グローリーを一言でいうと
グローリーは、紙幣や硬貨を数える、識別する、仕分ける、入出金する、保管する機械を出発点に、金融機関、店舗、交通、飲食、海外のリテール市場へ広がってきた通貨処理機の精密機器メーカーです。
「グローリー」と聞くと、一般消費者にはあまりなじみがないかもしれません。しかし、銀行の窓口、現金センター、スーパーのレジ、駅や交通機関、パチンコホール、飲食店の券売機やセルフキオスクの裏側では、同社の技術が使われています。表に出る製品名ではなく、現金や決済を正確に処理する裏方の機械で強みを持つ会社です。
同じ機械・精密機器の会社でも、日立建機が建設現場で使われる大型機械、タダノがクレーン、島津製作所が分析計測・医療機器に強い会社だとすれば、グローリーは「お金を扱う現場の自動化」に特化してきた会社です。紙幣や硬貨を高速に数えるだけでなく、真偽を判別し、金種を識別し、釣銭を正確に出し、売上金を管理し、店舗や金融機関の業務を省力化するところに独自性があります。
重要なのは、グローリーを「現金社会の会社」とだけ見ると誤解することです。確かに出発点は現金処理機です。しかし現在は、キャッシュレス化が進む中でも残る現金管理、セルフレジ、セルフ精算機、飲食店向けキオスク、クラウドPOS、データ活用、顔認証、ロボットSIなどへ事業領域を広げています。現金を数える機械の会社から、店舗や金融機関の省人化・厳正化・DXを支える会社へ変わろうとしている点が、グローリーの企業研究で最も重要です。
なぜ今グローリーを見るのか
グローリーを今見る理由は、キャッシュレス化と人手不足が同時に進む中で、同社の事業が単純な追い風でも逆風でもない複雑な位置にあるからです。
一見すると、キャッシュレス化が進めば、現金処理機の会社には逆風のように見えます。実際、現金決済の比率が下がれば、長期的には現金処理機の需要は減る可能性があります。しかし、現実の店舗や金融機関では、現金はすぐになくなりません。高齢者、地域金融、観光客、災害時、現金利用者の存在を考えると、現金を安全かつ効率的に扱う仕組みは残ります。むしろ、現金を扱う人員が減るほど、機械で正確に管理する必要が高まります。
また、人手不足はグローリーにとって大きなテーマです。スーパー、ドラッグストア、飲食店、駅、金融機関では、現金管理や会計業務に人手をかけにくくなっています。レジ締め、釣銭準備、売上金集計、現金過不足の確認、入出金処理は手間がかかり、ミスや不正のリスクもあります。グローリーのつり銭機、入出金機、売上金管理機、セルフキオスクは、こうした業務を自動化するための製品です。
さらに、2024年の日本の新紙幣発行は、グローリーにとって大きな特需になりました。金融機関、流通、交通、遊技市場では、紙幣識別機や現金処理機を新紙幣に対応させる必要がありました。その反動で2026年3月期は国内市場の売上・利益が減少しました。つまり、直近の業績を見るときは、新紙幣対応特需の反動と、セルフ化・省人化という構造需要を分けて考える必要があります。
2026年3月期のグローリーは、売上収益3,395億円、営業利益297億円、親会社の所有者に帰属する当期利益153億円でした。前期は新紙幣対応などの需要で高水準だったため、売上・利益ともに減少しました。一方で、2027年3月期は売上収益3,600億円、営業利益320億円、親会社の所有者に帰属する当期利益200億円を見込んでいます。新紙幣特需の反動が一巡した後、海外リテール、飲食キオスク、国内流通・交通、金融機関の省人化需要をどこまで取り込めるかが注目点です。
成り立ち
グローリーの歴史は、1918年に兵庫県姫路市で創業した国栄機械製作所にさかのぼります。創業当初は、電球の製造装置を修理する工場でした。現在のような通貨処理機メーカーとして出発したわけではなく、機械修理とものづくりの会社として始まったのです。
転機になったのは、1950年に国産初の硬貨計数機を開発し、大蔵省造幣局へ納入したことです。当時、硬貨を正確に数える作業は手間がかかり、輸入機械は大型で高価でした。グローリーは、小型で扱いやすく、精度の高い硬貨計数機を開発することで、通貨処理機の道へ進みました。この国産初の硬貨計数機は、のちに機械遺産にも認定されています。
