ライオンを一言でいうと

ライオンを一言でいうと、「歯みがき、洗濯、手洗い、食器洗い、住まいの清掃、一般用医薬品を通じて、生活習慣そのものに入り込む日用品メーカー」です。

ライオンの商品は、日常生活の中に深く入り込んでいます。クリニカ、システマ、NONIO、デントヘルス、キレイキレイ、NANOX one、ソフラン、CHARMY Magica、ルックプラス、バファリン、スマイル、ペットキッス、ニオイをとる砂など、家庭で繰り返し使われる商品が多い会社です。食品や化粧品と違い、日用品は「毎日使う」「なくなったら買い足す」「習慣として続く」という性質が強くあります。

同社の特徴は、単に洗剤や歯みがきを売っているだけではないことです。歯をみがく、手を洗う、洗濯をする、食器を洗う、掃除をする、薬を飲む、ペットの世話をする。こうした行動は、生活の中の習慣です。ライオンは、商品を通じてその習慣を作り、改善し、継続してもらう会社だと見ると分かりやすいです。

特に重要なのがオーラルケアです。ライオンの歴史は歯みがきと深く結びついており、現在もオーラルヘルスケアは同社の中心領域です。歯みがき粉や歯ブラシは価格帯が幅広く、虫歯予防、歯周病ケア、口臭ケア、美白、知覚過敏、子ども向け、シニア向けなど、年齢や悩みによって商品を細かく分けられます。ここにライオンの研究開発とブランド展開の強みがあります。

投資家にとっては、ライオンは生活必需品の安定需要を持つ一方、原材料費、競争、価格改定、海外展開、収益構造改革を見る会社です。就活生にとっては、身近な商品を扱いながら、研究、商品開発、品質保証、生産技術、ブランドマーケティング、海外事業、BtoB化学品まで関われる会社です。

なぜ今ライオンを見るのか

今ライオンを見る意味は、日用品メーカーが「安定しているだけの会社」ではなく、価格改定、海外成長、高付加価値化、サステナビリティへの対応で差が出る時代になっているからです。

日用品は景気が悪くても一定の需要があります。歯みがき粉、洗剤、ハンドソープ、食器用洗剤、柔軟剤、掃除用品、一般用医薬品は、生活から簡単には消えません。そのため、ライオンのような企業は安定性があると見られやすいです。しかし、安定需要があるからといって、利益が自動的に増えるわけではありません。

近年の日用品業界では、原材料費、包材費、物流費、人件費が上がっています。洗剤や歯みがき粉には、界面活性剤、香料、研磨剤、薬用成分、樹脂容器、紙箱、フィルム、アルミ包装などが使われます。原油価格や為替の影響を受ける原料も多く、コスト上昇を価格に転嫁できなければ利益は圧迫されます。

また、ドラッグストアやスーパーでは、価格競争も起きます。消費者は日用品を頻繁に買うため、価格に敏感です。大手メーカーの商品だけでなく、小売のプライベートブランドも競合します。そのため、ライオンは単に値上げするだけでなく、「高くても選ばれる理由」を作る必要があります。クリニカ、システマ、NONIO、NANOX one、キレイキレイのように、機能や習慣価値を明確に伝えることが重要です。

海外事業も大きなテーマです。日本国内は人口減少が進み、歯みがきや洗剤の数量成長には限界があります。一方、東南アジアを中心に、衛生意識、所得水準、都市化、ドラッグストアや近代流通の拡大が進む地域では、日用品の成長余地があります。ライオンはタイ、マレーシア、中国、韓国、ベトナム、バングラデシュなどで事業を展開し、海外事業を重要な成長軸にしています。

2025年12月期のライオンは、売上高4,220億92百万円、事業利益307億60百万円、営業利益363億68百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益275億87百万円でした。売上高は前期比2.2%増、事業利益は16.8%増です。収益構造改革や高付加価値商品の展開が利益改善につながっています。2026年12月期第1四半期も、売上高992億円、事業利益60億15百万円と増収増益でした。

つまり、ライオンを見るときは、「生活必需品だから安定」というだけでは足りません。国内で利益率を高め、海外で成長し、原材料高を吸収し、生活習慣を変える商品を出せるかを見る必要があります。

