メルカリを一言でいうと
メルカリを一言で表すなら、「個人がモノを売り買いするフリマアプリを起点に、決済、与信、越境取引、暗号資産まで広げる循環型マーケットプレイス企業」です。
メルカリという名前から、多くの人は中古品を売るアプリ、不要品を現金化するサービス、スマホで簡単に出品できるフリマアプリを思い浮かべるはずです。服、本、家電、ゲーム、トレーディングカード、キャラクターグッズ、スニーカー、コスメ、ベビー用品など、家庭に眠っているモノを個人同士で売買できる場として、メルカリは日本で非常に強い存在感を持っています。
ただし、現在のメルカリは、単なる中古品売買アプリではありません。中核にあるのは国内CtoCマーケットプレイスですが、その周辺にメルペイ、メルカード、あと払い、スマートマネー、メルコイン、越境取引、米国版Mercariが重なっています。売上金をメルペイで使い、メルカードで支払い、必要に応じて与信サービスを使い、海外ユーザーにも商品を届ける。こうした広がりが、現在のメルカリの事業構造です。
メルカリ ビジネスモデルの本質は、商品そのものを仕入れて売ることではなく、売り手と買い手が取引する場を作り、その取引から手数料や金融収益を得ることにあります。小売業のように在庫を大量に持つのではなく、ユーザーが持っているモノを流通させるプラットフォームです。そのため、商品在庫のリスクは低い一方、ユーザー数、出品数、購入頻度、安心・安全、配送体験、決済体験が事業の生命線になります。
投資家にとってメルカリは、国内フリマアプリの成熟企業としてだけ見ると不十分です。国内マーケットプレイスの成長率、Fintechの収益性、米国事業の黒字定着、越境取引の拡大、AIによる検索・推薦・不正検知の改善を合わせて見る必要があります。就活生にとっても、メルカリはEC企業であると同時に、決済、与信、セキュリティ、物流、AI、グローバル展開、信頼設計の会社として理解する必要があります。
なぜ今メルカリを見るのか
今、メルカリを見る理由は、国内フリマアプリが成熟期に入りながらも、もう一段の成長に向けて事業の広げ方が変わっているからです。
メルカリはすでに日本では非常に知名度の高いサービスです。新しくアプリを知ってもらう段階から、既存ユーザーにもっと出品してもらう、もっと買ってもらう、高単価商品も安心して取引してもらう、海外需要を取り込む、金融サービスを使ってもらう段階へ移っています。つまり、利用者数の単純な拡大だけではなく、一人あたりの取引頻度、平均注文金額、カテゴリー拡大、安心・安全施策が重要になっています。
特に注目されるのが、エンタメ・ホビー領域です。トレーディングカード、キャラクターグッズ、フィギュア、ゲーム関連商品、スニーカーなどは、国内外に熱量の高い需要があります。こうした商品は、中古品というより、コレクター市場、推し活市場、二次流通市場として見るべき領域です。メルカリは、オークション機能、鑑定、検索・レコメンド、越境取引を強化することで、こうした高単価・高熱量カテゴリーを伸ばそうとしています。
もう一つの注目点は、メルペイ・メルカードを中心とするFintechです。メルカリでは、売上金がアプリ内に発生します。この売上金をそのままメルペイで使ったり、メルカードの利用と結びつけたり、あと払い・分割払い・スマートマネーへ広げたりできます。普通のECアプリであれば、商品購入で終わるところを、メルカリは決済と与信までつなげられる可能性があります。
さらに、米国事業と越境取引も重要です。メルカリは米国で長く苦戦してきましたが、近年はブレイクイーブンを意識しながらGMV成長を目指す方針が見えています。日本国内の商品、特にエンタメ・ホビー商材は海外需要があります。日本のユーザーが出品した商品を海外の買い手に届けられれば、国内在庫を海外需要へつなぐ新しい成長余地が生まれます。
このように、今のメルカリは「国内フリマアプリの会社」から、「国内マーケットプレイス、金融、越境、米国、AIを組み合わせる会社」へ変わろうとしています。この変化が本当に利益を伴う成長になるかが、今見るべきポイントです。
成り立ち
メルカリは、2013年に山田進太郎氏らによって創業されました。創業の背景には、限りある資源をどう循環させるかという問題意識がありました。家庭に眠っているモノを、必要としている誰かに渡すことができれば、モノの価値は捨てられずに生き続けます。この考え方が、メルカリの事業の根本にあります。