その後、同社は硬貨自動包装機、紙幣両替機、たばこ販売機、紙幣整理機、窓口用紙幣入出金機、レジつり銭機などを開発し、金融機関や店舗の現金処理を支える会社になっていきました。お金を扱う機械には、単なる搬送技術だけでなく、紙幣や硬貨の識別、摩耗や汚れへの対応、偽造防止、詰まり防止、耐久性、安全性が求められます。グローリーは、こうした厳しい要求に応えながら、通貨処理機のパイオニアとして成長しました。
また、1960年代から海外展開も進めています。2012年には海外の通貨処理機会社を買収し、海外市場での存在感を高めました。その後も、飲食店向けセルフサービスキオスクのAcrelec、リテール向けソフトウェアのFlooidなどを取り込み、現金処理機だけではない店舗DX領域へ広げています。
グローリーの成り立ちは、「硬貨を正確に数える機械」から始まり、「金融機関・店舗・海外市場の現金管理とセルフ化を支える機器・ソフトウェア企業」へ広がってきた歴史です。キャッシュレス化の時代でも、同社が残る理由は、この現場の業務理解と通貨処理の信頼性にあります。
事業内容
グローリーの事業は、金融市場、流通・交通市場、遊技市場、海外市場、その他に分けられます。
金融市場では、銀行、信用金庫、信用組合、農協、現金センター、警備輸送会社向けに、紙幣入出金機、硬貨入出金機、オープン出納システム、紙幣整理機、窓口用現金処理機などを提供しています。銀行窓口で現金を受け付けたり、出金したり、金種別に整理したり、窓口の締め作業を効率化したりするための機械です。金融機関の店舗統廃合や少人数店舗化が進む中で、現金業務の自動化は重要です。
流通・交通市場では、スーパー、百貨店、ドラッグストア、専門店、コンビニ、駅、交通機関などに向けて、レジつり銭機、売上金入金機、セルフ精算機、券売機、店舗向け現金管理機などを提供しています。レジで釣銭を自動で出すだけでなく、売上金をバックオフィスで管理し、現金過不足を減らし、レジ締めを短縮する役割があります。
遊技市場では、パチンコホール向けのカードシステム、各台計数機、賞品保管機、玉・メダルの計数関連機器などを扱います。日本特有の市場であり、規制、店舗投資、ホール数、遊技人口の影響を受けます。新紙幣対応や設備更新のタイミングでは需要が出ますが、長期的には市場縮小リスクがあります。
海外市場では、米州、欧州、アジアの金融機関、流通店舗、警備輸送会社、カジノ、飲食店向けに、紙幣入出金機、紙幣整理機、つり銭機、売上金管理機、セルフサービスキオスク、リテールソフトウェアなどを展開しています。海外市場は現在の売上の大きな柱であり、2026年3月期には売上収益の6割超を占めました。
その他では、病院向け診療費支払機、選挙向け自書式投票用紙分類機、顔認証、ロボットSI、クラウドサービスなどがあります。まだ全社の中心ではありませんが、通貨処理以外の新領域として位置づけられます。
収益構造
グローリーの収益構造は、機械本体の販売、保守サービス、ソフトウェア、海外子会社の売上、特需と反動で成り立っています。
金融機関や店舗向けの通貨処理機は、導入時の本体販売が大きな売上になります。しかし、それだけではありません。現金処理機は、毎日大量の紙幣や硬貨を扱うため、保守、点検、部品交換、ソフトウェア更新が必要です。金融機関や店舗にとって、機械が止まると業務に支障が出ます。そのため、保守サービスは重要な継続収益になります。
2026年3月期のセグメントを見ると、海外市場が売上収益2,160億円、営業利益211億円で、全社の最大の柱でした。海外市場は売上の約64%を占め、営業利益率も9.8%でした。グローリーは日本の通貨処理機メーカーという印象がありますが、現在は海外市場で大きく稼ぐ会社です。
