青山商事を一言でいうと

青山商事は、「洋服の青山」を中心に、スーツ、フォーマル、ワイシャツ、ビジネスカジュアル、レディーススーツ、オーダースーツ、補正加工、カード、印刷・メディア、雑貨販売、リペア、フランチャイズ、不動産まで展開する企業です。一般には「スーツ量販店の会社」として知られていますが、企業研究として見るなら、単にスーツを売る小売業ではありません。青山商事の本質は、全国規模の店舗網と接客・採寸・補正の機能を使い、働く人の服装変化に対応しようとしているビジネスウェア企業です。

青山商事 ビジネスモデルの中心には、長年築いてきた郊外型の大型紳士服専門店があります。1974年に業界初となる郊外立地の紳士服専門店「洋服の青山西条店」を開店し、その後はロードサイド中心に全国展開を進めてきました。スーツを必要とする社会人、新入社員、就活生、冠婚葬祭需要、ビジネスシャツ、礼服、靴、ベルト、バッグ、補正加工を一つの店舗で扱うことで、ビジネスウェアの大型専門店として成長しました。

しかし、今の青山商事は、過去の成功モデルをそのまま伸ばす段階ではありません。スーツ市場は、リモートワーク、オフィスカジュアル化、働き方の多様化、少子化、人口減少により縮小圧力を受けています。毎日スーツで出社する人が減れば、スーツの買い替え頻度は下がります。企業の服装規定が緩くなれば、ジャケット、パンツ、ポロシャツ、ニット、カットソー、スニーカー、セットアップなど、よりカジュアルな商品が必要になります。

2026年3月期の青山商事は、連結売上高1,890億円、営業利益105億円、親会社株主に帰属する当期純利益69億円でした。ビジネスウェア事業は売上高1,242億円、営業利益51億円と減収減益でした。一方で、カード事業、総合リペアサービス事業、フランチャイジー事業は好調に推移しています。つまり、同社はまだビジネスウェアが中心ですが、グループ全体では周辺事業も利益を支える構造になっています。

なぜ今青山商事を見るのか

今、青山商事を見る理由は、同社が「スーツ市場縮小」という構造問題の真ん中にいるからです。

アパレル小売の中でも、紳士服専門店は特に大きな変化を受けています。ユナイテッドアローズやアダストリアは、カジュアル、セレクト、ライフスタイル、EC、若年層向けブランドで変化に対応できます。一方、青山商事は、長く「スーツを買うなら洋服の青山」という強いポジションを築いてきたため、スーツ需要の変化を直接受けます。これは弱みであると同時に、同社の企業研究を面白くしている点でもあります。

2026年3月期の青山商事ビジネスウェア事業では、主要アイテムであるメンズスーツの販売着数が95.5万着となり、前期比91.1%でした。既存店売上高も前期比95.8%となりました。市場のカジュアル化が想定を上回るスピードで進み、さらに夏季の記録的な猛暑と長期化により、秋冬商品の実売期が後ろ倒しになったことが影響しました。スーツ事業は、服装文化の変化と天候の両方に左右される事業です。

一方で、同社はただ縮小を受け入れているわけではありません。ビジネスカジュアル商品、カットソー、ポロシャツ、ニット、オーダースーツ、高付加価値生地、オプション、そして「みんなのスーツ」などを通じて、新しい顧客接点を作ろうとしています。メンズスーツの平均販売単価は34,917円となり、前期比102.5%へ上昇しました。数量は減っても、値引き抑制や価格見直しで粗利率を改善しようとしていることが分かります。

中期経営計画では、2027年3月期に連結売上高2,100億円、連結営業利益170億円を目標としていました。しかし、2027年3月期の会社予想は、売上高1,947億円、営業利益117億円です。計画とのギャップは残っています。だからこそ、今の青山商事を見るポイントは、単に「スーツが売れないから厳しい」と言うことではありません。スーツ専門店としての店舗網、顧客基盤、採寸・補正・接客機能を使い、ビジネスカジュアル、OMO、周辺事業へどこまで変われるかです。

