デサントを一言でいうと

デサントは、スポーツウェアの機能性とデザイン性を武器に、日本、韓国、中国を中心にブランド展開するスポーツ用品・アパレル企業です。代表ブランドには、コーポレートブランドでもある「デサント」、スイムウェアの「アリーナ」、サッカー・フットボール系の「アンブロ」、ゴルフの「マンシングウェア」、フレンチスポーツの「ルコックスポルティフ」、ウェルネス領域の「コウノエ」などがあります。

デサント ビジネスモデルを一言でいえば、「競技スポーツで磨いた機能性を、プレミアムスポーツウェアとして地域別に売る会社」です。日本では直営店を中心に、デサントブランドのDTC拡大と卸事業の再構築を進めています。韓国では、デサント、アンブロ、アリーナなどが存在感を持ち、シューズ事業の強化も進んでいます。中国では、デサントブランドが大きく成長し、同社の収益構造を支える重要な柱になっています。

注意したいのは、デサントは2025年1月24日に東京証券取引所プライム市場で上場廃止となっている点です。伊藤忠商事の子会社であるBSインベストメントによる公開買付けと、その後の株式併合を経て、現在は上場会社ではありません。したがって、個人投資家がデサント株を直接売買することはできません。この記事では、上場企業としての投資判断ではなく、スポーツアパレル企業としての事業構造、ブランド価値、収益の出どころ、比較対象としての見方を整理します。

デサントの固有性は、単なるスポーツ量販ブランドではなく、競技現場に根ざした「機能美」をブランド価値にしていることです。スキー、野球、水泳、ゴルフ、サッカー、トレーニング、ランニングなどの領域で、選手の動きや環境に合わせた商品開発を行い、それを日常にも使えるプレミアムスポーツウェアへ広げています。ゴールドウインがTHE NORTH FACEを軸にアウトドアを日常着へ広げている会社だとすれば、デサントは競技スポーツの機能性を、韓国・中国を含むアジアのプレミアム市場へ広げている会社です。

なぜ今デサントを見るのか

今デサントを見る理由は、同社が上場廃止後も、スポーツウェアブランドとして事業構造を大きく変えているからです。紙面上の株価分析はできなくなりましたが、アパレル・スポーツ用品業界を見るうえで、デサントは非常に重要な比較対象です。

第一に、日本国内のスポーツアパレル市場は成熟しています。スポーツ人口が急激に増えているわけではなく、少子化も進んでいます。さらに、ユニクロ、ワークマン、ナイキ、アディダス、ゴールドウイン、ミズノ、アシックス、モンベルなど、競合は多い市場です。こうした環境でデサントは、低価格の大量販売ではなく、デサントブランドをプレミアムスポーツブランドとして磨き直す方向へ進んでいます。

第二に、同社の利益構造は日本だけでは説明できません。2025年度通期の業績概要では、売上高は1,193億円、経常利益は239億円、連結純利益は151億円でした。売上高は前年度から減少しましたが、中国でのデサントブランドの伸長に伴う持分法投資利益の増加などにより、経常利益と連結純利益は4期連続で史上最高益を達成しています。これは、国内売上だけでなく、韓国・中国を含む海外関連事業が収益に大きく貢献していることを示しています。

第三に、2026年度計画では、売上高1,200億円、経常利益260億円、連結純利益210億円が掲げられています。日本ではデサントのDTC拡大と卸ビジネスの強化、韓国ではデサント、アンブロ、アリーナの伸長とシューズ事業拡大、中国ではデサントブランドのさらなる規模拡大を進める方針です。売上高は大きく伸びる計画ではありませんが、連結純利益は大幅増を狙っています。これは、規模拡大よりもブランド価値と利益を重視する方向性です。

