カネカを一言でいうと
カネカは、塩化ビニル樹脂や苛性ソーダなどの基礎化学品を出発点に、機能性樹脂、発泡素材、電子材料、太陽電池、医療機器、医薬品受託、食品、還元型コエンザイムQ10、生分解性バイオポリマーまで広げてきた多角化化学メーカーです。
一般消費者には、食品やヨーグルト、あるいは住宅用太陽電池の会社として見えるかもしれません。一方、製造業の現場から見ると、カネカは塩ビ、樹脂改質剤、変成シリコーンポリマー、発泡樹脂、ポリイミドフィルム、医療用カテーテル、血液浄化器など、素材と部材を通じてさまざまな産業を支える会社です。
カネカ 企業研究で重要なのは、同社を「総合化学メーカー」とだけ見ないことです。三菱ケミカルグループ、三井化学、住友化学のような巨大化学メーカーと比べると、カネカは石油化学の規模で勝負する会社ではありません。むしろ、塩ビや苛性ソーダといった基盤事業でキャッシュを作りながら、医療、サプリメント、電子材料、太陽電池、環境素材などの先端・高付加価値領域へ事業ポートフォリオを変えていく会社です。
同社が自ら掲げる事業領域は、Material Solutions、Quality of Life Solutions、Health Care Solutions、Nutrition Solutionsの4つです。これは、単に製品別に並べたものではなく、素材、くらし、医療、食という社会課題に対して、化学技術をどう使うかを示す切り口です。カネカの強みと課題は、この多角化を本当に利益に変えられるかにあります。
なぜ今カネカを見るのか
今カネカを見る理由は、同社の中で「基礎化学寄りの事業」から「医療・食品・電子材料・環境素材などの高付加価値事業」へ利益構成が移りつつあるからです。
2026年3月期のカネカは、売上高8,116億円、営業利益329億円、親会社株主に帰属する当期純利益310億円でした。売上高と当期純利益は過去最高となりましたが、営業利益は前年より減少しました。アジア市況の低迷、米国住宅・建築市場の需要低調、原料価格高騰などがMaterialやQuality of Lifeの一部に影響した一方、MedicalとSupplementが伸びて全体を支えました。
ここで大事なのは、売上が増えたかどうかだけではありません。カネカは、先端事業の営業利益構成比率を高めようとしています。Medical、Pharma、Supplement、E&I、PV、MSなどの先端領域を伸ばし、Vinyls、MOD、Foam、Fiber、Foodsといったコア事業で稼ぐ力を維持する。このポートフォリオ転換が同社の中心テーマです。
化学メーカーは、原料価格、為替、エネルギー費、景気、市況の影響を受けやすい業種です。塩ビや苛性ソーダのような基礎化学品は、需要と供給のバランスで利益が大きく変わります。一方、医療用カテーテルや血液浄化器、還元型Q10、ポリイミドフィルム、生分解性ポリマーなどは、顧客用途に深く入り込めれば価格競争から距離を取りやすくなります。
つまり、カネカを見るうえでは、売上規模よりも「何で利益を出しているか」が大事です。塩ビや発泡樹脂の市況だけで見ると景気敏感な化学株ですが、医療・食品・電子材料・環境素材まで含めると、より複雑な成長株の要素も持ちます。就活生にとっても、石油化学プラントだけでなく、医療、食品、電子材料、バイオ、太陽電池、環境素材に関われる会社として見る必要があります。
成り立ち
カネカは1949年、鐘淵化学工業として設立されました。設立時から塩化ビニル樹脂「カネビニール」を開発し、1950年には大阪工場で量産を開始しています。塩ビは、建材、電線被覆、パイプ、フィルム、シートなどに使われる代表的なプラスチックです。戦後の復興期から高度成長期にかけて、住宅、インフラ、家電、自動車が伸びる中で、塩ビは社会を支える素材として需要を広げました。
1950年代には、マーガリンやショートニングなどの食品分野、アクリル系合成繊維「カネカロン」などにも進出しました。つまりカネカは、創業初期から塩ビだけの会社ではなく、化学技術を食品や繊維へ応用する多角化の性格を持っていました。
その後、同社は樹脂改質剤、変成シリコーンポリマー、発泡樹脂、電子材料、太陽電池、医療機器、医薬品関連、機能性食品素材へと事業を広げます。たとえば、樹脂改質剤はプラスチックの強度や加工性を高めるために使われ、変成シリコーンポリマーは建築用シーリング材や接着剤に使われます。発泡樹脂は緩衝材、断熱材、定温輸送、車両部材などに使われます。