一方、国内金融市場は売上収益370億円、営業利益39億円でした。前期は新紙幣対応需要が大きかったため、2026年3月期はその反動で売上・利益が大きく減少しました。流通・交通市場も売上収益576億円で、前期の新紙幣対応需要の反動を受けました。ただし、人手不足に伴うセルフ化・省人化ニーズは続いています。
遊技市場は売上収益210億円、営業利益は減少しました。新紙幣対応やホール設備更新の反動、業界全体の構造変化が影響します。遊技市場は利益率が高い時期もありますが、長期的には規制や市場縮小を見ながら慎重に評価すべき事業です。
グローリーの利益を考えるときは、国内の改刷特需のような一時要因と、海外のリテール・金融・飲食向けの継続成長を分けて見る必要があります。2026年3月期は前期の反動で減収減益でしたが、海外市場は増収増益でした。これが、今後の収益構造を考えるうえで重要です。
事業内容の特徴
グローリーの事業の特徴は、現金を扱う現場の「正確性」と「省人化」を両立することです。
紙幣や硬貨は、汚れ、折れ、摩耗、異物混入、偽造、金種違い、詰まりなどが起こります。単に機械の中を通せばよいわけではありません。高速に搬送しながら、紙幣や硬貨の種類を識別し、真偽を判定し、枚数を数え、金額を合計し、必要に応じて入出金・保管・返却する必要があります。ここには、機械設計、画像認識、センサー、搬送、制御、ソフトウェア、耐久設計が関わります。
また、現金処理機は顧客の業務フローに深く入り込みます。銀行窓口では、勘定系システムや窓口業務と連動します。スーパーでは、POSレジ、バックオフィス、売上金管理、警備輸送とつながります。飲食店では、券売機、セルフオーダー、キオスク、クラウドPOSと関係します。つまり、グローリーの製品は単体機械ではなく、業務プロセスの一部です。
近年は、セルフ化と厳正化が重要になっています。セルフレジやセルフ精算機は、顧客自身が会計する仕組みです。人手不足を補う一方で、現金過不足や不正を防ぐ必要があります。グローリーの通貨処理機は、現金の流れを記録し、誰がいくら扱ったかを明確にし、店舗運営の透明性を高めます。
就活生の視点では、グローリーは「お金を扱う機械」という身近で社会的責任の重い製品を作る会社です。機械、電気電子、ソフトウェア、画像認識、センサー、組み込み制御、品質保証、保守、海外営業、ソリューション提案まで幅広い職種があります。金融機関や店舗の現場を深く理解し、機械とソフトを組み合わせて課題を解く仕事です。
競合他社との違い
グローリーの競合は、事業領域によって異なります。通貨処理機では、国内では日本金銭機械、沖電気工業、富士通フロンテック系、東芝テック系、海外ではDiebold Nixdorf、NCR、Crane Payment Innovations、Cummins Allison系企業などが比較対象になります。リテール・飲食キオスクでは、海外のセルフサービス機器メーカーやPOSソフトウェア企業とも競合します。
グローリーの特徴は、金融機関向けの通貨処理機で培った高い信頼性を、流通・交通・海外市場へ広げていることです。現金を扱う機械は、単価やスピードだけでなく、精度、耐久性、偽造対応、保守網が重要です。銀行で通用する品質を店舗向けに展開できる点は、同社の大きな強みです。
日立建機やタダノとの違いも明確です。日立建機やタダノは建設・インフラ現場の大型機械を扱います。グローリーは、金融機関や店舗のバックオフィス、レジ周り、現金センター、飲食店のカウンターに入る精密機器を扱います。同じ機械メーカーでも、顧客の現場はまったく異なります。
島津製作所との違いは、島津製作所が分析・医療・研究開発の精密機器に強いのに対し、グローリーは通貨処理と店舗・金融のオペレーションに強いことです。島津が「成分を測る」会社なら、グローリーは「お金を数え、識別し、管理する」会社です。
近年の競争では、現金処理機メーカーだけでなく、POS、決済、クラウド、キオスク、店舗DX企業との競争も増えています。グローリーは、AcrelecやFlooidのような会社を取り込み、現金処理機から店舗オペレーション全体へ広げようとしています。ここが、従来の通貨処理機メーカーから変わろうとしている点です。