第四に、デサントは伊藤忠商事グループとの関係が深まりました。上場廃止により短期的な株式市場の評価からは外れましたが、伊藤忠の繊維・ブランドビジネス、海外ネットワーク、物流、販売チャネルと連携しやすくなったと見ることもできます。非上場化は、個人投資家にとって直接投資できなくなる一方、企業経営としては中長期のブランド投資や地域戦略を進めやすくなる可能性があります。

成り立ち

デサントの歴史は、1935年に創業者の石本他家男が大阪で「ツルヤ」を創業したことから始まります。当初から現在のようなグローバルブランド企業だったわけではありません。戦前・戦後の日本で、スポーツウェアの製造販売を通じて成長してきた会社です。

1950年代には、野球ブームを背景に、クリーム色の野球ユニフォームやトレーニングパンツを開発しました。綿布に防縮加工を施し、ウールタッチに仕上げたユニフォームはヒット商品となります。スポーツウェアは、単なる衣服ではなく、競技の動きや耐久性、見た目、着心地を同時に満たす必要があります。デサントは早い段階から、競技現場の課題を商品開発に落とし込んできました。

1957年には、「デサント」ブランドの展開を開始します。ブランド名のデサントは、フランス語で「滑降」を意味します。スキー競技との関係が深く、雪上でのスピード、動き、空気抵抗、寒さへの対応が、デサントらしい機能美の源流になっています。同じ1957年には、日本人初のプロスキーヤー西村一良氏の助言をもとに、携帯用ウインドブレーカー「ラウスビー」を発表しました。Rain、Wind、SnowをBreakするという発想から生まれた商品で、同社の実用新案商品第1号です。

1960年代には、野球ユニフォームでも存在感を高めます。プロ野球の中日ドラゴンズがデサントのシングルニットユニフォームを採用し、その後、ダブルニットの開発により、従来の織物からニット製ユニフォームへ流れを変えていきました。1970年代には、スキーパンツ「デモパン」や、空気抵抗を抑えたダウンヒルスーツなど、競技性能とファッション性を組み合わせた商品を生み出しました。

1977年には「アリーナ」の展開を開始し、スイムウェア領域へ広げました。1964年にはマンシングウェアの展開も始まっており、ゴルフ領域にも早くから関わっています。その後、アンブロ、ルコックスポルティフ、イノヴェイト、ランバン スポールなど、複数ブランドを扱う会社へ広がりました。

この歴史から分かるのは、デサントが「スポーツの現場で求められる機能」を起点にしてきた会社だということです。単なる流行服ではなく、競技者の動き、寒さ、水、風、汗、空気抵抗、体へのフィットを考えて商品を作ってきました。この技術的な土台が、現在のデサントブランドのプレミアム化にもつながっています。

事業内容

デサントの事業は、ブランド別、地域別、販売チャネル別に見ると理解しやすくなります。公式にはスポーツ用品およびこれらに関するものの製造と販売を事業としていますが、実際にはブランドごとに用途と地域の役割が違います。

中心となるのは、コーポレートブランドの「デサント」です。スキーやトレーニング、ランニング、ゴルフ、ライフスタイル領域まで広がっており、現在の同社が最も磨き込んでいるブランドです。日本では直営店展開を強化し、DTC比率を高める方向です。韓国・中国でもデサントブランドが成長の中心になっており、特に中国では極めて好調に推移しているとされています。

「アリーナ」はスイムウェアを中心とするブランドです。競泳、水泳、フィットネススイム、学校・クラブ需要と関わります。日本、韓国、中国それぞれで展開され、韓国ではデサントやアンブロとともに伸長が期待されています。水泳用品は競技性が高く、機能性、フィット感、素材、デザインが重要です。

「アンブロ」はサッカーやフットボール系のブランドです。韓国ではアンブロが成長ブランドとして位置づけられています。フットボール市場は、競技用ウェアだけでなく、ストリートファッション、シューズ、チームウェア、ファンアイテムとも結びつくため、若年層との接点を作りやすい領域です。