2004年には、社名を鐘淵化学工業からカネカへ変更しました。これは、塩ビや化学品の会社から、より広い価値を提供する会社へ変わる意思表示でもあります。現在のカネカは、創業以来の塩ビ・化学品を土台にしながら、医療、食品、電子材料、環境・エネルギーへ事業を広げている会社です。
この歴史を見ると、カネカは「ひとつの大ヒット製品に依存してきた会社」ではありません。塩ビ、食品、繊維、機能性樹脂、電子材料、医療、サプリメント、太陽電池、生分解性ポリマーというように、時代ごとの社会課題に合わせて事業を増やしてきた会社です。ただし、事業が広いぶん、どこに経営資源を集中するかが常に課題になります。
事業内容
カネカの事業は、4つのSolutions Unitで見ると分かりやすくなります。Material Solutions Unit、Quality of Life Solutions Unit、Health Care Solutions Unit、Nutrition Solutions Unitです。
Material Solutions Unitでは、塩化ビニル樹脂、苛性ソーダ、塩化ビニルモノマー、特殊塩ビ樹脂、樹脂改質剤、変成シリコーンポリマー、生分解性バイオポリマーなどを扱います。塩ビ・クロールアルカリは、化学メーカーとしての基盤です。MODは、樹脂の衝撃強度、加工性、耐熱性などを高める機能性ポリマーであり、自動車、建築、家電、情報機器などに使われます。MSポリマーは、シーリング材、接着剤、コーティング材に使われ、建築や工業用途で重要です。Green Planetは、海水中でも生分解する特徴を持つバイオポリマーとして、環境対応素材の成長候補です。
Quality of Life Solutions Unitでは、発泡樹脂、断熱材、電子材料、太陽電池、機能性繊維、有機EL照明などを扱います。発泡樹脂では、緩衝包装材、魚函、断熱材、バンパー芯材、定温輸送パッケージなどがあります。E&Iでは、超耐熱ポリイミドフィルム、高精度光学フィルム、透明導電性フィルムなどを展開します。情報通信機器やディスプレイ、自動車の高機能化が進むほど、こうした材料の重要性は増します。PVでは、住宅用や公共・産業用の太陽電池、さらに次世代型タンデム太陽電池の開発もテーマになっています。Fiberでは、カネカロンを中心にヘアプロダクト、エコファー、難燃資材向け繊維を展開します。
Health Care Solutions Unitでは、MedicalとPharmaを扱います。Medicalでは、血管内治療用カテーテル、血液浄化器、消化器用医療機器、検査機器、再生・細胞医療、遺伝子検査関連製品などがあります。血液浄化器やカテーテルは、同社の成長を牽引している重要事業です。Pharmaでは、低分子医薬API・中間体、バイオ医薬関連、抗体医薬精製用アフィニティー担体、経皮吸収型医薬品などを扱います。
Nutrition Solutions Unitでは、食品とサプリメントを扱います。Foods & Agrisでは、乳製品、マーガリン、ショートニング、食用油脂、チョコレート用油脂、ホイップクリーム、フィリング、冷凍生地、パン酵母などを展開します。Supplemental Nutritionでは、還元型コエンザイムQ10、乳酸菌、グラボノイドなどの機能性食品素材を扱います。カネカは、発酵や油脂加工の技術を食品と健康素材に応用している会社でもあります。
収益構造
カネカの収益構造は、基盤事業で一定の売上を作り、高付加価値事業で利益率を高める構造です。ただし、事業ごとに収益の性格は大きく違います。
Material Solutions Unitは、売上規模が最も大きい事業です。2026年3月期の売上高は3,272億円、営業利益は249億円でした。塩ビ・クロールアルカリは、アジア市況や国内需要、原料価格の影響を受けやすい事業です。MODやMSは、住宅・建築、自動車、工業用途の需要に影響されます。2026年3月期は、アジア市況の低迷や米国住宅・建築市場の需要低調が重荷になりました。ただし、高付加価値製品の拡販や販売地域の拡大は進んでいます。
Quality of Life Solutions Unitは、売上高1,943億円、営業利益180億円でした。FoamやPVは堅調でしたが、E&IやFiberでは原料高騰の影響を受けました。発泡樹脂や断熱材は、住宅・建築、自動車、包装、物流に関わります。E&Iはスマートフォン、テレビ、情報通信、自動車などの電子部材需要と結びつきます。太陽電池は政策、補助金、住宅市場、脱炭素投資の影響を受けます。
