TOTOを一言でいうと

TOTOを一言でいうと、「トイレを中心とした水まわり設備で生活文化を作り、そこで培ったセラミック技術を新領域にも広げている会社」です。

TOTOと聞いて、多くの人がまず思い浮かべるのはトイレとウォシュレットです。日本では温水洗浄便座が当たり前のように普及していますが、その生活文化を広げた代表的な企業がTOTOです。同社は単に便器や洗面台を作っている会社ではありません。トイレ、浴室、洗面、キッチン、水栓金具、ユニットバス、公共施設向け設備まで、水を使う空間を総合的に設計する住宅設備メーカーです。

TOTOの強さは、製品が毎日の生活に深く入り込んでいることにあります。トイレは誰もが毎日使う設備であり、浴室や洗面台も生活の基本です。住宅を建てるとき、リフォームするとき、ホテルや商業施設、駅、空港、病院、学校を整備するとき、水まわり設備は必ず必要になります。その中でTOTOは、清潔性、節水性、使いやすさ、デザイン、耐久性を積み重ねてきました。

一方で、投資家がTOTOを見るときは、単なる住宅設備銘柄としてだけ見てはいけません。確かに売上の中心は日本と海外の住設事業ですが、近年は半導体製造装置向けのセラミック部材などを含む新領域事業も存在感を増しています。住宅設備メーカーでありながら、セラミック技術を背景に半導体関連需要も取り込む会社という点が、TOTOの企業研究で重要な特徴です。

就活生にとっても、TOTOは「トイレの会社」という一言では収まりません。陶器、セラミック、樹脂、金属、水流制御、電子制御、衛生、デザイン、施工、海外事業、半導体部材まで、関わる技術と仕事の幅は広い会社です。生活に近い商品を扱いながら、環境技術やグローバル市場、先端産業にも接点を持つ企業として見ると、TOTOの面白さが見えてきます。

なぜ今TOTOを見るのか

今TOTOを見る意味は、住宅設備市場が「新築住宅を増やす市場」から「既存住宅を快適にし、衛生的にし、省エネ化する市場」へ移っているからです。

日本では人口減少が進み、新築住宅着工は長期的に伸びにくい状況です。さらに、建築費の高騰や金利上昇によって、住宅購入や新築建設に慎重になる人も増えます。住宅設備メーカーにとって、新築住宅だけに依存する成長は難しくなっています。

しかしTOTOの主力であるトイレ、洗面、浴室、キッチン、水栓は、既存住宅のリフォーム需要と相性がよい商品です。古くなったトイレを節水型トイレに変える、浴室を断熱性や清掃性の高いユニットバスに変える、洗面化粧台を収納性の高いものに変える、キッチンを使いやすくする。こうしたリフォームは、新築住宅が伸びにくい時代でも発生します。

また、高齢化もTOTOに関係します。高齢者が安心して使えるトイレ、手すり、バリアフリー浴室、ヒートショック対策、介護施設向け設備など、水まわりは高齢社会の生活品質に直結します。トイレや浴室は、家の中でも事故が起きやすい場所です。単に見た目をきれいにするリフォームではなく、安全で清潔な生活空間を作る需要が強まります。

衛生意識の高まりも重要です。温水洗浄便座、自動洗浄、非接触水栓、除菌水、汚れが付きにくい陶器表面、清掃しやすい床や浴槽などは、単なる高級機能ではなくなりつつあります。家庭だけでなく、ホテル、商業施設、公共施設、オフィス、病院でも、清潔で使いやすい水まわりは施設価値に関わります。

さらに、海外市場も重要です。日本ではウォシュレットはかなり普及していますが、海外ではまだ普及余地があります。とくに米国やアジアでは、日本式の清潔で高機能なトイレ文化を広げる余地があります。一方で、中国大陸の住宅市場低迷など、地域ごとのリスクもあります。TOTOは国内リフォーム、海外高級住設、新領域のセラミックをどう組み合わせるかが今後の焦点になります。

成り立ち

TOTOの歴史は、1917年に設立された東洋陶器株式会社から始まります。現在の北九州市にあたる地域で創業し、日本に衛生陶器を普及させることを目指しました。当時の日本では、近代的な水洗トイレや衛生陶器はまだ一般的ではありませんでした。TOTOは、日本の生活衛生を近代化する企業として出発した会社です。