「マンシングウェア」はゴルフブランドです。かつては日本国内でも広く知られたブランドですが、現在は韓国・中国においてリブランディングを進める方針が示されています。ゴルフウェアは、プレー人口、富裕層需要、百貨店・専門店・EC、地域ごとのゴルフ文化に左右されます。中国では高級モールを中心とした直営店展開も進めています。

「ルコックスポルティフ」はフランス発祥のスポーツブランドで、カジュアル、スニーカー、ゴルフ、ライフスタイルの文脈を持ちます。日本では親しみやすいブランドですが、韓国・中国ではリブランディング対象にもなっています。ブランド数が多いことは強みですが、すべてを均等に伸ばすのではなく、地域ごとに重点ブランドを絞ることが重要になります。

収益構造

デサントの収益構造は、単純な国内スポーツ用品販売ではありません。日本、韓国、中国の三地域が重要であり、とくに中国関連の持分法投資利益が経常利益を大きく押し上げています。

2025年度通期の売上高は1,193億円でした。前年度の1,280億円から減少しています。日本ではデサント直営店事業が好調だったものの、プレミアム化推進や価格・チャネル戦略の転換により、全体としては減収となりました。韓国では現地では増収したものの、ウォン安などの為替影響で円換算では減収となりました。

一方で、経常利益は239億円、連結純利益は151億円でした。売上高が減ったにもかかわらず経常利益と連結純利益が増えたのは、中国でのデサントブランドの伸長に伴う持分法投資利益の増加が大きいためです。ここがデサントの収益構造を見るうえで最も重要です。営業利益だけではなく、関連会社の利益を含む経常利益を見る必要があります。

主要3カ国の現地売上高を見ると、2025年度は日本が404億円、韓国が682億円、中国が1,993億円でした。2024年度は日本425億円、韓国713億円、中国1,547億円でした。つまり、日本と韓国は減少した一方、中国は大きく伸びています。ここから、デサントの成長ドライバーが中国のデサントブランドに大きく寄っていることが分かります。

2026年度計画では、売上高1,200億円、経常利益260億円、連結純利益210億円が掲げられています。売上高は小幅増にとどまる一方、連結純利益は大きく増える計画です。日本ではデサントのDTC拡大と卸事業の拡大、韓国ではデサント、アンブロ、アリーナの伸長とシューズビジネス強化、中国ではデサントブランドによるさらなる規模拡大を進めるとしています。

この構造から、デサントの収益を分析する際には、売上高だけで判断してはいけません。日本の直営店、韓国の為替影響、中国の持分法投資利益、ブランド別成長、DTC比率、卸の再構築を分けて見る必要があります。

事業内容の特徴

デサントの事業内容の特徴は、競技スポーツの機能性を、プレミアムブランド化していることです。

スポーツウェアには二つの方向があります。一つは、競技者向けに機能を突き詰める方向です。スキー、水泳、野球、ランニング、ゴルフ、サッカーでは、動きやすさ、空気抵抗、水抵抗、体温調節、フィット感、耐久性、軽さが重要です。もう一つは、スポーツ由来のデザインや機能を、日常生活やファッションへ広げる方向です。デサントは、この二つをつなぐ会社です。

代表例がデサント オルテラインや水沢ダウンです。オルテラインは、年齢、シーン、流行に左右されない高機能ウェアを掲げるラインであり、水沢ダウンは熱圧着ノンキルト加工や高い防水性・保温性を特徴とする高価格帯ダウンとして知られています。これは、単なる冬物アウターではなく、技術とデザインを合わせたプレミアム商品です。

デサントは、DTC、つまり直営店や自社ECなど、消費者と直接つながる販売も重視しています。卸を通じた量販だけでは、ブランド価値や価格統制が難しくなります。直営店であれば、商品の世界観、スタッフの説明、サイズ提案、イベント、顧客データ活用ができます。日本ではデサントブランドのDTC拡大が中期計画の重点になっています。

