DMG森精機を一言でいうと
DMG森精機は、NC旋盤、マシニングセンタ、5軸加工機、複合加工機、アディティブ・マニュファクチャリング機、自動化システム、周辺機器、MRO、スペアパーツ、エンジニアリングまで提供する、世界規模の工作機械メーカーです。
工作機械は、金属を削り、穴をあけ、曲面を作り、精密部品を生み出す「機械を作るための機械」です。自動車、航空機、半導体製造装置、医療機器、エネルギー設備、防衛関連、通信機器、船舶、金型など、幅広い製造業の土台にあります。消費者が日常で直接目にする会社ではありませんが、工場の中では非常に重要な存在です。
同じ機械・精密機器の会社でも、日立建機は建設現場で土を掘り、タダノは重いものを吊り、島津製作所は分析・医療・計測で見えないものを測ります。DMG森精機は、工場の中で部品そのものを高精度に作る機械を提供する会社です。つまり、製造業の「加工能力」を売っている会社だと考えると理解しやすくなります。
DMG森精機の個性は、日本の森精機とドイツのDMG MORI AGを一体化したグローバル企業である点です。日本の旋盤・マシニングセンタの技術と、ドイツ・欧州の5軸加工、複合加工、ブランド、販売網を組み合わせ、世界の製造業に機械、ソフトウェア、自動化、保守まで提供しています。
投資家にとっては、工作機械の受注サイクル、航空・宇宙・防衛・医療・半導体・データプロセス関連の需要、MRO・スペアパーツ・エンジニアリングの安定収益、営業利益率、キャッシュフローが重要です。就活生にとっては、機械、制御、ソフトウェア、AI、自動化、加工技術、海外営業、サービスまで関われる、製造業の中核に近い会社です。
なぜ今DMG森精機を見るのか
DMG森精機を今見る理由は、工作機械需要が単なる設備更新ではなく、工程集約、自動化、デジタル化、脱炭素化と結びついているからです。
製造業では、熟練技能者の不足、人件費上昇、納期短縮、多品種少量生産、品質安定、エネルギーコスト上昇が大きな課題になっています。従来のように、旋盤、フライス盤、穴あけ、研削を別々の機械で行い、作業者が段取り替えを繰り返す方法では、時間も人手もかかります。そこで重要になるのが、5軸加工機や複合加工機による工程集約です。
DMG森精機は、工程集約、自動化、DX、GXを組み合わせた「MX」、つまりマシニング・トランスフォーメーションを打ち出しています。これは、単に新しい機械を売るというより、顧客の加工プロセスそのものを変える考え方です。複数工程を一台に集約し、ロボットや搬送装置で自動化し、ソフトウェアで加工プロセスを最適化し、エネルギー消費や無駄を減らす。こうした提案が、同社の現代的な価値になっています。
2025年度は、世界的な工作機械需要にばらつきがありました。売上収益は5,150億円で前期比4.8%減、営業利益に相当するEBITは190億円で大きく減少し、EBIT率は3.7%に低下しました。一方で、連結受注額は5,234億円と前年度比5.5%増加し、機械本体の受注残高は2,400億円まで積み上がりました。受注は回復しつつあるが、売上・利益への反映は遅れている、という局面です。
特に注目したいのは、受注単価の上昇です。2025年度の機械の平均受注単価は7,960万円となり、前年度の7,100万円から上昇しました。これは、単に台数を売っているのではなく、大型機、工程集約機、自動化、付加価値の高い機械の比率が高まっていることを示します。
2026年度は、連結受注額5,400億円、売上収益5,350億円、EBIT225億円が計画されています。地域ではEMEA、米州、インド、産業別では航空、宇宙、防衛、医療、電力、エネルギー、半導体製造装置を含むデータプロセス関連向けが期待されています。つまり、今のDMG森精機は、短期的には利益率低下からの回復、中長期では高付加価値加工・自動化・サービス化が焦点になる会社です。
成り立ち
DMG森精機の日本側の源流は、1948年に奈良県大和郡山市で設立された森精機製作所です。創業当初は繊維機械の製造・販売を行っていました。現在の工作機械メーカーとしての姿からは意外ですが、戦後復興期の日本で需要があった繊維産業向け機械から始まった会社です。
