AI-driven、信頼できるテクノロジー、サービスソリューションの進化、新事業創出を掲げました。これは単なるAIブームへの便乗ではありません。富士通は、顧客のレガシーシステムを知り、公共・金融・製造の業務を知り、大規模インフラを運用してきた会社です。その蓄積をAIエージェントやモダナイゼーションに結びつけられるかが、今後の企業価値を左右します。

成り立ち

富士通は1935年、富士電機製造の電話部所管業務を分離して、富士通信機製造として設立されました。もともとは通信機器メーカーであり、日本の通信インフラを支える会社として始まっています。社名にも「通信機」が入っていたように、出発点はコンピュータやITサービスではなく、電話交換機や通信設備でした。

戦後、日本の通信網が整備される中で、富士通は通信機器メーカーとして成長しました。その後、コンピュータの時代に入り、計算機、メインフレーム、オフィスコンピュータ、サーバ、端末へ事業を広げていきます。日本の企業や官公庁がコンピュータを導入する時代に、富士通はハードウェアとシステム開発の両方を担う存在になりました。

富士通の歴史で重要なのは、常に社会インフラに近い領域で成長してきたことです。通信、金融、公共、製造、流通、医療、交通、学術研究。こうした分野では、単にソフトウェアを作るだけでなく、止まらないシステム、正確な処理、長期運用、保守、セキュリティ、制度対応が求められます。富士通は、この重いITを長年担ってきた会社です。

また、富士通はスーパーコンピュータの歴史でも知られます。理化学研究所と共同開発した「京」や「富岳」は、日本の計算科学を支える重要な基盤です。半導体やコンピュータの事業構造は時代とともに変わってきましたが、コンピューティング、ネットワーク、AI、データ、セキュリティに関する技術の蓄積は、現在のデジタルサービス企業への転換にもつながっています。

近年では、パソコンや携帯電話、半導体、低採算海外事業など、非中核事業の整理を進めてきました。富士通は「総合電機メーカー」のままではなく、ITサービスとデジタル技術に集中する会社へ変わってきたのです。この歴史的な転換を理解すると、現在の富士通の利益率改善やUvance重視の意味が見えやすくなります。

事業内容

富士通の事業は、現在ではサービスソリューション、ハードウェアソリューション、ユビキタスソリューションなどに分かれます。中心はサービスソリューションです。

サービスソリューションは、企業や官公庁向けのITサービス、コンサルティング、システム開発、クラウド、運用、モダナイゼーション、AI、データ活用、セキュリティなどを含みます。金融機関の基幹システム、官公庁や自治体のシステム、製造業のサプライチェーン、流通業の店舗・在庫管理、医療・ヘルスケアのデータ基盤など、顧客の業務そのものに深く入り込む事業です。

このサービスソリューションの中で、成長の柱になっているのがFujitsu Uvanceです。Uvanceは、業種横断で社会課題や企業課題を解決するためのサービス群です。製造業向けにはサプライチェーン強靭化、工場の自動化、トレーサビリティ、カーボンニュートラル対応があります。小売向けには顧客体験、店舗運営、需要予測、マーケティング。金融向けにはリスク管理、AI審査、データ活用。公共向けには防災、行政サービス、社会インフラ保全などがあります。

モダナイゼーションも重要です。日本企業や官公庁には、長年使われてきた基幹システム、メインフレーム、オンプレミス環境、古いアプリケーションが多く残っています。これらは急に捨てられません。業務を止めずにクラウド化し、AI活用できる形へ作り替える必要があります。富士通は、自社システムのモダナイゼーション経験も活かし、顧客のレガシー刷新を事業化しようとしています。

ハードウェアソリューションでは、サーバ、ストレージ、ネットワーク、通信インフラ、スーパーコンピュータ関連などを扱います。ハードウェアは昔ほど会社全体の主役ではありませんが、AI、HPC、ソブリンクラウド、ネットワーク、セキュアな基盤を支える技術として重要です。

ユビキタスソリューションには、パソコンや関連機器などが含まれます。一般消費者に見える富士通の顔としてはFMVパソコンの印象も残っていますが、現在の富士通全体の収益を理解するうえでは、法人向けサービスの方がはるかに重要です。

収益構造

富士通の収益構造は、ハードウェア販売よりも、サービスソリューションの利益率改善が中心になっています。かつての富士通は、コンピュータ、サーバ、通信機器、パソコン、携帯電話、半導体まで幅広く手がける電機メーカーでした。しかし現在は、非中核事業の整理を進め、ITサービスで利益を出す構造に移っています。

