オークマを一言でいうと

オークマは、NC旋盤、マシニングセンタ、5軸制御マシニングセンタ、複合加工機、研削盤、自動化システム、そして自社CNC装置「OSP」まで手がける総合工作機械メーカーです。

工作機械とは、金属などの材料を削り、穴をあけ、形を整え、精密部品を作るための機械です。自動車、航空機、半導体製造装置、医療機器、建設機械、金型、発電設備、防衛関連、宇宙・衛星関連など、あらゆる製造業の土台にあります。完成品として目立つ会社ではありませんが、製造業の裏側で「部品を作るための機械」を作っている会社です。

同じ機械・精密機器の会社でも、日立建機が建設現場で使われる大型機械、タダノがクレーン、島津製作所が分析計測・医療機器に強い会社だとすれば、オークマは工場の中で高精度な金属加工を担う会社です。建設機械やクレーンのように屋外で動く機械ではなく、工場内でミクロン単位の精度を追い込む機械を作っています。

オークマの企業研究で最も重要なのは、「機械本体だけの会社ではない」という点です。多くの工作機械メーカーは、CNC装置をファナックや三菱電機などから購入して機械に組み込みます。一方、オークマは機械本体とCNC装置を自社開発する「機電一体」の会社です。機械構造、主軸、送り機構、熱変位補正、加工制御、操作画面、AI診断、ネットワークまで一体で設計できることが、同社の大きな個性です。

個人投資家にとっては、工作機械の受注サイクル、航空・宇宙・防衛・半導体製造装置向け需要、自動化・省人化需要、海外売上比率、営業利益率の回復が見るべきポイントになります。就活生にとっては、機械、電気、制御、ソフトウェア、AI、加工技術、生産技術、サービスまで関われる、製造業の中でも中核に近い会社です。

なぜ今オークマを見るのか

オークマを今見る理由は、製造業の設備投資が単なる能力増強から、省人化、高精度化、自動化、高付加価値加工へ変わっているからです。

工作機械業界は景気循環の影響を強く受けます。自動車メーカーや部品メーカー、航空機関連、半導体製造装置メーカー、金型メーカー、一般機械メーカーが設備投資を増やせば受注が伸びます。逆に、景気の先行きが不透明になり、顧客が設備投資を抑えれば受注は減ります。この市況性は、オークマを見るうえで避けられません。

しかし、現在の工作機械需要は、単に「景気がよいから機械を買う」というものではなくなっています。労働人口の減少、熟練技能者の不足、脱炭素化、航空・宇宙・防衛、半導体製造装置、データセンター・エネルギー関連、医療機器などの成長産業が、より高精度で高効率な加工を求めています。部品の形状が複雑になり、難削材が増え、加工工程を減らしたいというニーズも強まっています。

オークマが強みを持つ5軸制御マシニングセンタや複合加工機は、こうした流れに合っています。従来は複数の機械で何度も段取り替えをしながら加工していた部品を、一台の機械で工程集約できれば、段取り時間を減らし、精度のばらつきを抑え、省人化にもつながります。さらにロボットや搬送装置、自動計測、AI診断、遠隔サポートを組み合わせれば、熟練者が常に付きっきりでなくても安定生産しやすくなります。

2026年3月期のオークマは、売上高2,358億円、営業利益155億円、経常利益163億円、親会社株主に帰属する当期純利益125億円でした。受注高は2,408億円、受注残高は1,014億円です。売上高は増加し、海外売上高比率は73.3%に達しました。一方で、営業利益率は6.6%にとどまり、原材料費、人的資本投資、経費増加、米国関税などの影響が収益性の課題として残りました。

つまり、今のオークマは、売上規模や海外展開では前進している一方、利益率をどう回復させるかが問われている会社です。中期経営計画2028では、2028年度に売上高2,700億円、営業利益率11%以上、ROE8%以上を目標に掲げています。工作機械の市況回復だけでなく、高付加価値製品、自動化、サービス、コスト改革で収益性を引き上げられるかが、今後の最大の注目点です。

成り立ち

オークマの歴史は、1898年に大隈栄一が名古屋で「大隈麺機商会」を創業したことから始まります。最初から工作機械メーカーだったわけではなく、製麺機の製造販売から出発しました。麺を作る機械を製造する中で、金属加工や機械設計の技術を磨き、1904年には工作機械の製造を開始します。