創業の背景には、陶磁器技術があります。TOTOは、食器などの陶磁器で知られる森村グループの流れをくむ企業です。陶器を焼く技術、素材を成形する技術、表面を滑らかに仕上げる技術を、衛生陶器へ応用して成長していきました。ここがTOTOの原点です。住宅設備メーカーであると同時に、セラミック技術の会社でもあるという性格は、現在の新領域事業にもつながっています。

TOTOの歴史で特に大きな転機となったのが、1980年に発売された温水洗浄便座「ウォシュレット」です。今では一般名詞のように使われることもありますが、ウォシュレットはTOTOの登録商標です。発売当初は、温水で洗うという文化そのものが新しいものでした。単に便座に機能を追加したのではなく、日本のトイレ文化を大きく変えた商品です。

その後、TOTOは節水型トイレ、汚れが付きにくい陶器表面、ふちなし形状、自動洗浄、きれい除菌水、タンクレストイレ、ユニットバス、洗面化粧台、キッチンなどへ商品を広げていきました。トイレ単体の会社ではなく、水まわり空間全体を提案する会社になっていったのです。

また、海外展開も進めてきました。日本で培った高機能トイレや水まわり設備を、米州、中国、アジア・オセアニア、欧州へ展開しています。海外では日本ほど温水洗浄便座が普及していない地域も多く、TOTOにとっては成長余地があります。ただし、各国の住宅文化、施工慣習、水圧、配管、価格帯、衛生観念は異なるため、日本の商品をそのまま売るだけではなく、現地市場に合わせた展開が求められます。

事業内容

TOTOの事業は、大きく見るとグローバル住設事業と新領域事業に分けられます。グローバル住設事業は、日本住設事業と海外住設事業からなり、TOTOの売上の中心です。新領域事業では、セラミック技術を活かした半導体製造装置向け部材などが含まれます。

日本住設事業では、トイレ、ウォシュレット、浴室、洗面化粧台、システムキッチン、水栓金具、公共施設向け設備などを扱っています。戸建住宅、マンション、リフォーム、ホテル、商業施設、病院、学校、オフィスなど、顧客は幅広いです。TOTOの商品は、住宅会社、工務店、リフォーム会社、設備工事会社、管材商社、販売店、ショールームなどを通じて消費者や施設に届きます。

トイレ領域では、便器、ウォシュレット一体形便器、タンクレストイレ、温水洗浄便座、手洗器、収納、公共トイレ向け設備などがあります。TOTOの代表商品であるネオレストは、高機能トイレの象徴的な存在です。節水、清掃性、デザイン、快適性を組み合わせることで、単なる衛生設備ではなく、住宅の価値を高める商品になっています。

浴室領域では、システムバス、ユニットバス、浴槽、床材、シャワー、水栓などがあります。TOTOの浴室では、断熱性、清掃性、滑りにくさ、乾きやすさ、入浴時の快適性が重要です。洗面領域では、洗面化粧台、収納、鏡、照明、水栓、カウンターなどを扱います。キッチンでは、システムキッチンや水栓、食器洗い乾燥機などを含む水まわり設備を展開しています。

海外住設事業では、米州、中国大陸、アジア・オセアニア、欧州などで、トイレ、ウォシュレット、水栓、浴室関連商品を展開しています。海外では、TOTOは高級・高品質ブランドとして見られることが多く、ホテル、商業施設、高級住宅、富裕層向け住宅などで採用される場面があります。特にウォシュレットの普及は、海外事業の中長期的なテーマです。

新領域事業では、セラミック事業が重要です。TOTOは衛生陶器で培ったセラミック技術を持っており、その技術を半導体製造装置向けの部材などに展開しています。半導体製造では、高温、腐食性ガス、真空、微細加工など過酷な条件に耐える部材が必要です。TOTOのセラミック技術は、このような先端産業向けにも活用されています。

収益構造

TOTOの収益構造を見るときは、日本住設、海外住設、新領域の三つを分けて考える必要があります。

日本住設事業は、売上規模が大きく、TOTOの基盤となる事業です。国内では新築住宅向けだけでなく、リフォーム需要が重要です。トイレ、浴室、洗面、キッチンは、住宅が古くなると更新対象になります。特にトイレは、節水型への交換、ウォシュレット一体型への更新、清掃性の向上、バリアフリー対応などによってリフォーム需要を生み出せます。

