アルバックを一言でいうと

アルバックを一言で表すなら、「真空技術を軸に、半導体、電子部品、ディスプレイ、電池、レアアース磁石、真空ポンプ、材料まで広げる製造装置メーカー」です。

半導体製造装置メーカーと聞くと、露光装置、成膜装置、エッチング装置、洗浄装置のような前工程装置を想像しがちです。しかしアルバックは、単純な半導体装置専業ではありません。会社の中心にあるのは「真空」です。真空を作る、真空中で薄膜を形成する、真空中で材料を加工する、真空を測る、真空を保つ。こうした技術を半導体・電子部品・ディスプレイ・産業装置・材料・コンポーネントへ横展開している会社です。

アルバックの事業領域は大きく、ディスプレイ・エネルギー関連製造装置、半導体及び電子部品製造装置、コンポーネント、一般産業用装置、材料、その他に分かれます。半導体向けでは、スパッタリング装置、自然酸化膜除去装置、先端パッケージング向け装置、パワーデバイス向け装置などが重要です。電子部品では磁気デバイス、MEMS、光学部品、パッケージングなどに関わります。ディスプレイでは有機ELやFPD向けの大型成膜・加工装置を扱います。

アルバック 株価 分析で重要なのは、「半導体関連だから成長する」という単純な見方ではありません。アルバックは、半導体・電子部品関連が成長ドライバーである一方、ディスプレイ、EV・電池、パワーデバイス、レアアース磁石、真空コンポーネント、材料も持っています。半導体のAI投資が好調でも、EV関連費用やパワーデバイス投資の遅れが利益を押し下げることがあります。逆に、レアアース磁石や有機EL投資が伸びれば、半導体以外も業績に効きます。

つまりアルバックは、半導体投資サイクルの恩恵を受ける会社であると同時に、真空技術の応用先が広い会社です。投資家にも就活生にも、この「真空技術を中心にした広がり」を理解することが重要です。

なぜ今アルバックを見るのか

今、アルバックを見る理由は、AI、半導体、先端パッケージング、有機EL、レアアース磁石という複数の投資テーマが、同社の真空技術に重なっているからです。

まず、生成AIです。AIサーバー、GPU、HBM、DRAM、NAND、先端ロジック、先端パッケージングの需要が伸びるほど、半導体メーカーや電子部品メーカーは設備投資を行います。アルバックの2026年6月期第3四半期決算では、受注高が四半期でも3Q累計でも過去最高となりました。特にAI関連ビジネスは前年比で大きく伸び、ロジック、メモリ、パッケージングが受注を押し上げています。

ただし、ここで注意したいのは、AI関連すべてが同じ装置に効くわけではないことです。ロジックでは成熟ノードのメタルハードマスク工程、メモリではDRAMや次世代NAND、パッケージングではWLPやPLP、Hybrid bonding関連投資が重要になります。アルバックは、半導体の前工程だけでなく、電子部品・パッケージング・材料・真空コンポーネントにも関わるため、AI投資の波を複数の形で受けます。

次に、有機ELとディスプレイです。テレビやスマートフォンだけでなく、IT製品への有機EL採用拡大により、パネル大型化投資が動いています。ディスプレイ向け装置は半導体ほど高利益率ではない場合もありますが、大型案件になりやすく、売上に大きく効きます。アルバックは歴史的にFPD製造装置にも強く、真空成膜や加工技術を大型基板へ応用してきました。

さらに、レアアース磁石です。EV、風力発電、ロボット、AIサーバーの冷却システム、産業モーターなどで高性能磁石の需要が増えています。アルバックは、レアアース磁石関連で高機能磁石製造装置を持ち、サプライチェーン多角化の流れを受けています。2026年6月期第3四半期資料でも、一般産業用装置の中でレアアース磁石関連が好調とされています。