事業の現代での潮流
グローリーを取り巻く第一の潮流は、キャッシュレス化です。キャッシュレス決済の拡大は、現金処理機の会社にとって長期的な構造リスクです。しかし、現金が完全になくなるわけではありません。現金利用者が残る中で、現金を扱う人手だけが減ると、現金管理の自動化ニーズはむしろ高まります。グローリーにとって重要なのは、現金量の減少を、省人化・厳正化・保守・ソフトウェアで補えるかです。
第二の潮流は、人手不足です。金融機関の少人数店舗、スーパーのセルフレジ、飲食店のセルフ注文、駅や施設の自動精算は、人手不足への対応です。現金や決済に関わる業務は、ミスや不正を防ぐ必要があるため、単純な省人化ではなく、正確性と管理性が求められます。
第三の潮流は、飲食店・リテールのセルフサービス化です。Acrelecのセルフサービスキオスクや、FlooidのクラウドPOSは、通貨処理機とは違う領域です。飲食店では、注文、支払い、受け取り、ドライブスルー、詰め間違い防止などの業務をデジタル化する需要があります。グローリーは、現金処理から店舗DXへ広げることで、新たな成長を狙っています。
第四の潮流は、海外市場の成長です。海外では、金融機関の現金管理、警備輸送会社、カジノ、リテール店舗、飲食店向けに需要があります。2026年3月期は国内市場が新紙幣特需の反動を受ける中で、海外市場は増収増益でした。今後も、米州、欧州、アジアでリテールと飲食を成長させられるかが重要です。
第五の潮流は、認証・データ活用です。顔認証、決済データ、店舗データ、現金管理データを組み合わせることで、セキュリティや店舗運営の改善につながります。グローリーは、通貨処理だけではなく、「信頼できる本人確認」「厳正な管理」「データに基づく店舗運営」へ広げる余地があります。
強み
グローリーの強みは、第一に通貨処理機の長い技術蓄積です。1950年の国産初の硬貨計数機以来、紙幣と硬貨を正確に扱う技術を磨いてきました。紙幣識別、硬貨選別、搬送、計数、保管、偽造対応、耐久性は、簡単にまねできる領域ではありません。
第二の強みは、金融機関と流通店舗の業務を深く理解していることです。銀行窓口、現金センター、スーパーのレジ、バックオフィス、飲食店の注文・会計、遊技ホールの設備は、それぞれ業務フローが異なります。グローリーは、機械を売るだけでなく、顧客の業務に合わせたソリューションを提供できます。
第三の強みは、保守サービス網です。現金処理機は止まると業務に支障が出るため、導入後の保守が重要です。国内外のサービス体制は、顧客の安心につながると同時に、継続収益にもなります。
第四の強みは、海外市場の規模です。2026年3月期には海外市場が売上収益2,160億円、営業利益211億円となり、全社最大の柱でした。国内の改刷特需に左右されるだけでなく、海外の金融・リテール・飲食市場を成長させられることは大きな強みです。
第五の強みは、店舗DXへの拡張です。Acrelec、Flooid、Sitradeなどを通じて、キオスク、クラウドPOS、リテールソフトウェア、飲食向けソリューションへ広がっています。通貨処理機だけにとどまらず、店舗のセルフ化とデータ活用へ進めることが、今後の成長余地になります。
弱み・リスク
グローリーの最大のリスクは、キャッシュレス化です。現金の使用量が長期的に減れば、現金処理機の需要は減少する可能性があります。現金管理の厳正化や省人化で補える部分はありますが、現金そのものの減少は無視できない構造リスクです。
第二のリスクは、特需と反動です。2024年の新紙幣発行は、国内金融・流通・遊技市場に大きな需要を生みました。しかし、その翌期には反動減が出ます。2026年3月期の減収減益は、この新紙幣対応需要の反動が大きく影響しました。投資家は、単年の高業績をそのまま通常実力と見ないことが重要です。
第三のリスクは、海外子会社の成長と統合です。AcrelecやFlooidなどを買収して成長領域を広げていますが、買収企業の統合、ガバナンス、販売拡大、利益率改善は簡単ではありません。2026年3月期には、情勢の不透明さや一部顧客の投資判断延伸により、キオスクやソフトウェア事業が当初予想を下回る場面もありました。