成り立ち

ライオンの歴史は、1891年に小林富次郎商店が創業したことから始まります。社名の由来にもつながる代表的な商品が、1896年に発売された「獅子印ライオン歯磨」です。つまり、ライオンは最初から歯みがきと口腔衛生に深く関わってきた会社です。

当時の日本では、現代のように歯みがき習慣や虫歯予防の知識が一般的だったわけではありません。歯みがき粉を売ることは、商品を売るだけでなく、歯をみがく習慣を広げることでもありました。これは現在のライオンにもつながる考え方です。同社は商品を通じて生活習慣を作る会社です。

その後、ライオンは石けん、洗剤、歯ブラシ、家庭用品、医薬品へと事業を広げていきました。洗濯用石けん、台所用洗剤、住居用洗剤、柔軟剤、ハンドソープなど、生活の清潔に関わる商品を増やしていきます。高度成長期以降、日本の家庭に洗濯機、台所、浴室、トイレ、洗面所が整備される中で、清潔・衛生に関わる日用品市場は大きく広がりました。

オーラルケアでは、歯みがき粉から歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルリンス、口臭ケア、歯周病ケアへ広がりました。クリニカ、システマ、デントヘルス、NONIOなどは、単に歯を白くする商品ではなく、虫歯、歯周病、口臭、予防歯科というテーマに対応しています。ここには、生活者の健康意識の変化が反映されています。

ハンドソープでは、キレイキレイが重要です。手洗いは感染症予防や日常衛生に関わる習慣です。特に新型コロナ禍以降、手洗い習慣への意識は高まりました。キレイキレイは、泡ハンドソープや詰め替え商品を通じて、家庭だけでなく学校や職場にも広がっています。

ライオンの歴史は、歯みがき、洗濯、手洗い、掃除、薬という生活習慣を広げてきた歴史です。単なる日用品メーカーというより、生活者の清潔・健康行動を作ってきた会社だといえます。

事業内容

ライオンの事業は、大きく一般用消費財事業、産業用品事業、海外事業に分けて理解すると分かりやすいです。

一般用消費財事業は、主に日本国内で日用品と一般用医薬品を製造・販売する事業です。オーラルヘルスケア、ビューティケア、ファブリックケア、リビングケア、薬品、その他の分野があります。

オーラルヘルスケアでは、クリニカ、システマ、NONIO、デントヘルス、チェックアップ、DENT.などがあります。歯みがき粉、歯ブラシ、デンタルリンス、歯間ブラシ、歯科医院向け商品など、家庭用とプロフェッショナル向けの両方に関わります。虫歯予防、歯周病ケア、口臭ケア、予防歯科は、ライオンの中心テーマです。

ファブリックケアでは、NANOX one、ソフラン、ブライトSTRONGなどがあります。洗濯用洗剤は、汚れ落ち、消臭、抗菌、すすぎ回数、衣類へのやさしさ、詰め替えやすさが重要です。柔軟剤では、香り、肌ざわり、防臭、静電気防止などが価値になります。

リビングケアでは、CHARMY Magica、ルックプラス、キッチン用・浴室用・トイレ用洗剤などがあります。食器洗い、浴室掃除、トイレ掃除、キッチン清掃は、日常の家事負担と直結します。ライオンは、汚れを落とすだけでなく、家事の手間を減らす商品を出すことが重要です。

薬品分野では、バファリン、スマイル、ペアアクネなどがあります。日用品メーカーでありながら、一般用医薬品も扱う点がライオンの特徴です。解熱鎮痛薬、点眼薬、ニキビ治療薬などは、ドラッグストアで日用品と近い売り場に置かれます。生活者のセルフメディケーション需要に対応する事業です。

海外事業では、アジアを中心に日用品を展開しています。タイ、マレーシア、中国、韓国、ベトナム、バングラデシュなどが重要です。歯みがき、歯ブラシ、洗剤、ハンドソープなど、生活水準の向上や衛生意識の高まりとともに成長しやすい商品を扱っています。

産業用品事業では、油脂活性剤、導電性カーボン、業務用洗浄剤などを扱います。これは一般消費者には見えにくいBtoB事業ですが、洗剤・化学品の技術を活かした事業です。家庭用品だけでなく、産業向けの化学品を持つことが、ライオンの事業の幅を広げています。

