リコーを一言でいうと

リコーは、複合機やプリンターで築いた世界中のオフィス顧客基盤を、ITサービス、ワークフロー、業務プロセス自動化、商用印刷、産業印刷へ広げようとしている精密機器・IT企業です。かつてのリコーは、 機、複合機、プリンター、トナー、保守サービスの会社というイメージが強い企業でした。しかし現在のリコーを理解するうえで重要なのは、紙に出力する機械を売る会社から、働く場所全体を支えるデジタルサービス企業へ変わろうとしている点です。

リコー 企業研究で押さえるべきなのは、同社の強みが「複合機そのもの」だけにあるわけではないことです。複合機は、オフィスの中で長年使われ、販売店、保守、トナー供給、契約更新、ITサポートを通じて顧客接点を作ってきました。リコーはこの顧客基盤を使い、プリントだけでなく、PC、ネットワーク、クラウド、セキュリティ、文書管理、電子契約、会議室、業務代行、アプリケーションサービスへ事業を広げています。

一方で、リコーには明確な課題もあります。ペーパーレス化、在宅勤務、クラウド化により、オフィスで印刷する紙の量は長期的に減りやすい。複合機の本体販売やトナー・保守収益に頼るだけでは、成長は難しくなります。そのため、同社は「デジタルサービスの会社」への変革を掲げ、オフィスサービス、ワークプレイスサービス、アプリケーションサービス、自社ソフトウェアを伸ばそうとしています。

つまりリコーは、古い事務機メーカーではありません。複合機で得た顧客基盤を土台に、顧客の働き方そのものへ入り込めるかどうかを試されている会社です。ここに、リコー 強みとリスクが同時にあります。

なぜ今リコーを見るのか

今リコーを見る理由は、オフィス機器業界の構造変化が、同社の収益モデルを大きく変えているからです。

リコーの従来の収益は、複合機やプリンターの本体販売だけでなく、設置後のトナー、保守、サービス契約、部品、リース、更新需要に支えられてきました。いったん顧客のオフィスに機器が入ると、数年単位で収益が続き、営業担当や保守担当が顧客と接点を持ち続けます。この「MIF」、つまり市場に設置された機器台数を基盤にしたストック型収益が、リコーの安定性を支えてきました。

しかし、紙の印刷量が減ると、ノンハードと呼ばれるトナーや保守収益は伸びにくくなります。コロナ禍以降、出社率の変化、電子契約、クラウドストレージ、ワークフローシステムの普及によって、印刷前提の働き方は変わりました。企業は紙を減らし、データで業務を回そうとしています。リコーにとって、この変化は既存収益の縮小要因であると同時に、デジタル化支援の商機でもあります。

そこで重要になるのが、オフィスサービスです。リコーは、複合機の顧客へ、ITインフラ、セキュリティ、Microsoft 365関連、文書管理、ワークフロー、BPS、会議室ソリューション、アプリケーションサービスを提供しようとしています。単に「紙を印刷してください」ではなく、「紙を減らしながら業務を効率化しましょう」という提案へ変わる必要があります。

2026年3月期のリコーは、売上高2兆6,083億円、営業利益907億円となりました。増収増益ではありますが、営業利益率は3.5%にとどまり、ROEも5.1%です。売上規模は大きい一方で、資本効率と利益率には改善余地があります。中期経営戦略では、2030年度にROIC7%以上、ROE10%以上、ストック利益15%以上増を目標に掲げています。投資家にとっては、リコーが本当に高収益なデジタルサービス企業へ変われるかが焦点です。

就活生にとっても、リコーは単なる複合機メーカーではなくなっています。営業、ITサービス、アプリケーション開発、AI、BPS、サイバーセキュリティ、商用印刷、産業印刷、生産技術、サプライチェーン、保守サービスまで、仕事の領域が広がっています。

成り立ち

リコーの歴史は、1936年に理研感光紙株式会社として創業したことに始まります。理化学研究所の研究成果を工業化する流れの中で、感光紙事業を継承した会社です。現在のリコーが、紙、画像、光、印刷、記録に関わる事業を展開していることを考えると、感光紙から出発した歴史はとても象徴的です。

