TOYO TIREを一言でいうと

TOYO TIREは、SUV、ピックアップトラック、ライトトラック向けの高付加価値タイヤに強みを持つ、日本発の独立系タイヤメーカーです。社名の通りタイヤが主力ですが、振動制御技術を活かした自動車部品も手がけています。

自動車部品メーカーという広い分類の中で見ると、TOYO TIREはかなり個性がはっきりした会社です。小糸製作所やスタンレー電気が車の「光」を支え、豊田合成がゴム・樹脂・安全部品を支え、トヨタ紡織が車室空間を支える会社だとすれば、TOYO TIREは車と路面をつなぐ唯一の接点である「タイヤ」で価値を出す会社です。

タイヤは一見すると、黒いゴムの輪に見えます。しかし実際には、天然ゴム、合成ゴム、カーボンブラック、シリカ、補強材、スチールコード、繊維、各種薬品を組み合わせ、走る、曲がる、止まる、支える、静かに走る、燃費をよくする、長持ちする、といった性能を同時に満たす高度な製品です。タイヤの性能は、乗り心地、燃費、制動距離、操縦安定性、騒音、安全性に直結します。

TOYO TIREの特徴は、世界最大級の総合タイヤメーカーではないからこそ、狙う市場を絞っている点にあります。特に北米市場で、SUVやピックアップトラック向けの大口径・高付加価値タイヤに強みを持ち、「OPEN COUNTRY」や「NITTO」ブランドで存在感を築いています。全方位で最大手と戦うというより、需要が厚く、ブランドを作りやすく、利益率を高めやすい領域に集中している会社です。

なぜ今TOYO TIREを見るのか

TOYO TIREを今見る理由は、タイヤ業界が安定需要を持ちながら、電動化、SUV化、原材料価格、為替、地域別需要によって大きく変化しているからです。

タイヤは、自動車が存在する限り必要な部品です。新車が売れれば新車装着用タイヤの需要が生まれ、すでに走っている車が増えれば交換用タイヤの需要が生まれます。車は購入後も走行距離や経年劣化に応じてタイヤ交換が必要になるため、タイヤメーカーには補修市場という継続需要があります。この点は、一度新車に搭載されたらモデルチェンジまでの需要に左右されやすい部品メーカーとは少し違います。

一方で、タイヤ業界は成熟市場でもあります。ブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤー、コンチネンタル、住友ゴム、横浜ゴム、ハンコックなど競合は強く、価格競争もあります。そこでTOYO TIREが重視しているのが、北米のSUV・ライトトラック向け高付加価値品です。北米ではピックアップトラックや大型SUVの人気が根強く、オフロード、アウトドア、カスタム文化とも結びついています。見た目、走破性、ブランド性を重視するユーザーが多く、タイヤ単価も高くなりやすい市場です。

電動化も重要です。EVはエンジン音が小さいため、タイヤのロードノイズが目立ちやすくなります。また、車両重量が重く、モーターのトルクが大きいため、タイヤには耐荷重性、耐摩耗性、低転がり抵抗、静粛性が同時に求められます。EVだからタイヤが不要になるわけではありません。むしろ、タイヤに求められる性能のバランスが難しくなります。

投資家にとっては、TOYO TIREは営業利益率の高さが注目される会社です。2025年12月期は売上高5,949億円、営業利益973億円となり、営業利益率は16%台でした。タイヤメーカーとしてはかなり高い収益性です。ただし、この高収益は、北米向け高付加価値品、円安、価格改定、ミックス改善に支えられた面があります。原材料価格、海上運賃、為替、米国需要、関税、販売ミックスが変われば、利益率も変動します。

したがって、TOYO TIREは「タイヤは安定して売れるから安心」という単純な見方ではなく、「どの地域で、どのタイヤを、どれだけ高い利益率で売れているか」を見る会社です。

成り立ち

TOYO TIREの前身である東洋ゴム工業は、1945年に設立されました。戦後の日本でゴム工業が復興していく中、タイヤ、工業用ゴム、建築用ゴム、自動車部品などを手がける会社として成長していきます。長らく「東洋ゴム工業」の社名で知られていましたが、2019年にTOYO TIRE株式会社へ商号変更しました。

