コーセーを一言でいうと
コーセーを一言でいうと、「コスメデコルテ、雪肌精、ONE BY KOSÉ、アルビオン、ジルスチュアート、アディクション、タルトなどを展開し、高付加価値化と海外成長に挑む化粧品メーカー」です。
コーセーは、資生堂と並んで日本を代表する化粧品企業の一つです。ドラッグストアやバラエティショップで見かけるヴィセ、ファシオ、メイクキープミスト、ネイルホリック、ソフティモ、サンカット、クリアターンのような身近な商品から、百貨店・専門店で販売されるコスメデコルテ、アルビオン、エレガンス、アディクション、ジルスチュアート、ONE BY KOSÉ、雪肌精まで、価格帯と販売チャネルの幅が広い会社です。
ただし、コーセーを単なる「化粧品の会社」と見るだけでは不十分です。同社の特徴は、化粧品事業とコスメタリー事業を分けて持ち、さらに北米のタルト、タイのパンピューリのような海外ブランドも取り込んでいることです。高価格帯のスキンケア・メイクアップでブランド価値を高めながら、セルフ販売型の商品で日常需要も取る。国内で得た収益を、アジア・北米など海外成長へつなげようとしている会社です。
投資家にとって重要なのは、コーセーが「国内化粧品の安定企業」なのか、「中国・北米・海外ブランドの成長企業」なのかという見方です。直近では国内事業やコスメデコルテは堅調ですが、中国本土、免税、北米のタルト、マーケティング投資、アルビオンやコスメポートの反動減など、業績を揺らす要因もあります。売上高だけでなく、どのブランドが利益を出し、どの地域に投資しているのかを見る必要があります。
就活生にとっては、コーセーは商品企画や広告の華やかさだけでなく、研究開発、処方設計、品質保証、ブランド戦略、海外マーケティング、店頭接客、EC、サプライチェーン、持株会社化後のグループ経営まで関われる企業です。化粧品が好きという入口だけでなく、「ブランドを長く育てる仕事」に関心がある人に向いています。
なぜ今コーセーを見るのか
今コーセーを見る意味は、化粧品市場が「中国・インバウンド頼みの成長」から、「国内基盤の再強化と海外ブランドの選別」へ変わっているからです。
日本の化粧品会社は、長く中国市場と訪日外国人需要の恩恵を受けてきました。日本製化粧品は品質や安全性のイメージが強く、雪肌精、コスメデコルテ、アルビオンなどは中国人消費者にも知られていました。百貨店、空港免税、越境EC、国内ドラッグストアのインバウンド需要は、化粧品会社の成長を支えてきました。
しかし、中国市場は以前ほど単純ではありません。不動産不況や消費マインドの低下、中国国産ブランドの台頭、価格競争、免税チャネルの在庫調整、訪日中国人消費の変化により、日本の化粧品会社は苦戦しやすくなっています。コーセーも、中国本土や免税チャネルへの対応を進めており、出荷コントロールや構造改革が重要になっています。
一方で、日本国内の化粧品市場は底堅く推移しています。マスク生活の反動が一巡しても、メイクアップやスキンケアへの需要は残っています。特に、コスメデコルテのような高価格帯ブランド、ONE BY KOSÉのような機能訴求ブランド、メイクキープミストのような分かりやすい課題解決型商品は、国内で強みを発揮しやすい領域です。
2025年12月期のコーセーは、売上高3,301億93百万円、営業利益184億67百万円、親会社株主に帰属する当期純利益151億14百万円でした。売上高は前期比2.3%増、営業利益は6.3%増となり、全体としては増収増益でした。ただし、営業利益率は5.6%で、2030年に営業利益率12%以上を目指す同社にとっては、まだ収益性改善の途上です。
2026年12月期第1四半期は、売上高782億65百万円、営業利益10億30百万円と大幅減益でした。アルビオン事業やコーセーコスメポート事業の反動減、マーケティング費用の増加などが影響しました。通期では売上高3,500億円、営業利益200億円を見込んでおり、1四半期だけで判断せず、ブランド投資が下期以降の売上につながるかを見る必要があります。
つまり、今のコーセーは、国内ブランドの底堅さと海外成長の可能性を持ちながら、利益率と投資効率を問われている会社です。高付加価値戦略が本当に利益につながるのかを見ることが、コーセー企業研究の中心になります。
成り立ち