Health Care Solutions Unitは、売上高830億円、営業利益148億円でした。売上規模はMaterialやNutritionより小さいものの、利益率の観点では非常に重要です。血液浄化器やカテーテルなどMedicalの拡販が進み、同社の最大の収益事業として全社を牽引していると説明されています。販売地域の拡大、カテーテル新工場、脳血管治療領域の新製品など、成長投資も進んでいます。
Nutrition Solutions Unitは、売上高2,060億円、営業利益137億円でした。Foodsは原料価格上昇に応じた価格改定と高付加価値品へのシフトが進み、Supplementでは還元型Q10が米国を中心にグローバルで伸びています。食品は原料価格や価格改定の影響を受けますが、サプリメントはブランド、機能性、販売地域の拡大で利益を伸ばす余地があります。
全社で見ると、営業利益は329億円、営業利益率は4.1%です。化学メーカーとしては、より高い利益率を目指す余地があります。カネカが先端事業比率を高めようとしているのは、素材市況に左右される基盤事業だけでは、安定して高い利益率を維持しにくいからです。
事業内容の特徴
カネカの事業内容の特徴は、同じ化学会社の中に、かなり性格の違う事業が共存していることです。
塩ビ・苛性ソーダのような基礎化学品は、原料、電力、設備稼働率、需給バランスが重要です。価格競争や市況の影響を強く受けます。一方、医療用カテーテルや血液浄化器は、医療現場のニーズ、製品の安全性、規制、販売体制、医師との関係が重要です。食品やサプリメントは、消費者の健康意識、原料価格、ブランド、販路が重要です。電子材料や太陽電池は、顧客の技術ロードマップと設備投資に影響されます。
つまりカネカは、ひとつの業界だけを見て理解できる会社ではありません。建築、自動車、電機、医療、食品、住宅、エネルギー、環境という複数の市場にまたがります。これはリスク分散になりますが、同時に経営の難しさにもなります。各事業の顧客、競合、投資サイクル、規制が違うからです。
もう一つの特徴は、素材を最終用途に近づけていることです。単に化学品を売るのではなく、建築用シーリング材向けMSポリマー、食品向け油脂・乳製品、医療用カテーテル、Q10ヨーグルト、Green Planetなど、用途が見える製品を増やしています。これは、汎用品の価格競争を避け、顧客の課題に入り込むためです。
カネカの事業は、BtoBが中心ですが、食品やサプリメントではBtoCに近い顔もあります。就活生が見る場合、研究開発やプラント運転だけでなく、医療機器の営業、食品のマーケティング、海外展開、品質保証、薬事、環境対応、事業開発まで幅広い職種がある会社として理解した方がよいでしょう。
競合他社との違い
カネカの競合は、事業ごとに異なります。塩ビ・クロールアルカリでは信越化学工業、東ソー、AGC、海外の塩ビメーカーが比較対象になります。機能性樹脂や改質剤では三菱ケミカル、三井化学、住友化学、クラレ、ダイセル、海外特殊化学メーカーなどと重なります。電子材料では東レ、住友化学、日東電工、JSR、レゾナックなどが近い領域にいます。医療機器ではテルモ、ニプロ、朝日インテックなど、食品・サプリメントでは食品素材メーカーや健康食品素材メーカーが競合になります。
三菱ケミカルグループとの違いは、規模と事業の重心です。三菱ケミカルは、基礎化学、機能商品、産業ガス、ヘルスケアなどを含む巨大グループで、事業の幅と規模が非常に大きい会社です。カネカは規模では及びませんが、塩ビ、機能性ポリマー、医療機器、食品・サプリメント、太陽電池、生分解性ポリマーという独自の組み合わせを持ちます。巨大な石化コンビナートの力で勝負する会社というより、用途ごとに尖った製品を育てる会社です。
三井化学との違いは、自動車・ヘルスケア・農業化学への広がり方です。三井化学は、モビリティ、ヘルスケア、フード&パッケージング、基盤素材に強く、自動車材料やメガネレンズ材料などでも存在感があります。カネカも自動車、医療、食品に関わりますが、医療では血液浄化器やカテーテル、食品では油脂・乳製品・Q10、環境ではGreen Planet、太陽電池という特徴が強く出ます。