収益構造

ライオンの収益構造は、国内一般用消費財事業を基盤に、海外事業を成長軸とし、産業用品事業が補完する形です。

2025年12月期の売上高は4,220億92百万円でした。外部顧客への売上高を見ると、一般用消費財事業が2,237億43百万円、海外事業が1,581億25百万円、産業用品事業が393億7百万円、その他が9億15百万円でした。売上構成では、一般用消費財事業が約53%、海外事業が約38%、産業用品事業が約9%です。

事業利益では、一般用消費財事業が216億34百万円、海外事業が81億80百万円、産業用品事業が28億98百万円でした。全社調整後の事業利益は307億60百万円です。つまり、国内一般用消費財が利益の中心でありつつ、海外事業も全社利益に大きく貢献しています。

一般用消費財事業の収益は、ブランド力と価格改定、高付加価値商品の比率で決まります。歯みがき粉や洗剤は日常的に買われる商品ですが、価格競争も激しい。高機能歯みがき粉、歯周病ケア、口臭ケア、濃縮洗剤、詰め替え商品、家事時短商品などで単価を上げられるかが重要です。

海外事業は、数量成長と地域別利益率が重要です。東南アジアでは、人口増加、所得向上、衛生意識の高まりが追い風になります。特にオーラルケアは、歯みがき習慣の浸透と中価格帯・高価格帯商品の拡大が成長余地になります。一方で、為替、現地競争、原材料費、広告宣伝費の影響も受けます。

産業用品事業は、売上規模は小さいものの、洗剤・化学品技術を活かしたBtoB事業です。油脂活性剤や導電性カーボン、業務用洗浄剤は、消費者向けブランドとは違う収益構造を持ちます。顧客企業の需要、原材料価格、設備稼働率が重要です。

2025年12月期の事業利益率は約7.3%です。日用品メーカーとしては改善が進んでいますが、海外大手や高収益消費財企業と比べると、さらに高める余地があります。ライオンは中期経営計画で収益力の強靭化を掲げており、国内の高付加価値化、海外成長、構造改革が利益率改善の鍵になります。

事業内容の特徴

ライオンの事業内容の特徴は、「日常的な行動を習慣化する商品が多いこと」です。

オーラルケアは典型です。歯みがき粉や歯ブラシは、1回買って終わる商品ではありません。毎日使い、消耗し、また買う商品です。さらに、虫歯予防、歯周病予防、口臭ケア、美白、知覚過敏、子ども向け、シニア向けと、生活者の悩みに合わせて商品を細分化できます。ここで重要なのは、単に歯みがき粉を売ることではなく、「予防歯科」という考え方を生活者に定着させることです。

洗剤も同じです。洗濯は日常の家事です。洗剤の価値は、汚れ落ちだけではありません。部屋干し臭を防ぐ、すすぎ回数を減らす、衣類を長持ちさせる、香りを整える、詰め替えの手間を減らす。こうした細かな不満を解決することで、消費者は少し高くても商品を選びます。

ハンドソープや住居用洗剤は、衛生意識と関わります。キレイキレイは、家庭や学校で手を洗う習慣と結びついています。ルックプラスやCHARMY Magicaは、掃除や食器洗いの面倒さを軽減する商品です。家事の負担を減らすことは、共働き世帯や高齢世帯にとって重要な価値です。

一般用医薬品を持つ点も特徴です。バファリンやスマイルは、日用品と同じドラッグストアで売られますが、医薬品としての品質・安全性・規制対応が求められます。ライオンは、日用品メーカーでありながら、セルフメディケーションにも関わる会社です。

さらに、海外での習慣づくりが重要です。日本では当たり前の歯みがき、手洗い、洗濯の習慣も、国によって商品選択や価格感、流通が異なります。ライオンは、現地の生活習慣に合わせて商品を展開する必要があります。日用品は文化に入り込む商品であるため、海外では単なる輸出ではなく、現地化が重要です。

競合他社との違い

ライオンの競合は、国内では花王、ユニ・チャーム、小林製薬、アース製薬、P&G、ユニリーバ、サンスター、ロート製薬などです。カテゴリーごとに競合が変わるため、ライオンの強みは一つの市場だけでは測れません。

最も大きな比較対象は花王です。花王は、洗剤、住居用洗剤、スキンケア、ヘアケア、化粧品、ケミカルを持つ総合消費財企業です。ライオンも日用品と化学品を持ちますが、オーラルケアでの存在感が非常に強い点が違います。花王は洗剤やスキンケア、ケミカルを含む総合力、ライオンはオーラルケアと生活衛生習慣づくりに強みがある会社と見ると分かりやすいです。