サービスソリューションでは、顧客企業や官公庁から、システム開発、保守運用、クラウド移行、データ活用、AI導入、セキュリティ、コンサルティングなどの収入を得ます。従来型SIでは、プロジェクトごとに人を投入して売上を作るため、売上は積み上がりますが、利益率は上がりにくい傾向があります。富士通が目指しているのは、業種ごとの知見、標準化されたオファリング、AI活用、グローバルデリバリーを組み合わせ、より高い粗利率でサービスを提供することです。

Uvanceは、その収益構造を変えるための成長領域です。従来の個別受託開発ではなく、業種課題を起点に、ある程度再利用可能なサービスやテンプレート、AIエージェント、データ基盤を提供できれば、同じ人員でもより高い付加価値を出せます。モダナイゼーションも同様です。レガシー刷新は顧客ごとに個別性が高い一方、富士通がツールや方法論を標準化できれば、利益率の高い事業になり得ます。

ハードウェアソリューションは、売上規模は大きいものの、サービスほど高い利益率を出すのは簡単ではありません。サーバやネットワーク機器は、競争が激しく、部材価格や技術更新の影響を受けます。ただし、AI、HPC、ソブリン基盤、セキュアネットワークなど、富士通のサービスと組み合わせることで差別化できる領域もあります。

投資家が見るべきなのは、売上収益の増減だけではありません。サービスソリューションの売上成長率、調整後営業利益率、Uvanceとモダナイゼーションの売上構成比、グロスマージン率、コアフリーキャッシュフロー、自己株式取得を含む株主還元を見る必要があります。富士通は、売上拡大よりも利益率とキャッシュ創出力の改善で評価される段階に入っています。

事業内容の特徴

富士通の事業内容の特徴は、社会インフラに深く入り込んだIT企業であることです。単にクラウドサービスを売る会社でも、パッケージソフトを販売する会社でもありません。顧客の業務、制度、現場、既存システムを理解し、長期にわたって運用する力が求められる会社です。

金融では、勘定系、決済、リスク管理、チャネルシステムなど、止まると社会的影響が大きいシステムがあります。公共では、自治体、行政手続き、社会保障、税、教育、防災など、制度変更に合わせてシステムを更新し続ける必要があります。製造では、設計、生産、品質、物流、サプライチェーン、設備保全、脱炭素対応が関わります。富士通は、こうした重い業務領域に長く関わってきました。

もう一つの特徴は、技術と業務の両方を持つことです。クラウド、AI、データ、セキュリティ、HPC、量子、ネットワークのような技術だけでは、顧客の業務は変わりません。逆に、業務理解だけでも技術実装が弱ければDXは進みません。富士通は、業種知見とテクノロジーを組み合わせることで、単なる受託開発から事業変革支援へ進もうとしています。

ただし、この特徴はリスクにもなります。社会インフラや基幹システムに関わるほど、失敗したときの影響は大きくなります。自治体、金融、公共、医療などのシステムで障害や品質問題が起きれば、顧客の業務だけでなく社会的信用にも影響します。富士通は大規模案件の品質保証、プロジェクト管理、セキュリティ、コンプライアンスを徹底しなければなりません。

競合他社との違い

富士通の競合は、国内ではNEC、NTTデータ、日立製作所、SCSK、野村総合研究所、伊藤忠テクノソリューションズ、TISなどです。海外ではAccenture、IBM、Capgemini、Deloitte、Microsoft、AWS、Google Cloudなども比較対象になります。

NECとの比較は特に重要です。NECも、通信、公共、社会インフラ、官公庁、金融、セキュリティに強い会社です。顔認証やネットワーク、社会インフラ領域ではNECの存在感が強い一方、富士通は大規模SI、コンピューティング、金融・公共・製造向けIT、Fujitsu Uvanceによるサービス転換を打ち出しています。両社とも電機メーカーからITサービス企業へ変わろうとしていますが、富士通はサービスソリューションの利益率改善をかなり前面に出している点が特徴です。

NTTデータとの違いは、事業の出発点です。NTTデータは通信系のSI企業として、金融・公共・法人・海外ITサービスで強みがあります。富士通は通信機器、コンピュータ、ハードウェア、メインフレームの歴史を持ち、システム開発と技術基盤の両方を持ってきました。ハードウェアやHPC、ネットワーク、AI基盤まで含めた技術の厚みは、富士通らしさです。