第四のリスクは、遊技市場の縮小です。パチンコホール向けのカードシステムや計数機は、かつては一定の需要がありましたが、遊技人口や店舗数の減少、規制変更に影響されます。新紙幣対応のような更新需要はあっても、長期的には慎重に見るべき市場です。
第五のリスクは、為替と地域別需要です。海外売上比率が高いため、ドルやユーロの動きが業績に影響します。また、米国や欧州のリテール・飲食市場では、顧客の投資判断が景気や通商政策に左右されます。海外市場が大きいことは強みですが、同時に為替・景気・地政学リスクも抱えます。
数字で見るグローリー
グローリーを見るときは、全社売上収益、営業利益、セグメント別の利益、海外市場の比率、特需の反動、株主還元を確認する必要があります。
2026年3月期の連結売上収益は3,395億円、営業利益は297億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は153億円でした。前期の売上収益3,686億円、営業利益420億円、当期利益245億円からは減収減益です。新紙幣対応需要の反動により、国内の金融市場、流通・交通市場、遊技市場が大きく減少しました。
セグメント別では、海外市場が売上収益2,160億円、営業利益211億円で最大です。売上構成比は約64%、営業利益率は9.8%でした。金融市場は売上収益370億円、営業利益39億円、流通・交通市場は売上収益576億円、遊技市場は売上収益210億円でした。国内市場は前期の特需反動が目立ちますが、海外市場は増収増益を維持しています。
2027年3月期の会社予想では、売上収益3,600億円、営業利益320億円、親会社の所有者に帰属する当期利益200億円を見込んでいます。金融市場は売上収益430億円、流通・交通市場は680億円、海外市場は2,240億円を見込んでおり、国内の回復と海外の継続成長が前提です。
株主還元では、2027年3月期の年間配当予想を154円とし、前期から増配する方針です。2026中期経営計画では、2026年3月期および2027年3月期について総還元性向100%以上を目標に追加しています。業績だけでなく、配当と自己株式取得を含めた資本政策も注目点です。
投資家が確認したい指標は、次の通りです。
新紙幣対応特需の反動がどこまで一巡するか
海外市場の売上収益と営業利益率が維持できるか
金融市場で少人数店舗・事務集中化需要を取れるか
流通・交通市場でセルフレジ、つり銭機、売上金管理機が伸びるか
AcrelecのキオスクとFlooidのソフトウェアが利益に貢献するか
遊技市場の縮小を他市場で補えるか
営業キャッシュフローと株主還元が無理なく両立しているか
就活生の場合は、売上高だけでなく、海外市場が最大の柱であること、金融・流通・遊技で業務内容が大きく違うこと、通貨処理から店舗DXへ広がっていることを見ると、会社の実態が分かりやすくなります。
今後の注目ポイント
今後のグローリーで最も注目したいのは、海外市場の成長です。海外市場はすでに全社売上の6割超を占めています。金融機関向けだけでなく、リテール、飲食、警備輸送、カジノ向けに、通貨処理機、つり銭機、キオスク、ソフトウェアを展開しています。米州、欧州、アジアでリテール・飲食市場をどこまで伸ばせるかが重要です。
次に、国内流通・交通市場の回復です。新紙幣対応の反動はありますが、人手不足によるセルフ化ニーズは続いています。スーパー、ドラッグストア、駅、店舗でのレジつり銭機、売上金管理、セルフ精算の需要を継続的に取れるかが注目です。
第三に、金融市場の構造変化です。銀行店舗は減少していますが、少人数店舗、共同店舗、事務集中化、現金センター効率化の需要はあります。グローリーが金融機関の店舗再編に合わせて、現金処理と業務効率化の提案をできるかが重要です。