サンスターとの比較では、オーラルケアが重要です。サンスターはG・U・M、Ora2などを持ち、歯科領域に強い会社です。ライオンはクリニカ、システマ、NONIO、デントヘルスなどを持ち、家庭用だけでなく歯科医院向け商品も展開します。両社とも予防歯科の流れに乗る企業ですが、ライオンは洗剤・医薬品・海外事業まで広い事業を持つ点が違います。

P&Gやユニリーバとは、洗剤や柔軟剤、ヘアケアで競合します。P&Gはアリエール、ボールド、レノア、パンテーンなど、世界的なブランドを持つ外資系企業です。ライオンは国内生活者の家事習慣やドラッグストア・量販店での販売に強く、NANOX oneやソフランで差別化します。グローバル規模ではP&Gが大きいですが、日本の生活習慣に合わせた細かな商品設計ではライオンに強みがあります。

ユニ・チャームとの比較では、ユニ・チャームは紙おむつ、生理用品、ペットケアで強い会社です。ライオンもペット用品を持ちますが、主力はオーラルケア、洗剤、衛生用品、医薬品です。ユニ・チャームが吸収体技術とアジア展開に強い会社だとすれば、ライオンは口腔・洗浄・清潔習慣に強い会社です。

小林製薬との違いは、ニッチ商品開発力です。小林製薬は、明確な悩みに対して分かりやすい商品名で訴求する会社です。ライオンは、より大きなカテゴリーでブランドを育て、研究開発と生活習慣づくりを結びつける会社です。どちらもドラッグストアで競合しますが、ビジネスの作り方はかなり異なります。

事業の現代での潮流

ライオンを取り巻く潮流は、予防ヘルスケア、衛生意識、家事時短、原材料高、プラスチック削減、海外アジア成長です。

予防ヘルスケアは、ライオンにとって非常に重要です。歯科医療では、虫歯や歯周病になってから治療するのではなく、日常の歯みがきや定期検診で予防する考え方が広がっています。クリニカやシステマは、この予防歯科の流れと相性があります。高齢化が進むほど、口腔ケアは健康寿命や介護予防とも関係してきます。

衛生意識も重要です。キレイキレイのようなハンドソープ、除菌・抗菌関連商品、住居用洗剤は、感染症対策や清潔意識と結びついています。コロナ禍のような急激な需要増は一巡しても、手洗いや衛生習慣そのものは残ります。ライオンは、衛生を一時的なブームではなく、日常習慣として定着させることが重要です。

家事時短は、洗剤・掃除用品の大きなテーマです。共働き世帯が増え、家事にかける時間を減らしたい人が増えています。洗濯では、すすぎ回数、洗浄力、部屋干し臭対策、詰め替えやすさが重要です。食器洗いや風呂掃除では、こすらず落ちる、泡切れがよい、手荒れしにくいといった価値が求められます。

原材料高はリスクです。界面活性剤、香料、樹脂容器、紙、エネルギー、物流費、人件費が上がれば、利益が圧迫されます。日用品は価格競争が強いため、値上げには慎重さが必要です。高付加価値商品を伸ばし、価格に見合う機能を伝えることが重要になります。

環境対応も避けられません。詰め替え、容器軽量化、プラスチック削減、水使用量削減、濃縮洗剤、すすぎ回数削減など、日用品メーカーの環境対応は商品設計そのものに関わります。環境対応をコストだけでなく、消費者に選ばれる価値へ変えられるかが重要です。

海外アジア成長も大きなテーマです。東南アジアでは、歯みがき、洗剤、ハンドソープ、柔軟剤、ペット用品の需要が伸びる余地があります。ただし、現地メーカーやグローバル大手との競争、価格感度、流通網の違いに対応する必要があります。

強み

ライオンの強みは、第一にオーラルケアでの圧倒的な存在感です。クリニカ、システマ、NONIO、デントヘルスなど、年齢や悩みに応じたブランドを持っています。虫歯予防、歯周病ケア、口臭ケア、予防歯科の啓発と商品が結びついている点が強みです。

第二に、生活習慣に深く入り込む商品群です。歯みがき、洗濯、手洗い、掃除、食器洗い、薬、ペットケアは、いずれも繰り返し使われる商品です。景気変動に左右されにくく、リピート購入されやすい。これは日用品メーカーとしての安定性につながります。