日立製作所との違いは、社会インフラと製造業の広がりです。日立は鉄道、電力、産業機器、ビルシステム、ITを組み合わせる社会イノベーション企業です。富士通はよりITサービスに集中しており、ハードウェアや産業設備そのものより、データ、AI、クラウド、業務システムで顧客を支える色が強い会社です。

アルプスアルパインやマブチモーターのような電子部品・モーター企業とは、同じ電機・製造業に近い分類でも事業の性格が大きく異なります。アルプスアルパインは車載電子部品、センサー、HMI、通信モジュール、マブチモーターは小型モーターに強いメーカーです。富士通は部品を量産する会社ではなく、企業や社会の業務システムを設計・構築・運用する会社です。したがって、原材料費よりも人材、プロジェクト採算、ソフトウェア生産性、顧客基盤、知的資産が重要になります。

富士通 強みは、長年の顧客基盤、社会インフラ案件の実績、国内大企業・官公庁との関係、コンピューティング技術、業種知見を持つことです。ただし、競合も強く、クラウドネイティブ企業や外資系コンサルティング会社との競争では、スピード、提案力、グローバル人材、AI活用が問われます。

事業の現代での潮流

ITサービス業界の現代的な潮流は、DX、AI、クラウド、レガシーモダナイゼーション、サイバーセキュリティ、ソブリンAI、業務特化型AIエージェントです。富士通は、これらの変化を正面から受ける会社です。

DXは一時的なブームではなく、企業や官公庁の基幹システムを変える長期テーマです。製造業では、サプライチェーン、工場、品質、設計、保全、脱炭素がデータでつながります。金融では、AI審査、不正検知、リスク管理、顧客体験が変わります。公共では、行政手続き、医療、教育、防災、防衛がデジタル化します。富士通は、こうした顧客の業務変革に入り込むことで成長を目指しています。

AIは富士通にとって大きな機会であり、同時に脅威でもあります。生成AIやAIエージェントが普及すると、システム開発や運用の生産性は大きく変わります。富士通は、AIを活用して自社の開発生産性を高め、顧客向けには業種特化型AIエージェントを提供しようとしています。うまくいけば、従来の人月ビジネスから脱却できます。一方で、AIによって単純な開発作業の価値が下がれば、従来型SIの売上モデルは圧迫される可能性があります。

クラウドとモダナイゼーションも重要です。日本企業には、古い基幹システムやオンプレミス環境が多く残っています。クラウドへ移すだけでなく、業務プロセス、データ構造、セキュリティ、運用体制を作り替える必要があります。富士通は、自社のモダナイゼーション経験を外販することで、レガシー刷新市場を取り込もうとしています。

セキュリティとソブリン基盤も無視できません。AI時代には、データが企業競争力そのものになります。金融、公共、防衛、医療では、データの所在、アクセス権、セキュリティ、国内基盤が重要になります。富士通がソブリンクラウド、国産AI基盤、HPC、量子、ネットワークを重視する背景には、単なるIT効率化ではなく、情報の安全保障というテーマがあります。

強み

富士通の第一の強みは、国内大企業・官公庁との長期的な顧客基盤です。金融、公共、製造、流通、医療、通信など、社会の中核システムに長く関わってきた実績があります。新規参入企業がAIやクラウド技術を持っていても、顧客の業務や既存システムを深く理解していなければ、大規模な変革は進められません。富士通はその入り口を持っています。

第二の強みは、モダナイゼーション需要との相性です。日本企業には、古い基幹システムを抱えたままDXを進めたいという需要があります。富士通は、自社自身のモダナイゼーション経験、メインフレームや基幹システムの知見、AIツールを組み合わせて、顧客のレガシー刷新を支援できます。これは外資系クラウド企業だけでは入りにくい領域です。

第三の強みは、Fujitsu Uvanceです。Uvanceは単なるサービス名ではなく、富士通が業種課題を起点にサービスを再構成するためのブランドです。製造、小売、金融、公共、ヘルスケアなど、富士通が長く関わってきた業界で横展開できれば、個別受託開発よりも利益率を高めやすくなります。

第四の強みは、コンピューティング技術です。スーパーコンピュータ、HPC、AI基盤、量子、ネットワーク、国産CPU構想など、富士通には技術企業としての蓄積があります。すべてが短期的な利益になるわけではありませんが、AI時代には計算資源、データ基盤、セキュリティが重要になるため、長期的な差別化要素になります。

第五の強みは、収益体質が改善していることです。サービスソリューションの調整後営業利益率は大きく高まり、全社でも調整後営業利益率が二桁に乗りました。過去の富士通は売上規模の大きさに対して利益率が物足りない会社と見られがちでしたが、現在は事業ポートフォリオ改革の成果が見え始めています。