1918年には株式会社大隈鐵工所として組織変更し、OS形普通旋盤の製造を始めました。このOS形普通旋盤は市場で高い評価を受け、長く売れ続ける製品となりました。ここから、オークマは日本の近代製造業を支える工作機械メーカーとして歩みを進めていきます。

1930年代には、自動車産業の国産化にも関わります。名古屋市長が提唱した「中京デトロイト計画」に賛同し、国産乗用車「あつた号」の製造に参加しました。オークマは8気筒エンジンを担当しています。これは現在の同社が自動車部品加工や重厚長大産業向けで強みを持つことと、歴史的にもつながる出来事です。

オークマの大きな転換点は、NC装置の自社開発です。1960年代に絶対位置検出方式のNC装置「OSP」を自社開発し、機械本体と制御装置を一体で作る「機電一体」の総合工作機械メーカーとしての道を進みました。工作機械は、鉄の塊としての剛性だけでなく、どのように動かし、どのように補正し、どのように操作させるかが重要です。オークマはこの制御部分を自社で持つことで、他社とは違う競争軸を作りました。

1991年には、社名をオークマ株式会社に変更しました。現在の本社は愛知県丹羽郡大口町にあり、本社工場と可児工場を中心に、5軸制御マシニングセンタ、複合加工機、旋盤、研削盤、自動化システムを展開しています。製麺機から始まった会社が、125年以上を経て、航空・宇宙・防衛・半導体・医療機器向けの高精度加工を支える会社になっている点に、オークマの歴史の面白さがあります。

事業内容

オークマの事業は、工作機械の製造販売が中心です。製品は、NC旋盤、マシニングセンタ、5軸制御マシニングセンタ、複合加工機、超複合加工機、門形マシニングセンタ、研削盤、自動化システム、IT・CNC、アフターサービスに分けて見ると理解しやすくなります。

NC旋盤は、円筒形の部品を回転させながら切削する機械です。自動車部品、油圧部品、産業機械部品、航空機部品など、軸物や丸物の加工で使われます。単純な旋削だけでなく、複雑な形状や高精度加工に対応する機種もあります。

マシニングセンタは、工具を自動交換しながら、穴あけ、フライス加工、ねじ切りなどを行う機械です。金型、精密部品、半導体製造装置部品、医療機器部品、航空機部品など、幅広い用途があります。5軸制御マシニングセンタになると、工具や加工対象を複数方向に動かし、複雑な曲面や難削材を高精度に加工できます。航空機の構造部品、タービン部品、医療インプラント、金型などで重要です。

複合加工機は、旋削、フライス、穴あけ、研削など複数の加工を一台に集約する機械です。部品を何度も機械間で移し替えると、段取り時間がかかり、位置ずれや品質ばらつきが発生します。複合加工機は、工程集約によって生産効率と加工精度を高めるための製品です。人手不足や多品種少量生産と相性がよく、オークマの主力領域の一つです。

門形マシニングセンタは、大型部品や金型、航空機部品、建設機械部品、発電関連部品などを加工するための大型機です。オークマは大型・高剛性・高精度加工にも強みがあります。研削盤は、高精度な仕上げ加工に使われます。

さらに、オークマは自動化システム、ロボットパッケージ、パレットシステム、搬送装置、AI機械診断、加工状態監視、3Dバーチャモニタ、OSP-VPS、Connect PlanなどのIT・CNC関連も展開しています。単に機械を売るだけでなく、顧客の工場全体の生産性を高める「ものづくりサービス」を提供しようとしている点が、現在の事業の特徴です。

収益構造

オークマの収益構造は、工作機械本体の販売、CNC・ソフトウェア、自動化システム、アフターサービス、地域別需要によって成り立っています。

2026年3月期の売上高は2,358億円、営業利益は155億円でした。営業利益率は6.6%です。工作機械は一台あたりの単価が大きく、受注から納入まで時間がかかる設備投資型の製品です。そのため、単年度の売上は、過去に受注した案件の納入タイミングに左右されます。受注高、受注残高、売上高をセットで見る必要があります。

製品別受注を見ると、2026年3月期の受注高は、NC旋盤377億円、マシニングセンタ1,268億円、複合加工機667億円、NC研削盤27億円、その他67億円でした。合計受注高は2,408億円です。マシニングセンタと複合加工機が受注の大きな柱であり、オークマが高付加価値加工や工程集約の需要を取り込んでいることが分かります。