サービス開始当時、個人間売買にはすでにオークションサイトがありました。ヤフオクは長く使われており、個人がネットでモノを売る文化は存在していました。しかし、オークションは出品作業や入札の仕組みがやや複雑で、初心者には心理的なハードルがありました。メルカリは、スマホで写真を撮り、価格を決め、説明を書いて出品できるというシンプルな体験を作りました。
この「スマホで簡単に売れる」体験が、メルカリを急速に広げました。パソコン中心のネット売買ではなく、スマートフォン中心のCtoC取引を作ったことが大きな転換点でした。出品、購入、コメント、値下げ交渉、発送、評価までがアプリ上で完結し、匿名配送やエスクロー型の決済により、個人間取引の不安を下げました。
その後、メルカリは国内でフリマアプリとしての地位を確立し、2018年に東京証券取引所へ上場しました。上場後は、国内マーケットプレイスの拡大に加えて、米国事業、メルペイ、メルカード、メルコイン、メルカリShopsなどへ事業を広げていきます。
メルカリの歴史は、単に中古品アプリが成長した歴史ではありません。個人間取引の不安をテクノロジーで下げ、売上金や信用を金融サービスに変え、国内の二次流通を海外需要につなげようとしてきた歴史です。
事業内容
メルカリの事業は、大きくMarketplace、Fintech、USに分けて見ると理解しやすくなります。
Marketplaceは、国内のフリマアプリ「メルカリ」を中心とする事業です。個人が商品を出品し、買い手が購入し、取引が成立すると販売手数料が発生します。カテゴリーは非常に広く、ファッション、本・漫画、ゲーム、家電、コスメ、ベビー用品、インテリア、ハンドメイド、トレーディングカード、キャラクターグッズなど、生活のあらゆるモノが対象になります。
Marketplaceには、メルカリShopsや越境取引も含まれます。メルカリShopsは、個人事業主や小規模事業者がメルカリ上で商品を販売できるBtoCマーケットプレイスです。越境取引は、日本の出品商品を海外ユーザーにも届ける取り組みです。特にエンタメ・ホビー商材では、日本の商品に対する海外需要があり、成長余地があります。
Fintechは、メルペイ、メルカード、あと払い、定額払い、分割払い、スマートマネー、メルコインなどを含む事業です。メルカリで得た売上金を支払いに使う、メルカードで買い物をする、メルカリの利用実績をもとに与信を受ける、暗号資産を購入する。こうした金融機能が、メルカリの中に組み込まれています。
USは、米国版Mercariの事業です。米国でもCtoCマーケットプレイスを展開し、衣料品、雑貨、コレクター商品などの売買を扱います。米国市場は規模が大きい一方、eBay、Facebook Marketplace、Poshmark、OfferUp、Depopなど競合も強く、物流・返品・手数料設計・ブランド認知の難しさがあります。
この三つの事業は、役割が違います。Marketplaceは国内の収益基盤、Fintechはメルカリの取引データと売上金を活かす金融成長領域、USは海外成長の挑戦です。投資家は、これらを一括りにせず、それぞれの成長率と利益率を分けて見る必要があります。
収益構造
メルカリ ビジネスモデルの中心は、取引手数料です。
ユーザーが商品を出品し、購入者が買い、取引が成立すると、販売価格に対して手数料が発生します。メルカリ自身が商品を仕入れて売っているわけではないため、在庫リスクは小さいです。その代わり、ユーザーが出品し続けること、買い手が安心して購入できること、取引がスムーズに完了することが収益の前提になります。
Marketplaceの売上は、GMVに大きく連動します。GMVとは流通取引総額であり、メルカリ上でどれだけ商品が売買されたかを示します。GMVが伸びれば、販売手数料を中心に売上収益が増えます。GMVを伸ばすには、MAU、出品数、購入頻度、平均注文金額、カテゴリー拡大、検索・推薦精度、配送体験の改善が重要です。
Fintechの収益は、決済手数料、クレジット収益、あと払い・定額払い・分割払い・スマートマネーなどの与信関連収益、メルカード関連収益、メルコイン関連収益などから成り立ちます。ここで重要なのは、メルカリが単なる外部決済サービスではなく、マーケットプレイスの利用データを持っている点です。出品・購入・評価・売上金・支払い履歴などをもとに、独自の与信モデルを作れる可能性があります。