創業後、リコーはカメラ事業にも進出しました。現在でもRICOH GRやPENTAXブランドを通じてカメラ事業は残っていますが、会社全体の中心ではありません。リコーの事業を大きく変えたのは、1955年に発売されたリ 101です。これにより、同社は事務機分野へ本格的に進出しました。オフィスで書類を複写し、配布し、管理するという業務に入り込んだことが、現在のリコーの基盤になっています。

その後、リコーは複写機、ファクシミリ、プリンター、複合機、デジタル印刷機へと事業を広げました。オフィス機器は、単に機械を売って終わりではありません。設置、保守、消耗品、更新、顧客サポートが続きます。この継続的な顧客接点が、リコーの販売網とサービス網を育てました。

一方で、デジタル化の進展により、オフィス機器メーカーは大きな転換を迫られました。紙を出す機械を売るだけでは、長期的な成長が難しくなったからです。リコーは、プリント中心の事業から、ワークプレイスサービス、ITサービス、業務プロセス支援、商用印刷、産業印刷へと転換を進めています。

近年では、PFUの取得、DocuWareなどの文書管理・ワークフローソフト、Ceneroなどのワークプレイスエクスペリエンス関連買収、そして複合機などの開発・生産を担うETRIAの立ち上げが重要です。リコーは、既存のオフィス機器事業の効率化と、デジタルサービスの拡大を同時に進めている会社です。

事業内容

リコーの事業は、現在ではリコーデジタルサービス、リコーデジタルプロダクツ、リコーグラフィックコミュニケーションズ、リコーインダストリアルソリューションズ、その他に分けて考えると分かりやすくなります。

リコーデジタルサービスは、会社の中心です。ここには、オフィスプリンティングの販売、複合機・プリンターの販売、保守、トナーなどのノンハード収益、そしてオフィスサービスが含まれます。オフィスサービスには、ITインフラ、ITサービス、アプリケーションサービス、BPS、ワークプレイスエクスペリエンス、文書管理、業務ワークフロー、会議室関連、セキュリティなどがあります。リコーが「デジタルサービスの会社」になると言うとき、中心になるのはこの領域です。

リコーデジタルプロダクツは、複合機やプリンターの開発・生産に関わる領域です。ここではETRIAが重要です。ETRIAは、リコー、東芝テック、OKIが関わる複合機等の開発・生産会社で、複合機エンジンや共通部品、トナー、製造機能を効率化する役割を持ちます。複合機市場が成熟する中で、各社が別々に開発・生産を抱えるのではなく、共通化によってコストを下げ、競争力を維持する狙いがあります。

リコーグラフィックコミュニケーションズは、商用印刷と産業印刷の領域です。商用印刷では、印刷会社や企業内印刷部門向けのプロダクションプリンター、関連ソフト、インクや保守などを扱います。産業印刷では、インクジェットヘッドや産業用途の印刷技術を扱います。オフィスの印刷量が減っても、商業印刷、ラベル、パッケージ、産業用途ではデジタル印刷の余地があります。

リコーインダストリアルソリューションズでは、サーマルメディア、産業用部品、光学・画像関連、環境ソリューションなどを扱います。リコーはオフィス向けの会社と思われがちですが、サーマル紙、ラベル、産業用インクジェット、光学部品、現場向けのデジタル化にも関わっています。

その他には、環境ソリューション、カメラ関連、ペロブスカイト太陽電池の低コスト生産へつながるインクジェット技術など、将来テーマも含まれます。ただし、投資家が見るべき中心は、デジタルサービスの成長と、プリンティング事業の収益維持です。

収益構造

リコーの収益構造は、「オフィスプリンティングのストック収益を守りながら、オフィスサービスを積み上げる」構造です。

従来の複合機ビジネスでは、本体販売だけでなく、トナー、保守、部品、サービス契約から継続収益が生まれます。顧客のオフィスに複合機が設置されている限り、一定の収益が続くため、安定性があります。しかし、印刷枚数が減ると、トナーや保守の収益は減りやすくなります。ここがリコーの一番大きな構造課題です。

一方、オフィスサービスでは、PC、ネットワーク、セキュリティ、クラウド、アプリケーション、文書管理、業務代行、会議室、AVインテグレーションなどのサービス収益を積み上げます。顧客企業が人手不足やIT人材不足に悩む中で、リコーが「オフィスのIT担当者」「働く場のインテグレーター」として入り込めれば、複合機以外のストック収益を増やせます。