一方で、リスクも見えています。2026年6月期の通期業績予想では、受注高は3,100億円へ上方修正され、過去最高水準が見込まれています。しかし営業利益は190億円へ下方修正されています。理由は、EV関連費用、品質検証補完対応、半導体の売上期ズレなどです。つまり、受注が強くても、売上計上のタイミング、案件の利益率、一過性費用、工場負荷によって利益は大きく変わります。

今のアルバックは、需要面では強いが、利益率回復はまだ途中という会社です。ここが、今あえて見る価値のあるポイントです。

成り立ち

アルバックの前身は、1952年に創業した日本真空技術株式会社です。米国NRC Equipment Corporationとの技術提携を前提とした総代理店契約を結び、各種真空装置の輸入販売を目的として創業しました。

1955年には大森工場を新設し、国産装置の製造に着手します。1956年には東洋精機真空研究所を合併し、真空化学装置や真空ポンプなどの製造を始めました。1961年には真空冶金事業を開始し、1962年には真空材料関連の会社や熱分析機器の専門会社を設立しています。つまり、アルバックは早い段階から、真空装置、真空ポンプ、真空材料、分析・理化学機器まで広げていました。

1968年には本社と横浜工場を神奈川県茅ヶ崎市に移転しました。現在でもアルバックの本社は茅ヶ崎にあり、同社のものづくりの中心拠点の一つです。1970年代以降は、北米、台湾、香港など海外拠点を整備し、半導体、ディスプレイ、電子部品、産業装置のグローバル需要を取り込む体制を作っていきます。

社名の「ULVAC」は、Ultra Vacuumに由来するブランドとして知られています。日本真空技術という社名が示す通り、会社の根本にあるのは真空です。真空技術は、半導体、ディスプレイ、太陽電池、電池、電子部品、医薬品、食品、材料加工、研究開発など、非常に多くの分野で必要になります。アルバックは、その真空技術を時代ごとの成長産業へ展開してきました。

現在のアルバックは、半導体製造装置メーカーとして見られることが増えています。しかし歴史をたどると、半導体専業ではなく、真空総合メーカーです。この違いを理解すると、同社の強みと難しさが見えます。強みは、真空を軸に応用先が広いことです。難しさは、応用先が広いため、低収益事業や市況の異なる事業をどう整理するかが常に課題になることです。

事業内容

アルバックの事業は、報告セグメントでは真空機器事業と真空応用事業に分かれます。ただし、事業実態を理解するには、公式の6つの事業領域で見る方が分かりやすいです。

第一は、半導体及び電子部品製造装置です。これはアルバックの成長ドライバーです。半導体向けでは、スパッタリング装置、自然酸化膜除去装置、イオン注入装置、エッチングやアッシング関連、先端パッケージング向け装置などが関わります。電子部品向けでは、MEMS、磁気デバイス、光学部品、パッケージングなどで真空成膜・加工技術が使われます。

第二は、ディスプレイ・エネルギー関連製造装置です。有機EL、液晶、太陽電池、電池関連の製造装置が含まれます。大型基板に均一な膜を形成するには、高い真空技術と成膜技術が必要です。ディスプレイ投資は市況変動が大きいですが、案件規模も大きく、売上に強く影響します。

第三は、コンポーネントです。真空ポンプ、真空計、プロセスガスモニタ、リークディテクタ、成膜装置用電源、真空バルブなどです。これは装置本体とは異なり、真空を使う多くの産業に必要な部品群です。半導体や電子部品の設備投資が続く限り、コンポーネント需要も下支えされます。

第四は、一般産業用装置です。真空熱処理炉、真空溶解炉、凍結乾燥装置、リークテスト装置などが含まれます。自動車、医薬品、食品、素材、レアアース磁石など幅広い産業に使われます。2026年6月期はレアアース磁石分野でサプライチェーン多角化に向けた投資が本格化し、高機能磁石製造装置が好調に推移しています。