成り立ち

青山商事は、1964年に広島県府中市で設立されました。設立当初は、紳士服を中心に、食料・飲料品、県の特産品販売なども行う会社でした。現在のような全国的なスーツ専門店チェーンとして出発したわけではありません。

大きな転換点は、1974年の「洋服の青山西条店」です。これは業界初となる郊外立地の紳士服専門店であり、その後の出店は郊外型店舗中心になりました。当時、スーツを買う場所は都市部の百貨店や専門店が中心でした。青山商事は、車で来店しやすいロードサイドに大型店を構え、豊富な品揃えと比較的手頃な価格で、地方や郊外のビジネスパーソンにスーツを届けました。

1983年には、全店にPOSレジを設置し、大型コンピューターと直結したPOSシステムを導入しています。現在では当たり前の販売時点情報管理ですが、紳士服小売の中で早くからデータに基づく販売管理を進めていたことは重要です。スーツはサイズ、色、柄、季節、体型、年齢、用途が細かく分かれる商品です。店舗在庫をどう持つか、どの地域で何が売れるかを管理することは、収益性に直結します。

1991年には売上高868億円で業界1位を達成し、1992年には売上高1,000億円を突破しました。バブル崩壊後も、就職、冠婚葬祭、企業勤め、営業職、式典需要などを背景に、スーツ量販店は強い存在感を持っていました。青山商事は「洋服の青山」という分かりやすいブランド名と、全国店舗網、テレビCM、郊外立地を武器に、紳士服専門店の代表企業になりました。

その後、都市型店舗、海外拠点、カード事業、補正・リフォーム、印刷・メディア、雑貨、フランチャイズ、不動産などへ広がりました。ただし、企業としての根幹は今もビジネスウェアです。青山商事の歴史は、日本のサラリーマン文化、就活、冠婚葬祭、オフィス服装の変化と重なっています。

事業内容

青山商事の事業は、ビジネスウェア事業、カード事業、印刷・メディア事業、雑貨販売事業、総合リペアサービス事業、フランチャイジー事業、不動産事業、その他に分けられます。

ビジネスウェア事業は、グループの中心です。「洋服の青山」「SUIT SQUARE」「UNIVERSAL LANGUAGE MEASURE'S」などを通じて、スーツ、フォーマル、シャツ、ジャケット、スラックス、コート、レディーススーツ、ビジネスカジュアル、靴、バッグ、肌着、雑貨、オーダースーツ、補正加工を扱います。2026年3月末時点で、青山商事単体のビジネスウェア業態は、洋服の青山673店、SUIT SQUARE36店、UNIVERSAL LANGUAGE MEASURE'Sなど11店、合計720店です。さらにメルボメンズウェアーが29店あります。

カード事業は、青山キャピタルによるAOYAMAカードなどの発行・管理です。洋服の青山の購買促進と顧客囲い込みに関わります。2026年3月期のカード事業は、売上高55億円、営業利益24億円でした。売上規模は大きくありませんが、利益率が高く、グループ収益の安定に貢献しています。AOYAMA Payの導入など、店舗購買と金融・決済を結びつける役割もあります。

印刷・メディア事業は、アスコンを中心に、印刷、DM、デジタル販促物、デバイス関連などを扱います。もともとは紙の販促や印刷の色が強い事業ですが、近年はデジタル販促物や付加価値の高いデバイス関連売上も増えています。

雑貨販売事業は、青五による100円ショップなどの事業です。2026年2月末時点で100店舗を展開しています。紳士服とは違う日常消費の店舗であり、ローコスト運営やセルフレジ導入が収益改善に関係します。

総合リペアサービス事業は、ミニット・アジア・パシフィックを中心に、靴修理、合鍵作製、時計電池交換などを扱います。ビジネスウェアとの親和性もあります。スーツ、靴、バッグ、時計、鍵といった日常の身だしなみ・生活メンテナンスに関わる事業です。