一方で、デサントはブランド数が多い会社でもあります。デサント、アリーナ、アンブロ、ルコックスポルティフ、マンシングウェア、コウノエ、ランバン スポールなど、それぞれ競技や顧客層が違います。多ブランドは顧客接点を広げる強みですが、すべてを中途半端に展開すると、投資が分散し、ブランドの輪郭がぼやけます。だからこそ、地域ごとに重点ブランドを絞り、デサントを中心に磨く方針が重要になります。

競合他社との違い

デサントの競合は、国内ではゴールドウイン、ミズノ、アシックス、ヨネックス、デサントと同じくスポーツアパレルを展開するデサント以外の国内ブランド、海外ではナイキ、アディダス、プーマ、アンダーアーマー、FILA、ルルレモン、アークテリクス、モンベル、ザ・ノース・フェイス関連ブランドなどです。

ゴールドウインとの違いは、事業の中心にあるブランドの性格です。ゴールドウインはTHE NORTH FACEを核に、アウトドアを日常着へ広げ、高い粗利率とブランド価値を実現しています。デサントは、THE NORTH FACEのような巨大なアウトドアライフスタイルブランドを持つ会社ではありません。その代わり、デサント、アリーナ、アンブロ、マンシングウェアなど、競技スポーツに根ざした複数ブランドを持ち、韓国・中国でプレミアム化を進めています。

ミズノやアシックスとの違いは、競技軸とアパレル比重です。ミズノは野球、ゴルフ、ランニング、スポーツ用品に広く強みを持ち、用具も含めた総合スポーツメーカーです。アシックスはランニングシューズや競技用シューズで世界的な存在感があります。デサントは、シューズも強化していますが、歴史的にはスポーツウェア、特にスキーや水泳、チームスポーツウェア、ゴルフウェアに強い会社です。アパレルの機能美とブランド表現が中心です。

ゴールドウインやモンベルと比べると、デサントはアウトドアというより「競技スポーツのプレミアム化」に近い会社です。モンベルは登山・アウトドアで高機能かつ比較的手頃な商品に強く、ゴールドウインはTHE NORTH FACEでアウトドアを街着化しました。デサントは、スキー、水泳、ゴルフ、サッカー、トレーニングなど、競技やスポーツライフの延長にブランド価値があります。

ナイキやアディダスとの違いは、世界規模と地域戦略です。ナイキやアディダスはグローバルで圧倒的なマーケティング力、契約選手、シューズ、アパレル、ECを持ちます。デサントは規模では及びません。だからこそ、日本、韓国、中国のような重点地域で、プレミアムスポーツブランドとして深く入り込む必要があります。巨大ブランドと同じ土俵で広告費を競うのではなく、機能性、店舗体験、地域密着、競技現場との関係で差別化する会社です。

事業の現代での潮流

デサントを取り巻く潮流は、スポーツウェアのプレミアム化、DTC化、中国スポーツ消費、韓国ファッション市場、シューズビジネス、在庫管理、サステナビリティです。

第一に、スポーツウェアは競技用から日常用へ広がっています。ランニングウェア、トレーニングウェア、スイムウェア、ゴルフウェア、アウトドアウェアは、競技だけでなく日常の健康、移動、旅行、ファッションにも使われます。動きやすく、手入れしやすく、デザイン性がある服は、普段着としても選ばれます。デサントはこの流れに乗って、競技機能を日常のプレミアムウェアへ広げる余地があります。

第二に、DTC化です。アパレルブランドは、卸中心では価格統制や顧客データ取得が難しくなります。直営店や自社ECを通じて顧客と直接つながれば、ブランド体験を作り、在庫と価格を管理し、顧客の行動を把握できます。デサントは日本でDTC拡大を進めており、直営店事業をプレミアムブランド構築の中心に置いています。

