オリエンタルランドを一言でいうと
オリエンタルランドは、東京ディズニーランド、東京ディズニーシー、ディズニーホテル、イクスピアリ、ディズニーリゾートラインなどを運営する、日本を代表するレジャー・テーマパーク企業です。一般には「東京ディズニーリゾートの運営会社」として知られていますが、企業研究として見る場合は、単なる遊園地運営会社ではありません。強力なディズニーIP、舞浜という立地、パーク運営、ホテル、物販、飲食、有料体験、価格設計、キャストのオペレーションを組み合わせて、非常に高い収益性を実現している会社です。
オリエンタルランド ビジネスモデルの中心は、入園者数をただ増やすことではありません。重要なのは、来園するゲストに高い体験価値を提供し、その体験価値に応じてチケット、ディズニー・プレミアアクセス、商品、飲食、ホテル、バケーションパッケージなど複数の収益を重ねることです。テーマパーク事業は、入園料だけでなく、園内で過ごす時間そのものを収益化するモデルです。
2026年3月期のテーマパーク入園者数は2,753万人で、前年とほぼ同水準でした。一方、ゲスト1人当たり売上高は18,403円と過去最高になりました。これは、同社の収益構造が「人数をひたすら増やすモデル」から、「混雑を抑えながら体験価値と単価を高めるモデル」へ移っていることを示しています。
ただし、オリエンタルランドは夢の国を運営しているから安泰、という単純な会社ではありません。人件費、メンテナンス費、減価償却費、災害リスク、感染症リスク、ディズニー社へのロイヤルティー、パーク用地の制約、キャスト確保、混雑管理、値上げへの反応など、多くの課題があります。強力なブランドを持つ一方で、体験価値を落とさずに収益を伸ばし続ける難しい経営が求められる会社です。
なぜ今オリエンタルランドを見るのか
今オリエンタルランドを見る理由は、同社が東京ディズニーリゾートの回復局面を終え、次の成長段階に入ろうとしているからです。
コロナ禍では、テーマパーク業界は大きな打撃を受けました。入園者数制限、休園、営業時間短縮、旅行需要の低迷により、オリエンタルランドも一時的に大きく業績を落としました。しかし、その後は入園者数が回復し、チケット価格の変動価格制、ディズニー・プレミアアクセス、商品・飲食販売、ホテル収入の拡大によって収益力を取り戻しました。
特に2024年6月に開業した東京ディズニーシーの新テーマポート「ファンタジースプリングス」は、現在のオリエンタルランドを見るうえで非常に重要です。総投資額約3,200億円をかけた大型開発であり、『アナと雪の女王』『塔の上のラプンツェル』『ピーター・パン』の世界を東京ディズニーシーに取り込みました。新エリアは、入園者数の増加だけでなく、プレミアアクセス、関連グッズ、飲食、ホテル宿泊、リピート来園を通じて、ゲスト1人当たり売上高を高める効果があります。
2026年3月期の売上高は7,045億円、営業利益は1,684億円でした。売上高は過去最高となった一方、人件費や諸経費の増加により営業利益は前期比で減少しました。ここが今のオリエンタルランドの論点です。強い集客力と単価上昇はあるものの、ファンタジースプリングス通期稼働後のメンテナンス費、IT関連費、人件費、減価償却費なども増えます。高収益企業でありながら、コスト増への対応が必要になっています。
さらに、同社は2035長期経営戦略で、2035年度に売上高1兆円以上、2029年度に営業キャッシュ・フロー3,000億円レベルを目指しています。テーマパークだけでなく、ディズニークルーズという新規事業も始めようとしています。つまり、オリエンタルランドは「東京ディズニーリゾートを守る会社」から、「舞浜の強みを活かしつつ、新しいディズニー体験を広げる会社」へ進もうとしている段階です。
成り立ち
オリエンタルランドは1960年に設立されました。設立当初から、浦安沖の埋立地を活用した大規模レジャー施設の開発構想を持っていた会社です。現在では東京ディズニーリゾートの華やかな印象が強いですが、出発点には、京成電鉄や三井不動産などが関わる湾岸開発、埋立地活用、観光・レジャー開発という都市開発の側面がありました。