第五は、材料です。スパッタリングターゲットなど、成膜に使う材料を扱います。真空装置だけでなく、装置で使われる材料まで持つことで、顧客プロセスに深く関われます。半導体、ディスプレイ、電子部品の工場稼働率が高いと、材料需要も安定しやすくなります。

第六は、その他です。表面分析機器、マスクブランクス関連、真空応用技術から派生した装置・サービスなどが含まれます。アルバックは装置そのものだけではなく、真空技術を使った周辺分野にも広く展開しています。

収益構造

アルバックの収益構造は、受注、売上計上、粗利率、事業ミックス、固定費、一過性費用で大きく変わります。

製造装置メーカーでは、顧客から受注を受け、設計・製造・出荷・検収を経て売上を計上します。受注が強くても、売上になるまで時間差があります。2026年6月期第3四半期では受注高が2,361億円と大きく伸びた一方、売上高は1,916億円、営業利益は147億円にとどまりました。受注と利益が同時に伸びるとは限らない点が、装置メーカーを見るうえで重要です。

粗利率を決めるのは、どの事業が売れているかです。半導体・電子部品関連は比較的高利益率です。一方、ディスプレイやEV関連、低収益案件が多いと利益率は下がりやすくなります。2026年6月期第3四半期は、3Q単独の売上総利益率が32.0%まで改善しましたが、3Q累計では前年同期より低く、営業利益率は7.7%でした。半導体関連の構成比上昇はプラスですが、EV関連費用や一過性要因が利益を圧迫しています。

アルバックの収益を見るうえで、装置売上だけでなくコンポーネントと材料も重要です。真空ポンプ、真空計、電源、バルブ、スパッタリングターゲットなどは、顧客工場の稼働や設備投資に連動します。装置本体ほど大型ではありませんが、真空を使う産業全体の安定基盤になります。

一方で、ディスプレイやパワーデバイスのように投資サイクルが大きい分野では、売上と利益がぶれます。大型装置は1件当たりの金額が大きく、顧客都合で検収や投資タイミングがずれると、四半期の業績に影響します。アルバックの業績を見るときは、短期の売上高だけでなく、受注残高、案件構成、粗利率、検収タイミングを見る必要があります。

中長期的には、同社は半導体・電子部品関連の構成比を高め、低収益事業を縮小・撤退し、営業利益率を引き上げる方針です。2025年6月期の営業利益率は10.6%でしたが、2031年6月期には売上高3,600億円、営業利益790億円、営業利益率22%、ROE16%を目標にしています。この目標を達成できるかは、単に売上を伸ばすだけでなく、事業構造を変えられるかにかかっています。

事業内容の特徴

アルバックの特徴は、真空技術を「装置」「部品」「材料」「サービス」まで一体で持つことです。

半導体製造装置メーカーの中には、特定工程の装置に強い会社があります。KOKUSAI ELECTRICはバッチ成膜、芝浦メカトロニクスは洗浄やボンディングなどが分かりやすい例です。アルバックはそれらと違い、特定の半導体工程だけではなく、真空を必要とする幅広い工程を扱います。スパッタリング、自然酸化膜除去、パッケージング、パワーデバイス、ディスプレイ、電池、磁石、材料、真空ポンプまで広がります。

この広さは強みです。半導体市場が強いときは半導体・電子部品で伸ばし、ディスプレイ投資が動けばFPDや有機ELで売上を作り、レアアース磁石やAIサーバー冷却システム向けリークテスト装置が伸びれば一般産業で伸ばせます。複数の成長テーマを取り込める会社です。

一方で、この広さは難しさでもあります。すべての事業が高収益とは限りません。ディスプレイやEV関連の一部案件は、大きな売上を作る一方で利益率が低くなりやすいことがあります。低収益事業を縮小・撤退しながら、半導体・電子部品・真空関連の高収益領域へ集中する必要があります。