第三に、中国市場です。2025年度の主要3カ国現地売上高では、中国が1,993億円と、日本や韓国を大きく上回る規模になっています。中国ではデサントブランドが極めて好調に推移しており、経常利益を支える持分法投資利益にもつながっています。中国のスポーツ消費、富裕層・中間層のプレミアム志向、ゴルフやスキー、アウトドア、ランニング需要は大きな成長機会です。

第四に、韓国市場です。韓国では、デサント、アンブロ、アリーナの伸長とシューズビジネスの拡大が課題です。韓国はスポーツとファッションの境界が近く、若者のブランド感度も高い市場です。一方で、ウォン安など為替の影響を受けるため、円換算の売上や利益は変動します。

第五に、サステナビリティです。アパレルは素材、染色、縫製、輸送、廃棄で環境負荷が大きい産業です。デサントは「長く使えるモノづくり」やGHG排出抑制を掲げています。高機能スポーツウェアは、長く使える品質を打ち出しやすい一方、素材開発やサプライチェーン管理にはコストがかかります。

強み

デサントの第一の強みは、競技スポーツに根ざした商品開発力です。野球、スキー、水泳、ゴルフ、サッカー、ランニング、トレーニングなど、さまざまな競技の現場で必要とされる機能を商品に落とし込んできました。ラウスビー、デモパン、ダウンヒルスーツ、水着、ユニフォーム、水沢ダウンなど、歴史的にも機能性のある商品を生み出してきました。

第二の強みは、デサントブランドのプレミアム化です。特に中国ではデサントブランドが大きく伸びており、同社の利益成長の中心になっています。単なるスポーツ用品ではなく、高機能で洗練されたプレミアムスポーツウェアとして訴求できている点は大きな強みです。

第三の強みは、アジア地域でのブランド運営です。日本、韓国、中国で市場環境は大きく違います。日本ではDTCと卸再構築、韓国では複数ブランドとシューズ、中国ではデサントの規模拡大というように、地域ごとに戦略を変えています。特に中国・韓国でのブランド展開は、国内だけに依存するアパレル企業とは違う強みです。

第四の強みは、多ブランド展開です。デサント、アリーナ、アンブロ、マンシングウェア、ルコックスポルティフ、コウノエなど、競技や顧客層に応じてブランドを使い分けられます。デサントブランドだけに頼るのではなく、地域ごとに伸びるブランドを選べることは強みです。

第五の強みは、伊藤忠グループとの関係です。非上場化後、伊藤忠商事と一体で企業価値向上を目指す体制になりました。繊維、ブランド、海外、物流、販売、投資の面で、伊藤忠グループの知見を活用できる可能性があります。スポーツアパレル単体では難しい海外展開やサプライチェーン強化において、親会社との連携は重要です。

弱み・リスク

デサントの第一のリスクは、中国依存です。2025年度の主要3カ国現地売上高では、中国が日本・韓国を大きく上回っています。中国でデサントブランドが好調なことは強みですが、中国景気、消費者心理、規制、競合、合弁パートナー、政治的リスクに左右される度合いも高まります。中国事業が失速すれば、経常利益への影響は大きくなります。

第二のリスクは、持分法投資利益への依存です。2025年度は、中国でのデサントブランド伸長に伴う持分法投資利益の増加が、経常利益と連結純利益を押し上げました。営業利益だけでなく経常利益が高い構造は魅力ですが、関連会社利益の変動に左右されます。上場企業だった時代の株価分析であれば、営業利益と経常利益の差を必ず確認すべき会社です。

第三のリスクは、日本市場の再構築です。日本ではデサント直営店事業やムーブスポーツが好調でも、価格・チャネル戦略の転換により売上は減少しました。プレミアム化を進めると、短期的には売上数量や卸売上が落ちる可能性があります。DTC拡大が利益率向上につながるかが重要です。