東京ディズニーランドの誘致は、同社にとって最大の転機でした。1979年にウォルト・ディズニー・プロダクションズとのライセンス契約を締結し、1983年に東京ディズニーランドが開業します。これは、米国外で初めてのディズニーパークでした。日本に本格的なディズニーテーマパークを作るという挑戦は、単に海外ブランドを輸入するだけではありません。日本の接客、清掃、運営、安全管理、交通アクセス、商品開発を組み合わせ、東京ディズニーランドを日本社会に根付かせる必要がありました。
2001年には東京ディズニーシーが開業しました。東京ディズニーシーは、世界のディズニーパークの中でも独自性の高いパークです。海をテーマにした大人向けの雰囲気、緻密な造形、ショー、レストラン、ホテルとの一体感を持ち、東京ディズニーランドとは異なる需要を開拓しました。これにより、オリエンタルランドは1パーク運営会社から、2パークを軸にした東京ディズニーリゾート運営会社へ進化しました。
その後、ディズニーホテル、イクスピアリ、ディズニーリゾートライン、トイ・ストーリーホテル、ファンタジースプリングスホテルなどを加え、舞浜全体を滞在型リゾートへ広げてきました。2024年には東京ディズニーシーにファンタジースプリングスが開業し、2026年にはクルーズ事業会社も設立しました。歴史的に見ると、オリエンタルランドは「パークを作った会社」ではなく、「舞浜をディズニー体験の街へ育ててきた会社」です。
事業内容
オリエンタルランドの事業は、大きくテーマパーク事業、ホテル事業、その他の事業に分けられます。
テーマパーク事業は、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの運営です。売上の中心は、入園料にあたるアトラクション・ショー収入、商品販売収入、飲食販売収入です。近年は、チケット価格の変動価格制やディズニー・プレミアアクセスも重要になっています。ディズニー・プレミアアクセスは、対象アトラクションやショーをより確実に、または短い待ち時間で体験できる有料サービスです。混雑を抑えながら、体験価値に対して追加収益を得る仕組みといえます。
商品販売では、キャラクターグッズ、イベント限定商品、周年関連商品、ファンタジースプリングス関連商品、アパレル、雑貨、菓子などを扱います。テーマパークの物販は、通常の小売とは違い、来園体験と結びついています。ゲストは、思い出や限定性を買います。東京ディズニーリゾートの強いブランドと滞在体験があるため、商品販売は高い収益源になります。
飲食販売では、レストラン、カフェ、ワゴン、季節メニュー、キャラクターやイベントに合わせたメニューを提供します。飲食は単なる食事ではなく、パーク体験の一部です。メニュー開発、混雑管理、回転率、原材料費、人件費、店舗運営が収益性を左右します。
ホテル事業は、ディズニーアンバサダーホテル、東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ、東京ディズニーランドホテル、東京ディズニーリゾート・トイ・ストーリーホテル、東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテルなどを中心に構成されています。ホテルは、遠方ゲストや訪日外国人、記念日需要、バケーションパッケージと相性が良い事業です。パーク一体型ホテルは客室単価が高く、宿泊自体が特別な体験になります。
その他の事業には、イクスピアリ、ディズニーリゾートライン、ボン・ヴォヤージュなどがあります。これらは、舞浜エリア全体の滞在価値を高める役割を持ちます。パーク外でも食事、買い物、移動、宿泊を提供することで、東京ディズニーリゾート全体の経済圏を広げています。
収益構造
オリエンタルランドの収益構造は、入園料、プレミアム体験、物販、飲食、ホテル、周辺施設を組み合わせるモデルです。
まず、入園料が基盤です。東京ディズニーランドと東京ディズニーシーは、チケットを購入して入園する施設です。ただし、入園者数を無制限に増やせるわけではありません。混雑が増えすぎると満足度が下がります。安全管理、待ち時間、キャスト負荷、清掃、飲食提供能力にも限界があります。そのため、近年は入園者数の最大化よりも、体験価値と単価の最適化が重視されています。
次に、ゲスト1人当たり売上高が重要です。2026年3月期のゲスト1人当たり売上高は18,403円でした。この中には、アトラクション・ショー収入、商品販売収入、飲食販売収入が含まれます。ファンタジースプリングスの通期稼働、ディズニー・プレミアアクセス、変動価格制による高価格帯チケット構成比の上昇、グッズや飲食の販売増が、単価上昇につながりました。