地域別では、海外売上高が1,727億円、海外売上高比率は73.3%でした。米州、欧州、中国、その他アジア・パシフィックなど、グローバルに販売しています。日本国内だけでなく、航空・宇宙、防衛、医療、データセンター・エネルギー、半導体製造装置、自動車、一般機械など、世界の製造業の設備投資に業績が連動します。

利益面では、高付加価値製品の比率、販売価格、地域ミックス、工場稼働率、原材料費、人件費、研究開発費、物流費が重要です。2026年3月期は売上高が増えた一方で、部材コスト上昇、輸送コスト高止まり、人的資本投資、米国関税負担、経費増加が利益を圧迫しました。工作機械は高額商品ですが、材料費や固定費も大きいため、売上が増えても利益率が必ず上がるわけではありません。

また、工作機械は景気循環性が高い一方、アフターサービスや部品、修理、教育、プログラム支援などは、導入後も継続的に発生します。オークマは、自社CNCを持つため、機械本体と制御装置を含めたワンストップサポートを提供しやすい会社です。今後はサービスビジネスの拡大が、収益安定化の鍵になります。

事業内容の特徴

オークマの事業の最大の特徴は、「機電一体」です。工作機械本体とCNC装置を自社で開発することで、機械構造と制御を一体で最適化できます。

工作機械は、重くて硬い機械を作ればよいわけではありません。加工中には、熱、振動、工具摩耗、切削抵抗、びびり、姿勢変化、段取り誤差が発生します。これらを制御し、補正し、安定した加工精度を保つ必要があります。オークマは、自社CNC「OSP」を持つことで、機械の状態を見ながら、熱変位補正、加工条件の最適化、衝突防止、AI診断などを機械と制御の両面から実装できます。

代表的な技術に、サーモフレンドリーコンセプトがあります。工作機械は加工中に熱を持ちます。機械が温まると部品がわずかに伸び縮みし、加工精度が狂います。オークマは、機械構造と制御を組み合わせて熱変位を抑え、安定した加工を支援してきました。これは、長時間の連続加工や無人運転で特に重要です。

また、アンチクラッシュシステムや加工ナビ、ファイブチューニング、OSP-AIなど、現場の使いやすさと精度安定を支える機能も持っています。熟練者でなければ調整できなかった加工条件や機械補正を、制御装置とソフトウェアで支援する方向です。人手不足や技能伝承が課題になる中で、こうした知能化技術は重要になります。

さらに、オークマは自社の生産現場を実証の場として使っています。Dream SiteやDream Site Engineered Solutionsでは、自動化ライン、工程集約、ロボット、搬送、加工データ活用を実際に運用し、その知見を顧客提案へつなげています。自社工場で実践したものづくりを、顧客の工場へ提案することが、オークマの「ものづくりサービス」の中核です。

就活生の視点では、オークマは機械だけ、電気だけ、ソフトだけではなく、それらを一体で作る会社です。機械設計、制御設計、ソフトウェア、AI、加工技術、生産技術、アプリケーションエンジニア、サービス、海外営業まで、仕事の幅が広いです。工作機械は顧客の工場そのものに関わるため、顧客の加工課題を理解する力も求められます。

競合他社との違い

オークマの競合には、DMG森精機、ヤマザキマザック、牧野フライス製作所、ファナック、ジェイテクト、ブラザー工業、ツガミ、シチズンマシナリー、海外ではHaas、Hermle、GROB、Doosan系、台湾・中国の工作機械メーカーなどがあります。工作機械は、機種、加工対象、価格帯、地域によって競合が変わります。

DMG森精機は、グローバル展開と高付加価値機で強い会社です。欧州のDMGと日本の森精機が統合した企業で、5軸加工や複合加工、自動化、デジタルサービスに力を入れています。ヤマザキマザックは、複合加工機やCNC旋盤、レーザー加工機などを持ち、世界的に販売網が広い会社です。牧野フライスは、マシニングセンタや放電加工、金型・航空機向けの高精度加工に強みがあります。

オークマの違いは、機械本体とCNC装置を自社開発する機電一体にあります。多くの工作機械メーカーは、CNCを外部から調達します。オークマはOSPを自社開発しているため、機械の挙動、熱変位、加工条件、操作性、AI診断を自社仕様で深く作り込めます。これは、顧客へのサポートや長期的な技術蓄積でも強みになります。