一方で、Fintechにはリスクもあります。与信を広げれば債権残高が増え、収益機会も増えますが、貸倒リスク、延滞、規制対応、金利環境、本人確認、不正利用対策も重要になります。メルカリにとって、金融は高収益化の可能性がある一方、マーケットプレイスよりも厳しい管理が必要な領域です。
US事業は、GMVと手数料収益が基本です。ただし、米国ではマーケティング費、配送支援、手数料設計、ブランド認知のための投資が必要です。メルカリは長年、米国事業で赤字を出してきましたが、近年は投資規律を保ちながらGMV成長とブレイクイーブンを目指す段階に移っています。
つまり、メルカリの収益構造は、国内マーケットプレイスの手数料収益を土台に、Fintechの金融収益を積み上げ、USと越境取引で成長余地を探る形です。投資家が見るべきなのは、単なる売上高ではなく、GMV、MAU、コア営業利益率、債権残高、回収率、米国事業の損益です。
事業内容の特徴
メルカリの特徴は、ユーザーが売り手にも買い手にもなることです。
一般的なECでは、企業が商品を仕入れ、消費者が買います。Amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングでは、店舗や事業者が販売者になり、消費者が購入者になります。メルカリでは、個人が売り手になり、同時に買い手にもなります。ここがCtoCマーケットプレイスの面白さであり、難しさでもあります。
売り手は、不要品を出品して現金化できます。買い手は、新品より安く商品を買えたり、すでに販売終了した商品、限定品、推し活グッズ、古いゲーム、トレカ、コレクター商品を見つけたりできます。企業が在庫を持つECとは違い、メルカリには予測しにくい商品が毎日出てきます。この偶然性が、メルカリの魅力です。
一方で、CtoCは品質がばらつきます。商品の状態、説明の正確さ、梱包、発送スピード、返品対応、偽物、不正取引、トラブル対応が課題になります。そのため、メルカリには安心・安全の仕組みが欠かせません。匿名配送、本人確認、評価、取引メッセージ、あんしん鑑定、匿名返品、AI不正検知、カスタマーサポートが、取引の信頼を支えています。
また、メルカリは二次流通でありながら、エンタメ・ホビー領域では新しい消費文化と結びついています。トレーディングカードやキャラクターグッズは、単なる中古品ではありません。価格が変動し、希少性があり、海外需要があり、鑑定や真贋確認が重要です。メルカリは、フリマアプリからコレクター市場のプラットフォームへ広がる可能性を持っています。
競合他社との違い
メルカリを競合と比べると、CtoCフリマに特化した強さが見えてきます。
Yahoo!オークションやYahoo!フリマは、長く個人間取引を支えてきた競合です。Yahoo!オークションは高単価商品、コレクター商品、業者利用、オークション形式に強みがあります。メルカリは、スマホで簡単に出品できるフリマ体験、価格固定の分かりやすさ、日用品から推し活グッズまでの広さで成長してきました。近年はメルカリもオークション機能を拡充しており、エンタメ・ホビー領域では競争が近づいています。
楽天ラクマは、楽天経済圏との連携が強みです。楽天ポイント、楽天市場、楽天カードとの関係を活かせます。ただし、フリマアプリとしての利用者規模や出品量では、メルカリの存在感が大きいです。CtoCは買い手が多いほど売れやすく、売り手が多いほど商品が見つかりやすくなるため、ネットワーク効果が重要です。
Amazonや楽天市場とは、事業の性格が異なります。Amazonや楽天は、新品商品や事業者販売、物流、価格比較に強いECです。メルカリは、個人が持つ一点物、不要品、限定品、二次流通品に強いマーケットプレイスです。新品をすぐ買うならAmazon、ポイントや店舗比較なら楽天、個人間の掘り出し物や不要品売買ならメルカリという使い分けが起きます。
ZOZOや古着ECと比べると、メルカリは在庫を自社で持たず、個人の出品に依存します。ZOZO USEDのような事業者型リユースでは、品質管理や在庫管理を企業側が担います。メルカリは品質ばらつきのリスクがある一方、膨大な個人出品による商品量と価格の多様性があります。
米国では、eBay、Facebook Marketplace、Poshmark、Depop、OfferUpなどが競合です。eBayはオークションと越境取引、Poshmarkはファッション、Depopは若者向け古着、Facebook Marketplaceは地域取引に強みがあります。Mercari USは、これらの競合の中で、手軽な発送・購入体験と取引の安心感をどう差別化するかが課題です。