ホテル事業も大きな利益源です。2026年3月期のホテル事業売上高は1,190億円、営業利益は368億円でした。東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテルの通期稼働や客室単価の上昇により、ホテル事業は過去最高の売上高と営業利益を記録しました。ホテルは固定費も大きいですが、稼働率と客室単価が高ければ大きな利益を生みます。
一方、コストも重い事業です。テーマパーク事業は、人件費、メンテナンス費、減価償却費、清掃、安全管理、エネルギー費、ショー運営、商品・飲食原価がかかります。2026年3月期は売上高が増えた一方、人件費や諸経費の増加によりテーマパーク事業の営業利益は減少しました。つまり、オリエンタルランドは高収益企業ですが、コスト管理を怠ると利益率は下がります。
事業内容の特徴
オリエンタルランドの事業内容の特徴は、体験価値を徹底的に設計し、その体験価値を複数の収益機会に変えることです。
一般的な遊園地では、入園料やアトラクション利用料が中心になりがちです。しかし東京ディズニーリゾートでは、入園前から体験が始まっています。旅行計画、チケット購入、アプリでの予約、ホテル予約、舞浜駅到着、リゾートライン、入園、ショー、アトラクション、食事、買い物、写真、帰宅後の思い出まで、すべてが一連の体験です。この体験全体を管理していることが、オリエンタルランドの強みです。
また、同社はディズニーIPを活用しながらも、単に米国ディズニーの施設をそのまま運営しているわけではありません。日本のゲストの嗜好、接客水準、清潔さ、安全性、季節イベント、限定グッズ、行列管理、食文化に合わせて、東京ディズニーリゾート独自の運営を作っています。特に東京ディズニーシーは、日本独自のディズニーパークとして世界的にも珍しい存在です。
もう一つの特徴は、舞浜に集中していることです。国内外に多数の施設を持つ会社ではなく、基本的には東京ディズニーリゾートに経営資源を集中しています。これはリスクでもありますが、強みでもあります。土地、ホテル、交通、商業施設、パーク、キャスト教育、物流、清掃、商品企画を一体で磨き続けられるからです。
さらに、入園者数だけを追わないモデルも特徴です。混雑しすぎると、パーク体験は悪化します。待ち時間が長く、飲食店に入れず、商品が買えず、移動が困難になれば、ブランド価値が傷つきます。オリエンタルランドは、価格、予約、プレミアアクセス、アプリ、イベント、エリア開発を使いながら、需要をコントロールする必要があります。これは、レジャー施設でありながら高度なオペレーション企業でもあることを意味します。
競合他社との違い
オリエンタルランドの競合は、国内テーマパーク、旅行・レジャー施設、エンターテインメント企業、ゲーム・IP企業です。直接の競合としては、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、ハウステンボス、富士急ハイランド、サンリオピューロランド、よみうりランドなどがあります。広く見れば、任天堂、カプコン、コナミグループ、映画、ライブ、旅行、温泉、ショッピング、スポーツ観戦も、余暇時間と可処分所得を取り合う競争相手です。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンとの違いは、IPの幅と運営思想です。USJは、ハリウッド映画、任天堂、アニメ、ゲーム、期間限定イベントを組み合わせ、話題性と新規性で集客する力が強い施設です。オリエンタルランドは、ディズニーIPを軸に、ファミリー、カップル、友人、訪日観光客、リピーターへ長期的に体験価値を提供します。USJが多様なIPを柔軟に取り込むテーマパークだとすれば、東京ディズニーリゾートはディズニーの世界観を徹底して磨くテーマパークです。
ゲーム会社との違いも重要です。カプコンやコナミグループは、ゲームやコンテンツIPを世界に展開します。オリエンタルランドは、自社でディズニーIPを保有しているわけではありません。ウォルト・ディズニー・カンパニーとの契約に基づき、東京ディズニーリゾートを運営しています。IPを所有する会社ではなく、IPを現実空間で最高水準の体験に変える会社です。ここが、ゲーム会社やキャラクター会社との大きな違いです。