弱み・リスク

富士通の第一のリスクは、大規模プロジェクトの品質と採算です。社会インフラや基幹システムに関わる案件では、障害や遅延が顧客だけでなく社会全体に影響します。仕様変更、制度変更、既存システムの複雑さ、顧客側の意思決定の遅れが重なると、不採算案件になりやすくなります。富士通は、標準化とAI活用で開発生産性を上げる一方、品質保証を徹底する必要があります。

第二のリスクは、人材です。ITサービスは工場の設備だけで売上を作る事業ではありません。コンサルタント、エンジニア、AI人材、セキュリティ人材、プロジェクトマネージャー、業務知見を持つ人材が必要です。人材獲得競争は激しく、賃金上昇もあります。優秀な人材を採用・育成・定着できなければ、成長戦略は実行できません。

第三のリスクは、AIによる業界構造変化です。富士通はAIを活用する側ですが、AIは同時に従来型SIを脅かします。コード生成、テスト自動化、運用自動化が進むと、単純な開発・運用作業の単価は下がる可能性があります。富士通がAIを使って高付加価値サービスへ移行できれば追い風ですが、従来型ビジネスに残れば利益率低下につながります。

第四のリスクは、海外事業です。富士通は過去に海外低採算事業の構造改革を進めてきました。グローバルITサービス市場では、Accenture、IBM、Capgemini、インド系IT企業、クラウド大手が強く、国内の強みだけでは勝てません。富士通がグローバルでサービスを拡大するには、業種軸のマネジメント、標準化、M&A、人材の国際化が必要です。

第五のリスクは、ハードウェア・技術投資の不確実性です。HPC、量子、国産CPU、AI基盤、ネットワークは将来性がありますが、開発投資が大きく、商業化まで時間がかかるものもあります。技術的に優れていても、市場で採算が取れなければ企業価値には結びつきません。

数字で見る富士通

富士通を見るときは、売上収益、調整後営業利益、営業利益率、サービスソリューションの売上・利益率、Uvance売上、モダナイゼーション売上、コアフリーキャッシュフロー、株主還元を確認する必要があります。

2025年度の富士通は、売上収益3兆5,029億円、調整後営業利益3,905億円、調整後営業利益率11.2%でした。営業利益は3,483億円、当期利益は4,494億円です。富士通はすでに単なる売上規模の大きい企業ではなく、利益率を高める段階へ進んでいます。

サービスソリューションは、売上収益2兆3,469億円、調整後営業利益3,614億円、調整後営業利益率15.4%でした。2020年度にはサービスソリューションの調整後営業利益率は6.0%でしたが、2025年度には15%台まで上昇しています。これは、低採算案件の見直し、事業再編、Uvance、モダナイゼーション、開発標準化、グロスマージン改善が効いていることを示します。

Fujitsu Uvanceの売上収益は2025年度に7,093億円、モダナイゼーションは3,921億円となっています。サービスソリューションの中で、従来型ITサービスだけでなく、成長領域の構成比が高まっている点が重要です。2026年度予想では、サービスソリューションの売上収益は2兆4,700億円、調整後営業利益は4,300億円、調整後営業利益率は17.4%が見込まれています。

全社の2026年度予想では、売上収益3兆5,100億円、調整後営業利益4,250億円、調整後営業利益率12.1%が示されています。売上の伸びは大きくありませんが、利益率はさらに改善する計画です。つまり富士通を見るうえでは、売上成長率だけでなく、利益率とキャッシュ創出力が重要です。

また、株主還元も大きな論点です。富士通は自己株式取得を機動的に行っており、資本効率改善を意識しています。ITサービス企業として利益率とキャッシュフローが改善すれば、配当や自己株式取得を含む還元余地も広がります。ただし、今後はAI、M&A、人材、技術基盤への投資も必要であり、還元と成長投資のバランスを見る必要があります。

今後の注目ポイント

今後の第一の注目ポイントは、Fujitsu Uvanceの成長です。Uvanceは、富士通が従来型SIから高付加価値サービスへ移るための中心です。売上が増えるだけでなく、業種ごとの再利用可能なサービス、AIエージェント、コンサルティング、データ基盤として利益率を高められるかが重要です。

第二の注目ポイントは、モダナイゼーションです。日本企業や官公庁には、レガシーシステム刷新の需要が長く残ります。富士通が自社のモダナイゼーション経験を武器に、他社向け市場を広げられるかを見る必要があります。単なる置き換え作業ではなく、AI活用やクラウド移行を前提とした業務改革へつなげられるかが鍵です。