コーセーは、1946年に創業しました。戦後間もない時代に、「化粧品で人々に夢と希望を与え、明るい世の中をつくりたい」という思いから始まった会社です。現在のコーポレートメッセージである「美しい知恵 人へ、地球へ。」にも、化粧品を単なる商品ではなく、美しさと文化を届けるものとして捉える姿勢が表れています。
化粧品会社としてのコーセーの歴史で重要なのは、研究開発とブランドづくりを両輪にしてきたことです。化粧品は、肌に直接使う商品であり、品質と安全性が欠かせません。一方で、成分だけでなく、香り、使い心地、容器、広告、店頭での見せ方、ブランドの世界観も購買に大きく影響します。コーセーは、科学と感性の両方を組み合わせてブランドを育ててきました。
特に、雪肌精とコスメデコルテは、コーセーを理解するうえで欠かせません。雪肌精は、和漢植物や透明感のイメージと結びつき、日本だけでなくアジアでも認知されてきました。コスメデコルテは、より高価格帯のスキンケア・メイクアップブランドとして、百貨店や専門店で存在感を高めています。2025年には、コスメデコルテが日本で過去最高売上高を更新し、同社の高付加価値戦略を支える中心ブランドになっています。
また、アルビオンとの関係も独特です。アルビオンは独自の販売方法とブランド世界を持ち、エレガンス、イグニス、ポール&ジョー ボーテなどを展開しています。コーセーグループの中でも、アルビオンは独立性のある高付加価値ブランド群として位置づけられます。
近年では、北米のメイクアップブランド「タルト」を買収し、海外成長を狙いました。さらに、タイのスパ・ウェルネス系ブランドであるパンピューリを連結対象に加えるなど、海外ブランドの取り込みも進めています。2026年からは持株会社体制へ移行し、株式会社コーセーホールディングスとしてグループ経営を強化しています。これは、ブランドごとの個性を活かしながら、資本配分やグループシナジーを高めるための変化です。
事業内容
コーセーの事業は、大きく化粧品事業、コスメタリー事業、その他事業に分けて見ると分かりやすいです。
化粧品事業は、同社の中核です。コスメデコルテ、雪肌精、エスプリーク、ルシェリ、ONE BY KOSÉ、プレディア、インフィニティ、ジルスチュアート、アディクション、アルビオン、タルトなどが含まれます。百貨店、化粧品専門店、ドラッグストア、バラエティショップ、EC、海外店舗など、ブランドによって販売チャネルは異なります。
コスメデコルテは、コーセーの高付加価値戦略を代表するブランドです。リポソーム アドバンスト リペアセラムをはじめとしたスキンケア、AQシリーズ、メイクアップ商品などを展開し、百貨店・専門店でのカウンセリング販売と相性がよいブランドです。価格帯が高く、ブランド価値を維持できれば収益性に貢献します。
雪肌精は、透明感や和漢植物のイメージを持つブランドです。日本国内だけでなく、アジア展開でも重要なブランドです。近年はブライトニングシリーズが伸びる一方、クラシックシリーズの減収や一部シリーズの販売終了もあり、ブランド刷新が課題です。長寿ブランドをどう現代化するかが問われています。
ONE BY KOSÉは、シワ改善、美白、保湿など、機能訴求型のブランドです。消費者の肌悩みに対して、分かりやすい効果価値を提示しやすい点が特徴です。化粧品市場では、感性だけでなく、機能とエビデンスを分かりやすく伝えることが重要になっています。
コスメタリー事業は、より日常的なセルフ販売型の商品群です。ヴィセ、ファシオ、メイクキープミスト、ネイルホリック、ソフティモ、サンカット、クリアターン、スティーブンノル ニューヨークなどが含まれます。ドラッグストア、量販店、バラエティショップ、ECで販売される商品が多く、価格帯は比較的手に取りやすい領域です。
その他事業には、アメニティ製品や不動産賃貸などが含まれます。規模は大きくありませんが、2025年12月期にはアメニティ事業の増収により増益となりました。
収益構造
コーセーの収益構造は、高価格帯化粧品のブランド利益、セルフ販売型商品の数量販売、海外ブランドの成長、マーケティング投資のバランスで成り立っています。
2025年12月期の売上高は3,301億93百万円、営業利益は184億67百万円でした。セグメント別では、化粧品事業の売上高が2,623億3百万円、営業利益が167億68百万円でした。コスメタリー事業の売上高は644億93百万円、営業利益は62億52百万円でした。その他事業の売上高は33億96百万円、営業利益は16億95百万円でした。