第三に、ドラッグストア・量販店でのブランド力です。ライオンの商品は、日用品売り場で棚を確保しやすい定番ブランドが多くあります。消費者にとって見慣れたブランドであることは、日用品では大きな強みです。新商品を出すときにも、既存ブランドの信頼を活かせます。

第四に、海外事業の成長基盤です。2025年12月期の海外事業売上高は1,581億円で、全体の約38%を占めています。タイやマレーシアを中心に、オーラルケアや日用品を展開しており、今後の成長余地があります。ベトナムの持分法適用関連会社の子会社化や、バングラデシュでの工場整備も、アジア成長への布石です。

第五に、産業用品を含む化学技術です。油脂活性剤、導電性カーボン、業務用洗浄剤など、消費者向けでは見えにくい事業も持っています。洗浄、界面制御、化学品に関する技術は、家庭用洗剤や産業用途の両方に活かせます。

弱み・リスク

ライオンのリスクで最も大きいのは、国内日用品市場の成熟です。歯みがき粉や洗剤は安定需要がありますが、日本の人口が増えない中で数量成長は難しくなります。高付加価値化や海外成長が進まなければ、売上と利益の伸びは限定的になります。

第二に、価格競争です。日用品はドラッグストア、スーパー、ホームセンター、ECで価格比較されやすい商品です。プライベートブランドも増えています。消費者が価格を重視すれば、メーカー品の利益率は下がります。ライオンは、機能価値やブランド価値を伝えなければなりません。

第三に、原材料費・物流費の上昇です。界面活性剤、香料、薬用成分、容器、包材、エネルギー、物流費、人件費が上がると、利益は圧迫されます。価格転嫁が進んでも、競合や小売との交渉が必要です。日用品は生活必需品であるため、値上げへの消費者反応も重要です。

第四に、海外事業の為替・競争リスクです。海外事業は成長源ですが、為替変動、現地競争、政治・経済リスク、原材料高の影響を受けます。東南アジアではグローバル大手や現地メーカーが強く、価格帯や販売チャネルを現地化する必要があります。

第五に、ブランドの陳腐化リスクです。クリニカやキレイキレイのような強いブランドも、消費者の悩みや生活習慣が変われば刷新が必要です。若年層、シニア、共働き世帯、単身世帯、ペット世帯など、生活者の変化に合わせて商品を変え続けなければなりません。

数字で見るライオン

ライオンを見るうえで、まず確認したいのは売上高と事業利益です。2025年12月期の売上高は4,220億92百万円、事業利益は307億60百万円、営業利益は363億68百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は275億87百万円でした。売上高は前期比2.2%増、事業利益は16.8%増、営業利益は28.1%増、当期利益は30.1%増です。

事業利益率は約7.3%です。日用品メーカーとしては改善が進んでいますが、さらに高収益化を目指す余地があります。2025年は、国内で高付加価値商品を投入し、調理関連品ブランド「リード」を譲渡するなど、収益構造改革を進めたことが利益改善につながりました。

セグメント別の外部売上高を見ると、一般用消費財事業が2,237億43百万円、海外事業が1,581億25百万円、産業用品事業が393億7百万円、その他が9億15百万円でした。一般用消費財事業が約53%、海外事業が約38%で、この二つが大きな柱です。

事業利益では、一般用消費財事業が216億34百万円、海外事業が81億80百万円、産業用品事業が28億98百万円でした。国内一般用消費財が利益の中心ですが、海外事業も重要な利益源になっています。海外事業の利益率を高められるかが、今後の成長に大きく関わります。

2026年12月期第1四半期では、売上高992億円、事業利益60億15百万円でした。売上高は前年同期比5.3%増、事業利益は13.8%増です。一般用消費財、産業用品、海外事業がそれぞれ伸び、収益改善が続いています。

投資家が見るべき指標は、売上高だけではありません。事業利益率、一般用消費財事業の利益、海外事業の売上・利益、オーラルケアの成長、ファブリックケアの採算、原材料費の影響、価格改定効果、営業キャッシュフロー、ROIC、株主還元を確認する必要があります。

今後の注目ポイント

今後の注目ポイントは、まずオーラルケアの高付加価値化です。虫歯予防、歯周病ケア、口臭ケア、ホワイトニング、シニア向け、子ども向け、歯科医院向けなど、オーラルケアは細分化が進みます。クリニカ、システマ、NONIOをどのように伸ばすかが重要です。