フランチャイジー事業では、焼肉きんぐ、ゆず庵、PISOLA、セカンドストリート、エニタイムフィットネス、WECLEなどを展開しています。2026年3月期末では、焼肉きんぐ43店、ゆず庵13店、PISOLA1店、セカンドストリート20店、エニタイムフィットネス14店、WECLE2店です。ビジネスウェアとは異なる成長領域として、グループの利益を支えています。

収益構造

青山商事の収益構造は、ビジネスウェア事業が売上の中心であり、カード、リペア、フランチャイズ、不動産などが利益を補う形です。

2026年3月期の連結売上高は1,890億円、営業利益は105億円、経常利益は109億円、親会社株主に帰属する当期純利益は69億円でした。営業利益率は5.6%です。前年と比べると、売上高は3.4%減、営業利益は15.8%減、当期純利益は26.4%減となりました。主因は、ビジネスウェア事業の苦戦です。

セグメント別では、ビジネスウェア事業の売上高は1,242億円、営業利益は51億円でした。売上高では圧倒的に最大ですが、利益面では前年から大きく減少しています。カード事業は売上高55億円、営業利益24億円で、規模の割に利益貢献が大きい事業です。フランチャイジー事業は売上高175億円、営業利益13億円。不動産事業は売上高45億円、営業利益11億円。総合リペアサービス事業は売上高146億円、営業利益3億円でした。

つまり、青山商事はビジネスウェア事業だけを見ると構造変化の逆風を受けていますが、グループ全体では、カード、フランチャイズ、不動産、リペアが補完しています。ただし、これらの周辺事業だけでビジネスウェアの減少を完全に補えるわけではありません。青山商事の企業価値は、あくまでビジネスウェア事業の再構築に大きく左右されます。

商品別に見ると、青山商事単体のビジネスウェア事業では、2026年3月期の商品売上高合計が1,176億円でした。スーツ・スリーピースは330億円で構成比28.1%、フォーマルは167億円で14.2%、シャツ・洋品類は189億円で16.1%、レディース類は209億円で17.8%です。カジュアル類は32億円で構成比はまだ小さいものの、前期比109.0%と伸びています。ここから、スーツとフォーマルが依然として重要である一方、カジュアルの伸びが事業転換のヒントになっていることが分かります。

2027年3月期の会社予想では、連結売上高1,947億円、営業利益117億円、経常利益119億円、親会社株主に帰属する当期純利益76億円を見込んでいます。青山商事単体のビジネスウェア事業では、既存店売上前期比101.7%を前提にしています。ここを達成できるかが、2027年3月期の最大の焦点です。

事業内容の特徴

青山商事の事業内容の特徴は、スーツという「必要に迫られて買う服」を、全国店舗網と接客で販売してきたことです。

アダストリアやユナイテッドアローズのようなアパレル企業では、服を買う理由は「気分を変えたい」「おしゃれを楽しみたい」「好きなブランドだから」という要素が強くなります。一方、青山商事のスーツは、就職活動、入社、転職、冠婚葬祭、営業、式典、面接、商談など、必要に迫られる場面で買われることが多い商品です。このため、顧客は「何を買えばよいか分からない」「サイズが合うか不安」「失礼にならない服を選びたい」と考えます。ここで、店舗スタッフの接客、採寸、補正、セット販売が重要になります。

また、スーツはサイズ管理が複雑です。身長、胸囲、ウエスト、肩幅、袖丈、股下、体型、シルエット、用途に応じて商品を揃える必要があります。フォーマルは急に必要になることもあり、全国に店舗があること自体が価値になります。青山商事の店舗網は、単なる販売チャネルではなく、緊急需要、採寸、補正、相談に対応するインフラです。

