ツガミを一言でいうと
ツガミは、CNC精密自動旋盤を中心に、CNC旋盤、ターニングセンタ、マシニングセンタ、精密研削盤、精密転造盤を手がける小型精密工作機械メーカーです。
工作機械とは、金属などの材料を削る、穴をあける、ねじを作る、研削することで、部品を高精度に加工するための機械です。自動車部品、油圧・空圧部品、医療機器部品、IT機器部品、通信機器部品、半導体関連部品など、私たちが直接目にしない小さな部品の多くは、工作機械によって作られています。
その中でもツガミは、大型の門形加工機や巨大な建設機械部品を削る会社というより、細長い棒材から小径・高精度の部品を連続加工するCNC精密自動旋盤に強い会社です。直径数ミリから数十ミリ程度の部品を、高速に、安定して、量産する領域に特徴があります。たとえば、自動車の小物部品、油圧・空圧機器の精密部品、医療機器の金属部品、通信・電子機器の小型部品などがイメージしやすい用途です。
同じ機械・精密機器の会社でも、日立建機は建設現場で使う大型機械、タダノはクレーン、島津製作所は分析計測・医療機器に強い会社です。ツガミは、それらとは違い、工場の中で小さな金属部品を高精度に量産するための機械を作っています。オークマやDMG森精機のような総合工作機械メーカーと比べても、ツガミはより小型精密・自動旋盤寄りの色が強い会社です。
投資家にとっての見どころは、中国市場の比重、自動旋盤への集中、高い営業利益率、インド生産の拡大、自己株式取得と配当、そして工作機械サイクルの波です。就活生にとっては、精密加工、機械設計、制御、組立、生産技術、品質保証、海外拠点運営に深く関われる会社です。
なぜ今ツガミを見るのか
ツガミを今見る理由は、小型精密部品の加工需要が、自動車、IT、医療、油空圧、インド・中国の製造業投資と結びついているからです。
工作機械業界は、景気循環の影響を受けやすい業界です。顧客が設備投資を増やせば受注は伸び、景気が不透明になれば投資は先送りされます。ツガミもこの波から逃れることはできません。しかし、同社の場合は大型機械よりも、小型精密部品を量産する機械に強いため、自動車部品、IT関連、医療、油空圧機器、一般産業機械など、比較的幅広い量産部品市場に関わっています。
特に大きいのが中国市場です。ツガミは中国に大きな生産・販売基盤を持ち、香港上場子会社である津上精密機床(中国)有限公司を通じて、中国市場で事業を拡大してきました。2026年3月期は、中国市場とインド市場を中心に事業を着実に進めた結果、売上収益・営業利益・当期利益ともに既往最高となりました。中国の製造業投資、部品加工業の高度化、現地生産能力の拡大が、同社の業績に大きく関わっています。
また、インドも重要な成長市場です。ツガミはインドに生産拠点を持ち、2024年には鋳物工場が稼働し、2025年12月には新工場も完成しています。インド新工場は生産能力を月産200〜300台規模へ引き上げる計画で、販売網の拡大と合わせて成長を目指しています。中国に大きく依存しつつも、インドを次の柱に育てようとしている点は、今後の企業価値を見るうえで重要です。
2026年3月期のツガミは、売上収益1,291億円、営業利益361億円、親会社の所有者に帰属する当期利益167億円でした。営業利益率は28.0%で、工作機械メーカーとして非常に高い水準です。2027年3月期も売上収益1,450億円、営業利益365億円を見込んでいます。ただし、営業利益の大きな部分は中国事業に支えられているため、中国市場の設備投資、人民元為替、現地子会社の非支配持分、地政学リスクを見なければなりません。
つまり、ツガミは「高収益な精密工作機械メーカー」として魅力がある一方、「中国比率が非常に高い工作機械メーカー」として慎重に見るべき会社でもあります。
成り立ち
ツガミの歴史は、1923年に創業者の津上退助氏が東京本所でゲージブロックの研究を始めたことにさかのぼります。ゲージブロックとは、長さの基準となる精密測定具です。工作機械メーカーとしては、かなり象徴的な出発点です。つまり、ツガミは最初から「精度」を重視する会社として生まれました。
1937年には新潟県長岡市に株式会社津上製作所を設立し、ゲージブロックの生産を開始しました。その後、ねじ切りフライス盤、油圧式万能円筒研削盤などの工作機械へ事業を広げます。戦後には研削盤、転造盤、ミシンの生産も行いました。工作機械製造禁止令の影響も受けながら、精密加工機械メーカーとして歩みを続けました。