売上規模では化粧品事業が圧倒的な中心です。特に、コスメデコルテ、アルビオン、ONE BY KOSÉ、雪肌精、タルトのようなブランドが重要です。化粧品事業は、価格帯が高く、ブランド価値を維持できれば高い利益率を狙えます。ただし、広告宣伝、店頭販促、サンプル、美容部員、研究開発、EC投資も必要です。高付加価値ブランドほど、ブランド投資を止めることはできません。
コスメタリー事業は、ドラッグストアや量販店での販売が中心で、より価格競争を受けやすい事業です。ヴィセ、ファシオ、メイクキープミスト、ソフティモ、サンカット、クリアターンなどは、消費者に身近な商品です。2025年はメイクキープやソフティモが伸びた一方、セルフメイクアップブランドの減収が影響し、コスメタリー事業は減益となりました。
地域別に見ると、日本が2,153億33百万円で全体の65.2%を占めます。アジアは441億円、北米は618億48百万円、その他地域は89億10百万円でした。海外売上高比率は34.8%です。つまり、コーセーは海外展開を進めているものの、依然として日本市場の比重が大きい会社です。
北米ではタルトが重要です。タルトは米国発のメイクアップブランドで、ECや大手小売チャネルで展開しています。現地通貨ベースでは前期並みを維持したものの、北米オフラインチャネルは消費センチメントの減退により苦戦しました。海外ブランドは成長余地がある一方、現地消費、販促費、小売チャネルの影響を強く受けます。
事業内容の特徴
コーセーの事業内容の特徴は、「ブランドごとの個性を強く持たせながら、価格帯とチャネルを細かく分けていること」です。
化粧品は、同じスキンケアでも、百貨店でカウンセリングを受けて買う商品と、ドラッグストアで自分で選ぶ商品では、まったく違うビジネスになります。高価格帯ブランドでは、成分、効果感、容器、香り、店頭接客、ブランドの物語が重要です。セルフ販売型商品では、価格、パッケージ、口コミ、SNS、棚での見つけやすさが重要です。コーセーは、この複数の市場をブランドごとに分けて展開しています。
コスメデコルテは、高付加価値化の中心です。百貨店や専門店で、丁寧な接客とブランド体験を通じて販売する商品です。価格帯が高いため、単純な数量販売よりも、顧客単価、リピート率、ブランドロイヤルティが重要になります。
一方、ヴィセ、ファシオ、ネイルホリック、メイクキープミストなどは、若年層やセルフメイク市場に近い商品です。SNSや口コミ、店頭での分かりやすさが売上に直結します。メイクキープミストのように、メイク崩れを防ぐという課題が明確な商品は、消費者に価値が伝わりやすい代表例です。
コーセーコスメポートの商品群は、日常消費に近い領域です。ソフティモのクレンジング、サンカットの日焼け止め、クリアターンのシートマスク、スティーブンノルのヘアケアなどは、毎日の生活で使われます。ここでは、高級感よりも、機能、価格、使いやすさ、棚での存在感が重要です。
また、アルビオンやジルスチュアート、アディクションのように、コーセー本体とは異なるブランド世界を持つ事業もあります。特にアルビオンは、化粧品専門店でのカウンセリング販売に強く、コーセーグループ内でも独自の位置づけを持ちます。このブランドの多層性が、コーセーの魅力であり、同時に管理の難しさでもあります。
競合他社との違い
コーセーの最大の競合は資生堂です。資生堂は、SHISEIDO、クレ・ド・ポー ボーテ、NARS、エリクシール、アネッサ、マキアージュなどを持つグローバル化粧品企業です。コーセーは、コスメデコルテ、雪肌精、ONE BY KOSÉ、アルビオン、タルト、ジルスチュアート、アディクションを持ちます。どちらもプレステージ化粧品と国内ブランドに強みがありますが、資生堂の方がグローバル売上規模が大きく、コーセーは国内基盤とブランドごとの個性を強く持つ会社といえます。
資生堂との違いをもう少し具体的に見ると、資生堂は日本発の総合ビューティー企業として、スキンケア、メイク、フレグランス、グローバルブランドの再構築を進めています。コーセーは、コスメデコルテの高付加価値化、アルビオンの専門店チャネル、タルトの北米展開、コスメポートの日常領域を組み合わせる企業です。資生堂が世界大手との競争で規模を問われる会社だとすれば、コーセーは「選ばれるブランドの密度」と「国内収益基盤の強さ」が問われる会社です。