ただし、日本住設事業は原材料費、物流費、人件費、施工費、販売促進費の影響を受けます。陶器、樹脂、金属、電子部品などを使うため、原材料価格が上がると利益率が圧迫されます。価格改定や高付加価値商品の販売によって吸収できるかが重要です。また、国内住宅市場が弱いと、新築向け販売には逆風になります。

海外住設事業は、成長余地が大きい一方で、地域ごとの変動が大きい事業です。米州では高機能トイレやウォシュレットの普及余地があります。アジア・オセアニアでは、都市化や生活水準向上に伴う水まわり設備需要があります。中国大陸では高級住宅やホテル向けに需要がありますが、不動産市場の低迷が続くと住設需要にも影響します。

新領域事業は、TOTOの収益構造において近年特に注目される領域です。2026年3月期の決算では、連結売上高は7,374億円、営業利益は537億円でした。そのうちグローバル住設事業は売上高6,697億円、営業利益279億円、新領域事業は売上高674億円、営業利益289億円でした。つまり、売上規模では住設事業が圧倒的に大きい一方で、利益面では新領域事業、とくにセラミック事業の存在感が非常に大きくなっています。

これはTOTOを理解するうえで重要です。一般消費者から見ればTOTOはトイレと水まわりの会社ですが、投資家から見ると、半導体関連のセラミック部材が利益成長を支える局面があります。住宅設備の安定性と、半導体関連の成長性が同居している会社なのです。

事業内容の特徴

TOTOの事業内容の特徴は、「水まわりの生活文化」と「セラミック技術」が結びついていることです。

トイレや浴室は、単なる設備ではありません。清潔さ、使いやすさ、音、におい、温度、掃除のしやすさ、節水性、デザイン、安心感まで含めて、利用者の体験が評価されます。TOTOはこの細かな体験価値を積み重ねてきました。便器の水流、陶器表面の滑らかさ、汚れの付きにくさ、ウォシュレットの使い心地、浴室床の乾きやすさ、洗面台の収納性など、目立たない部分に差別化要素があります。

たとえば、トイレでは節水性と洗浄力を両立する必要があります。水を多く使えば流れやすいですが、節水にはなりません。少ない水で汚れを流すには、便器形状、水流、表面加工、排水構造を最適化する必要があります。これは単なるデザインではなく、長年の流体制御と陶器加工の積み重ねです。

ウォシュレットも同様です。温水の温度、噴射位置、水量、ノズルの清潔性、便座の温度、操作性、耐久性、安全性が求められます。海外企業が温水洗浄便座を作ることはできますが、長期間使われる製品として快適性と信頼性を積み上げるには時間がかかります。

また、TOTOはBtoC企業に見えますが、実際にはBtoBtoCの色合いが強い会社です。消費者がTOTOの商品を選ぶ場面はありますが、住宅会社、工務店、設計事務所、設備工事会社、ホテル運営会社、商業施設、自治体などの採用判断も重要です。ショールームで消費者に商品価値を伝える力と、施工業者やプロ向けに扱いやすい商品を提供する力の両方が必要になります。

さらに、住設事業と新領域事業が同じセラミック技術を背景にしている点も特徴です。衛生陶器は大量生産される生活用品ですが、その基礎には素材、焼成、表面処理、精密加工があります。半導体向けセラミック部材は、より高度な品質管理と精密性が必要です。TOTOは生活用品メーカーでありながら、素材技術の会社でもあるのです。

競合他社との違い

TOTOの競合を考えるとき、まず比較されるのはLIXILです。LIXILはトイレ、浴室、キッチン、洗面に加えて、サッシ、ドア、エクステリアなど住宅建材を幅広く持つ会社です。住宅全体を構成する建材・設備を総合的に扱う点が強みです。

これに対してTOTOは、水まわりに集中しています。サッシや外装材まで幅広く持つ会社ではありません。その代わり、トイレ、ウォシュレット、浴室、洗面、水栓といった水まわりの品質やブランドで深く戦っています。住宅設備全体の総合力ではLIXIL、水まわりのブランドと機能価値ではTOTOという見方ができます。