事業の現代での潮流
メルカリを取り巻く現代の潮流は、大きく五つあります。
第一に、リユース市場の拡大です。物価上昇、節約志向、環境意識、推し活、コレクター市場の拡大により、二次流通の重要性は高まっています。新品を買うだけでなく、不要になったものを売り、その売上で別の商品を買う行動が一般化しています。メルカリはこの循環消費の中心にいます。
第二に、エンタメ・ホビー商材の高成長です。トレーディングカード、キャラクターグッズ、フィギュア、ゲーム、スニーカーなどは、国内だけでなく海外にも需要があります。推し活やコレクション文化が広がるほど、希少品や限定品の二次流通は活発になります。メルカリが鑑定、オークション、越境取引を強化しているのは、この流れに合っています。
第三に、金融機能の組み込みです。ECと決済、与信、ポイント、カード、暗号資産は一体化しつつあります。メルカリは、売上金、購入履歴、取引評価、本人確認を持つため、独自の金融サービスを作りやすい立場にあります。メルカードやメルペイが伸びれば、マーケットプレイス以外の収益源になります。
第四に、AI活用です。CtoCマーケットプレイスでは、商品名、説明文、写真、カテゴリー、価格、状態がバラバラです。AIは、出品補助、価格提案、検索、レコメンド、不正検知、偽物対策、カスタマーサポート、翻訳、越境取引に大きく効きます。メルカリはAIを使って、出品と購入の摩擦を減らす方向へ進んでいます。
第五に、規制と安心・安全です。CtoC取引では、偽物、盗品、不正決済、マネーロンダリング、未成年者保護、個人情報、返品トラブルなどのリスクがあります。金融サービスを広げるほど、貸金、割賦、資金決済、暗号資産、本人確認、信用情報に関する規制も重要になります。メルカリは、便利さと安全性を同時に高めなければなりません。
強み
メルカリの最大の強みは、日本国内における圧倒的なCtoCマーケットプレイスの認知と利用習慣です。
フリマアプリで売る、という行動を一般化したことは非常に大きいです。不要品が出たときに、まずメルカリで売れるか考える人が多い。欲しい商品が新品で見つからないときに、メルカリで探す人が多い。この習慣そのものが、競争力です。買い手が多いから売り手が集まり、売り手が多いから買い手が集まるネットワーク効果が働きます。
二つ目の強みは、取引データです。メルカリには、商品カテゴリー、価格、売れるまでの時間、購入履歴、出品履歴、評価、発送方法、トラブル情報など、大量のCtoC取引データがあります。これは検索、レコメンド、価格提案、AI与信、不正検知に活かせます。CtoCデータは、BtoCのECとは違う複雑さがあり、メルカリならではの資産です。
三つ目の強みは、Fintechとの相性です。メルカリでは、売上金が発生します。この売上金をメルペイで使い、メルカードで還元し、あと払い・スマートマネーへ広げられます。普通のフリマアプリなら取引手数料で終わるところを、金融サービスへつなげられる点が大きな強みです。
四つ目の強みは、安心・安全への投資です。匿名配送、エスクロー型決済、AI不正検知、鑑定、匿名返品、本人確認は、CtoC取引の不安を下げます。安心して売り買いできる場でなければ、ユーザーは高単価商品を取引しません。メルカリが高単価カテゴリーを伸ばすには、この信頼設計が重要です。
五つ目の強みは、越境取引の余地です。日本のエンタメ・ホビー商材には海外需要があります。トレーディングカード、アニメグッズ、ゲーム、フィギュア、ブランド品、古着などを海外ユーザーに届けられれば、国内出品者の販売機会が広がります。メルカリは、日本の家庭やコレクターが持つ商品を世界需要へつなぐプラットフォームになれる可能性があります。
弱み・リスク
一方で、メルカリには明確なリスクもあります。
第一に、国内マーケットプレイスの成熟です。日本でメルカリを知らない人は少なく、利用者数の急拡大だけで成長する段階ではなくなっています。今後は、既存ユーザーの利用頻度、出品頻度、購入単価、カテゴリー拡大で成長する必要があります。成熟市場で成長率を維持するのは簡単ではありません。