1958年には繊維機械の製造を中止し、高速精密旋盤の製造・販売へ本格的に転換しました。この転換が、現在のDMG森精機につながる大きな分岐点です。旋盤は、金属材料を回転させながら削る工作機械で、自動車部品や機械部品の加工に不可欠です。森精機は、ここから工作機械メーカーとして成長していきました。
1980年代には海外展開を進め、米国や欧州に拠点を設立しました。立形マシニングセンタ、横形マシニングセンタなども展開し、日本の工作機械メーカーとして存在感を高めます。工作機械は顧客の工場に導入される設備であり、販売後のサービス、部品供給、技術支援が重要です。そのため、早くから海外販売・サービス網を整えることが競争力になりました。
一方、ドイツ側のDMGの源流は、ギルデマイスターなど欧州工作機械メーカーの歴史にあります。ドイツは機械工業の強い国であり、5軸加工、複合加工、高付加価値加工で長い蓄積があります。日本の森精機とドイツのDMGは、2009年に業務・資本提携を開始し、その後、統合を深めていきました。現在のDMG森精機は、日本とドイツの工作機械技術、販売網、ブランドを一体化した会社です。
この成り立ちを見ると、DMG森精機の特徴が分かります。単なる日本国内の工作機械メーカーではなく、日本・欧州・米州・アジアをまたいだグローバルメーカーです。日本の生産技術と欧州の5軸・複合加工技術、世界中の販売・サービス網を組み合わせている点が、他の工作機械メーカーとの大きな違いです。
事業内容
DMG森精機の事業は、工作機械本体、ソフトウェア、自動化、周辺機器、MRO、スペアパーツ、エンジニアリングに分けて見ると理解しやすくなります。
工作機械本体では、5軸加工機、複合加工機、横形・立形マシニングセンタ、ターニングセンタ、グラインディングセンタ、ボーリングマシン、アディティブ・マニュファクチャリング機などを展開しています。5軸加工機は、工具や加工対象を複数方向に動かし、複雑な曲面や難削材を高精度に加工する機械です。航空機部品、医療機器、金型、宇宙・防衛関連部品などで重要になります。
複合加工機は、旋削、ミーリング、穴あけ、場合によっては研削まで、一台で複数工程を担う機械です。従来は複数台の機械で加工していた部品を一台で加工できれば、段取り替えを減らし、加工精度を安定させ、省人化にもつながります。人手不足が進む製造業では、複合加工機の価値は高まっています。
自動化では、ロボット、パレット搬送、ワーク搬送、工具管理、計測、工程管理を組み合わせます。工作機械単体を導入するだけでなく、夜間無人運転や少人数運転を可能にするシステムとして提案します。これにより、顧客は生産性を上げ、熟練技能者不足に対応できます。
ソフトウェアでは、ユーザーインターフェース、テクノロジーサイクル、組込ソフトウェア、デジタルソリューションを展開しています。最近は、Software-Defined Machine Tool、つまりSDMTという考え方を打ち出しています。これは、機械の性能を機械構造だけでなく、ソフトウェアで引き出し、加工プロセスを最適化する方向です。
MRO、スペアパーツ、エンジニアリングも重要です。MROはメンテナンス・リペア・オーバーホールの意味で、導入済み機械の保守、修理、改造、部品交換に関わります。工作機械は10年、20年使う設備であり、導入後のサービスが顧客にとって非常に重要です。2025年度のMRO、スペアパーツ、エンジニアリング事業の受注は1,259億円で、連結受注に占める構成比は24%でした。これは、DMG森精機が新台販売だけに依存していないことを示す重要な数字です。
収益構造
DMG森精機の収益構造は、工作機械本体の販売、MRO・スペアパーツ・エンジニアリング、グループ会社の計測・検査装置、地域別需要、受注残高によって成り立っています。
工作機械本体は、一台あたりの単価が高い設備です。5軸加工機や複合加工機、大型機、自動化システムになるほど単価は上がります。2025年度は平均受注単価が上昇しており、付加価値の高い機械の需要が増えていることが分かります。一方で、高額設備であるため、顧客の設備投資判断に左右されます。景気が不透明になれば、受注や検収が遅れることがあります。
2025年度の売上収益は5,150億円、EBITは190億円でした。EBIT率は3.7%です。2024年度のEBIT率8.1%から大きく低下しており、利益率改善が大きな課題です。売上減に加え、米国関税や輸出許可審査、欧州製新型CNCへの切り替え対応、新型CNC交換費用、旧部品廃棄、人的投資、費用増などが利益を圧迫しました。