2026年3月期では、リコーデジタルサービスの売上高は1兆9,885億円、営業利益は279億円でした。売上規模では圧倒的に大きいですが、オフィスプリンティングの弱含みや一過性費用もあり、利益率は高いとは言えません。ただし、オフィスサービスのストック売上は4,196億円まで伸びており、日本ではITサービスやアプリケーションサービスが好調です。ここがリコーの成長余地です。

リコーデジタルプロダクツは、売上高5,871億円、営業利益315億円でした。ETRIA効果、体質強化、経費コントロールにより利益が改善しています。ここは複合機エンジンや生産の効率化が焦点です。市場が伸びなくても、開発・生産・調達を共通化し、コストを下げられれば利益を守ることができます。

リコーグラフィックコミュニケーションズは、売上高2,840億円、営業利益186億円でした。商用印刷は米国関税政策などで投資様子見の影響を受けましたが、ノンハード収益は堅調です。印刷会社向けの機器は景気や設備投資に左右されますが、設置後のインクや保守は継続収益になります。

つまり、リコーの収益構造は、成熟したプリント事業からのキャッシュと、デジタルサービスの成長をどう組み合わせるかにあります。売上規模よりも、ストック利益、ROIC、営業利益率、キャッシュフローが重要です。

事業内容の特徴

リコーの事業内容の特徴は、顧客接点の深さです。複合機メーカーは、単に機械を納入するだけではありません。保守担当者が顧客のオフィスを訪問し、営業担当者が契約更新や追加提案を行い、ITサポート担当者がPCやネットワークの相談を受けます。この継続的な接点は、リコーにとって大きな資産です。

オフィス機器からデジタルサービスへ転換する会社は多くありますが、リコーの場合、もともと中堅・中小企業から大企業まで幅広い顧客基盤を持っています。日本ではリコージャパンを通じて、地域の企業に深く入り込んでいます。顧客が「パソコンの入れ替え」「セキュリティ強化」「電子帳簿保存法対応」「勤怠管理」「Microsoft 365活用」「文書管理」などで困ったとき、リコーが相談相手になれる可能性があります。

もう一つの特徴は、プリントとデジタルを対立させず、組み合わせている点です。紙をなくすことだけがDXではありません。現実の企業では、紙、電子文書、承認、押印、保管、検索、会計、人事、販売管理が混在しています。リコーは、複合機、スキャナー、DocuWare、業務アプリ、BPSを組み合わせて、紙とデジタルの間にある業務を効率化しようとしています。

また、リコーは製造業としての顔も持ちます。複合機、プリンター、商用印刷機、産業用インクジェット、サーマルメディアを作るには、精密機械、画像処理、トナー、インク、用紙搬送、耐久性、品質保証、生産技術が必要です。デジタルサービス企業への転換を目指していても、製造業としての基盤は簡単には消えません。

競合他社との違い

リコーの競合は、複合機・プリンターではキヤノン、富士フイルムビジネスイノベーション、コニカミノルタ、京セラ、セイコーエプソン、HPなどです。ITサービスでは、富士通、NEC、NTTデータ、SCSK、大塚商会、地域SIer、クラウドベンダー、MSPなどが比較対象になります。商用印刷では、キヤノン、HP、コニカミノルタ、SCREEN、富士フイルムなどが競合します。

キヤノンとの違いは、事業の幅と収益基盤です。キヤノンは、カメラ、プリンティング、メディカル、半導体露光装置などを持つ精密機器メーカーです。リコーはカメラや産業領域もありますが、会社全体としてはオフィス顧客基盤とデジタルサービスへの転換がより中心です。複合機では競合しますが、リコーは「働く場のインテグレーター」へ進む色が強くなっています。

富士フイルムビジネスイノベーションとの違いも重要です。富士フイルムBIは、旧富士ゼロックスとして複合機・文書管理に強い会社で、富士フイルムグループのヘルスケアや高機能材料とは別の強みを持ちます。リコーは、自社の販売サービス網、ETRIAによる開発・生産効率化、グローバルなオフィスサービス展開を武器にしています。

コニカミノルタとの比較では、両社ともオフィス機器からの転換を迫られています。コニカミノルタは複合機に加え、商業印刷、産業印刷、医療画像、センシングなどを持ちます。リコーは、オフィスサービスとワークプレイス、ITサービス、BPS、DocuWare、商用印刷に軸を置いており、顧客の働く場に入り込む戦略が強いといえます。