ポーラ・オルビスホールディングスとの違いは、販売モデルです。ポーラは訪問販売・エステ・カウンセリングに強く、オルビスは通販・ECに強い会社です。コーセーは、百貨店、専門店、ドラッグストア、バラエティショップ、EC、海外小売を幅広く使います。販売チャネルの幅広さではコーセーに特徴があります。
花王との違いは、化粧品専業性です。花王は、洗剤、日用品、ヘアケア、スキンケア、化粧品、ケミカルを持つ総合消費財企業です。コーセーは化粧品を中心にしており、ブランドの感性や美容提案により集中しています。安定性では花王、化粧品ブランドの専門性ではコーセーという比較になります。
海外では、ロレアル、エスティ ローダー、LVMH、アモーレパシフィック、中国ローカルブランドとも競合します。コーセーは世界大手と比べると規模は小さいですが、コスメデコルテやタルトのように、特定のブランドで存在感を出す戦い方が重要です。大規模な広告投資で勝つというより、ブランドの世界観と商品力で選ばれる必要があります。
事業の現代での潮流
コーセーを取り巻く潮流は、プレステージ化粧品の二極化、中国市場の変化、SNS・ECの影響、日常化粧品の機能化、海外ローカル化、原材料・人件費上昇です。
プレステージ化粧品では、強いブランドと弱いブランドの差が広がっています。消費者は高価格帯商品を買うとき、明確な効果感、信頼できる口コミ、ブランドの世界観、店頭体験を求めます。中途半端な価格帯の商品は、プチプラや海外ブランド、韓国・中国ブランドとの競争に巻き込まれやすくなります。コスメデコルテのようなブランドをどう高付加価値化するかが重要です。
中国市場は、以前より難しい市場になっています。中国国産ブランドが強くなり、消費者の価格感度も高まっています。免税チャネルでは、在庫調整や価格統制が重要です。コーセーは、中国本土での構造改革を進め、ECセールや現地需要への対応を強化していますが、中国市場が再び成長ドライバーになるには時間がかかる可能性があります。
SNSとECは、化粧品の売れ方を大きく変えています。若年層は、店頭で美容部員に聞くだけでなく、SNS、口コミ、動画、ライブコマース、レビューを見て商品を選びます。タルトのような北米ブランドは、ECとSNSの影響が大きい商品です。ヴィセやメイクキープミストのようなセルフ商品も、SNSで話題になるかどうかが売上に直結します。
日常化粧品の機能化も進んでいます。クレンジング、日焼け止め、シートマスク、ヘアケアは、価格だけでなく、機能や使い心地が問われます。ソフティモ、サンカット、クリアターン、スティーブンノルのような商品は、毎日使う日用品に近いですが、消費者は機能や成分をより細かく見るようになっています。
海外ローカル化も重要です。日本で成功した商品をそのまま海外に持っていくだけでは通用しません。肌質、気候、メイク文化、販売チャネル、価格感が違います。コーセーは、中長期ビジョンで「脱・自前による地域への最適化」を掲げ、現地起点のマーケティングやM&A・提携を進めようとしています。
強み
コーセーの強みは、第一に複数の強いブランドを持つことです。コスメデコルテ、雪肌精、ONE BY KOSÉ、アルビオン、ジルスチュアート、アディクション、ヴィセ、ソフティモ、サンカット、クリアターンなど、価格帯やチャネルの異なるブランドを持っています。一つのブランドだけに依存しない構造です。
第二に、高付加価値スキンケアへの展開力です。コスメデコルテやアルビオンは、単価が高く、顧客との関係も深いブランドです。高価格帯化粧品は景気や消費心理に左右されますが、ブランドロイヤルティを築ければ収益性を高めやすい領域です。
第三に、セルフ販売型商品の強さです。ヴィセ、ファシオ、メイクキープミスト、ネイルホリック、ソフティモ、サンカット、クリアターンは、ドラッグストアや量販店で選ばれる商品です。プレステージだけでなく、日常的な美容需要も取れる点は安定性につながります。
第四に、アルビオンやタルトのような個性あるグループブランドです。アルビオンは専門店チャネルと高付加価値ブランドに強く、タルトは北米でのメイクアップ・ECチャネルに強みがあります。コーセー本体だけでは届きにくい顧客層に接点を持てることは重要です。