1957年には、T-7形「主軸移動型自動旋盤」を製造販売しました。これが、現在のツガミの主力であるCNC精密自動旋盤につながる重要な製品です。主軸移動型自動旋盤は、細長い棒材を使い、小さな部品を連続して高精度に加工するための機械です。ツガミはこの分野で長く技術を磨いてきました。
1970年に社名を株式会社津上へ変更し、1982年には株式会社ツガミへ変更しました。1978年にはCNC複合自動旋盤「マーキュリーシリーズ」を開発し、1980年代から1990年代にかけてCNC精密自動旋盤、マシニングセンタ、研削盤などで評価を高めていきました。
2000年代以降は、中国を中心とする海外展開が大きな転換点になりました。2003年には津上精密机床(浙江)有限公司を設立し、中国での生産・販売を拡大しました。2017年には津上精密機床(中国)有限公司が香港証券取引所に上場し、中国事業の存在感がさらに高まりました。2011年にはインド拠点も設立され、近年はインド新工場や鋳物工場の整備も進んでいます。
ツガミの成り立ちは、ゲージブロックという精密測定の原点から始まり、自動旋盤、研削盤、転造盤、中国・インド生産へ広がってきた歴史です。大型機械の会社というより、「小さく精密な部品を大量に作る機械」を磨いてきた会社だと見ると、現在の姿が理解しやすくなります。
事業内容
ツガミの主力事業は、精密工作機械の製造・販売です。製品は、CNC精密自動旋盤、CNC旋盤、ターニングセンタ、マシニングセンタ、精密研削盤、精密転造盤に分けられます。
最も重要なのが、CNC精密自動旋盤です。2026年3月期の機種別売上収益では、自動旋盤が1,086億円となり、全体の大部分を占めました。ツガミの事業を理解するには、まずこの自動旋盤を見る必要があります。
CNC精密自動旋盤は、棒材を送りながら、小径部品を連続加工する機械です。複数の刃物を配置し、旋削、穴あけ、ねじ切り、フライス加工、背面加工などを一台の中で行います。製品群には、独立対向くし刃、対向くし刃、くし刃+タレット、高精度くし刃、垂直くし刃などがあり、加工径や工具本数、背面主軸、回転工具の構成によって多様な機種があります。部品の大きさや形状、加工工程に応じて機械を選ぶ仕組みです。
CNC旋盤やターニングセンタは、より一般的な旋削加工や、複合的な旋削・ミーリング加工に使われます。自動旋盤ほど小径量産に特化しない用途でも、精密部品加工に対応します。マシニングセンタは、穴あけ、フライス、面削りなどを行う機械で、部品の平面・立体加工に使われます。
精密研削盤は、部品の最終的な精度や表面粗さを出すために使われます。円筒研削盤や小形精密研削盤、超硬工具研削盤などがあり、シャフト、工具、精密部品の仕上げに関わります。精密転造盤は、切削ではなく素材を塑性変形させてねじや歯形を作る機械です。転造は、材料ロスが少なく、強度面でも利点がある加工方法です。
このように、ツガミは工作機械の中でも、旋削、研削、転造という「小型精密部品加工」に必要な製品群を持っています。大規模な工場設備というより、部品加工業者や量産部品メーカーが導入し、同じ形状の精密部品を高い精度で大量に作るための機械が中心です。
収益構造
ツガミの収益構造は、主力のCNC精密自動旋盤、中国事業、インド成長、生産能力増強、そして海外売上比率の高さによって成り立っています。
2026年3月期の売上収益は1,291億円、営業利益は361億円でした。営業利益率は28.0%です。工作機械メーカーとして非常に高い利益率であり、同社の高収益性を示しています。ただし、この数字を見るときは、親会社株主に帰属する利益と、非支配持分の存在を分けて考える必要があります。ツガミの中国子会社は香港上場しており、親会社が100%保有しているわけではありません。そのため、連結全体の当期利益は243億円ですが、親会社の所有者に帰属する当期利益は167億円でした。
機種別では、自動旋盤が1,086億円、研削盤が55億円、マシニングセンタ・転造盤・専用機が88億円でした。自動旋盤が売上の大半を占めるため、同社の収益は自動旋盤の需要に大きく左右されます。自動旋盤が伸びる市場、つまり小型精密部品の量産投資が活発な市場では業績が伸びやすくなります。