この社名変更は、単なるブランド名の変更ではありません。過去には免震ゴムをめぐる不正問題などもあり、同社は事業とブランドの再構築を迫られました。その中で、非タイヤ事業の整理を進め、タイヤを中心とした会社へ軸足を明確にしていきました。現在のTOYO TIREは、かつての総合ゴムメーカーというより、タイヤ事業に集中する会社として見る方が実態に近いです。

同社の歴史で重要なのは、国内だけでなく北米市場で独自の存在感を築いてきたことです。TOYO TIRESブランドは、走りを楽しむユーザーやSUV・ライトトラックユーザーに訴求し、NITTOブランドは米国のカスタムカー、ピックアップ、オフロード文化と結びついて成長してきました。これは、単に新車メーカー向けにタイヤを納めるだけでなく、交換用タイヤ市場でブランドを育ててきたことを意味します。

また、TOYO TIREは日本、米国、マレーシア、セルビアなどに生産拠点を持ち、グローバルに供給体制を整えています。特に米国市場向けでは、現地の需要に合わせた製品開発、販売網、ブランドマーケティング、生産体制が重要になります。タイヤは輸送コストが重く、地域ごとの需要に合わせた生産・供給が利益率に直結するためです。

この成り立ちから見ると、TOYO TIREは「大手の後追いをするタイヤメーカー」ではなく、「得意な地域と製品を絞り、ブランドと利益率を高めてきた会社」と捉えるべきです。

事業内容

TOYO TIREの事業は、大きくタイヤ事業と自動車部品事業に分けられます。ただし、売上と利益の中心は圧倒的にタイヤ事業です。

タイヤ事業では、乗用車用タイヤ、SUV用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、冬用タイヤ、オールシーズンタイヤ、新車装着用タイヤ、交換用タイヤを扱います。代表的なブランドとして、SUV・オフロード系の「OPEN COUNTRY」、スポーツ・プレミアム系の「PROXES」、ミニバン向けの「TRANPATH」、北米で存在感のある「NITTO」などがあります。

特に重要なのは、交換用タイヤ市場です。新車装着用タイヤは、自動車メーカーに納入するため取引規模は大きいものの、価格交渉が厳しく利益率が低くなりやすい傾向があります。一方、交換用タイヤは販売店や流通を通じて消費者に近い市場で売られるため、ブランド力、商品力、販売網、マーケティングが利益に影響します。TOYO TIREは、北米の交換用タイヤで強みを持つ点が特徴です。

自動車部品事業では、防振ゴムや自動車用部品を扱っています。エンジンや車体の振動を抑え、操縦安定性や静粛性を高める部品です。タイヤも路面からの振動を受ける部品であり、防振ゴムも振動を制御する部品です。つまり、TOYO TIREの技術の根には、ゴム材料を使って車の接地、振動、衝撃を制御する考え方があります。

ただし、企業全体を見るうえでは、自動車部品事業は補助的な位置づけです。TOYO TIREの業績を左右するのは、タイヤ事業、とくに北米向けの高付加価値タイヤです。投資家が見るべき中心も、タイヤの販売数量、販売単価、地域別ミックス、原材料価格、為替、ブランド戦略です。

収益構造

TOYO TIREの収益構造は、「タイヤをどの市場で、どの価格帯で売るか」に大きく左右されます。

タイヤ売上には、新車装着用と交換用があります。新車装着用は自動車メーカー向けのOEM販売です。自動車メーカーの新車生産台数に連動し、採用されれば一定の数量が見込めます。ただし、自動車メーカーは価格交渉力が強く、利益率は高くなりにくい傾向があります。また、新車装着はブランド認知や将来の交換需要につながる面もありますが、短期の収益性だけで見ると交換用タイヤの方が重要になりやすいです。

交換用タイヤは、すでに市場に出た車のタイヤ交換需要です。ここでは、消費者や販売店がブランド、性能、価格、口コミ、デザイン、用途に応じて選びます。TOYO TIREが北米で強いのは、この交換用市場です。特にSUV、ピックアップ、ライトトラック向けの大径タイヤやオフロードタイヤは単価が高く、ブランドが効きやすい領域です。

原材料費も大きな要素です。タイヤには天然ゴム、合成ゴム、カーボンブラック、シリカ、スチールコード、繊維、薬品などが使われます。天然ゴム市況、原油価格、石油化学製品価格、海上運賃、為替が変動すれば、原価が動きます。価格改定によって販売価格へ転嫁できれば利益を守れますが、競争が激しい市場では転嫁に時間がかかることもあります。