第五に、財務の安定性です。2025年末時点で自己資本比率は72.2%と高く、有利子負債も限定的です。南アルプス工場など大型投資はありますが、財務基盤が比較的強いことは、ブランド投資や海外展開を続けるうえで支えになります。
弱み・リスク
コーセーのリスクでまず挙げられるのは、中国・免税市場の変動です。中国本土や免税チャネルは成長余地がありますが、消費低迷、価格競争、在庫調整、現地ブランドの台頭に左右されます。日本化粧品への信頼だけで伸びる時代ではなくなっています。
第二に、北米タルト事業の不安定さです。タルトは北米で重要なブランドですが、オフラインチャネルの弱さや消費センチメントの影響を受けています。ECが好調でも、オフライン小売の減少を完全に補えるとは限りません。北米化粧品市場は競争が激しく、SNSトレンドの移り変わりも速い市場です。
第三に、マーケティング投資の重さです。2026年12月期第1四半期は、マーケティングコストの増加も利益を圧迫しました。化粧品は広告宣伝やサンプル、店頭販促を減らせば短期利益は改善しますが、ブランドの勢いが落ちる可能性があります。投資効率を高めることが重要です。
第四に、国内市場の成熟です。日本の人口は減少し、化粧品市場も大きく数量成長する環境ではありません。国内では高付加価値化、インバウンド、EC、男性化粧品、シニア向け、機能性商品などで成長を作る必要があります。国内が安定基盤である一方、成長には限界があります。
第五に、ブランド管理の難しさです。コーセーは多くのブランドを持っていますが、ブランドが多いほど、投資配分が難しくなります。コスメデコルテ、雪肌精、アルビオン、タルト、ヴィセ、コスメポートのどこに資源を集中するかで、利益率が変わります。すべてを同じように伸ばすことはできません。
数字で見るコーセー
コーセーを見るうえで、まず確認したいのは売上高と営業利益です。2025年12月期の連結売上高は3,301億93百万円、営業利益は184億67百万円、経常利益は214億63百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は151億14百万円でした。売上高は前期比2.3%増、営業利益は6.3%増、当期純利益は101.2%増となりました。
営業利益率は5.6%です。化粧品会社としては、ブランド価値を考えればさらに高めたい水準です。同社は2030年をマイルストーンとして、売上高成長率CAGR5%以上、営業利益率12%以上、EBITDAマージン18%以上、ROIC10%以上を掲げています。現在はその目標に向けた構造改革と基盤再構築の段階です。
セグメント別では、化粧品事業の売上高は2,623億3百万円、営業利益は167億68百万円でした。コスメタリー事業の売上高は644億93百万円、営業利益は62億52百万円でした。その他事業の売上高は33億96百万円、営業利益は16億95百万円でした。化粧品事業が売上の中心であり、コスメタリー事業は日常需要を支える位置づけです。
地域別では、日本の売上高が2,153億33百万円、アジアが441億円、北米が618億48百万円、その他が89億10百万円でした。海外売上高比率は34.8%です。日本がまだ全体の約65%を占めており、国内事業の収益性は非常に重要です。一方で、アジアと北米をどう伸ばすかが中長期の成長ポイントになります。
2026年12月期第1四半期は、売上高782億65百万円、営業利益10億30百万円、経常利益23億58百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益4億26百万円でした。営業利益は前年同期比84.5%減と大幅減益でした。これは、アルビオン事業やコーセーコスメポート事業の反動減、タルト事業の減益、マーケティング投資増加が影響しました。
通期予想では、2026年12月期の売上高3,500億円、営業利益200億円、経常利益210億円、親会社株主に帰属する当期純利益121億円を見込んでいます。年間配当は普通配当140円に創業80周年記念配当10円を加え、150円を予定しています。
今後の注目ポイント
今後の注目ポイントは、まずコスメデコルテの成長です。コスメデコルテは、コーセーの高付加価値戦略を支える中心ブランドです。日本で過去最高売上を更新した勢いを、アジアや海外にも広げられるかが重要です。高価格帯スキンケアは利益率が高くなりやすいため、ブランド価値の維持が収益改善に直結します。