一方で、受注面では回復の兆しがあります。2025年度の連結受注額は5,234億円で前年度比5.5%増、機械本体の受注残高は2,400億円でした。受注残が積み上がっているため、これが売上として計上されるかどうかが今後の業績に重要です。
MRO、スペアパーツ、エンジニアリングは、収益安定化に重要です。工作機械は長期間使われるため、保守、修理、部品交換、改造、加工支援が継続的に発生します。新台販売が景気に左右される一方、導入済み機械のサービス需要は比較的安定しやすいです。この事業の比率が高まれば、工作機械サイクルの波を少し和らげることができます。
また、マグネスケールやSAKIのようなグループ会社も重要です。マグネスケールは半導体製造装置向け超精密計測装置に関わり、SAKIは電子部品実装工程向け自動検査装置を手がけます。工作機械本体だけでなく、半導体、電子部品、精密計測、検査装置に関わる領域を持つ点も、DMG森精機の収益構造の特徴です。
事業内容の特徴
DMG森精機の事業の特徴は、機械を売るだけでなく、顧客の加工プロセス全体を変える方向へ進んでいることです。
工作機械は、単に硬い機械を作ればよいわけではありません。顧客が本当に求めているのは、「この部品を、できるだけ短時間で、安定した品質で、少ない人手で、低コストに作ること」です。そのためには、機械本体だけでなく、加工条件、工具、治具、ロボット、搬送、測定、ソフトウェア、保守まで含めた提案が必要になります。
DMG森精機は、この流れをMXとして整理しています。MXは、工程集約、自動化、DX、GXを柱にした考え方です。工程集約では、複数工程を5軸・複合加工機にまとめます。自動化では、ロボットや搬送システムを組み合わせます。DXでは、加工データ、ソフトウェア、遠隔支援、デジタルツインなどを活用します。GXでは、エネルギー消費を抑え、環境負荷を下げる加工プロセスを提案します。
また、DMQPという認定周辺機器の仕組みも特徴です。工作機械は、チャック、クランプ、工具、測定器、搬送装置、クーラント装置など多くの周辺機器と組み合わせて使います。顧客にとっては、機械本体と周辺機器をどう組み合わせるかが悩みになります。DMG森精機は、認定された周辺機器を含めて提案することで、導入後の安定稼働を支援しています。
就活生の視点では、DMG森精機は機械メーカーでありながら、ソフトウェア、AI、データ、サービスの比重が高まっている会社です。機械設計、電気制御、加工技術、アプリケーションエンジニア、ソフトウェア開発、AI、デジタルツイン、海外営業、フィールドサービスまで幅広い仕事があります。製品は工場の中に入るため目立ちませんが、顧客の生産性そのものを変える仕事に関われます。
競合他社との違い
DMG森精機の競合には、オークマ、ヤマザキマザック、牧野フライス製作所、ファナック、ジェイテクト、ブラザー工業、ツガミ、シチズンマシナリー、海外ではHaas、Hermle、GROB、Doosan系、台湾・中国メーカーなどがあります。
オークマとの違いは、オークマが自社CNC「OSP」を持つ機電一体の工作機械メーカーであるのに対し、DMG森精機は日本とドイツの統合によるグローバル製品群、5軸・複合加工、自動化、MRO、ソフトウェア、周辺機器を含む総合提案に強みを持つ点です。オークマが機械と制御の一体性を前面に出すなら、DMG森精機はグローバル統合とMXによる工程変革を打ち出していると整理できます。
ヤマザキマザックは、複合加工機やレーザー加工機を含む幅広い工作機械と、世界的な販売網で知られます。牧野フライスは、金型、航空機、放電加工、マシニングセンタの高精度領域に強みがあります。ファナックはCNC、サーボモータ、ロボット、ロボマシンに強く、工作機械メーカーに制御装置を供給する側でもあります。
ブラザー工業は、小型マシニングセンタ「SPEEDIO」による省スペース・高速加工が強みです。DMG森精機は、より大型・高付加価値・複雑加工・グローバル提案の比重が高い会社です。ツガミやシチズンマシナリーは小型精密旋盤や自動盤に強みを持ちますが、DMG森精機は5軸、複合、大型、自動化、MROを含めた総合力が特徴です。