一方で、この店舗網は固定費にもなります。スーツ需要が強かった時代には、郊外大型店は強みでした。しかし、スーツ需要が縮小し、来店客数が減ると、店舗家賃、人件費、在庫、光熱費、設備費が重くなります。青山商事がOMOやDXを掲げる理由は、店舗を単に減らすのではなく、店舗とECの役割を再設計する必要があるからです。

青山商事は、カジュアル化に対応するため、「みんなのスーツ」や「みんなのシリーズ」を打ち出しています。ここで重要なのは、カジュアル化が単にスーツを否定するものではないということです。仕事の服装が緩くなるほど、逆に「どこまで崩してよいのか」「ジャケットは必要か」「面接や商談では何を着るべきか」という迷いが増えます。青山商事がこの迷いを解決できれば、スーツ専門店としての知見を新しいビジネスウェアへ活かせます。

競合他社との違い

青山商事の競合は、AOKIホールディングス、はるやまホールディングス、コナカ、スーツ専門店、百貨店、ユニクロ、ユナイテッドアローズ、アダストリア、ワークマン、EC専業のオーダースーツ・ビジネスウェア企業などです。

AOKIとの違いは、事業ポートフォリオの広がりです。AOKIはスーツ専門店に加え、快活CLUBやカラオケ、ブライダルなどの周辺事業も大きな柱です。青山商事もフランチャイズやリペア、カード、不動産を持ちますが、企業イメージとしてはより「洋服の青山」への依存が強い会社です。紳士服市場の変化をどう乗り越えるかという点では、青山商事のほうがビジネスウェア再構築の成否が企業価値に直結しやすいといえます。

ユナイテッドアローズとの違いは、顧客の購買動機です。ユナイテッドアローズは、服好きや高感度な顧客に向けて、セレクトの目利き、接客、店舗体験で価値を提供します。青山商事は、就活、入社、冠婚葬祭、ビジネスという必要性の高い場面で選ばれてきました。ユナイテッドアローズが「選ぶ楽しさ」に強いなら、青山商事は「失敗しない安心感」に強い会社です。

アダストリアとの違いは、ブランド数とカジュアル対応です。アダストリアはGLOBAL WORKやniko and ...など複数ブランドで、日常カジュアルやライフスタイル提案を行います。青山商事は、洋服の青山という強い単一店舗ブランドを中心に、ビジネスウェアの専門性を持ちます。カジュアル化への対応では、アダストリアのほうがもともと得意な領域ですが、青山商事はビジネスマナーと接客・採寸・フォーマル需要に強みがあります。

ユニクロとの違いは、専門性と接客です。ユニクロは機能性と価格、商品開発力、大量販売でビジネスカジュアルも広く取り込みます。感動ジャケット、感動パンツ、シャツ、ニット、インナーなどは、青山商事の周辺需要と競合します。ただし、ユニクロはセルフ販売が中心で、採寸・補正・冠婚葬祭・就活相談の専門性は限定的です。青山商事は、この専門性を価値に変える必要があります。

ワークマンとの比較では、機能性と価格が論点になります。ワークマンは低価格・高機能の作業服、アウトドア、カジュアルウェアで成長しました。青山商事は価格だけで戦うと不利です。ビジネスの場で違和感なく着られること、フォーマルに対応できること、サイズと補正の安心感、接客の提案力で差別化する必要があります。

事業の現代での潮流

青山商事を取り巻く最大の潮流は、オフィスウェアのカジュアル化です。リモートワーク、フレックスタイム、ノーネクタイ、ビジネスカジュアル、スニーカー通勤、私服勤務が広がり、毎日スーツを着る必要がある職場は減りました。この変化は一時的な流行ではなく、働き方の構造変化です。

ただし、スーツが完全になくなるわけではありません。就職活動、入社式、卒業式、冠婚葬祭、商談、式典、金融・不動産・士業・営業など、きちんとした服装が必要な場面は残ります。また、ビジネスカジュアル化が進むほど、逆に服装のルールは曖昧になります。何を着れば失礼でないか、どこまでカジュアルでよいかを提案する力が重要になります。