第二に、雪肌精の再成長です。雪肌精は長寿ブランドですが、クラシックシリーズの減収やブランド刷新の課題があります。ブライトニングシリーズの成長を維持しながら、若年層や海外市場に響くブランドへ再構築できるかが焦点です。
第三に、アルビオン事業です。アルビオンは、専門店チャネルと高付加価値ブランドで強みを持ちますが、2026年1四半期では減収・減益要因になりました。前期の反動やマーケティング投資を乗り越え、エクシアやエレガンスなどのブランドを伸ばせるかが重要です。
第四に、北米タルト事業です。タルトは、コーセーの海外成長を考えるうえで重要なブランドです。ECは強い一方、オフラインチャネルの弱さや米国消費の減速が課題です。北米でブランドを再加速できるか、利益を残せるかが投資家の注目点になります。
第五に、持株会社体制の効果です。2026年からコーセーは持株会社体制へ移行しました。ブランドごとの独自性を維持しながら、グループ全体で資本配分、投資、ガバナンス、シナジーを強められるかが重要です。南アルプス工場の稼働や情報システム投資も含め、将来の利益率改善につながるかを確認する必要があります。
投資対象として
投資対象としてのコーセーは、「国内の強い化粧品ブランド基盤」と「海外・高付加価値化による成長余地」を併せ持つ会社です。
魅力は、コスメデコルテ、雪肌精、ONE BY KOSÉ、アルビオン、ジルスチュアート、アディクション、ヴィセ、ソフティモ、タルトなど、価格帯とチャネルの異なるブランドを持つことです。プレステージからセルフ販売型商品まで展開できるため、国内市場での接点が広い会社です。
また、財務基盤が比較的安定していることも魅力です。自己資本比率が高く、成長投資や株主還元を行う余地があります。2026年には年間配当150円を予定し、自己株式取得も行っています。持株会社体制への移行により、資本効率を意識した経営が進むかも注目点です。
一方で、注意点もあります。営業利益率はまだ2030年目標に対して低く、中国・免税・北米の変動を受けます。マーケティング投資を増やすと短期利益が下がり、投資を減らすとブランド成長が鈍る可能性があります。化粧品会社は、ブランド価値と利益のバランスが難しい業界です。
株価を見る際には、PERやPBRだけでなく、営業利益率、化粧品事業の利益、コスメタリー事業の利益、コスメデコルテの成長、雪肌精の回復、アルビオンの動向、タルトの北米売上、海外売上高比率、ROIC、営業キャッシュフロー、マーケティング投資効率を見る必要があります。
就活生にとっては、コーセーは華やかなブランドの裏側で、非常に細かな商品設計とブランド管理を行う会社です。研究、処方、品質保証、パッケージ、広告、店頭販売、EC、海外マーケティング、グループ経営まで幅広い仕事があります。化粧品そのものが好きな人だけでなく、ブランドを長期的に育てることに関心がある人に向いています。
まとめ
コーセーは、1946年創業の日本を代表する化粧品メーカーです。コスメデコルテ、雪肌精、ONE BY KOSÉ、アルビオン、ジルスチュアート、アディクション、ヴィセ、ファシオ、ソフティモ、サンカット、クリアターン、タルトなど、多様なブランドを展開しています。
同社の強みは、高付加価値ブランドとセルフ販売型商品の両方を持つことです。コスメデコルテやアルビオンのような高価格帯ブランドで利益を狙い、コスメタリー事業で日常的な美容需要も取る。さらに、タルトやパンピューリなど海外ブランドを取り込み、グローバル成長にも挑戦しています。
一方で、リスクも明確です。中国・免税市場の変動、北米タルト事業の不安定さ、マーケティング投資の重さ、国内市場の成熟、ブランド管理の難しさがあります。2026年12月期第1四半期の大幅減益が示すように、化粧品会社はブランド投資や販売チャネルの変化で短期業績が大きく動くことがあります。
個人投資家にとっては、コーセーは「国内ブランド基盤を持ちながら、海外と高付加価値化で利益率向上を狙う会社」です。就活生にとっては、化粧品の感性と科学、ブランドと経営、国内と海外を同時に学べる会社です。コーセーの企業研究では、「雪肌精やコスメデコルテの会社」という表面的な理解にとどまらず、「多層的なブランドを使い分け、高付加価値化と海外成長に挑む化粧品メーカー」として見ることが大切です。