第四のリスクは、ブランド数の多さです。多ブランドは強みですが、すべてに投資すれば経営資源が分散します。ルコックスポルティフやマンシングウェアのリブランディングには時間と費用がかかります。ブランドの方向性を間違えれば、在庫増や販促費増につながります。

第五のリスクは、アパレル特有の在庫・天候・流行リスクです。スポーツウェアは季節性があり、冬物、スイム、水着、ゴルフ、ランニングなどは天候やシーズンに左右されます。高機能商品は価格が高いため、需要を読み違えると在庫処分が利益を圧迫します。プレミアムブランドほど値引きはブランド価値を傷つけるため、需要予測と在庫管理が重要です。

数字で見るデサント

デサントを見るときは、売上高、経常利益、連結純利益、日本・韓国・中国の現地売上高、持分法投資利益、DTC比率、ブランド別動向を確認する必要があります。上場廃止後は通常の上場企業のように詳細な株価指標を見ることはできませんが、事業分析としてはこれらが重要です。

2025年度通期の売上高は1,193億円、経常利益は239億円、連結純利益は151億円でした。前年度の売上高1,280億円から減収となりましたが、経常利益は186億円から239億円へ増加し、連結純利益も130億円から151億円へ増加しました。経常利益と連結純利益は4期連続で史上最高益となっています。

主要3カ国の現地売上高では、2025年度は日本404億円、韓国682億円、中国1,993億円でした。2024年度は日本425億円、韓国713億円、中国1,547億円だったため、日本と韓国は減少し、中国が大きく伸びた構図です。中国はデサントブランドが極めて好調に推移し、大幅増収となっています。

2026年度計画では、売上高1,200億円、経常利益260億円、連結純利益210億円が掲げられています。売上高は7億円増にとどまる一方、連結純利益は59億円増、39%増を計画しています。これは、売上規模より利益成長を重視する計画です。デサントブランドの磨き上げ、他ブランドのボトムアップ、中国・韓国の成長が鍵になります。

会社概要では、2025年3月期ベースの年商は1,279億円、従業員数は連結2,612人、国内店舗数は55店舗とされています。国内店舗数だけを見ると小さく感じるかもしれませんが、同社の収益構造では、韓国・中国を含む地域事業と持分法利益の影響が大きく、国内直営店数だけでは全体像をつかめません。

今後の注目ポイント

今後の第一の注目ポイントは、中国でのデサントブランドの持続成長です。2025年度の中国現地売上高は1,993億円まで伸びました。2026年度もデサントブランドによるさらなる規模拡大を計画しています。ただし、中国消費は景気や規制、ブランド競争の影響を受けます。高成長が続くか、利益率を維持できるかが最大の焦点です。

第二の注目ポイントは、日本でのDTC拡大です。デサントは日本で、直営店展開と商品力強化を進めています。プレミアム化はブランド価値を高める一方、卸売上や短期売上を減らす可能性があります。DTC比率を高めることで、顧客データ、価格統制、ブランド体験を強化できるかが重要です。

第三の注目ポイントは、韓国事業です。韓国ではデサント、アンブロ、アリーナを伸ばし、シューズビジネスを強化する方針です。韓国市場はスポーツとファッションの接点が強く、若年層へのブランド訴求が重要です。一方で、為替影響が大きく、ウォン安では円換算売上が下がります。現地通貨ベースと円換算の両方を見る必要があります。

第四の注目ポイントは、ルコックスポルティフとマンシングウェアのリブランディングです。既存ブランドを再活性化できれば、デサントブランドへの集中リスクを下げられます。しかし、成熟したブランドを若返らせるのは簡単ではありません。新しい顧客層に刺さる商品、店舗、広告、価格帯が必要になります。

第五の注目ポイントは、非上場化後の経営スピードです。上場廃止により、短期的な株式市場の評価からは離れました。伊藤忠商事グループとの連携を活かし、海外、サプライチェーン、ブランド投資、デジタル基盤刷新をどこまで進められるかが重要です。投資家として直接買える会社ではありませんが、スポーツアパレル業界の変化を見るうえでは重要な企業です。