ファナックとの違いも重要です。ファナックはCNC、サーボモータ、産業用ロボット、ロボマシンに強い会社です。工作機械メーカーにCNCを供給する側でもあります。オークマは、CNCを外販するより、自社工作機械と一体で価値を出す会社です。制御の思想を機械本体に深く組み込める点が異なります。

ブラザー工業は、小型マシニングセンタで省スペース・高速加工に強みを持ちます。オークマは、5軸、複合、大型、重厚長大、高精度加工、自動化ソリューションで存在感があります。ツガミやシチズンマシナリーは、小型精密旋盤や自動盤に強みがあります。オークマは、より広い加工領域と高付加価値の工程集約に軸足があります。

このように、オークマは工作機械業界の中でも、「機電一体」「OSP」「5軸・複合加工」「大型・高精度」「自動化・知能化」という組み合わせで差別化しています。

事業の現代での潮流

オークマを取り巻く第一の潮流は、5軸加工と複合加工の需要拡大です。航空機、宇宙・衛星、防衛、医療機器、半導体製造装置、発電関連では、部品形状が複雑で、加工精度も高く求められます。5軸制御マシニングセンタや複合加工機は、こうした部品の工程集約と高精度加工に適しています。

第二の潮流は、自動化です。製造業では、熟練者不足、人件費上昇、夜間無人運転、少量多品種生産への対応が課題です。工作機械単体ではなく、ロボット、パレット搬送、工具管理、計測、補正、加工データ活用を組み合わせる必要があります。オークマは、ロボットパッケージや自動化ソリューションを拡販しようとしています。

第三の潮流は、AIと知能化です。工作機械のAI活用は、単にチャットAIを使うという話ではありません。加工中の振動、熱変位、主軸負荷、工具摩耗、機械状態を監視し、異常を検知し、原因を推定し、改善策を示すことが重要です。オークマは長年の実機データと工学知見を組み合わせたフィジカルAIを重視しています。

第四の潮流は、脱炭素化です。工作機械は工場で長時間稼働し、多くの電力を使います。省エネ機能、待機電力削減、加工時間短縮、工程集約、クーラントやエア消費の削減は、顧客のCO2削減にも関わります。オークマのGreen-Smart Machineは、高精度・高生産性とエネルギー消費低減を両立する方向の製品です。

第五の潮流は、地政学とサプライチェーンです。米国関税政策、欧州の景気停滞、中国市場、インドの成長、半導体製造装置や防衛関連の投資は、工作機械需要を地域ごとに変化させます。オークマは海外売上比率が7割を超えており、世界の設備投資と地域政策の影響を強く受けます。

強み

オークマの強みは、第一に機電一体です。機械本体とCNC装置を自社開発することで、加工精度、操作性、補正機能、AI診断、サービスを一体で作り込めます。これは、競合との差別化だけでなく、顧客への長期サポートにもつながります。

第二の強みは、5軸制御マシニングセンタと複合加工機です。2026年3月期の受注では、マシニングセンタと複合加工機が大きな柱でした。航空・宇宙・防衛、医療、半導体製造装置、発電関連など、高付加価値加工が必要な市場と相性があります。

第三の強みは、知能化技術です。サーモフレンドリーコンセプト、加工ナビ、ファイブチューニング、OSP-AI、AI機械診断などは、熟練者の経験に依存していた加工安定化を、機械と制御で支援する技術です。人手不足や技能伝承が課題になる中で、顧客の生産性向上に直結します。

第四の強みは、自社工場を活用した提案力です。Dream SiteやDream Site Engineered Solutions、Global Innovation Centerを通じて、自動化ラインや工程集約を実際に検証し、顧客に提案できます。工作機械を売るだけでなく、顧客の工場づくりを一緒に考える方向へ進んでいます。

第五の強みは、財務の安定性です。2026年3月期末の自己資本比率は72.0%でした。営業キャッシュフローは238億円の収入です。設備投資が大きい局面でも、財務基盤が厚いことは強みです。工作機械業界は景気循環が大きいため、強い財務は長期的な競争力になります。

弱み・リスク

オークマの最大のリスクは、工作機械需要の市況性です。工作機械は顧客の設備投資によって売れるため、景気後退や金利上昇、地政学リスク、関税政策の不透明感があると、顧客は投資を先送りしがちです。特に中堅・中小企業では、設備投資に慎重な姿勢が出やすくなります。

