NIPPON EXPRESSホールディングスを一言でいうと
NIPPON EXPRESSホールディングスを一言でいうと、「国内輸送、倉庫、国際フォワーディング、航空・海運貨物、重量品輸送、引越、警備輸送まで手がける、日本発の総合物流グループ」です。
一般の生活者にとっては、NIPPON EXPRESSというより「日本通運」「日通」の名前の方がなじみがあるかもしれません。引越、企業向け輸送、トラック、倉庫、国際貨物、重量物輸送など、個人の宅配便よりも企業の物流で存在感が大きい会社です。ヤマトホールディングスが宅急便を中心に個人宅へのラストワンマイルで強い会社だとすれば、NIPPON EXPRESSホールディングスは、メーカー、商社、小売、医薬品、半導体、自動車、航空、海運、重電、プラントなどのサプライチェーンを広く支える会社です。
物流と聞くと、荷物を運ぶだけの仕事に見えるかもしれません。しかし、NIPPON EXPRESSホールディングスの事業は、単純な運送ではありません。工場から倉庫へ運ぶ、倉庫で保管する、輸出入の手続きをする、航空機や船を手配する、海外現地法人へ届ける、温度管理する、重量物を据え付ける、完成車や部品を国境を越えて動かす。こうした企業活動の裏側を支えるのが同社の役割です。
同社の特徴は、国内物流と国際物流の両方を持つことです。国内では、トラック、鉄道、倉庫、港湾、航空貨物、引越、貴重品輸送などを展開します。海外では、フォワーディング、通関、倉庫、国際一貫輸送、現地配送を組み合わせます。荷主企業から見ると、国内だけ、海外だけではなく、調達から生産、販売まで一体で相談できる物流パートナーです。
投資家にとっては、NIPPON EXPRESSホールディングスは「日本最大級の総合物流企業」であると同時に、国際貨物市況、人件費、燃料費、倉庫・設備投資、M&A、為替、2024年問題に影響される会社です。就活生にとっては、トラック輸送だけでなく、国際物流、倉庫設計、通関、海外駐在、重量品輸送、医薬品物流、半導体物流、データ活用に関われる企業です。
なぜ今NIPPON EXPRESSホールディングスを見るのか
今NIPPON EXPRESSホールディングスを見る意味は、企業の物流が「運賃の安さ」だけでなく、「サプライチェーン全体の強さ」を左右する時代になっているからです。
ここ数年、世界のサプライチェーンは大きく揺れました。新型コロナ禍、海上運賃の高騰、半導体不足、地政学リスク、ウクライナ情勢、紅海問題、米中対立、円安、原材料高、港湾混雑、航空貨物市況の変動などにより、企業は安く運べばよいという発想だけでは対応できなくなりました。どこで生産し、どこに在庫を置き、どの輸送モードを使い、どれだけリスクを分散するかが経営課題になっています。
NIPPON EXPRESSホールディングスは、こうした変化の中心にいる会社です。航空貨物、海運貨物、倉庫、通関、国内配送を組み合わせ、荷主企業のサプライチェーンを支えます。特に、自動車、半導体、医薬品、精密機器、アパレル、食品、化学品、重電・プラントなど、業界ごとに異なる物流課題に対応できることが重要です。
一方で、物流会社にとっては厳しい環境でもあります。国際貨物は市況変動が大きく、航空運賃や海上運賃が高い時は利益が出やすい一方、運賃市況が正常化すると売上や利益が落ちやすくなります。国内物流では、ドライバー不足、人件費上昇、燃料費、2024年問題、倉庫作業員不足が重くなります。物流需要があるからといって、利益が自動的に増えるわけではありません。
NIPPON EXPRESSホールディングスは、2022年に持株会社体制へ移行し、グローバルブランドを「NX」に統一していきました。これは、国内の日本通運という会社から、世界で戦う総合物流グループへ変わるための動きです。海外M&Aや地域統合、グローバルアカウントへの対応を進めるには、ブランド、システム、人材、管理体制を世界基準に近づける必要があります。
個人投資家にとっては、NXホールディングスの企業研究では、売上高の大きさだけでなく、国際貨物市況の変動、営業利益率、海外事業比率、倉庫・フォワーディングの収益性、M&Aの成果、営業キャッシュフローを見ることが重要です。就活生にとっては、物流を「運ぶ仕事」ではなく、企業活動そのものを設計する仕事として見ると、同社の面白さが分かります。