投資対象として

デサントを投資対象として見る場合、まず前提として、同社は2025年1月24日に上場廃止となっており、現在は個人投資家が株式市場で直接投資できる対象ではありません。そのため、通常の意味でのPER、PBR、配当利回りを使った投資判断はできません。

ただし、投資家にとってデサントを分析する意味はあります。第一に、スポーツアパレル業界の比較対象として重要です。ゴールドウイン、ミズノ、アシックス、海外スポーツブランド、ワークマン、ユニクロなどを見る際に、デサントのようなプレミアムスポーツブランドの戦略は参考になります。特に、中国市場、DTC、ブランドプレミアム化、持分法利益の構造は、アパレル企業を見るうえで重要な論点です。

第二に、伊藤忠商事グループの一部として見ることができます。伊藤忠商事に投資する場合、デサント単独の寄与は総合商社全体から見れば限定的かもしれませんが、繊維・ブランドビジネスの一部として、デサントの成長は間接的な意味を持ちます。スポーツブランドを非上場化し、中長期で磨き込む戦略は、商社によるブランド経営の一例です。

第三に、非上場化前の財務を見ると、売上高よりも利益の質を見るべき会社だったことが分かります。2025年度は売上高が減ったにもかかわらず、経常利益と連結純利益は過去最高でした。これは、中国関連の持分法投資利益の影響が大きい構造です。もし同社が上場していたなら、投資家は営業利益、経常利益、持分法利益、日本・韓国・中国の現地売上高、為替、DTC比率を分けて見る必要があったはずです。

投資対象としての教訓は、アパレル企業を売上成長だけで見てはいけないということです。ブランド価値、値引き率、在庫、チャネル、地域構成、持分法利益、為替が利益を大きく変えます。デサントは直接投資できない会社になりましたが、スポーツアパレル企業を分析するための非常に良い事例です。

まとめ

デサントは、1935年に大阪で創業したツルヤを前身とし、野球ユニフォーム、スキーウェア、水泳、ゴルフ、サッカー、トレーニングなど、競技スポーツの現場で機能性を磨いてきたスポーツウェア企業です。1957年にデサントブランドを展開し、ラウスビー、デモパン、ダウンヒルスーツ、水沢ダウンなど、機能性とデザイン性を組み合わせた商品を生み出してきました。

デサント ビジネスモデルの特徴は、競技スポーツで培った機能美を、プレミアムスポーツウェアとして日本・韓国・中国で展開することです。日本ではDTC拡大と卸再構築、韓国ではデサント、アンブロ、アリーナ、シューズ、中国ではデサントブランドの規模拡大が柱になります。2025年度は売上高1,193億円、経常利益239億円、連結純利益151億円で、経常利益と連結純利益は4期連続で史上最高益となりました。

一方で、課題も明確です。中国への依存、持分法投資利益への依存、日本市場の再構築、韓国の為替影響、多ブランドの投資配分、在庫・天候・流行リスクがあります。ブランドをプレミアム化するほど、安売りはしにくくなり、商品力と顧客体験の質が重要になります。

就活生にとって、デサントはスポーツウェアの商品企画、素材開発、競技サポート、DTC店舗、海外ブランド運営、シューズ、ウェルネス、DX、サステナビリティに関われる会社です。個人投資家にとっては、現在は直接投資できないものの、スポーツアパレル業界や伊藤忠グループのブランド戦略を見るうえで重要な企業です。

デサントは、単にスポーツウェアを売る会社ではありません。競技の現場で生まれた機能美を、アジアのプレミアムスポーツ市場へ広げる会社です。その成長が中国依存に偏りすぎず、日本・韓国・他ブランドの再成長につながるか。そこが、デサント 企業研究の最大のポイントになります。