第二に、海外事業の成長です。海外事業は売上の約4割に近づいており、もはや補助的な事業ではありません。タイ、マレーシア、中国、韓国に加え、ベトナムやバングラデシュなどで、オーラルケアと日用品を伸ばせるかが焦点です。海外では、現地の生活習慣に合わせた商品と価格が必要です。

第三に、ファブリックケアとリビングケアの収益改善です。NANOX one、ソフラン、CHARMY Magica、ルックプラスなどは、生活者の家事負担を減らす商品です。価格競争が強い市場ですが、時短、消臭、抗菌、環境対応を価値にできれば利益率を高められます。

第四に、一般用医薬品です。バファリンやスマイルは、ドラッグストアで長く売られてきたブランドです。高齢化やセルフメディケーションの流れを取り込めるかが重要です。一方で、医薬品は規制や品質管理が厳しく、広告表現にも制約があります。

第五に、環境対応と収益性の両立です。濃縮洗剤、詰め替え容器、プラスチック削減、すすぎ回数削減、水使用量削減は、サステナビリティと生活者価値の両方に関わります。環境対応をコストで終わらせず、選ばれる商品価値にできるかが重要です。

投資対象として

投資対象としてのライオンは、「生活必需品の安定需要」と「海外・高付加価値化による成長余地」を併せ持つ会社です。

魅力は、オーラルケアを中心とした強いブランドです。クリニカ、システマ、NONIO、キレイキレイ、NANOX one、ソフラン、バファリンなど、日常生活に定着した商品が多くあります。リピート購入されやすく、景気が悪くても一定の需要が見込めることは大きな強みです。

また、海外事業の比率が高まっていることも魅力です。国内市場が成熟する中で、アジアを中心に日用品需要を取り込めれば、長期的な成長余地があります。特にオーラルケアは、生活習慣の浸透と所得向上に伴って伸びやすい領域です。

一方で、注意点もあります。国内日用品市場は競争が激しく、プライベートブランドや外資系大手との競争があります。原材料費や物流費が上がれば利益は圧迫されます。海外事業も為替や現地競争の影響を受けます。生活必需品だから安心というだけではなく、利益率をどれだけ高められるかを見る必要があります。

株価を見る際には、PERやPBRだけでなく、事業利益率、一般用消費財事業の利益、海外事業の成長、オーラルケアの市場シェア、価格改定効果、原材料費、営業キャッシュフロー、設備投資、配当を確認したいところです。ライオンは派手な成長株というより、生活習慣に根ざした安定性と海外成長を両方見る銘柄です。

就活生にとっては、ライオンは身近な商品を扱う会社でありながら、研究開発や品質保証の重要性が高い会社です。歯みがき粉や洗剤は簡単な商品に見えますが、実際には成分、処方、容器、香り、泡立ち、使用感、法規制、安全性、環境対応まで細かく設計されています。生活者の行動を変える商品を作りたい人に向いています。

まとめ

ライオンは、オーラルケア、洗剤、ハンドソープ、住居用洗剤、一般用医薬品、ペット用品、産業用品を展開する日用品メーカーです。1891年創業、1896年の獅子印ライオン歯磨を起点に、歯みがき、洗濯、手洗い、掃除、薬という生活習慣に深く関わってきました。

同社の強みは、オーラルケアでの存在感、日常習慣に入り込む商品群、ドラッグストア・量販店でのブランド力、海外アジア事業、化学技術を活かした産業用品です。特に、歯みがき習慣や予防歯科に関わるオーラルケアは、ライオンらしい中心領域です。

一方で、リスクもあります。国内市場の成熟、価格競争、原材料費・物流費の上昇、海外事業の為替・競争リスク、ブランドの陳腐化です。日用品は安定していますが、利益を伸ばすには高付加価値化と構造改革が必要です。

個人投資家にとっては、ライオンは「生活必需品の安定需要を持ちながら、海外と高付加価値化で利益成長を狙う会社」です。就活生にとっては、身近な商品を通じて、人々の健康・清潔・快適な生活習慣を支える会社です。ライオンの企業研究では、「歯みがきや洗剤の会社」という表面的な理解にとどまらず、「生活習慣を作り、改善し、国内外で清潔と健康を支える日用品メーカー」として見ることが大切です。