海外競合と比べると、DMG森精機は日本のものづくりとドイツの機械技術を一体化している点が独自です。EMEA、米州、日本、中国、アジアに販売・サービス網を持ち、グローバルな製造業の設備投資を取り込める一方、為替、関税、輸出規制、地域ごとの景気に影響されやすい構造でもあります。
事業の現代での潮流
DMG森精機を取り巻く第一の潮流は、工程集約です。製造現場では、部品の複雑化、技能者不足、段取り時間削減のために、一台で複数工程をこなす機械の需要が増えています。5軸加工機や複合加工機は、まさにこの流れに対応する製品です。
第二の潮流は、自動化です。人手不足が深刻になる中で、工作機械にロボット、パレットチェンジャー、ワーク搬送、工具管理、測定装置を組み合わせ、夜間や休日でも稼働できる工場を作る需要が高まっています。DMG森精機は、機械本体だけでなく、自動化システムやエンジニアリングを含めて提案することで、顧客の省人化に対応しようとしています。
第三の潮流は、デジタル化とSDMTです。工作機械は、機械構造だけで性能が決まる時代から、ソフトウェア、センサー、加工データ、AI、シミュレーションを使って性能を引き出す時代に移っています。DMG森精機は、Software-Defined Machine Toolを打ち出し、加工プロセスをソフトウェアで最適化する方向へ進んでいます。
第四の潮流は、GXです。製造業では、CO2排出削減、エネルギー効率、加工時間短縮、材料ロス削減が重視されています。工作機械の省エネ性能だけでなく、工程集約によって機械台数や段取りを減らすことも、環境負荷の低減につながります。DMG森精機のMXは、DXとGXを組み合わせる点が特徴です。
第五の潮流は、成長産業の加工需要です。2025年度の受注では、航空、宇宙、防衛、メディカル、電力、エネルギー、船舶、データプロセス関連が好調でした。さらに、半導体製造装置や通信機器向けの需要も回復しました。工作機械需要は自動車だけではなく、より広い高付加価値産業へ広がっています。
強み
DMG森精機の強みは、第一に5軸加工機と複合加工機を中心とした高付加価値製品です。複雑形状、難削材、高精度加工、工程集約に対応できる製品群は、航空・宇宙・防衛・医療・半導体・エネルギー関連と相性がよいです。平均受注単価の上昇は、この強みが受注に表れていることを示します。
第二の強みは、グローバル統合です。日本の森精機とドイツのDMG MORI AGが一体となり、欧州、米州、アジア、日本に販売・サービス網を持っています。世界中の顧客に機械、部品、保守、エンジニアリングを提供できる体制は、大きな競争力です。
第三の強みは、MRO・スペアパーツ・エンジニアリングの存在です。2025年度のこの領域の受注は1,259億円で、連結受注の24%を占めました。新台販売だけでなく、導入済み機械を長く使い続けるためのサービスを持つことで、収益の安定性を高められます。
第四の強みは、ソフトウェアと自動化への投資です。SDMT、MX、デジタルソリューション、自動化提案は、工作機械メーカーが単なるハードウェア販売から、加工プロセス全体の改善へ移るための重要な要素です。人手不足や熟練者不足が進むほど、顧客はこの提案価値を重視します。
第五の強みは、成長産業への接続です。航空、宇宙、防衛、医療、電力、エネルギー、半導体製造装置、データプロセス関連は、長期的に高精度加工需要が続きやすい領域です。自動車景気だけに依存しない需要層が広がっている点は、DMG森精機の重要な強みです。
弱み・リスク
DMG森精機の最大のリスクは、工作機械需要の市況性です。工作機械は設備投資の代表的な製品であり、顧客が投資を止めると受注が大きく減ります。金利上昇、景気後退、地政学リスク、関税、輸出規制、顧客の投資判断先送りは、業績に直接影響します。
第二のリスクは、利益率の低下です。2025年度のEBIT率は3.7%でした。これは高付加価値工作機械メーカーとしては低い水準です。売上減、米国関税、欧州製新型CNCへの切り替え、輸出許可審査の長期化、人的投資、旧部品廃棄、コスト増が影響しました。2026年度はEBIT率4.2%を見込んでいますが、本格的な収益性回復にはまだ時間がかかります。
第三のリスクは、グローバル統合の複雑さです。日本とドイツを中心に、世界中の生産・販売・サービスを一体運営することは大きな強みですが、同時に為替、法制度、労務、関税、輸出規制、政治リスクを抱えます。欧州、米国、中国、インド、日本で景気や政策が異なるため、経営の難易度は高くなります。