地域別では、北米の重要性が非常に高いです。北米向け高付加価値品が利益を押し上げており、円安も円換算の業績を支えます。一方で、北米需要が弱くなる、在庫調整が起きる、販売ミックスが悪化する、米国関税や物流費が上がると、収益に大きく影響します。

2025年12月期の営業利益率は16%台と高水準でした。これは、タイヤメーカーとしてはかなり強い数字です。ただし、投資家はこの利益率が持続的かどうかを確認する必要があります。価格改定、円安、高付加価値品比率、原材料コスト低下が重なった結果なのか、それとも構造的に高収益体質になっているのかで評価は変わります。

事業内容の特徴

TOYO TIREの事業の特徴は、タイヤという成熟製品でありながら、ブランドと用途の絞り込みで高付加価値化していることです。

タイヤはどのメーカーも作っているように見えますが、実際には用途ごとに求められる性能が大きく異なります。低燃費タイヤでは転がり抵抗が重要です。スポーツタイヤではグリップ、操縦安定性、応答性が重要です。SUV・オフロードタイヤでは耐久性、悪路走破性、サイドウォールの強さ、見た目の迫力が重要です。スタッドレスタイヤでは氷上性能、雪上性能、低温での柔軟性が重要です。

TOYO TIREが得意とするSUV・ライトトラック向けタイヤは、単なる移動用ではなく、ライフスタイルや趣味性と結びつきやすい製品です。北米ではピックアップトラックやSUVをカスタムし、オフロードやアウトドアで使う文化があります。その中で「OPEN COUNTRY」や「NITTO」のようなブランドは、性能だけでなく見た目や世界観も重要になります。これは、価格競争に巻き込まれにくい領域を作るうえで大きな意味があります。

また、タイヤは車と路面の唯一の接点です。いくら車のエンジンやモーターが優れていても、タイヤが路面に力を伝えられなければ走れません。いくらブレーキが高性能でも、タイヤがグリップしなければ止まりません。タイヤは、走行性能、安全性、燃費、静粛性を同時に左右する部品です。

EV向けでは、さらに要求が複雑になります。車重が重く、加速トルクが大きく、静粛性への要求が高く、航続距離を伸ばすために低転がり抵抗も必要です。耐摩耗性と低燃費性、静粛性とグリップを同時に満たす必要があるため、材料配合、構造設計、トレッドパターンの重要性が増します。

就活生の視点では、TOYO TIREは商品が分かりやすい会社です。自分が開発したタイヤが実際に車に装着され、道路やオフロードを走る姿を想像しやすいからです。一方で、開発の中身は材料化学、構造設計、シミュレーション、試験評価、生産技術、品質保証、マーケティングまで幅広く、単なるゴム製品の会社ではありません。

競合他社との違い

TOYO TIREの競合には、国内ではブリヂストン、住友ゴム工業、横浜ゴム、海外ではミシュラン、グッドイヤー、コンチネンタル、ピレリ、ハンコックなどがあります。タイヤ業界は世界的な大手が強く、研究開発、生産能力、販売網、ブランド力で激しい競争があります。

ブリヂストンは世界最大級のタイヤメーカーであり、乗用車、トラック・バス、鉱山用、航空機用、ソリューション事業まで非常に幅広い会社です。ミシュランも高いブランド力と技術力を持ち、プレミアムタイヤやサービス事業に強みがあります。住友ゴムや横浜ゴムも、国内外で乗用車用、トラック・バス用、スポーツタイヤ、農機・建機用などを展開しています。

TOYO TIREは、これらの巨大企業と全方位で戦う会社ではありません。むしろ、SUV、ピックアップ、ライトトラック、オフロード、趣味性の高い交換用タイヤに集中し、北米市場でブランドを作っている点に違いがあります。大手が全市場を押さえに行くのに対し、TOYO TIREは得意領域を絞って利益率を高める戦略です。

また、NITTOブランドの存在も特徴です。NITTOは北米のカスタムカーやライトトラック市場で独自のファンを持つブランドです。タイヤは機能部品であると同時に、車好きにとっては見た目や個性を表現するパーツでもあります。この趣味性のある市場でブランドを作れていることは、TOYO TIREの差別化要因です。