成り立ち
NIPPON EXPRESSホールディングスの中核である日本通運は、1937年に設立されました。日本の物流は、鉄道、船、トラック、倉庫、港湾、航空といった複数の輸送手段が結びついて発展してきました。日本通運は、そうした複合的な物流を担う会社として成長してきました。
同社の歴史を理解するうえで重要なのは、宅配便型の会社ではなく、企業・産業物流を支える会社として発展してきたことです。工場で作られた製品を港や倉庫へ運ぶ、原材料を工場へ届ける、大型設備を輸送する、引越を行う、鉄道コンテナを扱う、航空貨物を手配する。日本の産業発展の裏側で、日通は物流を担ってきました。
高度成長期には、製造業の拡大とともに、国内物流の需要が増えました。自動車、電機、化学、食品、機械、建設、流通など、さまざまな産業が発展する中で、物流は単なる運送から、工場・倉庫・販売先を結ぶ仕組みへ変化しました。日本通運は、トラック、鉄道、倉庫、港湾、航空を組み合わせる総合物流企業として存在感を高めました。
国際物流の拡大も大きな転機です。日本企業が海外へ生産拠点を広げるにつれて、部品や製品を国境を越えて動かす必要が出てきました。輸出入、通関、航空貨物、海上貨物、海外倉庫、現地配送を一体で提供するフォワーディング事業が重要になりました。日本通運は、日本企業の海外展開に伴って、海外ネットワークを拡大していきました。
2022年には、NIPPON EXPRESSホールディングスが発足し、持株会社体制へ移行しました。これは、国内中心の日本通運から、グローバル物流グループへ進化するための構造改革です。グループブランドとして「NX」を掲げ、海外企業の買収やグローバル顧客対応を強めています。
つまり、NIPPON EXPRESSホールディングスの成り立ちは、日本の産業物流を支え、そこから国際物流へ広がり、現在はグローバルサプライチェーン企業へ変わろうとしている歴史です。
事業内容
NIPPON EXPRESSホールディングスの事業は、ロジスティクス、警備輸送、重量品建設、物流サポートなどに分けて見ると分かりやすいです。
中核はロジスティクス事業です。ここには、国内輸送、国際輸送、航空貨物、海運貨物、倉庫、通関、流通加工、3PL、引越、温度管理物流などが含まれます。荷主企業の貨物を、国内外で最適な方法で動かす事業です。単純なトラック輸送だけでなく、航空機、船、鉄道、トラック、倉庫、現地配送を組み合わせます。
国際物流では、フォワーディングが重要です。フォワーダーとは、自社で航空機や船を持つというより、航空会社や船会社のスペースを手配し、荷主に最適な輸送ルートを提案する事業者です。輸出入書類、通関、倉庫、保険、現地配送まで一体で担うこともあります。航空貨物はスピードが重視され、海上貨物は大量輸送やコストが重視されます。荷主の製品や納期によって使い分ける必要があります。
国内物流では、トラック、鉄道コンテナ、倉庫、引越、企業向け配送が中心です。ヤマトや佐川のような個人宅向け宅配便とは異なり、企業貨物や産業物流の比重が大きい点が特徴です。工場から販売拠点、倉庫から店舗、部品メーカーから完成品メーカーなど、企業間の物流を支えます。
警備輸送事業では、現金や貴重品の輸送、金融機関向けサービスなどを扱います。キャッシュレス化が進んでも、現金流通や貴重品輸送には一定の需要があります。ただし、現金取扱量の変化や金融機関の店舗再編の影響も受けます。
重量品建設事業では、大型機械、発電設備、プラント設備、鉄道車両、航空機関連設備、工場設備など、通常のトラック輸送では難しい重量物・大型物を輸送・据付します。ここは、技術力と現場管理が必要な特殊物流です。単に運ぶだけではなく、工程管理、安全管理、クレーン、特殊車両、道路許可、現地据付まで関わります。
物流サポート事業では、物流機器、包装資材、車両整備、燃料販売、不動産、保険、情報システムなど、物流を支える周辺サービスがあります。総合物流グループとして、主力の輸送・倉庫を支える役割です。
収益構造
NIPPON EXPRESSホールディングスの収益構造は、国内物流、国際フォワーディング、倉庫、重量品輸送、警備輸送、物流サポートが組み合わさって成り立っています。