第四のリスクは、設備と在庫・運転資本です。工作機械は大型で高額な製品であり、受注から納入まで時間がかかります。売上が期末に集中すると売上債権が増え、キャッシュフローに影響します。2025年度は営業フリーキャッシュフローが黒字に改善しましたが、受注増や設備投資、棚卸資産の管理は引き続き重要です。
第五のリスクは、競争です。オークマ、ヤマザキマザック、牧野フライス、ファナック、海外大手、中国・台湾メーカーなど、競合は多様です。高級機では技術とサービス、汎用機では価格、ターンキー案件ではエンジニアリング力が問われます。DMG森精機は高付加価値領域で差別化していますが、競合も自動化・デジタル化へ投資しています。
数字で見るDMG森精機
DMG森精機を見るときは、売上収益、EBIT、EBIT率、受注額、受注残高、MRO・スペアパーツ・エンジニアリング比率、地域別受注、キャッシュフロー、配当を確認する必要があります。
2025年度の売上収益は5,150億円、EBITは190億円、EBIT率は3.7%でした。2024年度の売上収益5,409億円、EBIT437億円、EBIT率8.1%からは大きく低下しています。一方、親会社の所有者に帰属するEATは240億円となりましたが、これは海外貿易保険金の受領が寄与しているため、本業の実力を見るにはEBITとEBIT率を重視した方がよいです。
連結受注額は5,234億円で、前年度比5.5%増でした。機械本体の受注残高は2,400億円です。四半期ベースでは、第3四半期から前年同期比プラスに転じ、第4四半期には伸び率が拡大しました。これは、2026年度以降の売上につながる重要な材料です。
地域別受注では、EMEAが構成比55%、米州が24%、日本が10%、中国が6%、中国を除くアジアが5%、インドが2%でした。EMEAは前年度比5%増、米州は15%増、インドは20%増、日本は横ばい、中国は緩やかな回復、中国を除くアジアは減少しました。地域ごとの需要の強弱が大きく、特にEMEAと米州が重要です。
MRO、スペアパーツ、エンジニアリング事業の受注は1,259億円で、連結受注に占める構成比は24%でした。これは新台販売の波を和らげる重要な領域です。工作機械は長期間使われるため、保守や部品、改造、エンジニアリングは安定的な収益源になりやすいです。
2026年度の会社予想では、連結受注額5,400億円、売上収益5,350億円、EBIT225億円、EBIT率4.2%、親会社の所有者に帰属するEAT105億円を見込んでいます。年間配当は2025年度と同額の105円を計画しています。
投資家が確認したい指標は、次の通りです。
受注額5,400億円計画を達成できるか
受注残高2,400億円が売上に着実に変わるか
EBIT率が3.7%から4.2%、さらに中長期的に高い水準へ戻るか
MRO・スペアパーツ・エンジニアリングの構成比が高まるか
平均受注単価の上昇が続くか
米国関税、輸出規制、CNC切り替えなどの一時要因が落ち着くか
航空・宇宙・防衛・医療・半導体・データプロセス関連需要が続くか
営業フリーキャッシュフローが安定的に黒字化するか
就活生の場合は、売上高だけでなく、受注、受注残、MRO、地域別需要を見ると、工作機械メーカーの実態が分かりやすくなります。工作機械は、今日売ったものがすぐ利益になる単純な商売ではなく、受注から納入、保守まで長く続くビジネスです。
今後の注目ポイント
今後のDMG森精機で最も注目したいのは、利益率の回復です。2025年度のEBIT率は3.7%まで低下しました。2026年度は4.2%を見込んでいますが、世界的な工作機械メーカーとしては、さらに高い収益性を目指す必要があります。値引率の低減、平均受注単価の上昇、MRO拡大、コスト管理、関税対応が重要です。
次に、MXの浸透です。工程集約、自動化、DX、GXを組み合わせた提案が顧客に受け入れられれば、単なる機械販売より高い付加価値を出せます。特に、5軸・複合加工機、自動化、ソフトウェアを組み合わせた案件が増えるかが重要です。
第三に、MRO・スペアパーツ・エンジニアリングです。この領域は、受注構成比24%まで高まっています。導入済み機械が増えれば、保守や部品需要も増えます。新台販売の景気変動を和らげるためにも、このサービス領域をどこまで伸ばせるかが注目です。