もう一つの特徴は、装置メーカーでありながら、ものづくりの改革が株価評価に直結することです。アルバックは2026年6月期を、事業改革・生産改革の準備期間として位置づけています。工場稼働率、原価管理、設計標準化、部品共通化、品質問題の抑制、検収リードタイム短縮が進めば、同じ売上でも利益率は大きく変わります。真空技術だけでなく、生産改革の実行力も重要です。

競合他社との違い

アルバックを競合と比較すると、真空技術を軸にした横展開型の装置メーカーであることが見えてきます。

KOKUSAI ELECTRICは、半導体前工程の成膜・トリートメントに強い会社です。DRAM、NAND、ロジック向けのバッチ成膜や膜質改善が中心です。アルバックも成膜に関わりますが、スパッタリング、自然酸化膜除去、パッケージング、パワーデバイス、ディスプレイ、真空コンポーネント、材料まで広いです。KOKUSAI ELECTRICが成膜プロセス専業色の強い会社なら、アルバックは真空応用の総合メーカーです。

堀場製作所は、計測・分析機器を中心に半導体プロセス制御、自動車計測、環境、医用、科学へ展開する会社です。堀場製作所が「はかる」技術に強いのに対し、アルバックは「真空をつくり、真空中で加工する」技術に強いです。半導体工場では両社の製品が異なる役割で使われます。

芝浦メカトロニクスは、半導体洗浄装置、エッチング装置、ボンディング装置、FPD製造装置などを扱います。アルバックは、真空成膜、表面処理、パッケージング、ディスプレイ、真空コンポーネント、材料の広がりが特徴です。芝浦メカトロニクスが特定装置の高収益化で評価されやすいのに対し、アルバックは事業ポートフォリオ改革の成否が大きく問われます。

東京エレクトロンやApplied Materialsのような大手総合装置メーカーと比べると、アルバックは規模では劣ります。しかし、真空技術の応用範囲、ディスプレイ・材料・産業装置まで持つ点では独自性があります。大手と同じ土俵で全方位に戦うのではなく、真空技術が効く工程やニッチ領域で高シェアを取ることが重要です。

事業の現代での潮流

アルバックを取り巻く潮流は、大きく五つあります。

第一に、生成AIによる半導体投資です。GPU、CPU、HBM、DRAM、NAND、先端ロジック、パッケージングの需要が伸びるほど、半導体・電子部品製造装置の需要が増えます。アルバックの資料でも、AI関連ビジネスは前年比で大きく伸び、ロジック、メモリ、パッケージングが重要な成長エンジンになっています。

第二に、先端パッケージングです。AI半導体では、チップ単体の微細化だけでなく、複数チップを高密度に接続するパッケージング技術が重要になっています。WLP、PLP、Hybrid bonding、アッシング、デスカム、薄膜形成などでアルバックの真空・表面処理技術が関わります。今後の半導体投資では、前工程だけでなく後工程・パッケージングも注目です。

第三に、パワーデバイスです。SiCやGaNなどの次世代パワーデバイスは、EV、再エネ、産業機器、データセンター電源で期待されています。ただし、EV需要の鈍化や中国市場の投資タイミング遅れにより、短期的には調整もあります。アルバックにとって、パワーデバイスは成長分野である一方、市況変動が大きい分野です。

第四に、ディスプレイの有機EL投資です。IT製品への有機EL採用拡大に伴い、パネル大型化投資や改造案件が動いています。ディスプレイはかつて大きな成長分野でしたが、市況の山谷が激しいため、収益性を見極める必要があります。

第五に、レアアース磁石とフィジカルAIです。AIはデータセンター内の半導体だけでなく、ロボット、自動運転、介護、農業、工業機器など実世界に広がります。そこではモーター、センサー、磁石、冷却システム、ディスプレイ、電池が必要になります。アルバックがレアアース磁石やリークテスト装置を成長分野として位置づけるのは、こうしたフィジカルAIの流れとつながります。