一方で、規模の面では大手に劣ります。研究開発費、生産拠点、販売網、OEM採用の広がりでは、ブリヂストンやミシュランのような巨大企業に及びません。そのため、TOYO TIREは得意分野の集中を続ける必要があります。もし北米SUV市場や高付加価値品の需要が弱まれば、収益への影響は大きくなります。

事業の現代での潮流

TOYO TIREを取り巻く第一の潮流は、SUV・ライトトラック市場の拡大です。世界的にSUV人気は続いており、特に北米ではピックアップトラックや大型SUVが根強い需要を持っています。車両が大型化すれば、タイヤも大径化し、単価が上がりやすくなります。TOYO TIREの北米向け高付加価値戦略は、この潮流と相性があります。

第二の潮流は、EV化です。EVはタイヤメーカーに新しい課題を突きつけます。重量が重いため耐荷重性と耐摩耗性が必要です。モーターの強いトルクにより、タイヤには瞬時の力を受け止める性能が求められます。エンジン音がないため、ロードノイズを抑える技術も重要です。さらに航続距離を伸ばすため、低転がり抵抗も必要です。これらを同時に満たすタイヤを開発できるかが、EV時代の競争力になります。

第三の潮流は、環境規制とサステナビリティです。タイヤは走行中に摩耗し、摩耗粉を出します。また、製造には天然ゴムや石油由来材料、エネルギーを使います。今後は、低燃費タイヤ、長寿命化、再生可能材料、リサイクル、摩耗粉低減、CO2削減がますます重要になります。タイヤメーカーは、走行時の燃費だけでなく、製品ライフサイクル全体の環境負荷を問われるようになります。

第四の潮流は、原材料と為替です。天然ゴム価格、原油価格、カーボンブラック、シリカ、スチールコード、海上運賃の変動は、タイヤメーカーの利益を大きく左右します。TOYO TIREは海外売上比率が高く、円安は円換算売上と利益を押し上げる一方、外貨建てコストや地域別採算にも影響します。円安だから単純に良いというより、販売地域、生産地域、調達通貨の組み合わせを見る必要があります。

第五の潮流は、生産地の分散です。タイヤは大きく重い製品であり、輸送コストや関税の影響を受けやすいです。日本から輸出するだけではなく、米国、マレーシア、セルビアなどの拠点を使い、需要地に近い生産体制を整えることが重要になります。地政学リスクや通商政策の変化に対応する意味でも、生産拠点の配置は経営課題です。

強み

TOYO TIREの強みは、第一に北米のSUV・ライトトラック向け高付加価値タイヤでのブランド力です。OPEN COUNTRYやNITTOは、単なる移動用タイヤではなく、オフロード、アウトドア、カスタム、走りの楽しさと結びついたブランドです。この領域では、価格だけでなく、見た目、性能、口コミ、ファン層が販売を支えます。

第二の強みは、得意市場への集中です。大手タイヤメーカーのように全方位で戦うのではなく、収益性の高い領域に経営資源を集中しています。2025年12月期の営業利益率が16%台となった背景には、高付加価値品比率の高さがあります。規模では最大手に及ばなくても、利益率で存在感を出せる会社です。

第三の強みは、交換用タイヤ市場での強さです。新車装着用だけに依存すると、自動車メーカーの価格交渉力に左右されやすくなります。交換用タイヤでは、ブランド、販売網、商品企画、マーケティングが効きます。TOYO TIREはこの市場で自社ブランドを育ててきました。

第四の強みは、商品企画力です。SUVやライトトラック向けでは、単に高性能であればよいわけではありません。ユーザーがどのような見た目を好み、どんな路面を走り、どんなカスタムをするのかを理解する必要があります。TOYO TIREは、北米の車文化に合わせた製品づくりで差別化しています。

第五の強みは、タイヤと防振ゴムに共通するゴム材料・振動制御技術です。自動車部品事業は全体の中心ではありませんが、ゴムを使って衝撃や振動を制御する技術は、タイヤにも通じます。素材、配合、構造、評価試験の蓄積は、製品開発の基盤です。

弱み・リスク

TOYO TIREの最大のリスクは、北米と高付加価値タイヤへの依存です。北米のSUV・ライトトラック市場が好調であれば高い利益率を出しやすい一方、需要が弱くなったり、在庫調整が起きたり、販売ミックスが低下したりすると、業績への影響が大きくなります。得意領域への集中は強みであると同時に、集中リスクでもあります。