大塚商会との違いも見逃せません。大塚商会は中堅・中小企業向けにIT、複合機、ソフトウェア、サポートを組み合わせて提供する会社で、リコーの国内オフィスサービスと重なる部分があります。大塚商会はIT販売・サポートの営業力が強い一方、リコーは複合機の顧客基盤と保守網、製造機能を持つ点が違います。リコーがITサービスを伸ばすには、大塚商会のようなIT商社・サービス企業とも競争する必要があります。

事業の現代での潮流

リコーを取り巻く潮流は、ペーパーレス化、ハイブリッドワーク、IT人材不足、セキュリティ強化、AIによる業務自動化、商用印刷のデジタル化、製造機能の共同化です。

ペーパーレス化は、リコーにとって避けられない逆風です。企業は紙の申請書、請求書、契約書、社内文書をデジタル化し、クラウドで共有する方向へ進んでいます。印刷枚数が減れば、トナーや保守収益も減りやすくなります。しかし、紙が減る過程では、スキャン、文書管理、承認ワークフロー、電子保存、検索、セキュリティといった需要が生まれます。リコーがここを取れるかが重要です。

ハイブリッドワークも大きな変化です。出社と在宅が混在すると、オフィスは単なる作業場所ではなく、会議、共同作業、来客、集中、コミュニケーションの場になります。会議室のAV設備、オンライン会議、予約管理、セキュリティ、ネットワーク、PCサポートが重要になります。リコーがワークプレイスエクスペリエンスを強化している背景には、この変化があります。

IT人材不足も追い風になり得ます。中堅・中小企業では、専任の情シス担当者が不足していることが多く、PC、ネットワーク、セキュリティ、クラウド、業務アプリをまとめて相談できる相手が求められます。リコーが複合機の保守網からITサポートへ広がれれば、ストック収益を積み上げやすくなります。

AIも重要です。リコーは、業務プロセス自動化、文書処理、問い合わせ対応、オンプレミスLLM、マルチモーダル大規模言語モデルなどの領域に関わっています。AIは、リコーの顧客が抱える文書・業務・コミュニケーションの課題と相性があります。ただし、AIそのものでは外資系クラウド企業や大手SIerとの競争も激しいため、リコーは顧客現場に近いところでAIを使えるかが問われます。

商用印刷では、オフセット印刷からデジタル印刷への移行、少量多品種、可変印刷、短納期、在庫削減がテーマです。産業印刷では、ラベル、パッケージ、建材、繊維、電子材料、ペロブスカイト太陽電池のような新用途もあります。リコーのインクジェット技術は、オフィス以外のものづくり領域にも広がる可能性があります。

強み

リコーの第一の強みは、オフィス顧客基盤です。複合機やプリンターを通じて、世界中の企業に長年入り込んできました。機器の設置、保守、更新、消耗品、契約管理を通じて、顧客との接点が継続します。この顧客接点を使って、ITサービスやワークフロー、セキュリティを提案できることが、リコー最大の資産です。

第二の強みは、ストック型収益の考え方です。複合機ビジネスでは、本体販売後のトナー、保守、サービス契約が重要でした。リコーはこのストック型収益の運営に慣れています。今後は、同じ考え方をオフィスサービス、アプリケーションサービス、BPS、DocuWare、ワークプレイスサービスへ広げられるかが重要です。

第三の強みは、製造とサービスの両方を持つことです。ITサービスだけの会社ではなく、複合機、プリンター、商用印刷機、インクジェット、サーマルメディアを作る技術があります。ETRIAによる開発・生産効率化が進めば、成熟市場でも一定の利益を確保しやすくなります。

第四の強みは、日本国内の販売サービス網です。リコージャパンを通じて、地域企業や中堅・中小企業に深く入り込んでいます。大企業向けの大規模SIとは違い、身近な業務課題を拾い上げる営業力とサポート力があります。これは、労働力不足や情シス不足の時代に価値を持ちます。

第五の強みは、商用・産業印刷の技術です。インクジェットヘッド、画像処理、用紙搬送、色再現、産業用印刷は、オフィス印刷とは違う成長領域です。デジタル印刷は、在庫削減、少量多品種、パーソナライズ、環境負荷低減と相性が良く、リコーの技術を活かせる分野です。