住友化学との違いは、農薬・医薬・石化の比重です。住友化学は、農薬、医薬品、石油化学、エッセンシャルケミカルズ、情報電子化学で大きな事業を持ちます。カネカは農薬や大型医薬品会社としての色は薄く、医療機器、CDMO、食品・サプリメント、住宅・建築材料に近い事業が多い会社です。
王子ホールディングス、レンゴー、日本製紙のような素材・包装系企業と比較すると、カネカは同じ製造業でも、紙や包装素材より化学・樹脂・医療・食品素材に寄っています。包装や建材の市場で接点はありますが、カネカは塩ビや発泡樹脂、バイオポリマーを通じて素材面から関わる会社です。
カネカ 強みは、巨大化学メーカーのように全方位で大規模に展開することではなく、塩ビ・機能性樹脂・発泡・医療・食品・電子材料を組み合わせ、成長用途へシフトできる柔軟さにあります。ただし、分散している事業を本当に高収益化できるかは、今後も問われます。
事業の現代での潮流
カネカを取り巻く潮流は、環境対応、医療の高度化、健康志向、AI・情報通信機器の拡大、住宅・建築市場の変動、原材料価格の不安定化です。
環境対応では、生分解性バイオポリマーGreen Planetが重要です。プラスチックごみ問題や海洋汚染への関心が高まる中で、生分解性素材への需要は長期的に伸びる可能性があります。ただし、生分解性ポリマーはコスト、加工性、量産能力、顧客採用、規制との関係が重要です。社会的意義があっても、価格が高すぎれば普及は限られます。カネカが大型案件で顧客評価を進めている点は注目されます。
医療の高度化では、カテーテルや血液浄化器が成長領域です。高齢化、慢性疾患、低侵襲治療、血管内治療の拡大により、医療機器の需要は世界的に伸びています。カネカは北海道苫東の血液浄化器工場やカテーテル新プラント、EndoStream Medicalを通じた脳血管治療領域の展開など、Medicalを拡大しています。
健康志向では、還元型Q10、乳酸菌、機能性食品、BtoC食品が重要です。食品市場は成熟していますが、健康、発酵、栄養、ウェルネスへの関心は高まっています。カネカはQ10や乳酸菌を素材として売るだけでなく、ヨーグルトやグミのような消費者向け製品にも広げています。
AI・情報通信機器の拡大は、E&Iに追い風です。AIサーバー、スマートフォン、自動運転、通信機器の高性能化により、ポリイミドフィルムや高機能樹脂、光学材料への需要が増える可能性があります。カネカは高付加価値グレードのポリイミドフィルム能力増強を決定しており、ここは注目領域です。
一方で、住宅・建築市場の変動はMaterialやQuality of Lifeに影響します。米国住宅・建築市場が低調だと、MODやMSポリマーの需要が弱くなります。原材料価格やナフサ、エネルギー費、為替も、素材事業の利益を動かします。カネカは高付加価値化を進めていますが、化学メーカーである以上、市況リスクは避けられません。
強み
カネカの第一の強みは、多様な技術基盤です。塩ビ、重合、発酵、油脂加工、発泡、樹脂改質、フィルム、太陽電池、医療機器、バイオ医薬関連と、化学を起点に幅広い技術を持ちます。ひとつの市場が不調でも、別の市場で成長を狙えるポートフォリオがあります。
第二の強みは、Health Careの成長性です。Medicalは血液浄化器やカテーテルの拡販が進み、全社を牽引する収益事業として存在感を高めています。医療機器は規制や品質要求が厳しい一方、一度顧客と信頼関係を築くと、長期的な成長が期待できます。カネカがアジア・米国へ販売地域を広げている点も重要です。
第三の強みは、Supplementです。還元型Q10は米国を中心にグローバルで拡販が進んでいます。機能性食品素材は、健康志向の高まりを背景に、食品会社やサプリメント会社向けに需要があります。発酵技術と機能性素材を持つことは、カネカらしい強みです。
第四の強みは、MSポリマーやMODなどの機能性ポリマーです。建築、工業、自動車、家電、情報機器などで、接着、シール、耐久、衝撃強度、加工性を高める素材は、顧客の製品性能に深く関わります。汎用品のように単純な価格競争になりにくい領域を持つ点は、化学メーカーとして重要です。
第五の強みは、環境・エネルギー領域への展開です。Green Planetや太陽電池、断熱材、発泡素材、ポリイミドフィルムなどは、脱炭素、省エネ、情報通信、循環型社会と関係します。すぐに大きな利益になるとは限りませんが、社会課題と結びついた製品群を持っていることは、中長期の成長余地になります。