もう一つの潮流は、OMOです。店舗で採寸し、ECで購入する。ECで見て、店舗で試着する。過去の購入履歴からサイズを提案する。補正や受け取りを店舗で行う。こうした店舗とECの融合は、スーツ専門店にとって相性があります。青山商事は、店舗での顧客体験を起点に、店舗とECで同水準の体験を提供し、LTV最大化を目指しています。

DXも重要です。スーツ小売は、サイズ、在庫、季節、地域、顧客属性、購買履歴が複雑です。どの商品をどの店舗に置くか、どの顧客に何を提案するか、補正・受け取り・会員サービスをどうつなぐかは、データ活用の余地が大きい領域です。中期計画でも、リアルタイムな情報収集とデータドリブンな意思決定が掲げられています。

さらに、物価高と消費マインドの低下も影響します。スーツは単価が高く、買い替えを先送りされやすい商品です。平均単価を上げることは利益率改善に有効ですが、価格が上がりすぎると客数が減ります。2026年3月期の課題は、単価改善よりも客数減少の影響が大きかったことです。青山商事の再成長には、価格改定だけでなく、新規顧客を呼び戻す商品と体験が必要です。

強み

青山商事の第一の強みは、「洋服の青山」という圧倒的な認知です。スーツや礼服が必要になったとき、まず思い浮かぶ店舗の一つです。就活、入社、冠婚葬祭、急な商談など、必要に迫られる場面でブランド認知があることは大きな強みです。

第二の強みは、全国店舗網です。2026年3月末時点で、青山商事単体のビジネスウェア業態は720店を持っています。地方都市や郊外にも店舗があるため、急に礼服が必要になったとき、就活用スーツを相談したいとき、補正が必要なときに対応できます。ECだけでは代替しにくい接点です。

第三の強みは、接客・採寸・補正です。スーツはサイズ感が重要で、体型に合わなければ印象が悪くなります。青山商事は、長年の販売経験により、体型、用途、予算、年齢、職種、フォーマル度に応じた提案ができます。これは、カジュアル衣料のセルフ販売とは違う専門性です。

第四の強みは、フォーマル需要です。フォーマルは、流行に左右されにくく、急な需要が発生しやすい商品です。冠婚葬祭は生活の中で必ず発生します。フォーマル売上は2026年3月期も167億円あり、構成比14.2%を占めています。スーツ需要が減っても、礼服需要は一定程度残ります。

第五の強みは、周辺事業です。カード事業は高い利益率を持ち、フランチャイズ事業や総合リペアサービス事業も成長しています。ビジネスウェア事業が苦戦しても、グループ全体の利益を補完できる構造があることは強みです。

弱み・リスク

青山商事の第一のリスクは、スーツ市場の縮小です。これは一時的な問題ではなく、働き方の変化に伴う構造問題です。毎日スーツを着る人が減れば、スーツの買い替え需要は減ります。就活や冠婚葬祭は残りますが、従来のビジネススーツ中心の需要を維持するのは難しくなります。

第二のリスクは、客数減少です。2026年3月期の青山商事単体ビジネスウェア事業では、既存店売上が95.8%、客数が95.2%でした。平均単価は上がっていますが、客数減少が大きな課題です。新規顧客や若年層を呼び込めなければ、価格改定だけでは成長できません。

第三のリスクは、店舗固定費です。全国店舗網は強みですが、来店客数が減れば固定費負担になります。家賃、人件費、光熱費、在庫、設備投資が必要です。大型郊外店は、車で来店する顧客が多い時代には強みでしたが、ECや都心型小型店、カジュアル化が進む中では役割を見直す必要があります。