第四に、AcrelecとFlooidの収益改善です。キオスクやクラウドPOSは、通貨処理機とは違う成長領域です。しかし、ソフトウェアや飲食店向けソリューションは、投資判断延伸や競争の影響も受けます。グローリー本体の通貨処理機と組み合わせて、注文、会計、現金管理、データ活用を一体提案できるかが問われます。
第五に、キャッシュレス時代の事業再定義です。現金処理機の会社として守るだけでは、長期成長は限られます。現金、キャッシュレス、本人確認、店舗データ、セルフサービス、ロボットを組み合わせ、「信頼できる取引と店舗運営を支える会社」へ変わることができるかが、長期的な企業価値を左右します。
投資対象として
投資対象としてのグローリーは、国内の通貨処理機特需に左右される会社であると同時に、海外市場と店舗DXで成長余地を持つ会社です。2026年3月期は新紙幣対応需要の反動で減収減益でしたが、海外市場は増収増益を維持し、2027年3月期は増収増益を見込んでいます。
魅力は、通貨処理機というニッチで参入障壁の高い領域に強みを持つことです。紙幣や硬貨を正確に識別し、処理し、保守する技術は簡単にまねできません。金融機関、流通店舗、海外リテール、飲食店の業務フローに深く入り込んでいる点も強みです。
また、海外市場の規模も魅力です。海外市場が売上の6割超を占め、金融だけでなくリテール・飲食へ広がっています。国内の現金処理機だけに依存する会社ではなく、グローバルな店舗・金融インフラ企業として見ることができます。
一方で、投資家はリスクも冷静に見る必要があります。キャッシュレス化は長期的な構造リスクです。新紙幣対応のような特需と反動が業績を大きく動かします。AcrelecやFlooidなどの買収事業は成長余地がある一方、統合や利益率改善が課題です。遊技市場は長期縮小リスクがあり、為替や海外景気も業績に影響します。
PERやPBRを見るときは、単年度の利益だけでなく、特需を除いた実力、海外市場の利益率、保守・ソフトウェア収益、買収事業の採算、株主還元方針を見ることが重要です。配当や自己株式取得は魅力ですが、長期的には現金処理から店舗DXへどこまで移行できるかが評価を左右します。
就活生にとっては、機械・電気・ソフトウェア・サービスが一体になった会社です。通貨処理機、セルフレジ、キオスク、顔認証、ロボットSIなど、社会インフラや店舗運営に近い製品に関われます。現金という古いテーマを扱いながら、実際には人手不足、セルフ化、データ活用、認証といった現代的な課題に取り組む会社です。
まとめ
グローリーは、1918年に姫路で創業した国栄機械製作所を源流に持ち、1950年に国産初の硬貨計数機を開発したことをきっかけに、通貨処理機のパイオニアとして成長してきた会社です。現在では、金融市場、流通・交通市場、遊技市場、海外市場に向けて、通貨処理機、つり銭機、売上金管理機、セルフサービスキオスク、クラウドPOS、認証・ロボット関連ソリューションを展開しています。
同社の強みは、紙幣・硬貨を正確に扱う技術、金融機関や店舗の業務理解、保守サービス網、海外市場の大きさ、店舗DXへの拡張にあります。2026年3月期は売上収益3,395億円、営業利益297億円でした。新紙幣対応特需の反動で減収減益となりましたが、海外市場は売上収益2,160億円、営業利益211億円と全社の柱になっています。
一方で、キャッシュレス化、特需反動、遊技市場の縮小、買収事業の統合、為替・海外景気リスクには注意が必要です。グローリーは現金処理機の会社である以上、現金利用の減少という構造変化から逃れることはできません。しかし、現金が残る現場での省人化、厳正化、セルフ化、店舗DXへ広げることで、新しい成長余地を作ろうとしています。
グローリーの企業研究では、「お金を数える機械の会社」という理解で止めず、金融機関、流通店舗、飲食店、海外リテールの業務をどう自動化し、現金処理から店舗DXへどう広げているかを見ることが大切です。キャッシュレス時代でも、現金管理、本人確認、セルフサービス、データ活用は残ります。その現場の信頼を機械とソフトで支える会社として、グローリーは今後も事業の再定義が問われる精密機器メーカーです。