ヤマハのような企業と比べると、余暇や文化に関わる点では共通しますが、収益モデルは違います。ヤマハは楽器・音響機器・音楽教室などを通じて音楽文化を支えます。オリエンタルランドは、テーマパークとホテルを通じて、非日常体験を提供します。どちらも体験価値を扱う企業ですが、オリエンタルランドは一つの巨大なリアル空間に顧客を集め、その滞在時間を収益化する点が特徴です。
オリエンタルランド 強みは、単なるキャラクター人気ではありません。ディズニーIP、舞浜立地、2パーク体制、ホテル、運営品質、キャスト、清掃、安全、季節イベント、物販、飲食、アプリ、価格設計をすべて統合できることです。この総合運営力は、他社が簡単に模倣できません。
事業の現代での潮流
オリエンタルランドを取り巻く潮流は、体験消費、インバウンド、価格変動制、デジタル活用、人手不足、IPビジネス、災害・感染症リスクです。
まず、体験消費の拡大があります。モノを買うだけでなく、思い出、写真、動画、家族時間、推し活、記念日、旅行体験にお金を使う人が増えています。東京ディズニーリゾートは、この体験消費の代表的な受け皿です。SNSで写真や動画が拡散されることで、来園意欲も高まります。
インバウンドも重要です。訪日外国人旅行客にとって、東京ディズニーリゾートは日本旅行の大きな目的地の一つです。円安は海外ゲストにとって来園しやすい要因になります。一方で、海外ゲストが増えると、言語対応、マナー、混雑、予約、飲食、ホテル、パーク運営の難易度も上がります。国内ファンの満足度と海外ゲストの獲得をどう両立するかが問われます。
価格変動制とプレミアムサービスも時代の流れです。需要が高い日に高い価格を設定し、特別な体験に追加料金を設定することは、航空券やホテルでは一般的です。テーマパークでも、混雑日と閑散日の価格差、ディズニー・プレミアアクセス、バケーションパッケージが収益を支えます。ただし、値上げしすぎると「高すぎる」という不満も出ます。価格と満足度のバランスが非常に重要です。
デジタル活用も欠かせません。東京ディズニーリゾート・アプリは、チケット、エントリー、プレミアアクセス、待ち時間、レストラン、ショッピングに関わります。データを使えば、混雑予測、需要平準化、在庫管理、商品開発、レストラン運営、パーソナライズができます。AIは、需要予測や運営効率化に使える可能性があります。
一方で、人手不足は大きな課題です。テーマパークは人の力で成り立つサービス業です。キャストの接客、清掃、安全確認、ショー運営、飲食提供、商品販売が品質を支えます。賃金上昇や採用難はコスト増になりますが、人材投資を怠ると体験価値が下がります。オリエンタルランドにとって、人件費は単なるコストではなく、ブランドを守る投資でもあります。
強み
オリエンタルランドの第一の強みは、東京ディズニーリゾートという圧倒的な集客基盤です。東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの2パークを持ち、国内外から年間2,000万人を超えるゲストを集めます。日本国内でこれほど強い集客力を持つレジャー施設は限られます。
第二の強みは、ゲスト1人当たり売上高を高める仕組みです。チケット、ディズニー・プレミアアクセス、商品、飲食、ホテル、バケーションパッケージを組み合わせることで、入園者数を大きく増やさなくても売上を伸ばせます。2026年3月期に入園者数がほぼ横ばいでも売上高が過去最高になったことは、このモデルの強さを示しています。
第三の強みは、ホテル事業です。ディズニーホテルは、パーク体験と一体化した高単価事業です。ファンタジースプリングスホテルの通期稼働により、ホテル事業の売上高と営業利益は過去最高になりました。ホテルは、遠方ゲストや訪日外国人、記念日需要、ファミリー需要を取り込む重要な装置です。
第四の強みは、運営品質です。清掃、安全、接客、ショー、アトラクション運営、商品補充、飲食提供、混雑対応など、見えないオペレーションの積み重ねがブランド価値を作っています。ディズニーIPだけでは、満足度は維持できません。現場の運営力こそ、オリエンタルランドの本当の競争力です。
第五の強みは、長期投資を続ける力です。ファンタジースプリングスのような大型投資は短期で回収できるものではありません。大型投資、ホテル開発、アトラクション更新、エリア刷新を長期で続けられる財務体力と運営ノウハウがあることは、競合に対する大きな優位性です。