地域別では、中国の比率が非常に大きいです。決算短信のセグメント情報では、中国の売上収益は1,110億円、セグメント利益は311億円でした。日本は売上収益277億円、セグメント利益23億円、インドは売上収益68億円、セグメント利益3億円でした。中国事業が全社利益の大部分を支えている構造です。
一方、インドはまだ規模こそ中国に比べて小さいものの、売上収益が前期比で大きく伸び、黒字化しています。新工場の稼働により、生産能力は月産200〜300台規模へ増強される計画です。今後、インドの自動車部品、二輪車、医療機器、一般機械、輸出加工業が伸びれば、ツガミにとって次の成長柱になる可能性があります。
ツガミの収益構造で注意したいのは、利益率の高さと市場集中の両方です。高収益だから安心というより、中国の設備投資が好調なときには非常に強いが、中国市場が弱くなると影響も大きい、という構造です。
事業内容の特徴
ツガミの事業の特徴は、小型精密部品の量産加工に特化した工作機械を持つことです。
CNC精密自動旋盤は、棒材を供給し続けながら、部品を連続して加工します。人が一つずつ材料を取り付け、機械を止め、また取り外すような加工ではありません。自動供給、自動加工、自動排出によって、小さな部品を効率的に量産します。製造業で人手不足が進む中では、こうした自動化された加工機の価値が高まります。
また、ツガミの製品は「高精度・高速・高剛性」を重視しています。小型部品は、サイズが小さいから簡単というわけではありません。むしろ、わずかな寸法誤差が製品性能に直結します。医療機器、油圧部品、IT機器、自動車部品では、ミクロン単位の精度や表面品質が求められます。高速で加工しながら、寸法精度と安定性を維持することが重要です。
同社は、精密研削盤や転造盤も持っているため、旋削だけでなく、仕上げ加工やねじ・転造加工にも関われます。自動旋盤、研削盤、転造盤の組み合わせは、精密部品加工の一連の工程に近い領域をカバーしています。
さらに、中国とインドに生産体制を持つ点も特徴です。工作機械は日本で作って輸出するだけではなく、現地市場に近い場所で生産・販売・サービスを行うことが重要です。中国の部品加工業者やインドの製造業に対して、現地で機械を提供し、サービスできることは競争力になります。
就活生の視点では、ツガミは大型の総合重工メーカーではありませんが、精密加工に深く入り込む会社です。機械設計、制御、組立、精度調整、加工テスト、生産技術、品質保証、海外拠点支援などに関われます。製品は小型でも、要求される精度と量産安定性は非常に高い分野です。
競合他社との違い
ツガミの競合には、シチズンマシナリー、スター精密、DMG森精機、オークマ、ヤマザキマザック、ブラザー工業、海外のスイス型自動旋盤メーカー、中国・台湾メーカーなどがあります。特に比較しやすいのは、シチズンマシナリーやスター精密のような小型精密自動旋盤に強い企業です。
シチズンマシナリーは、シンコムブランドのCNC自動旋盤で知られ、小型精密部品加工に強い会社です。スター精密も、スイス型自動旋盤で世界的な存在感があります。ツガミも同じく小型精密自動旋盤に強く、この領域では日本メーカー同士の競争が激しいです。違いを出すには、加工径、工具構成、複合加工能力、価格、納期、現地サービス、顧客業種への対応力が重要になります。
オークマやDMG森精機との違いは、対象とする加工領域です。オークマやDMG森精機は、5軸加工機、複合加工機、大型機、自動化ソリューションなどを含む総合工作機械メーカーです。ツガミは、それらよりも小径・量産・精密自動旋盤の比重が高い会社です。航空機の大型構造部品を削るというより、自動車やIT、医療、油空圧機器の小型部品を大量に作る設備に強いと見るべきです。
ブラザー工業の工作機械事業は、小型マシニングセンタ「SPEEDIO」による省スペース・高速加工が特徴です。ツガミは、マシニングセンタも持ちますが、主力はあくまで自動旋盤です。ブラザーが小型部品のミーリング加工やタップ加工に強いとすれば、ツガミは棒材から小型旋削部品を連続加工する領域に強みがあります。