リンナイやノーリツとは、住宅設備という大きな枠では近いものの、主戦場が違います。リンナイとノーリツは給湯器、ガス機器、厨房機器、温水暖房に強い会社です。家庭の「お湯を作る」「火を使う」「熱を出す」設備が中心です。一方、TOTOはトイレ、浴室、洗面、水栓など「水を使う空間そのもの」に強い会社です。浴室では重なる部分がありますが、TOTOは給湯器そのものよりも、水まわり空間の設計と衛生陶器に強みがあります。

パナソニックやクリナップ、タカラスタンダードなどとは、キッチンや浴室、洗面の一部で競合します。パナソニックは電機メーカーとしての家電・住宅設備の総合力があり、クリナップはキッチン、タカラスタンダードはホーロー素材に強みがあります。TOTOはキッチン専業ではありませんが、水栓、洗面、浴室、トイレと組み合わせた水まわり提案ができます。

海外では、Kohler、American Standard、Geberit、中国・アジアの現地メーカーなどと競合します。海外市場では、TOTOは高級・高品質ブランドとして評価されることが多い一方、価格帯では現地メーカーの方が安い場合があります。TOTOが海外で伸びるには、単に日本ブランドを売るのではなく、現地の生活文化に合わせて、ウォシュレットや節水トイレの価値を理解してもらう必要があります。

事業の現代での潮流

TOTOを取り巻く潮流は、リフォーム市場、衛生・清潔ニーズ、節水・環境対応、海外での高機能トイレ普及、半導体需要です。

リフォーム市場では、既存住宅の快適化が重要です。新築住宅が伸びにくい中で、トイレや浴室、洗面台を更新する需要は続きます。特に水まわりは、古さや汚れが目立ちやすく、リフォーム満足度が高い領域です。TOTOは、あんしんリモデル戦略やショールームを通じて、消費者がリフォーム後の生活を想像しやすい提案を重視しています。

衛生・清潔ニーズも追い風です。ウォシュレット、自動開閉、自動洗浄、非接触水栓、きれい除菌水、汚れにくい陶器表面などは、清潔な水まわりを求める消費者に響きます。家庭だけでなく、ホテルや空港、オフィス、病院、商業施設でも、清潔なトイレは施設の印象を左右します。

節水・環境対応も重要です。トイレや水栓は日常的に水を使うため、節水性能は環境価値とランニングコストに直結します。水資源の制約がある地域では、節水型トイレや水栓の価値はさらに高まります。TOTOは、少ない水でしっかり流す技術を長年磨いてきたため、環境対応が競争力につながりやすい会社です。

海外での高機能トイレ普及も中長期のテーマです。日本では温水洗浄便座が普及していますが、海外ではまだ普及段階にあります。米国やアジアで、ホテルや富裕層住宅から広がり、一般住宅へ浸透していく可能性があります。ただし、普及には価格、電源、配管、文化、販売網、メンテナンス体制が関わるため、時間がかかります。

半導体需要は、TOTOにとって住宅設備とは異なる成長軸です。AI、データセンター、自動車、スマートフォン、産業機器などで半導体需要が高まると、半導体製造装置や関連部材の需要も増えます。TOTOのセラミック事業は、この流れを取り込む可能性があります。ただし、半導体関連は市況変動も大きいため、好調な時期と調整局面の両方を意識する必要があります。

強み

TOTOの強みは、第一に水まわり設備での圧倒的なブランド力です。トイレやウォシュレットといえばTOTOを思い浮かべる人は多く、住宅リフォームや新築時の選択肢として強い認知があります。これは広告だけで作られたものではなく、長年の製品品質、施工実績、ショールーム体験、利用者の満足度によって築かれたものです。

第二に、ウォシュレットを中心とした生活文化創造力です。TOTOは温水洗浄便座を単なる機能商品として売ったのではなく、「清潔で快適なトイレ」という新しい生活文化を広げました。海外でもこの文化を広げられれば、TOTOの成長余地は大きくなります。

第三に、陶器・セラミック技術です。衛生陶器の表面品質、成形、焼成、耐久性、清掃性に関わる技術は、TOTOの根幹です。この技術は住設だけでなく、半導体向けセラミック部材にもつながっています。生活用品と先端産業の両方にセラミック技術を展開できる点は、TOTO独自の強みです。

第四に、ショールームと販売施工網です。水まわり設備は、カタログだけでは価値が伝わりにくい商品です。トイレの高さ、浴槽の入りやすさ、洗面台の使い勝手、キッチンの収納、素材感は、実物を見て初めて分かる部分があります。TOTOはショールームを通じて、消費者にリフォーム後の生活を体験させる力があります。