物流会社の売上は、荷物量、輸送距離、輸送単価、倉庫保管料、荷役料、通関・事務手数料、付加価値サービスによって決まります。国際物流では、航空運賃や海上運賃の市況が売上高に大きく影響します。運賃市況が高い時期は、売上も利益も膨らみやすい一方、市況が正常化すると減収減益になりやすい構造です。
国内物流では、荷物量と単価、人件費、燃料費、車両費、倉庫費、外部委託費が重要です。国内輸送は安定需要がありますが、ドライバー不足や2024年問題により、人件費や委託費が上がりやすくなっています。荷主企業に適正運賃を求められるかが利益率を左右します。
倉庫や3PLは、輸送よりも安定収益になりやすい領域です。企業の在庫を預かり、入出庫、検品、流通加工、梱包、配送を一体で受けることで、単なる運賃よりも高い付加価値を取れます。EC、医薬品、半導体、食品、アパレルなどでは、倉庫内作業の品質とシステム対応が重要です。
重量品建設は、案件ごとの規模が大きく、専門性が高い事業です。発電所や工場設備、プラント、鉄道車両、大型機械の輸送・据付は、通常の物流とは違う収益構造を持ちます。案件がある時期には利益貢献が大きくなりますが、受注タイミングによる変動もあります。
NIPPON EXPRESSホールディングスは、売上収益が2兆円を超える規模の総合物流グループです。ただし、物流業界は営業利益率が高くなりにくい業界です。人件費、燃料費、外注費、設備費が重く、景気や貨物市況の影響も受けます。投資家は、売上規模だけでなく、事業別の利益率、国際貨物市況の影響、国内物流の価格改定、キャッシュフローを見る必要があります。
事業内容の特徴
NIPPON EXPRESSホールディングスの事業内容の特徴は、「複数の輸送モードと倉庫を組み合わせられる総合力」です。
物流には、トラックだけでなく、鉄道、船、航空、倉庫、通関、港湾、現地配送があります。たとえば、精密機器を日本から欧州へ送る場合、工場から国内空港までトラックで運び、航空機で輸送し、現地空港で通関し、現地倉庫を経由して顧客へ届ける必要があります。食品なら温度管理が必要です。半導体製造装置なら振動や衝撃管理が必要です。大型プラントなら特殊車両と据付が必要です。
NIPPON EXPRESSホールディングスは、こうした複雑な物流を一体で設計できる点に特徴があります。荷主企業にとって、輸送会社、倉庫会社、通関業者、現地配送会社を別々に手配するのは大きな負担です。総合物流企業が全体をまとめれば、責任範囲が明確になり、効率も高まりやすくなります。
また、同社はBtoB物流に強い会社です。ヤマトのように個人宅へ荷物を届ける姿はあまり目立ちませんが、企業の生産・販売活動の裏側では非常に大きな役割を持ちます。自動車部品、電子部品、医薬品、半導体関連、化学品、アパレル、食品、機械設備など、業界ごとに異なる物流要件に対応します。
国際物流では、通関や現地規制への対応も重要です。貨物を海外へ送るには、書類、関税、輸出入規制、安全保障貿易管理、現地法規制、輸送保険などが関わります。物流会社には、単なる運送ではなく、国際ビジネスの実務知識が求められます。
さらに、倉庫とデータの重要性が高まっています。企業は在庫を持ちすぎれば資金効率が悪くなり、少なすぎれば欠品リスクがあります。物流会社が在庫データ、需要、入出庫、配送を見える化できれば、荷主企業の経営改善にもつながります。NIPPON EXPRESSホールディングスは、物流現場と情報システムを組み合わせることが今後の差別化になります。
競合他社との違い
NIPPON EXPRESSホールディングスの競合は、国内ではヤマトホールディングス、SGホールディングス、セイノーホールディングス、福山通運、SBSホールディングス、近鉄エクスプレス、郵船ロジスティクスなどです。海外では、DHL、Kuehne+Nagel、DB Schenker、DSV、FedEx、UPS、C.H. Robinsonなどのグローバル物流企業と競合します。
ヤマトホールディングスとの違いは、宅配便か総合物流かです。ヤマトは宅急便を中心とした国内ラストワンマイルに強い会社です。個人宅への配送、EC荷物、生活者との接点に強みがあります。NIPPON EXPRESSホールディングスは、国内外の企業物流、フォワーディング、倉庫、重量品輸送、BtoB物流に強い会社です。個人向け宅配便ではヤマト、総合物流と国際物流ではNXという比較が分かりやすいです。