第二のリスクは、営業利益率の低下です。2026年3月期の営業利益率は6.6%でした。中期経営計画2025の目標である13〜15%には届かず、2028年度の目標も11%以上です。売上高は増えているものの、部材コスト、輸送コスト、人的資本投資、米国関税、経費増加が利益率を圧迫しています。収益性の回復は大きな課題です。

第三のリスクは、高付加価値機への依存と量産立ち上げです。5軸・複合加工機は高単価で利益を出しやすい一方、設計・製造・サービスの難易度も高いです。顧客の要求に応じた自動化システムや特殊仕様も増えるため、納期、コスト、品質管理が難しくなります。

第四のリスクは、海外需要と為替です。海外売上高比率は73.3%です。円安は売上高を押し上げる一方、現地市場の需要や輸入部材、海外子会社のコストにも影響します。米国、欧州、中国、アジアの需要がそれぞれ異なるため、全社の数字だけでは実態が見えにくい面があります。

第五のリスクは、競争です。DMG森精機、ヤマザキマザック、牧野フライス、海外大手、中国・台湾メーカーなど、競合は多いです。高級機では技術競争、汎用機では価格競争、自動化ではロボット・周辺装置メーカーとの連携力が問われます。オークマは機電一体で差別化していますが、競合も自動化・デジタル化へ投資しています。

数字で見るオークマ

オークマを見るときは、売上高、営業利益率、受注高、受注残高、製品別受注、海外売上高比率、キャッシュフロー、中期目標を確認する必要があります。

2026年3月期の連結売上高は2,358億円、営業利益は155億円、経常利益は163億円、親会社株主に帰属する当期純利益は125億円でした。売上高は前期比14.1%増、営業利益は5.8%増、経常利益は5.5%増、当期純利益は30.9%増です。営業利益率は6.6%でした。

受注高は2,408億円、受注残高は1,014億円です。製品別では、NC旋盤の受注高が377億円、マシニングセンタが1,268億円、複合加工機が667億円、NC研削盤が27億円、その他が67億円でした。マシニングセンタと複合加工機が受注の中心であり、高付加価値加工への需要を取り込んでいます。

海外売上高は1,727億円で、海外売上高比率は73.3%でした。内訳では、米州610億円、欧州344億円、中国530億円、その他アジア・パシフィック168億円などです。工作機械需要は地域ごとの設備投資動向に左右されるため、海外売上比率の高さは成長機会であると同時に、景気・為替・地政学リスクでもあります。

財務面では、2026年3月期末の総資産は3,403億円、自己資本比率は72.0%でした。営業活動によるキャッシュフローは238億円の収入、投資活動によるキャッシュフローは292億円の支出でした。本社工場、可児工場、Dream Site Engineered Solutions、Global Innovation Centerなどへの投資が進んでいます。

2027年3月期の会社予想では、売上高2,450億円、営業利益190億円、経常利益195億円、親会社株主に帰属する当期純利益130億円を見込んでいます。営業利益は前期比22.5%増の計画です。中期経営計画2028では、2028年度に売上高2,700億円、営業利益率11%以上、ROE8%以上を目標にしています。さらに2030年ビジョンでは、売上高3,000億円、営業利益率15%以上、ROE13〜15%を掲げています。

投資家が確認したい指標は、次の通りです。

受注高が売上高を上回っているか

受注残高が十分に積み上がっているか

5軸制御マシニングセンタと複合加工機の比率が高まっているか

営業利益率が6%台から11%以上へ回復する道筋があるか

海外売上高比率と地域別需要のバランス

米国関税や部材コストを価格政策で吸収できるか

設備投資後の生産能力と稼働率が上がっているか

サービスビジネスと自動化ソリューションが収益安定化に貢献しているか

就活生の場合は、売上高だけでなく、なぜ工作機械メーカーが自社CNC、AI、自動化、サービスへ広げているのかを見ると、オークマの仕事の中身が理解しやすくなります。

今後の注目ポイント

今後のオークマで最も注目したいのは、営業利益率の回復です。2026年3月期の営業利益率は6.6%で、中期経営計画2028の目標である11%以上にはまだ距離があります。高付加価値製品の拡販、価格政策、合理化、工場稼働率の改善、経費管理、サービス拡大によって収益性を引き上げられるかが重要です。

次に、5軸制御マシニングセンタと複合加工機の成長です。航空・宇宙、防衛、発電、半導体製造装置、医療機器では、高精度・複雑形状・難削材加工の需要が増えています。オークマの製品がこれらの成長産業でどこまで採用を広げられるかが、中長期成長の鍵になります。