第二に、安心・安全コストです。CtoC取引では、偽物、説明違い、返品、配送トラブル、アカウント不正、盗品、詐欺などのリスクがあります。信頼を維持するためには、システム投資、人員、AI、鑑定、補償、本人確認が必要です。取引を増やすほど、安全対策コストも増える可能性があります。
第三に、Fintechの信用リスクです。メルカード、あと払い、定額払い、分割払い、スマートマネーを伸ばすほど、債権残高が増えます。回収率が高い間は収益機会になりますが、景気悪化、雇用環境の変化、金利上昇、与信モデルの誤りがあれば、貸倒リスクが高まります。金融は、マーケットプレイスよりも規制とリスク管理が重い事業です。
第四に、米国事業の競争です。米国のリユース・CtoC市場は大きいですが、競合も強いです。メルカリが日本で成功した体験が、そのまま米国で通用するとは限りません。送料、返品、州ごとの商習慣、競合サービスの強さ、ブランド認知、マーケティング費が課題になります。
第五に、成長投資による利益変動です。メルカリは、マーケティング、越境取引、安心・安全、AI、Fintech、USに投資します。投資を抑えれば短期利益は出やすくなりますが、長期成長は鈍る可能性があります。逆に投資を増やせば、短期利益は下がります。投資家は、利益率の一時的な上下だけでなく、投資の中身を見る必要があります。
数字で見るメルカリ
数字で見ると、メルカリは国内マーケットプレイスの利益力を維持しながら、FintechとUSの成長を取り込もうとしている段階です。
2026年6月期第3四半期の連結売上収益は610億円、コア営業利益は146億円でした。売上収益は前年同期比22%増、コア営業利益は66%増となり、四半期として高い成長を示しました。通期業績予想も、売上収益2,200億円以上、コア営業利益400億円以上へ上方修正されています。
Marketplaceでは、GMVが3,399億円、MAUが2,384万人、売上収益が349億円となりました。GMVは前年同期比16%増、売上収益は20%増で、国内フリマアプリが成熟しているにもかかわらず高い成長を維持しています。エンタメ・ホビー領域が好調で、トレーディングカードやキャラクターグッズを中心に取引が伸びています。
Marketplaceのコア営業利益は141億円、コア営業利益率は40%でした。ただし、この利益率はマーケティングやキャンペーンのタイミングによって四半期ごとに変動します。第3四半期は大型投資が少なかったため高い利益率になっており、第4四半期には成長投資の強化で低下が見込まれています。
Fintechでは、売上収益が167億円、コア営業利益が27億円でした。債権残高は3,281億円、回収率は99.4%とされています。メルカード、あと払い、分割払い、スマートマネーなどが伸びていることは、金融事業の収益化が進んでいることを示します。一方で、債権残高が増えるほどリスク管理の重要性も高まります。
USでは、GMVが211百万ドル、MAUが435万人、売上収益が106億円、コア営業利益が2億円でした。GMVは前年同期比18%増となり、二桁成長を継続しています。米国事業は長く赤字が課題でしたが、現在は投資規律を保ちながら成長を目指す段階にあります。
メルカリを見るときは、次の数字を継続的に確認する必要があります。
MarketplaceのGMV、MAU、AOV、購入頻度
エンタメ・ホビーなど成長カテゴリーの比率
コア営業利益率とマーケティング費
Fintechの債権残高、回収率、貸倒関連費用
メルカード会員数と利用頻度
USのGMV、MAU、損益
越境取引の取扱高と地域展開
AI施策による出品・購入体験の改善
単に売上収益が増えているかだけではなく、どの事業が利益を出し、どの事業が投資段階にあるのかを見ることが重要です。
今後の注目ポイント
今後の注目ポイントは、第一に国内Marketplaceの成長持続です。国内フリマアプリはすでに広く普及しています。その中で、エンタメ・ホビー、ファッション、ブランド品、スニーカー、家電、ベビー用品などのカテゴリーをどこまで伸ばせるかが重要です。AI検索、レコメンド、オークション機能、鑑定、匿名返品、配送改善が成長の鍵になります。
第二に、越境取引です。日本の商品は、海外のアニメ・ゲーム・トレカ・ファッションファンにとって魅力があります。国内出品を海外需要につなげられれば、国内だけでは伸びにくいGMVを押し上げられます。駿河屋との連携や自社越境取引の拡大が、どれだけ実際の取引増につながるかが注目です。