SGホールディングスとの違いは、佐川急便を中心とする国内法人配送と、NXの国際・総合物流の幅です。SGホールディングスは、法人向け小口配送、企業物流、宅配便で強い存在です。NIPPON EXPRESSホールディングスは、より国際物流、航空・海運フォワーディング、重量品、倉庫、グローバルサプライチェーンに重心があります。
近鉄エクスプレスや郵船ロジスティクスとは、国際フォワーディングで競合します。近鉄エクスプレスは航空貨物に強く、郵船ロジスティクスは海運系のネットワークを持ちます。NIPPON EXPRESSホールディングスは、国内物流と国際物流の両方を持つ総合力が特徴です。フォワーディング専業に近い会社と比べ、国内の倉庫・輸送まで含めた一貫提案がしやすい点が違いです。
海外大手との比較では、DHL、Kuehne+Nagel、DSVなどは非常に大きなグローバルネットワークを持ちます。NIPPON EXPRESSホールディングスは、世界最大級の物流会社と比べると規模では劣る部分もありますが、日本企業との関係、日本発着貨物、アジアでの展開、国内物流との接続に強みがあります。
つまり、NIPPON EXPRESSホールディングスの独自性は、「日本国内の産業物流を深く理解しながら、国際物流へつなげられること」です。完全な宅配会社でも、純粋な海外フォワーダーでもない、総合物流グループとしての立ち位置が特徴です。
事業の現代での潮流
NIPPON EXPRESSホールディングスを取り巻く潮流は、サプライチェーン再編、国際貨物市況の正常化、2024年問題、物流DX、半導体・医薬品物流、脱炭素です。
サプライチェーン再編は、大きなテーマです。企業は、コストだけを見て一国集中で生産するリスクを意識するようになりました。中国から東南アジア、インド、北米、国内回帰へ生産拠点を分散する動きがあります。物流会社には、新しい拠点配置に合わせた国際輸送、倉庫、通関、現地配送の提案力が求められます。
国際貨物市況は、業績に大きく影響します。コロナ禍では航空貨物や海上貨物の運賃が高騰し、物流会社の収益を押し上げました。しかし、市況が正常化すると、その反動で売上や利益が落ちます。NIPPON EXPRESSホールディングスを見るときは、一時的な運賃市況による利益なのか、構造的な利益なのかを分けて考える必要があります。
国内では、2024年問題が大きな課題です。トラックドライバーの時間外労働規制により、輸送能力不足が懸念されています。これは宅配便だけでなく、企業物流、幹線輸送、工場間輸送にも関わります。鉄道や船へのモーダルシフト、共同配送、倉庫配置の見直し、積載率向上が重要になります。
物流DXも避けられません。荷物の追跡、倉庫内作業、在庫管理、配車、需要予測、通関書類、顧客システム連携など、物流はデータ活用の余地が大きい領域です。現場のノウハウをデジタル化できれば、荷主企業に対する提案力も高まります。
半導体・医薬品物流も注目分野です。半導体製造装置や電子部品は、振動、温度、納期、通関、セキュリティが重要です。医薬品物流では、温度管理、品質保証、トレーサビリティが必要です。これらは単価が高く、専門性も高いため、総合物流企業にとって付加価値を出しやすい領域です。
脱炭素も重要です。物流はトラック、航空、船を使うため、CO2排出と密接に関係します。鉄道・船舶へのモーダルシフト、EVトラック、燃費改善、共同配送、倉庫の省エネ、カーボン可視化は、荷主企業からも求められるテーマです。
強み
NIPPON EXPRESSホールディングスの強みは、第一に国内物流と国際物流をつなげる総合力です。国内の倉庫・輸送、航空・海運フォワーディング、通関、海外現地物流を組み合わせられるため、企業のサプライチェーン全体に入り込めます。
第二に、BtoB物流での顧客基盤です。製造業、商社、小売、医薬品、半導体、自動車、重電、食品、アパレルなど、幅広い業界の物流を扱ってきました。物流は業界ごとに要件が違うため、長年の顧客理解と現場ノウハウが競争力になります。
第三に、特殊物流への対応力です。重量品建設、精密機器輸送、医薬品物流、温度管理、現金・貴重品輸送など、単純な輸送ではない領域を持っています。こうした特殊物流は、価格競争だけになりにくく、専門性で差別化できます。