弱み・リスク
カネカの第一のリスクは、素材市況への感応度です。塩ビ、苛性ソーダ、MOD、MS、発泡樹脂などは、需要と供給、原材料価格、建築・住宅市場、アジア市況に影響されます。2026年3月期も、アジア市況の低迷や米国住宅・建築市場の需要低調がMaterialの減益要因になりました。
第二のリスクは、事業ポートフォリオの複雑さです。カネカは、化学品、樹脂、発泡、電子材料、太陽電池、繊維、医療機器、医薬、食品、サプリメントまで持っています。これはリスク分散になる一方で、経営資源が分散しやすい構造でもあります。どの事業に投資し、どの事業を高付加価値化し、どの事業を守るのかを明確にしなければ、全社利益率は上がりにくくなります。
第三のリスクは、営業利益率の低さです。2026年3月期の営業利益率は4.1%でした。売上高は過去最高でも、営業利益は減益です。化学メーカーとして、原材料高や需要低迷を価格改定や高付加価値化で吸収できるかが問われます。売上拡大よりも、スプレッドと製品構成が重要です。
第四のリスクは、先端事業の投資回収です。Medical、E&I、PV、Green Planet、Supplementなどは成長期待がありますが、設備投資、研究開発、販売地域拡大には資金と時間がかかります。社会的意義が高い製品でも、量産化、顧客採用、価格競争力が伴わなければ利益にはなりません。
第五のリスクは、海外展開と地政学です。カネカは欧米、アジア、米国などで生産・販売を行います。米国住宅市場、中国・アジア市況、欧州の需要、為替、中東情勢、原油・ナフサ、物流費が業績を動かします。多角化しているとはいえ、世界経済の減速やブロック化の影響を受けやすい会社です。
数字で見るカネカ
カネカを見るときは、売上高、営業利益、営業利益率、当期純利益、ROE、セグメント別営業利益、先端事業比率、営業キャッシュフロー、配当を確認する必要があります。
2026年3月期の売上高は8,116億円、営業利益は329億円、経常利益は289億円、親会社株主に帰属する当期純利益は310億円でした。売上高は前期比0.5%増、営業利益は17.9%減、当期純利益は22.4%増です。営業利益率は4.1%、ROEは6.4%でした。
セグメント別では、Material Solutions Unitの売上高は3,272億円、営業利益は249億円。Quality of Life Solutions Unitは売上高1,943億円、営業利益180億円。Health Care Solutions Unitは売上高830億円、営業利益148億円。Nutrition Solutions Unitは売上高2,060億円、営業利益137億円でした。調整額が大きいため、各ユニット利益の合計がそのまま全社営業利益になるわけではありませんが、Health CareとNutritionの利益貢献が強まっていることは重要です。
2027年3月期の会社予想では、売上高8,200億円、営業利益360億円、経常利益320億円、親会社株主に帰属する当期純利益315億円が見込まれています。年間配当は2026年3月期の160円から、2027年3月期予想では210円へ増配予定です。
キャッシュフローでは、2026年3月期の営業活動によるキャッシュフローは501億円、投資活動によるキャッシュフローはマイナス261億円、財務活動によるキャッシュフローはマイナス200億円でした。自己資本比率は52.0%であり、財務の安定性は一定程度あります。
中期的には、2027年度に売上高9,200億円、営業利益660億円、営業利益率7.2%、ROE10.0%、ROIC8.0%を目指す計画が示されています。この目標を達成するには、Materialの回復だけでなく、Medical、Supplement、E&I、MS、PVなど先端事業の成長が必要です。
今後の注目ポイント
今後の第一の注目ポイントは、Health Careの拡大です。Medicalは血液浄化器やカテーテルで伸びており、販売地域もアジア・米国へ広がっています。カテーテル新プラントやEndoStream Medicalの新製品投入が、どこまで売上と利益に結びつくかを見る必要があります。
第二の注目ポイントは、Supplementです。還元型Q10は米国を中心に販売が伸びています。乳酸菌事業も伸長しています。健康志向は長期テーマですが、サプリメント市場は競争も激しいため、機能性、品質、価格、販路、ブランドをどう強化するかが重要です。