日立建機やタダノとは、同じ機械業界でも顧客の現場がまったく違います。日立建機やタダノは建設・インフラの現場で使われる大型機械です。ツガミは工場内で精密部品を作る機械です。島津製作所が計測・分析・医療の精密機器に強いのに対し、ツガミは精密部品を作るための加工機に強みがあります。
ツガミの独自性は、小型精密自動旋盤への集中、中国での大きな事業基盤、インド生産の拡大、そして高い営業利益率にあります。総合工作機械メーカーではなく、精密小物加工に特化した高収益メーカーとして見ると、競合との差が分かりやすくなります。
事業の現代での潮流
ツガミを取り巻く第一の潮流は、精密小型部品の需要拡大です。自動車の電動化、医療機器の高度化、IT機器の小型化、通信機器、油空圧機器、ロボット、半導体関連装置では、小さく高精度な金属部品が必要です。こうした部品を効率よく量産するために、CNC精密自動旋盤が使われます。
第二の潮流は、自動化と省人化です。部品加工業では、人手不足や熟練技能者不足が深刻です。CNC精密自動旋盤は、棒材供給から加工まで自動で行いやすく、長時間の連続運転に向いています。人手を減らしながら量産するための設備として、今後も需要があります。
第三の潮流は、中国製造業の高度化です。中国は単なる安価な量産拠点から、高精度加工や自動化投資を進める製造国へ変化しています。自動車、EV、通信、医療、一般機械などの部品加工で、精密工作機械の需要が続いています。ツガミは中国市場で大きな収益を上げており、この流れを直接取り込んでいます。
第四の潮流は、インドの製造業成長です。インドでは、自動車、二輪車、医療、電子機器、一般機械の生産が拡大しています。現地で部品を加工する需要が増えれば、小型工作機械の市場も広がります。ツガミがインド新工場を稼働させ、生産能力を増強しているのは、この成長を見据えた動きです。
第五の潮流は、サプライチェーン分散です。米中対立や地政学リスクにより、製造業は中国一極集中を見直す動きを進めています。ツガミにとって中国は最大の収益源ですが、インド、東南アジア、欧州、韓国、国内市場をどう広げるかも重要です。中国で稼ぎながら、次の成長地域を作れるかが中長期の課題になります。
強み
ツガミの強みは、第一にCNC精密自動旋盤への集中です。2026年3月期の自動旋盤売上は1,086億円で、全社売上の大半を占めました。主力製品が明確であり、小型精密部品の量産加工に特化して技術と販売を磨いてきたことが強みです。
第二の強みは、高い営業利益率です。2026年3月期の営業利益率は28.0%でした。工作機械メーカーとしては非常に高い水準です。中国市場での販売拡大、現地生産、製品ミックス、稼働率、コスト管理が利益率を支えています。ただし、この高収益は中国市場への依存と表裏一体であるため、強みであると同時にリスクでもあります。
第三の強みは、中国事業の規模です。津上精密機床(中国)有限公司を中心に、中国で大きな生産・販売基盤を持っています。中国の部品加工業者に近い場所で機械を供給できることは、価格、納期、サービスの面で有利です。香港上場子会社を持つことで、現地資本市場との接点もあります。
第四の強みは、インドへの先行投資です。インド新工場、鋳物工場、生産能力増強は、今後の成長市場への布石です。2026年3月期にはインドセグメントが黒字化し、売上も大きく伸びました。中国依存を少しずつ分散する意味でも、インド事業は重要です。
第五の強みは、財務の安定性と株主還元です。2026年3月期末の親会社所有者帰属持分比率は52.0%、グループ全体の自己資本比率は69.1%でした。営業キャッシュフローは286億円と大きく増加し、配当は2026年3月期85円、2027年3月期は98円を計画しています。自己株式取得も機動的に実施しています。
弱み・リスク
ツガミの最大のリスクは、中国市場への依存です。2026年3月期の中国セグメントは売上収益1,110億円、セグメント利益311億円でした。全社の売上・利益の大部分が中国に集中しているため、中国の設備投資、景気政策、製造業需要、為替、地政学リスクが業績に直結します。
第二のリスクは、自動旋盤への集中です。自動旋盤が主力であることは強みですが、需要が鈍れば全社業績への影響が大きくなります。製品ポートフォリオが明確である一方、総合工作機械メーカーのように大型機、5軸加工、自動化システム、MROで広く分散しているわけではありません。