強み

アルバックの最大の強みは、真空技術の総合力です。

真空ポンプ、真空計、バルブ、電源、成膜装置、材料、分析装置、サービスまで持つ会社は限られます。装置本体だけでなく、その装置を構成する部品や材料も扱えるため、顧客プロセス全体に入り込みやすいです。半導体、ディスプレイ、電子部品、産業装置で共通する基盤技術を持っていることが強みです。

二つ目の強みは、応用先の広さです。半導体、電子部品、ディスプレイ、電池、医薬品、食品、レアアース磁石、材料、研究開発まで幅広い市場に関わります。ひとつの市場が弱くても、別の市場が伸びる可能性があります。2026年6月期は、パワーデバイス関連で調整がある一方、ロジック、メモリ、パッケージング、レアアース磁石、有機ELが受注を支えています。

三つ目の強みは、半導体・電子部品関連へのシフトです。中長期経営計画では、半導体・電子部品関連の売上構成比を2025年6月期の36%から、2028年6月期に45%、2031年6月期に60%以上へ高める方針です。高収益な領域へ集中できれば、営業利益率は大きく改善する可能性があります。

四つ目の強みは、受注残です。2026年6月期第3四半期時点で受注は非常に強く、通期受注高は過去最高水準の3,100億円が見込まれています。受注は将来売上の先行指標です。売上計上まで時間差はありますが、高利益率案件の受注残が積み上がれば、翌期以降の利益回復につながります。

五つ目の強みは、グローバル展開です。アルバックは台湾、韓国、中国、北米、東南アジアなど、半導体・電子部品・ディスプレイの主要地域に拠点を持っています。顧客の工場が世界に分散する中で、装置販売だけでなく、据付、保守、改造、部品供給まで対応できることは重要です。

弱み・リスク

一方で、アルバックには明確なリスクもあります。

第一に、収益性のブレです。2026年6月期第3四半期累計では、受注高は前年同期比44.1%増と大きく伸びた一方、営業利益は29.1%減でした。これは、受注が強いことと、当期利益が強いことが必ずしも一致しないことを示しています。案件構成、検収時期、一過性費用、EV関連費用、品質対応が利益を左右します。

第二に、低収益事業の整理です。アルバックは事業領域が広い反面、すべてが高収益ではありません。中長期経営計画でも、低収益事業の縮小・撤退、グループ会社・生産拠点の再編、固定費削減が掲げられています。改革が進めば利益率は上がりますが、進まなければ売上はあっても利益が残りにくい状態が続きます。

第三に、半導体投資サイクルです。ロジック、メモリ、パッケージングが好調な局面では受注が伸びますが、顧客の設備投資が一巡すれば受注は減ります。半導体製造装置株は、需要の期待が先に株価に織り込まれやすく、受注や利益率の変化で大きく動きます。

第四に、ディスプレイ・EV・パワーデバイスの市況変動です。ディスプレイは大型案件が多い一方で、市況の山谷が大きいです。EV需要の鈍化は電池やパワーデバイス関連装置に影響します。パワーデバイスは中長期では成長分野ですが、短期では顧客からの遅延要請もあります。

第五に、品質・生産管理リスクです。大型装置は顧客仕様が複雑で、品質問題が起きると追加コストや検収遅れにつながります。2026年6月期の営業利益下方修正には、品質検証補完対応費用も含まれています。装置メーカーにとって、品質保証と生産技術は利益そのものに直結します。

第六に、為替・地政学リスクです。半導体装置は中国、台湾、韓国、米国、日本などの投資動向に左右されます。輸出規制、米中対立、顧客の地域分散、円安・円高、部品調達の制約が業績に影響します。アルバックはグローバル企業であるため、国内需要だけで判断できません。