弱み・リスク
オリエンタルランドの第一のリスクは、舞浜集中です。東京ディズニーリゾートに収益の大部分が集中しているため、地震、台風、感染症、交通障害、事故、火災、システム障害などが起きると業績に大きな影響が出ます。多拠点展開している企業に比べ、地域集中リスクは大きいです。
第二のリスクは、コスト増です。2026年3月期は、売上高が伸びた一方、人件費や諸経費が増え、テーマパーク事業の営業利益は減少しました。賃金上昇、キャスト確保、メンテナンス費、IT関連費、減価償却費、光熱費、原材料費は今後も重荷になります。
第三のリスクは、ディズニーIPへの依存です。オリエンタルランドは東京ディズニーリゾートを運営していますが、ディズニーIPを所有しているわけではありません。ディズニー社との契約、ロイヤルティー、ブランドガイドラインに基づいて事業を行います。世界的に強力なIPを使えることは強みですが、自社IPではない点は理解しておく必要があります。
第四のリスクは、値上げへの反応です。変動価格制やプレミアアクセスにより、ゲスト1人当たり売上高は上がります。しかし、価格が上がりすぎると、若年層やファミリーが来園しにくくなる可能性があります。特別な体験に対する支払い意欲は高い一方、「昔より高くなった」という印象が強まると、ブランドへの感情に影響します。
第五のリスクは、大型投資の回収です。ファンタジースプリングスは既に開業しましたが、今後もエリア刷新、ホテル修繕、クルーズ事業など大きな投資が続きます。特にクルーズ事業は、船体2,900億円、予備費400億円という大きな投資を伴います。新規事業が想定通りに稼働しなければ、減価償却費や固定費が重くなります。
数字で見るオリエンタルランド
オリエンタルランドを見るときは、売上高、営業利益、営業利益率、入園者数、ゲスト1人当たり売上高、ホテル客室単価、営業キャッシュ・フロー、設備投資、ROEを確認する必要があります。
2026年3月期の売上高は7,045億円、営業利益は1,684億円、経常利益は1,696億円、親会社株主に帰属する当期純利益は1,218億円でした。売上高は前期比3.7%増で過去最高となりましたが、営業利益は2.1%減となりました。売上は伸びても、人件費や諸経費が増えると利益は減るという、現在の課題が表れています。
テーマパーク事業の売上高は5,683億円、営業利益は1,304億円でした。入園者数は2,753万人で前期とほぼ同水準、ゲスト1人当たり売上高は18,403円でした。内訳では、アトラクション・ショー収入、商品販売収入、飲食販売収入のいずれも重要です。ディズニー・プレミアアクセスや変動価格制、商品・飲食の販売増が単価上昇に寄与しています。
ホテル事業の売上高は1,190億円、営業利益は368億円でした。東京ディズニーシー・ファンタジースプリングスホテルの通期稼働、客室単価の上昇が寄与し、ホテル事業は売上高・営業利益ともに過去最高になりました。ホテルは、オリエンタルランドの高収益モデルを支える重要な柱です。
2035長期経営戦略では、2035年度に売上高1兆円以上、2029年度に営業キャッシュ・フロー3,000億円レベルを目標としています。2028年度にはディズニークルーズの就航を予定し、通年稼働する2029年度から黒字化を見込んでいます。テーマパーク事業の成熟だけでなく、クルーズを含めた新しい成長が数字にどう表れるかが今後の焦点です。
今後の注目ポイント
今後の第一の注目ポイントは、ファンタジースプリングスの定着です。開業初年度は話題性がありますが、重要なのは数年後も集客力と単価向上に貢献し続けるかです。関連グッズ、飲食、プレミアアクセス、ホテル宿泊、リピート来園がどこまで続くかを見る必要があります。
第二の注目ポイントは、ゲスト1人当たり売上高の伸びです。入園者数を無理に増やすと混雑が悪化します。そのため、今後もチケット価格、プレミアアクセス、商品、飲食、ホテル、バケーションパッケージを通じて、1人当たり売上高を高める戦略が重要です。ただし、価格と満足度のバランスを崩さないことが前提です。
第三の注目ポイントは、コスト管理です。人件費、メンテナンス費、IT関連費、減価償却費は今後も増えやすい費用です。東京ディズニーリゾートの品質を落とさずに、効率化や需要予測、デジタル運営を進められるかが、営業利益率を左右します。