第四に、日本発着貨物での強さです。日本企業の海外展開や輸出入において、国内拠点と海外拠点をつなげられることは大きな強みです。日本国内の商習慣や品質要求を理解しながら、海外物流まで支援できる点は、外資系フォワーダーとの差別化になります。
第五に、グローバルブランド「NX」への統合です。持株会社体制とブランド統一により、国内外のグループ会社を一体で動かしやすくなっています。海外M&Aやグローバルアカウント対応を進めるうえで、ブランドと組織の統一は重要です。
弱み・リスク
NIPPON EXPRESSホールディングスのリスクでまず挙げられるのは、国際貨物市況への感応度です。航空・海上運賃が高い局面では収益が膨らみますが、市況が正常化すると反動が出ます。投資家は、好業績が一時的な市況要因なのか、構造的な競争力によるものなのかを見極める必要があります。
第二に、国内物流の人手不足です。トラックドライバー、倉庫作業員、通関実務、現場管理者など、物流には多くの人材が必要です。人件費上昇や採用難は、利益を圧迫します。2024年問題により、国内輸送の能力不足やコスト上昇も続きます。
第三に、低利益率です。物流業界は売上規模が大きくても、利益率が高くなりにくい業界です。外注費、燃料費、人件費、設備費が重く、価格転嫁が遅れれば収益性が悪化します。NXホールディングスも、営業利益率やROEをどう高めるかが課題です。
第四に、M&Aリスクです。グローバル物流企業として成長するには、海外企業の買収や統合が重要になります。しかし、M&Aは買収価格、のれん、統合作業、文化の違い、システム統合、人材流出のリスクがあります。買収した企業をグループ全体の収益力向上につなげられるかが問われます。
第五に、景気感応度です。物流は経済活動と密接に関係します。製造業の生産が落ちる、半導体や自動車の需要が減る、消費が落ちる、貿易量が減ると、物流需要も影響を受けます。生活者向け宅配よりも企業物流の比重が高い分、景気や企業投資の影響を受けやすい面があります。
数字で見るNIPPON EXPRESSホールディングス
NIPPON EXPRESSホールディングスを見るうえで、まず確認したいのは売上収益と営業利益です。同社は売上収益が2兆円を超える、日本最大級の総合物流グループです。国内物流、国際物流、倉庫、警備輸送、重量品建設、物流サポートまで持つため、売上規模は非常に大きくなります。
ただし、物流業界では売上規模だけを見ても実態は分かりません。国際貨物市況が高い時期は、運賃上昇により売上高が大きく膨らみます。逆に、市況が正常化すると売上が減ることがあります。したがって、売上高だけでなく、営業利益率、事業別利益、貨物取扱量、単価、為替影響を確認する必要があります。
見るべき数字の一つは、国際航空貨物と海運貨物の取扱量です。航空貨物は半導体、電子部品、医薬品、緊急貨物などで使われ、単価が高くなりやすい一方、市況変動も大きい。海運貨物は大量輸送に向いていますが、海上運賃や港湾混雑の影響を受けます。航空と海運のどちらが伸びているかで、収益構造は変わります。
国内物流では、倉庫面積、取扱物量、単価、人件費、外部委託費、燃料費が重要です。2024年問題により、人件費と輸送コストは上がりやすくなっています。荷主企業に対して適正な料金改定ができるかが、営業利益率を左右します。
キャッシュフローも重要です。物流企業は、倉庫、車両、IT、海外拠点、M&Aに投資が必要です。営業キャッシュフローが安定していても、投資負担が大きければフリーキャッシュフローは圧迫されます。投資家は、利益だけでなく、投資後にどれだけ現金が残るかを見る必要があります。
株主還元を見る際には、配当や自己株式取得だけでなく、成長投資とのバランスが重要です。NXホールディングスは、グローバル物流企業としての成長を目指しているため、M&Aや海外拠点投資も必要になります。還元だけでなく、投資が将来利益につながるかを見ることが大切です。
今後の注目ポイント
今後の注目ポイントは、まず国際物流の再成長です。航空・海運市況が落ち着いた後、同社が単なる市況依存ではなく、グローバル顧客への提案力で利益を伸ばせるかが重要です。半導体、医薬品、自動車、電子部品、アパレルなど、重点産業での物流案件をどれだけ増やせるかが焦点です。