第二のリスクは、原材料価格です。天然ゴム、合成ゴム、カーボンブラック、シリカ、スチールコード、薬品、エネルギー価格が上がると、原価が上昇します。価格改定で吸収できればよいですが、競争環境によっては転嫁が遅れます。タイヤメーカーは原材料市況に大きく左右されるため、営業利益率が高い年でも油断はできません。

第三のリスクは為替です。TOYO TIREは海外売上比率が高く、円安は円換算業績を押し上げる傾向があります。しかし、為替は利益を大きく動かす外部要因でもあります。円高に振れれば、海外利益の円換算額が減る可能性があります。また、生産地と販売地、原材料調達通貨の組み合わせによって影響は変わります。

第四のリスクは、タイヤ業界の競争です。ブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤー、コンチネンタル、住友ゴム、横浜ゴム、ハンコックなど、大手との競争は激しいです。大手がSUV・ライトトラック向け高付加価値市場を強化すれば、TOYO TIREの得意領域でも競争が厳しくなります。

第五のリスクは、過去の品質・不正問題からの信頼回復です。免震ゴム問題を経て、同社はタイヤ中心へ事業を再構築してきました。現在の主力はタイヤですが、品質やコンプライアンスへの信頼は製造業にとって根幹です。タイヤも安全に直結する製品であるため、品質問題が起きればブランドと業績に大きく影響します。

数字で見るTOYO TIRE

TOYO TIREを見るときは、売上高、営業利益、営業利益率、地域別販売、タイヤ販売本数、販売単価、原材料影響、為替影響を確認する必要があります。

2025年12月期の連結売上高は5,949億円、営業利益は973億円、経常利益は1,013億円、親会社株主に帰属する当期純利益は636億円でした。売上高と営業利益は過去最高水準となり、営業利益率は約16.4%でした。タイヤメーカーとしては非常に高い収益性です。

2026年12月期の会社予想では、売上高6,200億円、営業利益940億円、経常利益820億円、親会社株主に帰属する当期純利益540億円が見込まれています。売上高は増加する一方、営業利益と最終利益は減少する予想です。これは、高水準の利益を維持しつつも、原材料費、為替、販売ミックス、コスト増などによる利益圧迫を想定していると見るべきです。

配当面では、2025年12月期の年間配当は130円、2026年12月期予想は135円です。営業利益率が高く、キャッシュ創出力もあるため、株主還元への期待が持たれやすい会社です。ただし、タイヤ事業は設備投資も必要であり、生産能力増強、研究開発、環境対応、地域別供給網の整備とのバランスを見る必要があります。

投資家が確認したい指標は、次の通りです。

北米向け販売本数と販売単価が伸びているか

SUV・ライトトラック向け高付加価値品の比率が維持できているか

営業利益率が一時的な円安や価格改定だけに依存していないか

原材料価格の上昇を販売価格へ転嫁できているか

日本、米国、マレーシア、セルビアなど生産拠点の稼働率が高いか

新車装着用と交換用のバランスがどう変化しているか

自動車部品事業が全社利益にどの程度貢献しているか

配当と設備投資のバランスが無理のない水準か

就活生の場合は、売上高や利益率だけでなく、なぜTOYO TIREが北米で強いのか、なぜSUV・ライトトラック向けに集中しているのかを見ると会社の個性が分かります。最大手ではないからこそ、どこで勝つかを明確にしている会社です。

今後の注目ポイント

今後のTOYO TIREで最も注目したいのは、北米高付加価値タイヤの成長が続くかです。OPEN COUNTRYやNITTOのブランド力が維持され、SUV・ピックアップ向け交換用タイヤで高い単価を取れるかが、同社の利益を左右します。北米需要が強い間は高収益が期待できますが、市場が弱くなったときに利益率をどこまで守れるかが重要です。

次に、生産能力と地域別供給体制です。タイヤは輸送コストが重い製品であり、関税や物流費の影響を受けます。米国、マレーシア、セルビアなどの拠点を活用し、需要地に近い供給を進められるかが利益率に関わります。生産能力を増やしても、需要が伴わなければ固定費負担になります。投資判断では、設備投資の規模と稼働率の見通しを確認する必要があります。