第四の注目ポイントは、ディズニークルーズ事業です。オリエンタルランドは日本を拠点とするディズニークルーズの開発・運営を進めています。就航数年後には売上高約1,000億円、年間乗客数約40万人、営業利益率は既存のテーマパーク事業程度を見込むとされています。成功すれば新しい成長柱になりますが、船舶投資、運営ノウハウ、為替、燃料、天候、旅行需要などのリスクもあります。
第五の注目ポイントは、長期的な用地活用とエリア刷新です。舞浜の土地には限りがあります。既存エリアの刷新、アトラクション更新、混雑緩和、ホテル修繕、交通導線改善をどう進めるかが、長期成長の鍵になります。新しい土地を簡単に増やせないからこそ、既存資産をどう高付加価値化するかが重要です。
投資対象として
オリエンタルランドを投資対象として見る場合、同社は「日本最強級のリアル体験プラットフォーム企業」と整理できます。東京ディズニーリゾートという圧倒的な集客基盤を持ち、入園料、物販、飲食、ホテル、プレミアム体験を組み合わせて高収益を生みます。
ポジティブに見るなら、オリエンタルランドは非常に強いブランドと価格決定力を持っています。入園者数がほぼ横ばいでも、ゲスト1人当たり売上高を高めることで売上を伸ばせます。ホテル事業も高収益で、ファンタジースプリングスホテルの通期稼働が利益に貢献しています。2035年度に売上高1兆円以上を目指す長期戦略もあり、クルーズ事業という新しい成長余地もあります。
また、同社の事業はデジタルだけでは代替しにくいリアル体験です。ゲームや動画配信のようなデジタル娯楽は増えていますが、家族や友人と現地で過ごす東京ディズニーリゾートの体験は、簡単にオンライン化されません。むしろSNS時代には、現地体験が写真や動画として拡散され、来園需要を生む側面もあります。
一方で、慎重に見るべき点もあります。株式市場では、オリエンタルランドは人気企業として高く評価されやすい銘柄です。そのため、業績が良くても株価に成長期待がかなり織り込まれている場合があります。投資家は、ブランドの強さだけでなく、利益成長、営業キャッシュ・フロー、設備投資、ROE、PER、PBRを確認する必要があります。
さらに、舞浜集中リスク、人件費上昇、大型投資、災害、感染症、値上げへの反応もあります。テーマパークは強い事業ですが、完全に安定したインフラ事業ではありません。投資対象としては、強いブランドと高収益性を持つ一方、人気銘柄としてのバリュエーションと大型投資リスクを慎重に見るべき会社です。
まとめ
オリエンタルランドは、1960年に設立され、1983年に東京ディズニーランド、2001年に東京ディズニーシーを開業し、舞浜を東京ディズニーリゾートとして育ててきた会社です。現在は、2つのテーマパーク、ディズニーホテル、イクスピアリ、ディズニーリゾートライン、ボン・ヴォヤージュなどを組み合わせた滞在型リゾートを運営しています。
オリエンタルランド ビジネスモデルの中心は、入園者数だけに頼らず、ゲスト1人当たり売上高を高めることです。チケット、ディズニー・プレミアアクセス、商品、飲食、ホテル、バケーションパッケージを組み合わせ、体験価値を収益へ変えています。2026年3月期には売上高7,045億円、営業利益1,684億円を計上し、ゲスト1人当たり売上高は18,403円となりました。
オリエンタルランド 強みは、ディズニーIP、舞浜立地、2パーク体制、ホテル、高い運営品質、キャスト、清掃、安全、商品・飲食開発、価格設計、長期投資を組み合わせられることです。一方で、舞浜集中、コスト増、ディズニーIP依存、価格上昇への反応、大型投資回収、災害・感染症リスクには注意が必要です。
就活生にとって、オリエンタルランドはテーマパーク運営だけでなく、商品開発、飲食、ホテル、技術、設備、IT、マーケティング、物流、人材育成、安全管理、ショー運営まで関われる会社です。個人投資家にとっては、ブランド力だけでなく、入園者数、ゲスト1人当たり売上高、営業利益率、ホテル収益、営業キャッシュ・フロー、設備投資、クルーズ事業の進捗を見るべき企業です。
オリエンタルランドは、夢を売る会社であると同時に、極めて精密なオペレーションと資本投資で成り立つ会社です。東京ディズニーリゾートの体験価値を維持しながら、単価を高め、新規事業へ広げられるか。それが、オリエンタルランド 企業研究の最大のポイントになります。