第二に、国内物流の価格適正化です。人件費、燃料費、2024年問題により、物流コストは上がっています。荷主企業に対して適正料金を求め、効率化と価格改定を両立できるかが重要です。物流は社会インフラですが、安すぎる物流は持続しません。
第三に、倉庫・3PL事業の拡大です。輸送だけではなく、在庫管理、流通加工、検品、梱包、返品、配送まで一体で受けることで、収益の安定性を高められます。特に、EC、医薬品、半導体、食品、アパレルでは、倉庫とデータを組み合わせた物流が重要になります。
第四に、海外M&Aと統合効果です。グローバル物流企業として成長するには、海外企業の買収や提携が重要です。しかし、買収後の統合がうまくいかなければ利益に結びつきません。ブランド、システム、人材、営業網をどう統合するかが注目点です。
第五に、物流DXと脱炭素です。物流の可視化、配車最適化、倉庫自動化、通関書類のデジタル化、CO2排出量の見える化は、荷主企業からの要望が高まっています。NXホールディングスが、単なる輸送会社ではなく、データを使ってサプライチェーンを改善する企業になれるかが問われます。
投資対象として
投資対象としてのNIPPON EXPRESSホールディングスは、「日本最大級の総合物流基盤」と「国際物流市況に左右される変動性」を併せ持つ会社です。
魅力は、国内物流と国際物流の両方を持つ総合力です。日本企業の海外展開、製造業のサプライチェーン再編、半導体・医薬品物流、倉庫・3PL需要の拡大は、同社にとって成長機会になります。企業物流は一度深く入り込むと継続性があり、荷主企業との関係が資産になります。
また、グローバルブランド「NX」への統合と海外展開も魅力です。日本国内だけでは成長余地に限界がありますが、国際物流で存在感を高めれば、長期的な成長が期待できます。特に、アジア、欧州、北米での物流ネットワーク拡大は重要です。
一方で、注意点もあります。国際貨物市況の変動、人件費・燃料費上昇、2024年問題、M&A統合リスク、低利益率、景気感応度は大きなリスクです。物流会社は社会に必要な存在ですが、必要だから高収益になるとは限りません。価格転嫁と効率化が進まなければ、利益率は伸びにくい業界です。
株価を見る際には、PERやPBRだけでなく、営業利益率、国際物流の取扱量、国内物流の価格改定、倉庫・3PLの成長、海外売上比率、営業キャッシュフロー、設備投資、M&A効果、ROE、株主還元を確認したいところです。NXホールディングスは、物流市況に乗る銘柄というだけでなく、グローバル総合物流企業へ変われるかを見極める銘柄です。
就活生にとっては、NIPPON EXPRESSホールディングスは、現場の輸送だけでなく、企業の国際展開やサプライチェーンを支える仕事に関われる会社です。通関、海外物流、倉庫設計、重量品輸送、医薬品物流、半導体物流、データ活用など、物流の中でも専門性の高い仕事が多くあります。世界と日本の産業をつなぐ仕事に関心がある人に向いています。
まとめ
NIPPON EXPRESSホールディングスは、国内物流、国際フォワーディング、倉庫、通関、重量品輸送、警備輸送、物流サポートを展開する日本最大級の総合物流グループです。日本通運の歴史を受け継ぎ、現在は「NX」ブランドのもとでグローバル物流企業へ進化しようとしています。
同社の強みは、国内物流と国際物流をつなげる総合力、BtoB物流での顧客基盤、特殊物流への対応力、日本発着貨物での強さ、グローバルブランドへの統合です。ヤマトのような個人向け宅配便企業とは異なり、企業のサプライチェーン全体を支える色が強い会社です。
一方で、リスクもあります。国際貨物市況への感応度、国内物流の人手不足、低利益率、M&A統合リスク、景気感応度です。売上規模が大きいから安心というより、どの事業で利益を出しているか、国際市況が落ち着いた後も収益性を維持できるかを見る必要があります。
個人投資家にとっては、NIPPON EXPRESSホールディングスは「日本発の総合物流基盤を持ちながら、国際物流と3PLで成長を狙う会社」です。就活生にとっては、国内外の企業活動を物流面から支える、社会インフラ性とグローバル性のある会社です。NIPPON EXPRESSホールディングスの企業研究では、「荷物を運ぶ会社」という表面的な理解にとどまらず、「国内外のサプライチェーンを設計し、企業の生産・販売活動を支える総合物流企業」として見ることが大切です。