第三に、Fintechの成長とリスク管理です。メルカード、メルペイ、あと払い、スマートマネーは、メルカリの利用体験と相性があります。売って得たお金を使い、買い物で還元を受け、必要に応じて与信を使う。この循環が強まれば、メルカリのユーザー定着にもつながります。ただし、与信拡大は貸倒リスクと隣り合わせです。
第四に、US事業の黒字定着です。米国事業は過去に苦戦してきましたが、GMVが成長し、損益が改善している点は注目されます。重要なのは、一時的なキャンペーンで伸ばすのではなく、プロダクト体験とカテゴリー戦略で継続的に成長できるかです。
第五に、AI活用です。メルカリのようなCtoCプラットフォームでは、AIの効果が大きいです。写真から商品名やカテゴリーを推定する、適正価格を提案する、検索精度を上げる、偽物や不正を検知する、問い合わせ対応を効率化する、越境取引で翻訳する。AIによって出品と購入の摩擦を減らせれば、GMV成長に直接効きます。
投資対象として
投資対象としてのメルカリは、国内CtoCマーケットプレイスの高い認知と、Fintech・越境・USの成長余地をどう評価するかが重要な会社です。
魅力は、国内に強いネットワーク効果を持っていることです。メルカリには多くの売り手と買い手が集まり、商品量と利用習慣が競争力になっています。CtoCマーケットプレイスは、一度使われる習慣ができると簡単には崩れにくい面があります。さらに、金融サービスや越境取引が伸びれば、単なるフリマアプリ以上の収益源になります。
また、物理在庫を持たないマーケットプレイスであるため、成功すれば利益率が高くなりやすい構造があります。実際、国内Marketplaceは高いコア営業利益率を示しています。AI活用によって出品・検索・不正検知・CSを効率化できれば、さらに収益性を高める可能性もあります。
一方で、リスクもあります。国内市場は成熟し、成長率を維持するにはカテゴリー拡大や越境取引が必要です。Fintechは収益性が高まる可能性がある一方、貸倒リスクや規制対応が重くなります。米国事業は成長の余地が大きい反面、競争が激しく、再び投資負担が増える可能性もあります。
長期投資で見るなら、確認すべき点は三つです。まず、国内Marketplaceが成熟しながらもGMVを伸ばし続けられるか。次に、Fintechが債権残高を増やしながら高い回収率を維持できるか。そして、USと越境取引が一時的な改善ではなく、継続的な成長事業になれるかです。
就活生にとっては、メルカリは「フリマアプリを作る会社」というだけではありません。プロダクトマネジメント、ソフトウェア開発、機械学習、検索、レコメンド、決済、与信、セキュリティ、不正検知、CS、物流、越境取引、金融規制、データ分析など、多くの専門性が関わる会社です。ユーザー体験を細かく改善し続けたい人、マーケットプレイスやFintechの仕組みに興味がある人に向いた企業です。
まとめ
メルカリは、日本最大級のフリマアプリを起点に、決済、与信、越境取引、米国事業、暗号資産へ広げるインターネット・EC企業です。家庭に眠っているモノを必要な人へ届けるCtoCマーケットプレイスとして成長し、今では売上金や信用を活用したFintech事業も重要な柱になっています。
この会社の本質は、中古品を売るアプリというだけではありません。個人が売り手にも買い手にもなり、不要品が価値に変わり、その価値が決済や金融サービスへ循環する仕組みを作っている会社です。トレーディングカードやキャラクターグッズなどのエンタメ・ホビー領域、越境取引、AI検索・レコメンドの強化によって、フリマアプリの枠を超えた成長余地があります。
一方で、国内市場の成熟、安心・安全コスト、Fintechの信用リスク、米国事業の競争、成長投資による利益変動には注意が必要です。メルカリを評価するには、売上収益だけでなく、GMV、MAU、コア営業利益率、債権残高、回収率、US事業の損益、越境取引の進捗を分けて見る必要があります。
メルカリ 企業研究では、「フリマアプリの会社」という見方で終わらせず、「個人間取引を基盤に、決済・与信・越境・AIへ広げる循環型マーケットプレイス企業」として見ることが重要です。投資家にとっては、国内基盤の持続成長とFintech・海外の収益化が注目点です。就活生にとっては、ユーザーの小さな不便をテクノロジーで解消し、信頼できる取引と価値の循環を作る会社として理解することが、メルカリを見る近道になります。