第三に、自動化とAIです。熟練技能者の不足、夜間無人運転、省人化、多品種少量生産への対応には、自動化システムと知能化技術が必要です。オークマは、OSPと実機データを活用したAI診断や自律化ソリューションを強化しています。単に機械を納めるだけでなく、顧客の工場全体の生産性を高める提案ができるかが注目です。

第四に、地域別戦略です。米州では航空・宇宙・防衛・エネルギー関連、欧州では自動化提案と成長産業、中国では半導体製造装置、風力発電、一般産業機械、インドでは市場成長の取り込みが重要です。海外売上が大きいだけに、地域ごとの需要と施策を見る必要があります。

第五に、DSESとGlobal Innovation Centerの活用です。これらは単なる新施設ではなく、顧客との共創、自動化ソリューションの検証、高度なテスト加工、遠隔サポート、需要変化に対応する生産インフラとして位置づけられています。投資が営業活動と受注拡大にどうつながるかが重要です。

投資対象として

投資対象としてのオークマは、工作機械の市況性を持ちながら、高付加価値加工、自動化、AI、サービスによって中長期の成長を狙う会社です。売上高は過去最大水準にあり、海外売上比率も7割を超えています。機電一体の自社CNC、5軸・複合加工機、知能化技術は明確な強みです。

魅力は、製造業の高度化に深く関わることです。航空・宇宙・防衛、半導体製造装置、医療機器、発電、データセンター関連の部品は、簡単な加工では作れません。高精度で複雑な部品を安定して加工するには、高性能な工作機械が必要です。オークマはこの需要に対応できる会社です。

また、自社CNCを持つことも投資家にとって重要です。機械と制御の両方を持つことで、単なる設備メーカーではなく、加工ソリューション企業としての価値を出しやすくなります。サーモフレンドリーコンセプトやAI診断、自動化ソリューションは、熟練者不足という社会課題にもつながります。

一方で、投資家は工作機械サイクルを忘れてはいけません。受注が好調な時期は利益が伸びますが、設備投資が冷え込むと受注が急減することもあります。中堅・中小企業の投資抑制、米国関税、欧州景気、中国市場、為替、原材料費が業績に影響します。また、営業利益率の回復が計画通り進むかも重要な論点です。

PERやPBRを見るときは、単年度利益だけでなく、受注高、受注残、営業利益率、中期目標、自己資本比率、設備投資の回収を合わせて確認する必要があります。オークマは財務が強い一方、成長投資後にどれだけ収益性を高められるかが評価を左右します。

就活生にとっては、日本のものづくりの中核に近い会社です。顧客は自動車、航空、半導体、医療、エネルギーなど幅広く、機械・電気・制御・ソフトウェア・AI・加工技術が交わります。完成品メーカーのように消費者に直接見える製品ではありませんが、世界中の工場の生産力を支える仕事ができます。

まとめ

オークマは、1898年に大隈麺機商会として創業し、製麺機から工作機械へ進出した、120年以上の歴史を持つ総合工作機械メーカーです。現在では、NC旋盤、マシニングセンタ、5軸制御マシニングセンタ、複合加工機、研削盤、自動化システム、自社CNC「OSP」まで手がけています。

同社の強みは、機械本体とCNCを自社開発する機電一体、5軸・複合加工機、サーモフレンドリーコンセプトやAI機械診断などの知能化技術、Dream Siteを活用した自動化・工程集約の提案力、強い財務基盤にあります。2026年3月期には売上高2,358億円、営業利益155億円、受注高2,408億円となり、海外売上高比率は73.3%でした。

一方で、課題もあります。工作機械需要は景気循環に左右され、営業利益率は6.6%と中期目標には届いていません。原材料費、人件費、関税、経費増加、地域別需要のばらつき、競合との技術競争には注意が必要です。売上高の拡大だけでなく、営業利益率を11%以上へ戻せるかが今後の最大の焦点です。

オークマの企業研究では、「工作機械の会社」という一般的な理解で止めず、なぜ自社CNCを持つのか、5軸・複合加工機がどの成長産業に使われるのか、自動化とAIが顧客の生産性をどう変えるのかを見ることが大切です。製造業の人手不足、高精度化、脱炭素化、グローバルな設備投資の変化の中で、オークマは工作機械メーカーから「ものづくりサービス企業」へ進化できるかを問われている会社です。