第五に、住設と新領域の組み合わせです。住宅設備は安定性があり、半導体向けセラミックは成長性があります。もちろん半導体市況の変動はありますが、住設だけの会社ではないことは、TOTOを見るうえで大きな特徴です。

弱み・リスク

TOTOのリスクでまず挙げられるのは、国内住宅市場の縮小です。新築住宅着工が減れば、新築向けのトイレ、浴室、洗面、キッチンの需要は弱くなります。リフォーム需要で補える部分はありますが、新築市場の縮小は住宅設備メーカー全体にとって避けられない課題です。

第二に、中国大陸事業の不安定さです。中国では高級住宅やホテル向けにTOTOブランドの需要がありますが、不動産市場の低迷や消費者心理の悪化が続くと、住設需要は弱くなります。海外住設事業全体を見る際には、米州やアジア・オセアニアの成長だけでなく、中国の収益改善が重要になります。

第三に、原材料・エネルギーコストの上昇です。衛生陶器は焼成工程があり、エネルギーを使います。樹脂、金属、電子部品、物流費も影響します。価格改定や高付加価値商品の販売で吸収できなければ、利益率が低下します。特に住設事業は、販売チャネルとの関係もあるため、原価上昇をすぐに価格へ転嫁できるとは限りません。

第四に、施工人材不足です。トイレ、浴室、洗面、キッチンは、製品を作るだけでは売上になりません。現場で施工され、取り付けられて初めて使える商品です。住宅設備業界では施工人材の高齢化や人手不足が課題になっています。施工しやすい商品設計、工期短縮、施工業者への支援が重要になります。

第五に、半導体関連事業の市況変動です。新領域事業は利益率が高く、TOTOの業績を押し上げる重要な存在ですが、半導体関連需要は波があります。AIやデータセンター需要が追い風になる一方、設備投資の調整局面では受注や利益に影響が出る可能性があります。投資家は、住設事業の安定性と新領域事業の変動性を分けて見る必要があります。

数字で見るTOTO

TOTOを見るうえで、まず確認したいのは売上高と営業利益です。2026年3月期の連結実績では、売上高は7,374億円、営業利益は537億円、経常利益は606億円、親会社株主に帰属する当期純利益は402億円でした。売上高は前期比で小幅増、営業利益は二桁増益となり、住宅設備メーカーとしては大きな規模と一定の収益力を持つ会社です。

次に重要なのがセグメント別の利益です。グローバル住設事業は売上高6,697億円、営業利益279億円でした。日本住設事業は売上高4,796億円、営業利益202億円で、国内水まわり設備が依然として会社の売上基盤であることが分かります。一方、新領域事業は売上高674億円、営業利益289億円で、売上規模は小さいものの利益貢献が非常に大きい事業になっています。

この数字から分かるのは、TOTOの利益構造が二層になっていることです。売上の中心はトイレ、浴室、洗面、キッチンなどの住設事業です。しかし、利益面では半導体向けセラミックを含む新領域事業の存在感が非常に大きくなっています。TOTOを「住宅設備銘柄」とだけ見ると、この収益構造を見落とします。

投資家が見るべき指標は、以下のようなものです。

日本住設事業の売上と営業利益率

海外住設事業の地域別収益

中国大陸事業の回復状況

米州・アジアでのウォシュレット普及

新領域事業の売上・営業利益

原材料費・エネルギーコストの影響

営業キャッシュフロー

設備投資と株主還元のバランス

特に、住設事業の利益率が改善しているのか、新領域事業の好調が一時的なものなのか持続的なものなのかを分けて見ることが重要です。半導体関連が好調な局面では全社利益が大きく伸びますが、住設事業の基礎体力が弱ければ長期的な評価には限界があります。

就活生が数字を見るなら、売上規模だけでなく、セグメントごとの利益構造を見るとよいです。TOTOは水まわり設備の会社でありながら、半導体関連の新領域も持っています。住宅設備に関わりたい人だけでなく、素材・セラミック・先端産業に関心がある人にも接点がある会社です。

今後の注目ポイント

今後の注目ポイントは、まず国内リフォーム市場での成長です。新築住宅が伸びにくい中で、TOTOがトイレ、浴室、洗面、キッチンのリフォーム需要をどれだけ取り込めるかが重要です。特に、節水型トイレ、ウォシュレット一体型便器、清掃性の高い浴室、収納性の高い洗面台など、高付加価値商品を提案できるかが利益率にも関わります。