第三の注目ポイントは、E&Iと情報通信需要です。AIや自動運転、通信機器の高度化により、高付加価値ポリイミドフィルムや光学材料の需要が伸びる可能性があります。カネカは能力増強も進めており、この投資が採算を伴って回収できるかが注目です。
第四の注目ポイントは、Green Planetです。生分解性バイオポリマーは、プラスチックごみ問題に対する有力なテーマです。ただし、普及には価格、加工性、供給能力、顧客採用、規制対応が必要です。大型案件での顧客評価や実際の採用が進むかを見ておきたいところです。
第五の注目ポイントは、Materialの市況回復と高付加価値化です。塩ビ、MOD、MSは市況の影響を受けますが、高付加価値製品へのシフトや販売地域拡大が進めば、単なる市況株から脱却しやすくなります。米国住宅・建築市場やアジア需要の回復が利益に与える影響も大きいです。
投資対象として
カネカを投資対象として見る場合、同社は「基盤化学と先端事業を併せ持つ多角化化学メーカー」と整理できます。塩ビや発泡素材などの市況関連事業だけでなく、医療機器、食品・サプリメント、電子材料、太陽電池、生分解性ポリマーまで持つ点が特徴です。
ポジティブに見るなら、カネカは単なる汎用化学品メーカーではありません。MedicalとSupplementが伸び、先端事業の利益構成比率は高まっています。還元型Q10、血液浄化器、カテーテル、高付加価値ポリイミドフィルム、Green Planet、太陽電池など、社会課題と結びつく製品群を持っています。財務も自己資本比率が高く、配当も増配方針です。
また、2026年3月期は営業減益ながら、4四半期には営業利益100億円超の水準へ回復し、会社側はモメンタムの回復を示しています。2027年度に営業利益660億円を目指す中期計画が実現すれば、現在の利益水準から大きな改善になります。
一方で、慎重に見るべき点もあります。2026年3月期の営業利益率は4.1%で、化学メーカーとして高収益とは言えません。Materialは市況の影響を受けやすく、QOLも原料価格の影響を受けます。先端事業は成長期待がありますが、投資回収には時間がかかります。多角化している分、何が本当の成長ドライバーなのかを見極める必要があります。
したがって、カネカの株価を見るときは、売上高だけでなく、営業利益率、セグメント別営業利益、Health Careの成長、Supplementの拡販、E&Iの能力増強効果、Green Planetの採用状況、Materialの市況、営業キャッシュフロー、ROEを合わせて見るべきです。投資対象としては、安定した基盤事業と成長期待のある先端事業を併せ持つ一方、利益率改善が課題の会社です。
まとめ
カネカは、1949年に鐘淵化学工業として設立され、塩化ビニル樹脂から始まった会社です。その後、食品、繊維、機能性樹脂、発泡素材、電子材料、太陽電池、医療機器、医薬品関連、サプリメント、生分解性バイオポリマーへ事業を広げてきました。
カネカ 強みは、塩ビや機能性ポリマーの基盤、MSポリマーやMODなどの高付加価値素材、血液浄化器・カテーテルなどのMedical、還元型Q10などのSupplement、ポリイミドフィルムや太陽電池、Green Planetのような環境対応素材にあります。化学を起点に、くらし、医療、食、エネルギーへ広げている点が同社らしさです。
一方で、課題も明確です。Materialは市況に左右されやすく、QOLは原料高の影響を受けます。全社の営業利益率はまだ高くなく、先端事業への投資を本当に利益成長へつなげる必要があります。多角化の幅が広いからこそ、どの事業に資本を集中し、どの事業で利益率を上げるかが問われます。
就活生にとって、カネカは化学品、樹脂、医療機器、医薬、食品、電子材料、太陽電池、環境素材まで関われる会社です。個人投資家にとっては、単なる市況化学株ではなく、医療・食品・電子材料・環境素材へのポートフォリオ転換が利益として表れるかを見るべき企業です。
カネカは、塩ビから始まった化学メーカーですが、現在は「カガクでネガイをカナエル会社」として、医療、食、環境、情報通信へ広がっています。その多角化が単なる事業の寄せ集めではなく、高付加価値事業への転換として実を結ぶかどうか。それが、カネカ 企業研究の最大のポイントになります。