第三に、EV向けタイヤの開発です。EVでは、低転がり抵抗、静粛性、耐摩耗性、耐荷重性が重要になります。TOYO TIREが得意とする大型SUV向けでも、EV化が進めばタイヤ性能の要求はさらに高まります。EV専用タイヤや電動SUV向け高付加価値品をどれだけ伸ばせるかは、将来の競争力に関わります。

第四に、環境対応です。タイヤの摩耗粉、原材料の持続可能性、リサイクル、CO2削減は今後さらに重要になります。環境対応は短期的にはコスト増になる可能性がありますが、長期的には自動車メーカーや消費者に選ばれる条件になります。低燃費性能と耐摩耗性を両立できるかが大切です。

第五に、株主還元と成長投資のバランスです。TOYO TIREは高い営業利益率を出しており、配当も増加傾向です。一方で、タイヤ事業では生産能力、研究開発、ブランド投資、環境対応が必要です。投資家は、配当利回りだけでなく、将来の競争力を維持するための投資が十分に行われているかを見る必要があります。

投資対象として

投資対象としてのTOYO TIREは、タイヤ業界の中でも高収益なニッチ戦略が魅力の会社です。北米のSUV・ライトトラック向け交換用タイヤに強く、ブランド力と販売ミックスによって高い営業利益率を実現しています。売上規模ではブリヂストンやミシュランのような巨大企業には及びませんが、得意領域で利益を出す力があります。

魅力は、まず交換用タイヤの安定需要です。車が走り続ける限り、タイヤ交換需要は発生します。さらに、SUVやピックアップの大径タイヤは単価が高く、趣味性もあるため、ブランドが効きやすい市場です。TOYO TIREはこの領域で独自のポジションを持っています。

一方で、投資家は高い営業利益率が永続すると決めつけない方がよいです。原材料価格、為替、北米需要、販売ミックス、競争環境が変われば利益率は下がります。2026年12月期予想でも、売上増加に対して営業利益は減少する見通しです。高収益企業であるほど、利益率がピークなのか、持続可能なのかを慎重に見る必要があります。

PERやPBRを見るときも、利益の質を確認することが重要です。円安による押し上げが大きいのか、価格改定による改善なのか、製品ミックスの改善なのか、数量増によるものなのかで評価は変わります。TOYO TIREの場合、営業利益率、北米販売、原材料影響、為替影響、配当方針を組み合わせて見るのが現実的です。

就活生にとっては、TOYO TIREは製品とブランドが見えやすい会社です。自分が関わったタイヤが実際に車に装着され、街や高速道路、オフロードを走る姿を見られることは大きな魅力です。材料開発、設計、試験評価、生産技術、品質保証、海外営業、マーケティングまで職種も幅広いです。一方で、グローバル競争、原材料価格、品質責任、環境対応の厳しさもある会社です。

まとめ

TOYO TIREは、戦後に東洋ゴム工業として設立され、現在ではタイヤ事業に集中する独立系タイヤメーカーです。最大手ではありませんが、北米のSUV・ピックアップトラック・ライトトラック向け高付加価値タイヤに強く、OPEN COUNTRYやNITTOといったブランドで独自の地位を築いています。

同社の強みは、得意領域を絞った戦略、北米交換用タイヤ市場でのブランド力、高付加価値品の販売ミックス、ゴム材料・振動制御技術にあります。2025年12月期には売上高5,949億円、営業利益973億円となり、営業利益率は16%台という高い水準でした。タイヤメーカーとして、この収益性は大きな特徴です。

一方で、リスクも明確です。北米高付加価値品への依存、原材料価格、為替、海上運賃、関税、競合大手との競争、環境規制、過去の品質・コンプライアンス問題からの信頼維持があります。高い利益率は魅力ですが、外部環境が変われば利益がぶれる可能性があります。

TOYO TIREの企業研究では、「タイヤメーカー」という一般的な理解で終わらせず、どの市場で、どのタイヤを、どのブランドで、どれだけ高い利益率で売っているのかを見ることが大切です。車と路面をつなぐタイヤは、EV時代にもなくならない部品です。その中でTOYO TIREは、最大手と同じ土俵で全方位に戦うのではなく、SUV・ライトトラック向けの高付加価値市場で存在感を高める会社だと言えます。