第二に、海外でのウォシュレット普及です。海外市場では、温水洗浄便座の普及余地があります。日本では当たり前の機能でも、海外ではまだ新しい体験です。ホテルや高級住宅から一般住宅へ広げられるか、現地販売網や施工・メンテナンス体制を整えられるかが焦点です。

第三に、中国大陸事業の立て直しです。中国不動産市場が弱い中で、TOTOがどのように高級住設需要を取り込むか、在庫や販売費をどう管理するかは重要です。中国での回復が遅れれば、海外住設事業全体の利益に影響します。

第四に、新領域事業の持続性です。半導体向けセラミック事業は、2026年3月期の利益成長に大きく貢献しました。今後もAI、データセンター、先端半導体向けの需要が続けば、TOTOの成長ドライバーになります。ただし、半導体関連は景気循環があるため、設備投資の波をどう乗り越えるかが重要です。

第五に、環境対応と水資源問題です。節水、CO2削減、製造工程の省エネ、資源循環は、TOTOの事業と深く関わります。水まわり設備を扱う企業として、節水技術や環境負荷低減は単なる社会貢献ではなく、商品価値そのものです。環境性能を競争力へつなげられるかが、長期的な評価ポイントになります。

投資対象として

投資対象としてのTOTOは、「水まわり設備の安定ブランド」と「半導体向けセラミックの成長性」を併せ持つ会社です。

魅力は、国内での強いブランド、リフォーム需要、ウォシュレットの海外普及余地、セラミック事業の高収益性です。トイレや浴室は生活必需品であり、既存住宅がある限り更新需要があります。さらに、半導体関連の新領域事業が利益を押し上げれば、住宅設備だけでは得られない成長評価を受ける可能性があります。

一方で、注意点もあります。住設事業は国内住宅市場の縮小、原材料費、施工人材不足の影響を受けます。海外では中国不動産市場の低迷や現地競争があります。新領域事業は高収益ですが、半導体市況の波を受けやすいです。したがって、TOTOの業績を見るときは、住設事業の安定性と新領域事業の変動性を分けて判断する必要があります。

株価を見る際には、PERやPBRだけでなく、セグメント別利益、営業利益率、海外地域別の成長、半導体関連の受注環境、キャッシュフロー、設備投資、株主還元を総合的に確認したいところです。特に、新領域事業の利益が全社利益を大きく支えている局面では、その利益がどこまで持続するかが重要になります。

就活生にとっては、TOTOは生活に近い製品を扱いながら、技術の幅が広い会社です。トイレや浴室の商品企画、デザイン、販売だけでなく、陶器・セラミック、表面処理、電子制御、製造技術、海外事業、半導体関連部材にも関われる可能性があります。暮らしの快適性や衛生に関心がある人、素材技術に関心がある人、グローバルに日本発の生活文化を広げたい人にとって、検討する価値のある企業です。

まとめ

TOTOは、トイレと水まわり設備で日本の生活文化を作ってきた会社です。ウォシュレット、節水型トイレ、清掃性の高い陶器、浴室、洗面、キッチンを通じて、清潔で快適な暮らしを支えてきました。国内では新築住宅市場の伸びにくさが課題ですが、既存住宅のリフォーム需要が重要な支えになります。

同社の強みは、水まわりでのブランド力、ウォシュレットという生活文化を作った実績、陶器・セラミック技術、ショールームと販売施工網、海外展開です。そして近年は、半導体向けセラミックを含む新領域事業が利益面で大きな存在感を持つようになっています。

一方で、リスクもあります。国内住宅市場の縮小、中国大陸事業の低迷、原材料・エネルギーコスト、施工人材不足、半導体市況の変動です。TOTOは安定した住宅設備メーカーであると同時に、半導体関連の成長と変動も受ける会社です。

個人投資家にとっては、住設事業の安定性と新領域事業の成長性を分けて見ることが重要です。就活生にとっては、暮らしに近い商品を通じて衛生、快適性、環境、素材技術、グローバル展開に関われる会社です。TOTOの企業研究では、「トイレの会社」という表面的な理解にとどまらず、「水まわりの生活文化」と「セラミック技術」を両輪に持つ会社として見ることが大切です。