第三のリスクは、非支配持分です。中国子会社が香港上場しているため、連結全体の利益と親会社株主に帰属する利益に差があります。2026年3月期の当期利益は243億円でしたが、親会社の所有者に帰属する当期利益は167億円です。投資家は、連結営業利益だけでなく、最終的に親会社株主へ帰属する利益を見る必要があります。
第四のリスクは、工作機械サイクルです。工作機械は設備投資財であり、顧客が投資を先送りすれば受注が減ります。中国・インドが好調な局面では大きく伸びますが、景気後退や金融引き締め、製造業の在庫調整が起きれば反動もあります。
第五のリスクは、競争です。シチズンマシナリー、スター精密、中国・台湾メーカーなど、小型精密自動旋盤の競合は多いです。中国市場では現地メーカーの台頭もあります。高精度・高速・高剛性で差別化し続けなければ、価格競争に巻き込まれる可能性があります。
数字で見るツガミ
ツガミを見るときは、売上収益、営業利益率、親会社帰属利益、中国セグメント、インドセグメント、機種別売上、営業キャッシュフロー、配当を確認する必要があります。
2026年3月期の連結売上収益は1,291億円、営業利益は361億円、税引前利益は356億円、当期利益は243億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は167億円でした。売上収益は前期比20.2%増、営業利益は54.9%増、親会社帰属利益は53.6%増です。売上収益、営業利益、当期利益はいずれも既往最高となりました。
営業利益率は28.0%でした。これは工作機械メーカーとして高い水準です。ただし、親会社所有者帰属持分当期利益率や親会社帰属利益を見ると、非支配持分の影響を考慮する必要があります。
機種別では、自動旋盤が1,086億円、研削盤が55億円、マシニングセンタ・転造盤・専用機が88億円でした。自動旋盤が全社売上の中心です。2027年3月期は売上収益1,450億円、営業利益365億円、親会社帰属利益170億円を見込んでいます。売上はさらに伸びる一方、営業利益の伸びは小幅な計画です。営業利益率は25.2%予想で、なお高水準ですが、2026年3月期よりはやや低下する見通しです。
セグメント別では、中国が売上収益1,110億円、セグメント利益311億円でした。日本は売上収益277億円、セグメント利益23億円、インドは売上収益68億円、セグメント利益3億円です。韓国やその他地域はまだ小規模です。中国の圧倒的な大きさと、インドの成長初期という構図が見えます。
財務面では、2026年3月期末の資産合計は1,540億円、現金及び現金同等物は421億円、親会社所有者帰属持分比率は52.0%でした。営業活動によるキャッシュフローは286億円、投資活動によるキャッシュフローはマイナス20億円、財務活動によるキャッシュフローはマイナス159億円でした。税引前利益の増加、棚卸資産の減少、前受金の増加などが営業キャッシュフローを押し上げています。
株主還元では、2026年3月期の配当は85円、2027年3月期は98円を計画しています。2026年3月期には自己株式取得20億円も実施しました。良好な財務状況を維持しながら、安定配当と機動的な自己株式取得を行う方針です。
投資家が確認したい指標は、次の通りです。
自動旋盤売上が1,000億円超の水準を維持できるか
中国セグメントの利益率が高水準を保てるか
インド新工場が売上と利益に貢献するか
親会社帰属利益が連結営業利益に見合って伸びるか
営業キャッシュフローが高水準を維持できるか
配当と自己株式取得が利益とキャッシュに見合っているか
中国依存をインド・その他アジア・欧州・日本で分散できるか
就活生の場合は、売上規模だけでなく、どの機械が主力で、どの地域が会社を支えているかを見ると、ツガミの実態が分かりやすくなります。
今後の注目ポイント
今後のツガミで最も注目したいのは、中国市場の持続性です。中国事業は売上・利益の中心であり、ここが強ければ全社業績は伸びやすくなります。一方、中国の設備投資が弱まれば影響も大きいです。中国の自動車、IT、医療、油空圧、一般機械向けの部品加工投資が続くかが重要です。