第三の注目ポイントは、AI-driven開発です。富士通はAIを使って開発生産性を高める方針を掲げています。もしAIによって設計、コード生成、テスト、運用の生産性を大きく高められれば、ITサービスの利益率はさらに改善します。一方で、AI活用が進まない場合、人件費上昇や競争激化で利益率が圧迫されます。

第四の注目ポイントは、グローバル事業の再成長です。国内サービスソリューションは強い一方、海外では競争が激しいです。富士通はリージョン軸から業種軸のマネジメントへ転換しようとしています。製造、金融、公共、防衛、小売など、業種ごとにグローバル展開できるサービスを持てるかが重要です。

第五の注目ポイントは、中長期経営ビジョン2035の実行です。2035年度に向けて、富士通はサービスソリューションの拡大と、新たなテクノロジー事業創出を掲げています。新規事業で3兆円規模の売上を目指すという構想は大きな挑戦です。投資家は、このビジョンを期待だけで評価するのではなく、毎年のUvance売上、モダナイゼーション売上、利益率、キャッシュフロー、M&A、人材投資の進捗で確認する必要があります。

投資対象として

富士通を投資対象として見る場合、同社はもはや単なる電機株ではなく、ITサービス企業への転換が進む企業として評価すべきです。ハードウェアやレガシー事業の印象だけで見ると、現在の富士通の変化を見落とします。特にサービスソリューションの利益率改善、Uvanceの成長、モダナイゼーション需要、AI活用が評価の中心になります。

ポジティブに見るなら、富士通は国内大企業・官公庁との深い顧客基盤を持ちます。日本ではレガシーシステム刷新、クラウド移行、AI活用、セキュリティ、公共DXの需要が長く続きます。富士通は既存システムを理解し、顧客の業務に入り込んでいるため、単純なクラウドベンダーよりも深い提案ができます。

また、利益率改善の実績も評価できます。サービスソリューションの調整後営業利益率が大きく改善し、全社でも二桁の利益率が見えてきました。自己株式取得や配当を含め、資本効率への意識も高まっています。売上成長よりも、利益率とキャッシュフローを重視する投資家にとっては注目しやすい会社です。

一方で、慎重に見るべき点もあります。大規模システム案件では品質リスクがあります。AIによって従来型SIの付加価値が下がる可能性もあります。海外ITサービス市場では強い競合が多く、富士通のグローバル展開が思うように進まないリスクもあります。HPC、量子、国産CPU、AI基盤などの技術投資は将来性がありますが、商業的な成果が出るまで時間がかかります。

したがって、富士通の株価を見るときは、PERや配当利回りだけでなく、サービスソリューションの営業利益率、Uvance売上、モダナイゼーション売上、AI活用による生産性改善、コアフリーキャッシュフロー、株主還元、海外事業の採算を合わせて見るべきです。富士通は、過去の電機メーカーから、利益率の高いデジタルサービス企業へ変われるかが評価の焦点です。

まとめ

富士通は、通信機器メーカーとして始まり、コンピュータ、メインフレーム、サーバ、ネットワーク、システムインテグレーションを通じて、日本の社会インフラを支えてきた企業です。現在は、ハードウェア中心の電機メーカーから、ITサービス企業、さらにAI時代のデジタルサービス企業へ転換しようとしています。

富士通 強みは、国内大企業・官公庁との顧客基盤、社会インフラ案件の経験、業種知見、コンピューティング技術、Fujitsu Uvance、モダナイゼーション需要にあります。特に、レガシーシステムを理解しながらAI・クラウド・データ基盤へ移行できる点は、富士通らしい強みです。

一方で、品質問題、不採算案件、人材不足、AIによるSI業界の変化、海外競争、技術投資の不確実性には注意が必要です。富士通は、既存の大規模SIに守られる会社ではなく、AIによって自らの開発・運用モデルを変えなければならない会社です。

就活生にとって、富士通はプログラミングだけでなく、業務理解、コンサルティング、AI、クラウド、セキュリティ、プロジェクトマネジメント、公共・金融・製造の社会課題に関われる会社です。個人投資家にとっては、ITサービス企業への転換がどこまで利益率とキャッシュフローに結びつくかを見るべき企業です。

富士通は、かつての総合電機メーカーではありません。社会インフラを支えるSIの蓄積を、AI時代のデジタルサービスへ変えようとしている会社です。その転換が本物かどうかを見極めることが、富士通 企業研究の最大のポイントになります。