数字で見るアルバック

数字で見ると、アルバックは受注が非常に強い一方、利益回復はまだ道半ばです。

2025年6月期の連結売上高は2,511億84百万円、営業利益は265億23百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は166億87百万円でした。売上高は前期比で減少しましたが、売上総利益率は31.8%となり、上場以来の高水準でした。年間配当は164円で、過去最高水準でした。

2026年6月期第3四半期累計では、受注高が2,361億85百万円、売上高が1,916億31百万円、営業利益が147億19百万円、経常利益が145億34百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が91億11百万円でした。前年同期比では、受注高は44.1%増、売上高は2.1%増でしたが、営業利益は29.1%減、純利益は30.5%減です。

セグメント別では、真空機器事業の受注高は1,916億44百万円、受注残高は1,447億80百万円、売上高は1,500億5百万円、営業利益は127億69百万円でした。真空応用事業は、受注高445億41百万円、受注残高215億86百万円、売上高416億26百万円、営業利益18億63百万円でした。利益の中心は真空機器事業です。

2026年6月期の通期予想は、売上高2,600億円、営業利益190億円、経常利益190億円、親会社株主に帰属する当期純利益185億円です。受注高予想は3,100億円で、過去最高水準へ上方修正されています。一方、営業利益はEV関連費用や品質検証補完対応、半導体の売上期ズレなどにより下方修正されました。年間配当予想は152円です。

中長期計画では、2028年6月期に売上高2,600億円、営業利益390億円、営業利益率15%、ROE10%を目指し、2031年6月期には売上高3,600億円、営業利益790億円、営業利益率22%、ROE16%を目標としています。半導体・電子部品関連の売上構成比を60%以上へ引き上げることが、利益率改善の中心です。

投資家が確認したい数字は、次のようなものです。

受注高

受注残高

売上高

売上総利益率

営業利益

営業利益率

真空機器事業の営業利益

真空応用事業の営業利益

半導体・電子部品関連の売上構成比

ディスプレイ・エネルギー関連の売上構成

コンポーネント・材料の売上

営業キャッシュフロー

棚卸資産

配当金

アルバック 株価 分析では、売上高だけではなく、受注高、受注残、案件の利益率、一過性費用、事業改革の進捗を分けて見る必要があります。

今後の注目ポイント

今後の注目ポイントは、第一に受注の質です。2026年6月期は受注高3,100億円という過去最高水準が見込まれています。しかし、投資家にとって重要なのは、受注の金額だけではなく、利益率の高い受注がどれだけあるかです。半導体、レアアース、先端パッケージングなど高利益率案件が来期以降の売上・利益にどうつながるかが焦点です。

第二に、半導体・電子部品関連の構成比です。中長期計画では、半導体・電子部品関連を2031年6月期に60%以上へ高める方針です。ロジック、メモリ、パッケージング、電子部品、表面分析、材料、コンポーネントの成長が必要です。この構成比が上がれば、営業利益率改善の説得力が増します。

第三に、事業改革です。低収益事業の縮小・撤退、グループ会社再編、生産拠点再編、固定費削減が実行できるかが重要です。アルバックは技術領域が広いため、すべてを残すと経営資源が分散します。どこを伸ばし、どこを縮めるかが企業価値を左右します。

第四に、レアアース磁石関連です。各国でサプライチェーン多角化が進む中、レアアース磁石製造装置の需要が本格化しています。EVだけでなく、ロボット、AIサーバー冷却、産業モーターにも関わるため、半導体以外の成長ドライバーとして注目です。

第五に、品質対応と生産改革です。2026年6月期は品質検証補完対応などの一過性費用が利益を押し下げました。品質問題を抑え、設計・製造・検査・立ち上げを標準化できれば、利益率は改善します。製造装置メーカーにとって、品質保証と生産技術は競争力そのものです。

第六に、株主還元です。2026年6月期の配当予想は152円で、前期の164円から減配予想です。ただし、同社は配当性向を意識した還元方針を持っています。利益回復が進めば、配当も再び増加する可能性があります。投資家は、短期の減配だけでなく、中期的な営業利益率改善と配当余力を見る必要があります。