次に、インド事業です。インド新工場は2025年12月に稼働を開始し、生産能力は月産200〜300台へ増強される計画です。インドの自動車・二輪車・医療・電子部品・一般機械の成長を取り込めれば、ツガミにとって大きな次の柱になります。
第三に、日本の長岡工場の建替えです。築後約50年の8号棟を新工場棟へ建て替え、最先端の省エネ・省人化・自動化と加工技術を提案する展示エリアとして活用する計画です。国内工場は単なる生産拠点だけでなく、技術提案と開発の役割も持ちます。
第四に、製品ポートフォリオの広がりです。自動旋盤の強さは維持しつつ、研削盤、マシニングセンタ、転造盤、専用機をどこまで伸ばせるかが重要です。自動旋盤一本足打法に近い構造から、精密加工機械群として広がれるかが中長期の課題です。
第五に、株主還元と資本効率です。ツガミは高い利益率と営業キャッシュフローを背景に、増配と自己株式取得を進めています。2027年3月期は98円配当を計画しています。投資家は還元の大きさだけでなく、成長投資、工場投資、研究開発、サプライチェーン強化とのバランスを見る必要があります。
投資対象として
投資対象としてのツガミは、高収益なCNC精密自動旋盤メーカーであり、中国・インドの製造業投資を取り込む会社です。2026年3月期は売上収益1,291億円、営業利益361億円、営業利益率28.0%という非常に高い水準を達成しました。営業キャッシュフローも大きく改善し、配当と自己株式取得も積極的です。
魅力は、主力製品が明確で、収益性が高いことです。小型精密部品の量産加工というニッチで強い領域を持ち、中国市場で大きな事業基盤を築いています。インド事業が育てば、中国に次ぐ成長余地も期待できます。
また、財務面も比較的安定しています。親会社所有者帰属持分比率は52.0%、グループ全体の自己資本比率は69.1%で、現金及び現金同等物も421億円まで増えています。高収益とキャッシュ創出力は、投資家にとって大きな評価材料です。
一方で、投資家は中国依存と非支配持分を必ず見る必要があります。営業利益が大きくても、そのすべてが親会社株主に帰属するわけではありません。また、中国市場の景気や設備投資、地政学リスクが業績に大きく影響します。高い営業利益率が続くかどうかも、競争環境と市場需要に左右されます。
PERやPBRを見るときは、単純な利益成長だけでなく、親会社帰属利益、中国セグメント利益、インド成長、営業キャッシュフロー、自己株式取得、配当方針を組み合わせて判断する必要があります。ツガミは高収益企業ですが、同時に地域集中と製品集中のリスクを抱える会社です。
就活生にとっては、精密加工の専門性を深く磨ける会社です。ゲージブロックを原点に持つ精密技術、自動旋盤、研削盤、転造盤、中国・インドの生産拠点、海外市場への展開に関われます。大型機械よりも、小さく高精度な部品を量産する技術に興味がある人には、実力を発揮しやすい会社です。
まとめ
ツガミは、1923年に津上退助氏がゲージブロックの研究を始めたことを源流に持ち、1937年に新潟県長岡市で津上製作所として設立された精密工作機械メーカーです。現在は、CNC精密自動旋盤を主力に、CNC旋盤、ターニングセンタ、マシニングセンタ、精密研削盤、精密転造盤を展開しています。
同社の強みは、小型精密部品加工に強いCNC精密自動旋盤、中国での大きな生産・販売基盤、インドへの先行投資、高い営業利益率、良好な財務と株主還元です。2026年3月期には売上収益1,291億円、営業利益361億円、親会社の所有者に帰属する当期利益167億円となり、売上・利益ともに既往最高を更新しました。
一方で、リスクも明確です。売上・利益の多くを中国事業に依存しており、主力製品も自動旋盤に集中しています。中国市場の景気、設備投資、競合、為替、地政学リスク、非支配持分の影響を見なければ、同社の実力を正しく評価できません。
ツガミの企業研究では、「工作機械の会社」という一般論で止めず、ゲージブロックを原点とする精密技術、自動旋盤への集中、中国事業の圧倒的な存在感、インド新工場の成長余地を分けて見ることが大切です。小さな精密部品を大量に作るための機械は、EV、医療、IT、油空圧、一般産業機械の裏側で必要とされ続けます。その精密小物加工の領域で、ツガミが中国依存を管理しながらインドや他地域へ広げられるかが、今後の企業価値を左右していくでしょう。