第四に、成長産業向けの受注です。航空、宇宙、防衛、医療、電力、エネルギー、船舶、データプロセス、半導体製造装置、通信関連は、高精度加工や大型機、複合加工の需要が見込まれる分野です。自動車市場だけではなく、これらの分野に需要層が広がっていることは重要です。
第五に、グローバルサプライチェーンと規制対応です。米国関税、欧州の輸出許可審査、ロシア関連の地政学リスク、中国市場、インドの成長など、地域ごとの不確実性は高いです。DMG森精機は世界企業であるため、地域リスクを避けることはできません。生産、販売、サービス、在庫、検収の管理が今後も業績を左右します。
投資対象として
投資対象としてのDMG森精機は、世界的な工作機械メーカーとしての規模とブランドを持ちながら、足元では利益率回復が課題の会社です。受注は回復しつつあり、受注残も厚い一方、2025年度のEBIT率は3.7%まで低下しました。投資判断では、売上規模よりも、受注の質と利益率改善を重視する必要があります。
魅力は、5軸加工機、複合加工機、自動化、MRO、ソフトウェアを組み合わせた高付加価値提案にあります。製造業の人手不足、工程集約、脱炭素化、デジタル化は、同社にとって中長期の追い風です。航空・宇宙・防衛・医療・半導体・データプロセス関連の需要が続けば、高付加価値機の受注は伸びる可能性があります。
また、MRO、スペアパーツ、エンジニアリングの比率が高いことも評価材料です。工作機械の新台販売は景気に左右されますが、導入済み機械の保守や部品は継続需要があります。この領域を伸ばせば、収益の安定性が高まります。
一方で、投資家はリスクも冷静に見る必要があります。工作機械は設備投資サイクルに左右され、景気が悪化すれば受注は落ちます。米国関税、輸出規制、為替、欧州・中国市場、サプライチェーン、CNC切り替えのような一時要因も利益を圧迫します。グローバル統合企業であることは強みですが、運営の複雑さも伴います。
PERやPBRを見るときは、単年度の純利益だけでなく、EBIT、EBIT率、受注高、受注残高、MRO比率、営業フリーキャッシュフローを確認することが重要です。2025年度のEATは貿易保険金の影響を受けているため、本業の実力を見るには営業利益に相当するEBITを重視した方がよいです。
就活生にとっては、世界の製造業そのものに関われる会社です。機械、電気、制御、ソフトウェア、AI、自動化、加工技術、海外サービス、エンジニアリングが交わります。顧客は自動車、航空、半導体、医療、エネルギー、防衛、通信など幅広く、ものづくりの最前線に近い仕事ができます。
まとめ
DMG森精機は、1948年に奈良県で創業した森精機製作所を源流に持ち、ドイツのDMG MORI AGとの統合を通じて世界規模の工作機械メーカーへ成長した会社です。現在は、5軸加工機、複合加工機、マシニングセンタ、ターニングセンタ、グラインディングセンタ、アディティブ・マニュファクチャリング機、ソフトウェア、自動化、MRO、スペアパーツ、エンジニアリングを提供しています。
同社の強みは、5軸・複合加工による工程集約、グローバルな販売・サービス網、MRO・スペアパーツ・エンジニアリングの継続収益、MXによる自動化・DX・GX提案、航空・宇宙・防衛・医療・半導体・データプロセス関連への接続にあります。2025年度は連結受注額5,234億円、売上収益5,150億円、EBIT190億円、機械本体の受注残高2,400億円でした。
一方で、課題も明確です。EBIT率は3.7%まで低下しており、米国関税、輸出規制、CNC切り替え、人的投資、コスト増、地域別需要のばらつきが利益を圧迫しました。2026年度は売上収益5,350億円、EBIT225億円を見込んでいますが、収益性回復にはまだ時間がかかる可能性があります。
DMG森精機の企業研究では、「工作機械の会社」という一般的な理解で止めず、5軸・複合加工がどの産業に使われるのか、MXが顧客の工程をどう変えるのか、MROが収益をどう安定させるのかを見ることが大切です。製造業が人手不足、高精度化、デジタル化、脱炭素化に向かう中で、DMG森精機は単なる機械販売会社から、世界の工場の生産性を変えるマシニング・ソリューション企業へ進化できるかを問われている会社です。