弱み・リスク

リコーの第一のリスクは、オフィスプリンティング市場の縮小です。印刷枚数が長期的に減れば、ノンハード収益は下押しされます。機器台数を維持しても、利用量が減れば消耗品収益は伸びません。ここをオフィスサービスで補えなければ、収益基盤は弱くなります。

第二のリスクは、デジタルサービス転換の難しさです。複合機営業からITサービス営業へ変わるには、提案力、人材、商材、サポート体制が必要です。顧客のネットワーク、クラウド、セキュリティ、業務アプリを扱うには、複合機とは違う専門性が求められます。リコーがデジタルサービス企業になるには、社内人材の転換が不可欠です。

第三のリスクは、利益率の低さです。2026年3月期の営業利益率は3.5%であり、売上規模に比べて高いとは言えません。構造改革、拠点統廃合、アセットライト化、M&A効果、ETRIAシナジーが実際に利益率改善へつながるかを見る必要があります。

第四のリスクは、海外地域のばらつきです。欧州は景況感やIT投資の影響を受け、米州ではマネージドITサービス事業売却やBPS新規受注の鈍化がありました。アジアでは価格競争もあります。リコーはグローバル企業ですが、地域ごとの競争環境や景気に大きく影響されます。

第五のリスクは、競争相手の多さです。複合機ではキヤノン、富士フイルムBI、コニカミノルタ、HPなど、ITサービスでは大塚商会、富士通、NEC、NTTデータ、地域SIer、クラウドベンダーと競合します。リコーが「ワークプレイスのインテグレーター」として選ばれるには、単に既存顧客がいるだけでは不十分です。価格、サービス品質、専門性、運用力で勝つ必要があります。

数字で見るリコー

リコーを見るときは、売上高、営業利益、営業利益率、ROE、ROIC、オフィスサービスのストック売上、リコーデジタルサービスの利益、ETRIA効果、営業キャッシュフロー、株主還元を確認する必要があります。

2026年3月期の売上高は2兆6,083億円、営業利益は907億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は556億円でした。営業利益率は3.5%、ROEは5.1%、ROICは4.0%です。前年度からは増収増益でしたが、資本効率の観点ではまだ改善途上です。

リコーデジタルサービスの売上高は1兆9,885億円、営業利益は279億円でした。売上規模は非常に大きく、会社全体の中心です。ただし、オフィスサービスが伸びる一方で、オフィスプリンティングの弱含みや一過性費用があり、利益率には課題があります。オフィスサービスのストック売上は4,196億円で、為替影響を除いても増加しています。ここがリコーの成長の中心です。

リコーデジタルプロダクツは、売上高5,871億円、営業利益315億円でした。複合機の開発・生産側にあたる領域で、ETRIA効果、体質強化、経費コントロールが利益を押し上げました。成熟市場だからこそ、開発・調達・生産の効率化が重要になります。

リコーグラフィックコミュニケーションズは、売上高2,840億円、営業利益186億円でした。商用印刷のハード販売は米国関税政策などの影響で投資様子見がありましたが、ノンハードは堅調に推移しました。印刷機は設備投資の影響を受けやすい一方、設置後の消耗品やサービスはストック型になりやすい点が特徴です。

2027年3月期の会社予想では、売上高2兆7,000億円、営業利益950億円、親会社の所有者に帰属する当期利益620億円が見込まれています。また、年間配当は44円予想です。投資家は、売上が伸びるかだけでなく、営業利益率がどこまで改善するか、ROIC・ROEが中期目標に近づくかを見る必要があります。

今後の注目ポイント

今後の第一の注目ポイントは、ワークプレイスサービスの成長です。リコーは、2030年に向けて、ワークプレイスのインテグレーターになることを掲げています。顧客のオフィスに、自社・他社の製品、サービス、ソフトウェアを組み合わせて提供できるかが重要です。複合機の会社から、働く場全体を設計する会社へ変われるかが問われます。

第二の注目ポイントは、オフィスサービスのストック利益です。ITサービス、アプリケーションサービス、BPS、ワークプレイスエクスペリエンス、自社ソフトウェアが継続収益として積み上がれば、印刷枚数減少の影響を補えます。特に日本では、PCリプレイス、セキュリティ強化、自治体向けソリューション、Microsoft 365関連、勤怠管理や給与計算の効率化などが成長要因になります。