第四のリスクは、ビジネスカジュアル競争です。カジュアル化は青山商事にとってチャンスでもありますが、競合は非常に多いです。ユニクロ、GU、ワークマン、アダストリア、ユナイテッドアローズ、ECブランドなどが、ジャケット、パンツ、シャツ、ニット、ポロシャツを販売しています。青山商事は、ただカジュアル商品を増やすだけではなく、ビジネスに使える安心感で差別化する必要があります。

第五のリスクは、在庫と天候です。スーツ、コート、フォーマル、秋冬商品は、季節や気温の影響を受けます。2026年3月期も、猛暑の長期化により秋冬商品の実売期が後ろ倒しとなり、販売期間が限定されました。アパレル小売である以上、在庫管理と値引き抑制は常に課題です。

数字で見る青山商事

青山商事を見るときは、売上高、営業利益、営業利益率、ビジネスウェア事業の既存店売上、客数、客単価、スーツ販売着数、商品別売上、セグメント別利益、営業キャッシュフロー、配当方針を確認する必要があります。

2026年3月期の連結売上高は1,890億円、営業利益は105億円、経常利益は109億円、親会社株主に帰属する当期純利益は69億円でした。営業利益率は5.6%、自己資本比率は57.9%、営業活動によるキャッシュフローは99億円でした。前年と比べると減収減益です。

セグメント別では、ビジネスウェア事業が売上高1,242億円、営業利益51億円でした。カード事業は売上高55億円、営業利益24億円。印刷・メディア事業は売上高108億円、営業利益0.5億円。雑貨販売事業は売上高152億円、営業利益1.5億円。総合リペアサービス事業は売上高146億円、営業利益3.6億円。フランチャイジー事業は売上高175億円、営業利益13億円。不動産事業は売上高45億円、営業利益11億円でした。

商品別では、青山商事単体のビジネスウェア事業において、スーツ・スリーピースが330億円、フォーマルが167億円、シャツ・洋品類が189億円、レディース類が209億円でした。カジュアル類は32億円と規模は小さいものの、前期比109.0%で伸びています。スーツとフォーマルの構成比はまだ高く、ビジネスカジュアルへの転換余地が残っています。

2027年3月期の会社予想では、連結売上高1,947億円、営業利益117億円、経常利益119億円、親会社株主に帰属する当期純利益76億円です。配当は株式分割後ベースで年間38円を予想しています。なお、株式分割を考慮しない場合は年間114円に相当します。株主還元方針では、配当性向70%またはDOE3%のいずれか高い方を採用し、自己株取得も中期経営計画期間で最大100億円としています。

今後の注目ポイント

今後の第一の注目ポイントは、ビジネスウェア事業の客数回復です。2026年3月期は平均販売単価が上がった一方、客数が減りました。2027年3月期は既存店売上101.7%を前提にしていますが、客数を戻せるかが重要です。「みんなのスーツ」や「みんなのシリーズ」が新規顧客層を開拓できるかを見る必要があります。

第二の注目ポイントは、ビジネスカジュアルへの対応です。スーツ市場が縮小する中で、ジャケット、パンツ、シャツ、ポロシャツ、ニット、靴、ブラウス、セットアップを含めた提案が重要になります。青山商事は、スーツ専門店の安心感を保ちながら、カジュアルすぎない仕事服を提案できるかが問われます。

第三の注目ポイントは、OMOです。店舗での接客・採寸・補正と、ECでの利便性をどうつなげるかが鍵になります。スーツやフォーマルはサイズ不安が大きいため、店舗体験を起点にしたEC活用は相性があります。過去購入データ、サイズデータ、補正情報を活かせれば、リピート率を高められる可能性があります。

第四の注目ポイントは、周辺事業の利益貢献です。カード事業、フランチャイジー事業、不動産事業は利益率が高い領域です。ビジネスウェアの縮小を完全に補うほどではありませんが、グループ全体の安定性を高めます。特にフランチャイズは、焼肉きんぐ、ゆず庵、セカンドストリート、エニタイムフィットネスなど、成長市場との接点があります。