投資対象として

投資対象としてのアルバックは、AI・半導体・先端パッケージング・レアアース磁石の成長を受ける真空技術企業でありながら、利益率改善と事業改革の実行力が問われる会社です。

魅力は、まず受注の強さです。2026年6月期は受注高3,100億円という過去最高水準が見込まれています。ロジック、メモリ、パッケージング、レアアース関連の投資が伸びており、真空技術の応用先が広がっています。受注が来期以降の売上・利益に転換されれば、業績回復の可能性があります。

次に、半導体・電子部品関連へのシフトです。中長期計画では、2031年6月期に営業利益率22%、ROE16%を目指しています。低収益事業を整理し、高収益な半導体・電子部品関連の比率を高められれば、現在とは違う利益体質になる可能性があります。

さらに、真空コンポーネントと材料を持つ点も魅力です。装置本体だけではなく、真空ポンプ、真空計、電源、バルブ、材料、サービスを持つことで、顧客工場の稼働や改造需要にも関われます。装置売上だけに依存しない収益基盤を作れる余地があります。

一方で、注意点も多いです。受注が強くても、売上計上まで時間差があります。案件構成が悪いと利益率は上がりません。ディスプレイやEV関連の低収益案件、品質対応費用、生産改革の遅れがあれば、利益は伸びにくくなります。半導体装置株としての期待が高まると、受注や営業利益率の少しの変化で株価が大きく動く可能性もあります。

長期投資で見るなら、確認すべき点は三つです。まず、過去最高水準の受注が、翌期以降に高利益率の売上として計上されるか。次に、半導体・電子部品関連の売上構成比が本当に上がっているか。そして、事業改革によって営業利益率が10%台前半から15%、さらに22%へ向かう道筋が見えるかです。

アルバックは、単なる半導体製造装置株ではありません。真空技術を起点に、半導体、電子部品、ディスプレイ、レアアース磁石、材料、コンポーネントへ広がる会社です。投資対象として見るなら、半導体市況だけでなく、事業ポートフォリオ改革、受注の質、利益率、品質対応、配当方針を合わせて判断する必要があります。

まとめ

アルバックは、1952年に日本真空技術株式会社として創業した真空技術の総合メーカーです。真空装置の輸入販売から始まり、国産装置、真空ポンプ、真空冶金、材料、ディスプレイ、半導体、電子部品、コンポーネント、一般産業用装置へ広がってきました。

この会社の本質は、真空技術を複数の成長産業へ応用することにあります。半導体ではスパッタリング装置や自然酸化膜除去装置、先端パッケージング関連、電子部品ではMEMSや磁気デバイス、ディスプレイでは有機ELやFPD、一般産業ではレアアース磁石やリークテスト、材料ではスパッタリングターゲットなどを扱います。

2026年6月期第3四半期累計では、受注高2,361億円、売上高1,916億円、営業利益147億円でした。受注は過去最高水準ですが、営業利益は前年同期比で減少しています。通期予想では売上高2,600億円、営業利益190億円、受注高3,100億円が見込まれています。需要は強い一方、利益率改善はこれからという状況です。

一方で、リスクも明確です。半導体投資サイクル、ディスプレイ市況、EV・パワーデバイス投資の遅れ、低収益事業、品質対応費用、為替、地政学が業績に影響します。アルバック 株価 分析では、「AI関連で受注が伸びる会社」という見方だけでは足りません。「真空技術を軸に複数市場へ広がり、高収益な半導体・電子部品関連へポートフォリオを変えようとしている会社」として見ることが重要です。

個人投資家と就活生にとっては、真空技術、半導体・電子部品製造装置、ディスプレイ、有機EL、レアアース磁石、コンポーネント、材料、事業改革、営業利益率の改善を分けて確認することが、アルバックを理解する近道になります。