第三の注目ポイントは、ETRIAです。リコー、東芝テック、OKIが関わるETRIAは、複合機等の開発・生産を効率化する重要な仕組みです。成熟市場で利益を確保するには、部品共通化、開発効率化、調達力強化、生産拠点最適化が欠かせません。ETRIAが本当にコスト競争力を高められるかを見る必要があります。

第四の注目ポイントは、商用・産業印刷です。オフィス印刷が縮小しても、商用印刷や産業印刷ではデジタル化の余地があります。少量多品種、短納期、可変印刷、在庫削減、インクジェットによる新用途が広がれば、リコーの技術が活きます。ペロブスカイト太陽電池の低コスト生産など、印刷技術を新領域へ展開できるかも注目です。

第五の注目ポイントは、資本効率と株主還元です。中期経営戦略では、ROIC7%以上、ROE10%以上を目標に掲げています。リコーは自己株式取得や配当にも積極的ですが、還元だけでなく、事業の利益率改善が伴わなければ長期的な企業価値は上がりません。投資家は、営業利益率、ROIC、ストック利益、キャッシュフローを追う必要があります。

投資対象として

リコーを投資対象として見る場合、同社は「成熟したオフィス機器メーカー」ではなく、「複合機の顧客基盤を使ってデジタルサービス企業へ変わろうとしている会社」と整理するのが自然です。

ポジティブに見るなら、リコーには大きな顧客基盤があります。複合機、プリンター、保守、販売網を通じて、企業のオフィスに深く入り込んでいます。この基盤を使ってITサービス、ワークフロー、セキュリティ、会議室、BPS、自社ソフトウェアを売れれば、ストック型の収益を増やせます。人手不足や情シス不足が続く中で、顧客企業が外部の業務支援を求める流れは追い風です。

また、ETRIAによる開発・生産効率化、商用・産業印刷のノンハード収益、アセットライト化、構造改革が進めば、営業利益率を改善する余地があります。2026年3月期は増収増益であり、企業価値向上プロジェクトの効果も出ています。

一方で、慎重に見るべき点も明確です。オフィスプリンティング市場は長期的に縮小しやすく、印刷枚数減少はノンハード収益に影響します。デジタルサービス市場では、IT企業、SIer、クラウドベンダー、地域のITサポート会社と競合します。リコーが複合機営業からITサービス営業へ本当に変われるかは、簡単な課題ではありません。

したがって、リコーの株価を見るときは、配当利回りやPBRだけで判断するのではなく、オフィスサービスのストック売上、デジタルサービスの利益率、オフィスプリンティングの減少幅、ETRIA効果、ROIC、営業キャッシュフロー、自己株式取得を合わせて見るべきです。リコーは、成熟事業のキャッシュと成長事業の転換力を同時に評価する企業です。

まとめ

リコーは、理研感光紙をルーツに持ち、感光紙、カメラ、複写機、複合機、プリンターを通じて、画像とオフィスの仕事を支えてきた会社です。現在は、複合機を売る会社から、働く場全体を支えるデジタルサービス企業へ変わろうとしています。

リコー 強みは、世界中のオフィス顧客基盤、複合機の保守・販売網、ストック型収益の運営力、ITサービスへの接点、ETRIAによる開発・生産効率化、商用・産業印刷の技術にあります。特に、顧客のオフィスに長年入り込んできた関係は、他のIT企業にはない資産です。

一方で、課題もはっきりしています。ペーパーレス化による印刷量減少、オフィスプリンティングの弱含み、低い営業利益率、デジタルサービス転換の難しさ、海外地域のばらつき、ITサービス市場での競争には注意が必要です。リコーは、既存の複合機ビジネスを守りながら、新しいサービス収益を積み上げなければなりません。

就活生にとって、リコーは製造業、ITサービス、営業、保守、アプリケーション、AI、商用印刷、産業印刷、ワークプレイス設計まで関われる会社です。個人投資家にとっては、配当や成熟事業の安定性だけでなく、ROICとストック利益が本当に改善するかを見るべき企業です。

リコーは、単なる 機メーカーではありません。紙の時代に築いた顧客基盤を、デジタル時代の働き方支援へ変えようとしている会社です。その転換が本物かどうかを見極めることが、リコー 企業研究の最大のポイントになります。