第五の注目ポイントは、株主還元と資本効率です。中期経営計画では、資本コストや株価を意識した経営を掲げています。配当性向70%またはDOE3%の高い方という方針は、投資家にとって分かりやすい還元策です。一方で、事業再構築には投資も必要です。還元と成長投資のバランスを見る必要があります。

投資対象として

青山商事を投資対象として見る場合、同社は「スーツ専門店の成熟企業」であると同時に、「スーツ市場縮小からビジネスウェア再定義へ挑む再構築企業」と整理できます。

ポジティブに見るなら、青山商事には強い認知と全国店舗網があります。洋服の青山は、就活、入社、フォーマル、急なスーツ需要で真っ先に思い浮かびやすいブランドです。店舗で採寸・補正・接客ができる点は、EC専業や低価格カジュアル店にはない強みです。カード、リペア、フランチャイズ、不動産も利益を補完しています。

また、株主還元方針も明確です。配当性向70%またはDOE3%のいずれか高い方を採用し、自己株取得も機動的に実施する方針です。営業キャッシュフローが安定し、財務体質を維持できれば、還元面は投資家にとって魅力になります。

一方で、慎重に見るべき点は大きいです。スーツ市場の縮小は構造的であり、ビジネスウェア事業は2026年3月期に減収減益でした。既存店売上と客数の回復がなければ、利益成長は限定的です。ビジネスカジュアルは成長余地ですが、ユニクロ、ワークマン、アダストリア、ユナイテッドアローズなど強い競合がいます。青山商事らしい提案ができなければ、価格競争に巻き込まれる可能性があります。

したがって、青山商事の株価を見るときは、PERや配当利回りだけでなく、ビジネスウェア事業の既存店売上、客数、客単価、スーツ販売着数、カジュアル類の伸び、売上総利益率、店舗数、営業キャッシュフロー、セグメント別利益、配当性向、自己株取得を確認する必要があります。投資対象としては、高い還元方針を持つ一方、本業再構築の成否が評価を左右する会社です。

まとめ

青山商事は、1964年に広島県府中市で設立され、1974年に業界初となる郊外立地の紳士服専門店「洋服の青山西条店」を開店した会社です。郊外型店舗、豊富な品揃え、POSによる販売管理、全国展開により、スーツ量販店の代表企業として成長してきました。

青山商事 ビジネスモデルの特徴は、全国の店舗網と接客・採寸・補正を通じて、スーツ、フォーマル、シャツ、レディース、ビジネスカジュアルを販売することです。スーツは単なる服ではなく、就活、入社、商談、冠婚葬祭といった失敗できない場面で選ばれる商品です。ここに、同社の専門性があります。

一方で、課題も明確です。スーツ市場は、リモートワーク、オフィスカジュアル化、少子化、働き方の多様化により縮小圧力を受けています。2026年3月期は売上高1,890億円、営業利益105億円と減収減益となり、ビジネスウェア事業の既存店売上も前期比95.8%でした。数量が減る中で、平均単価の上昇、値引き抑制、ビジネスカジュアル、OMOによってどう収益を作るかが問われています。

就活生にとって、青山商事は店舗販売だけでなく、商品企画、MD、店舗運営、EC、OMO、カード、リペア、フランチャイズ、不動産、データ活用に関われる会社です。個人投資家にとっては、配当利回りだけでなく、ビジネスウェア事業の客数回復、カジュアル対応、周辺事業の利益貢献、営業キャッシュフロー、資本効率を見るべき企業です。

青山商事は、スーツ市場縮小の逆風を最も正面から受ける会社の一つです。しかし、だからこそ、働く人の服装が変わる時代に、スーツ専門店の知見をどう再定義するかが問われます。洋服の青山が「スーツを売る店」から「働く人の服装を相談できる店」へ変われるか。そこが、青山商事 企業研究の最大のポイントになります。